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Al Foster / Inspirations & Dedications

Al Foster_Inspirations & Dedications

Jeremy Pelt (tp)
Dayna Stephens (ts)
Adam Birnbaum (p)
Doug Weiss (b)
Al Foster (ds)

Recorded: January 28, 2019, at Sear Sound Studio, NY
Engineer: Christopher Allen (Smoke Sessions Records SSR-1904)

たまにはメインストリームなジャズもいい

 アル・フォスターが放つ久方ぶりのリーダー作である。アル・フォスターにはサイドマン作品が多く、リーダー作はたった6作しかない。彼のキャリアを考えれば驚くべきことだ。

 なかでも本作はエリ・デジブリやケヴィン・ヘイズらをフューチャーし2008年にリリースしたアルバム『Love, Peace and Jazz! Live at the Village Vanguard 』以来、なんと10年ぶりのリーダー作だ。これがまた、とんでもなくいいのである。

 今をさること20年前、クリス・チークのアルバム『Vine』(1999年録音、レビュー記事はこちら)を聴き、「ええっ、世の中にはこんなトンがったジャズもあるのか!」と驚天動地した。で、以来、ひたすら、いわゆるニューヨーク・コンテンポラリーなニューウェイブ系のジャズばかり聴いてきた。

 例えば典型的なのは、ラーゲ・ルンド作品みたいに高い緊張感にあふれ神経質でピリピリしているコンテンポラリー・ジャズだ。

 そんな私ゆえ、アル・フォスターの本作を聴き、またもや再度、「ええっ、世の中にはこんなジャズもあったのか!」と、逆の意味で激しく後頭部をぶっ叩かれた。

 いや本作は非常にベーシックで、いい意味でありふれたいわゆる旧来のジャズだ。だが、ずっとトンがったコンテンポラリー・ジャズばかり聴いてきた私の耳には非常に新鮮に聴こえる。

 本作は全13曲で、オリジナル曲が11曲。既成曲が2曲の構成である。2曲の既成曲とは1曲目と13曲目に配されたハービー・ハンコックの“Cantaloupe Island”、マイルス・ディヴィスの“Jean-Pierre”なのだが、アル・フォスターの手によるオリジナル楽曲のテイストもこれら既成曲とまったく同じだ。これがまた、とんでもなくいいのである(またかい)。

 若手のミュージシャンが作る現代的でトンがった緊張感のある音と違い、ちょっとブルージーで哀愁があり安らげる。ベテランらしい落ち着きがある。

 全体に暖かみのある楽しい音で、柔らかく丸みのある音調が聴き手をやさしく包み込む。ストレスの多い現代社会にあって、思わずホッとさせるような安心感でいっぱいだ。いかにもJBLとマッキンのアンプが似合いそうな音である。

 てなわけで本作と出会い、「現代的でトンがったジャズばかりでなく、往年のベーシックなジャズもいいなぁ」とあらためて実感した。こういう聴き手の価値観を根底から覆すような作品は、実に得難い。ジェレミー・ペルト(tp)やデイナ・スティーブンス(ts)らメンバーもいい。おすすめです。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Patrick Cornelius / This Should Be Fun

Patrick Cornelius_This Should Be Fun

Patrick Cornelius (as)
Ben Allison (b)
John Escreet (p)
Mark Ferber (ds)
Nick Vayenas (tb)

Recorded: June 22, 2018, at Acoustic Recording, NY
Engineer: Nick O'Toole (Posi-Tone Records PR8195)

都会的でスタイリッシュな現代ジャズ

 パトリック・コーネリアスがリリースしたばかりの6枚目のリーダー作だ。ベン・アリソン(b)、ジョン・エスクリート(p)、マーク・ファーバー(ds)とメンバーは豪華だし、アレンジも凝っていて言うことはない。デキのいい都会的でスタイリッシュなコンテンポラリージャズである。彼の作品は常にそうだ。

 ただそれだけに飽きがくるというか、いまひとつ食い足りなさが残る。過去の作品とダブって見え、ちがいが判然としないのだ。本盤だけにこめられた強烈な個性、インパクトのようなものが感じられない。

 思えば彼は、思い切り凝りまくった前作の『While We're Still Young 』(2016年、レビュー記事はこちら)から、微妙なキャリアの曲がり角を迎えたような気がする。

「いいものを作ろう」と作曲面でいじりすぎ、仏作って魂入れず、みたいなところが見えてきた。自身の中に培った膨大なマニュアルに沿ってものを作るから、結果として毎回同じような作品になる。これを外から見れば淡々とルーティーンワークにいそしんでいるかのようにみえてしまうが、とんでもない。本人には無論そんな気はなく、むしろ肩に力が入りすぎているからこそ、こうなるのだろう。

 その証拠に本作は例によってアレンジは芸術的といっていいほど装飾的だし、そのテのワザはふんだんに使っている。だが作曲技術や蘊蓄はあっても、燃えるような情熱が感じられるかといえば……という感じ。音から「人生」が見えてこない。器用貧乏というやつだろうか?

 いや、もちろん本盤で初めて彼の作品を聴いた人なら、まちがいなく存分に楽しめるだろう。だって、作品としては非の打ち所がないんだから。むしろ彼の最高傑作といってもいい。

 だけど(彼の全作品を聴いてきた私に限って言えば)気がついたらCDラックのどんどん奥へ行ってしまい、いつのまにか再生されない、みたいなことになる。残念ながら、現象としてはそういうことである。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Ari Hoening Trio / Conner's Days Days

Ari Hoening Trio_Conner's Days Days

Ari Hoenig (ds)
Nitai Hershkovits (p)
Or Bareket (b)

Recorded: November 22, 2017, at Big Orange Sheep Studios, NY
Engineer: Michael Perez-Cisneros (Fresh Sound New Talent FSNT 577)

リズムを「もて遊ぶ」究極のピアノトリオ

 楽しくアグレッシブなピアノトリオである。リズムに興味がある人は必ずツボにくる。ドラマーのアリ・ホーニグが、俊英ニタイ・ハーシュコヴィッツ(p)とオル・バレケット(b)をフィーチャーしてリリースしたばかりのリーダー作だ。

 ピアノトリオはただ「美しい」だけじゃないぞ、ってところをたっぷり聴かせてくれる。彼らはリズムが実にやばい。やばすぎる。変拍子も交えてノリが目まぐるしく変幻自在だ。

 無数のリズムパターンを駆使して楽曲を聴かせる。リズムをここまで「もて遊んで」楽しませてくれるのはアリ・ホーニグならではだろう。トリハダの究極ピアノトリオである。

 先日レビューしたピアノトリオ『Matt Slocum / Sanctuary』(レビュー記事はこちら)もクオリティが高かったが、まるで傾向は違うものの本作も負けず劣らずすばらしい。山あり谷ありのリズムをベースに、3人がぴったり息を合わせて一心同体で演奏しているのが伝わってくる。

 音楽的に、これに匹敵するピアノトリオといえばブラッド・メルドー・トリオくらいしかちょっと思いつかない。テイストが似ているという意味じゃなく、いずれも芸術点がめちゃ高いって意味で。

 これ聴いてると、強度の興奮のあまり瞼にジワーッと涙が滲んでくる。特に7曲目と10曲目の涼やかなリリカルさと、9曲目の凝ったリズムワークには思わずフリーズしてしまう。それくらい金縛り物のピアノトリオである。

 実はYouTubeで、このトリオのライブをたまたま観ていたので「いい」というのはわかってはいたが、CDになるとここまでいいとは思わなかった。音質がよく透明感と解像度が高いのもマル。絶対、買いです。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Lage Lund / Terrible Animals

Lage Lund_Terrible Animals

Lage Lund (g)
Sullivan Fortner (p)
Larry Grenadier (b)
Tyshawn Sorey (ds)

Recorded: April 26, 2018, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Michael Marciano (Criss Cross 1402)

荒涼とした廃墟感が広がる最高傑作

 本盤はリリースと同時に買っていたのだが、ブログの更新をサボっている時期だったので書きそびれていた(笑)。とはいえ本ブログにギタリスト、ラーゲ・ルンドは欠かせないので遅ればせながらレビューしておく。

 さて彼のCriss Crossレーベル5作目に当たるこの最新作は、現代最先端で思いっ切りとんがった作品だ。ルンドの持ち味であるナーバスでネガティヴなテイストが最大限に発揮された最高傑作である。メロディアスな親しみやすさと、それとまったく対極にある超絶的な難解さが同居した妖作だ。

 ゆえにルンドが初体験な人は覚悟して聴いたほうがいい。一度目は「なんだ? この取っ付きにくい神経質な音は?」と驚く。だが何度か聴いてるうちにある沸点を迎え、それを越えるとだんだん気持ちよくなってくる。実に麻薬的な作品だ。

 方向性としては、彼のCriss Crossレーベル2作目に当たる『Unlikely Stories』(2010年、レビュー記事はこちら)の荒涼とした虚無感のある路線を突き詰めた作風である。

 音の温度感でいえば、ひんやり冷たい。ルンドが生まれ育ったノルウェーの厳しい冬を想わせるイメージだ。現代人のささくれ立った心の襞を覗かせるような世界観が際立つ。

 レコーディング・メンバーで注目してほしいのは、ピアニストのサリヴァン・フォートナーだ。私はトニー・マラビー(ts)が咆哮しまくるフリーっぽいアルバム『Sustainable Quartet』(2010年、レビュー記事はこちら)で初めて彼の演奏を聴き、ひとめぼれした。インプロが手なりでなく耳に残るフレーズを連発する業師である。

 一方、ベーシストのラリー・グレナディアは説明するまでもなく、ブラッド・メルドー・トリオのひとり。かたやドラマーのタイショーン・ソーリーは、NYCの前衛系を開拓するクセ者だ。音数が異常に多くてうるさい以前から私が大嫌いなタイプだが、本盤ではその暴力性がハマりにハマっていておもしろい。

全曲、気合いのオリジナル構成である

 収録曲は全10曲。すべてルンドのオリジナルである。1曲目は、テーマが親しみやすくメロディアスで印象的だ。サリヴァン・フォートナー(p)のインプロに入ると一転して夢幻の世界に連れて行かれ、続くルンドのソロでは本作のテーマである荒涼とした廃墟感がのっそりと姿を現す。

 M-2でも静かな導入部を経て次第に1曲目同様の廃墟感が出現し、ルンドの破壊的で壮絶なソロにとどめを刺される。続く3曲目は途中で4ビートになってからがスタイリッシュで滅茶かっこいい。ルンドはもちろん、フォートナーが刺激的ですばらしいピアノソロを聴かせている。

 M-4は効果音のような静かなギターの爪弾きから立ち上がり、スローでしっとりした本題が展開される。落ち着いたギターソロも効果的に映える。ちょっとした箸休め的な小品である。M-5はこれまたメロディアスで覚えやすいテーマが乙。浮遊するような味のあるリズムが憎い。

 一転して6曲目は、Criss Crossレーベル4作目の彼のアルバム『Idlewild』(2015年、レビュー記事はこちら)でも顔をのぞかせた、水の中に潜って海の底から水面を眺めているかのような味のおもしろい作品だ。

 M-7は楽しいメロディの導入部と侘びサビ系のギターソロ、壊れた感じのフォートナーのピアノソロが刺さる。8曲目はルンドにしては珍しいボサノバ調だが、「ボッサ」という一般的なイメージとはまるで程遠いチャレンジングで危険な棘のある逸品だ。

 M-9はアコギが宙を舞い、エフェクターが味付けをした小品。トリを務める10曲目は、開放感のある楽想をベースに、まるで空に舞い上がって行くようなルンドのインプロが聴かせる。快作である。

 それにしてもルンドは、前作『Idlewild』をスタンダードほかありきたりな既成曲でまとめていただけに個人的に気になっていた(恐らくレーベル側の介入で)。だが本作ではそのストレスを振り払うかのような全曲オリジナル構成である。心配は杞憂に終わった。いやはや、参りました。

 ルンドは1978年12月12日、ノルウェー生まれ。バークリー音楽大学で学んだ。2002年にニューヨークへ移るとすぐ、ジュリアード音楽院に入学した最初の記念すべきエレキギター奏者となった。2005年モンク・コンペで優勝している。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Matt Slocum / Sanctuary

Matt Slocum_Sanctuary

Gerald Clayton (p)
Larry Grenadier (b)
Matt Slocum (ds)

Recorded: August 7-8, 2018 at Sear Sound, NY
Engineer: Brian Montgomery (Sunnyside Records SSC1547)

スローカム、渾身のメジャー第一作

 不思議なピアノトリオである。NYを拠点に活動する若手ドラマー、マット・スローカムのSunnyside第一作だ。

 ピアニストのジェラルド・クレイトンを大々的にフィーチャーしている。だが、よくあるリリカルなだけのピアノトリオじゃない。

 かといって極端にテクニカルなわけでもない。

 むろん美メロの断片は登場するが、わかりやすいメロディがえんえん頻出するわけじゃない。ピアノがややアブストラクトなので、やたら大仰に美しさをアピールするような安物のピアノトリオとくらべ、わかりにくいのだ。

 ゆえに1~2度聴いただけでは、「さほど美メロなわけでもないし」という印象しか残らない。だがそれもつかの間。噛めば噛むほどだんだんおいしさが湧いて出て、そのうちすっかり虜になる。そんな渋いピアノトリオである。

 わかりやすさや美しさなら、同じスローカム作のピアノトリオだった自主制作盤『After the Storm』(2011年録音、レビュー記事はこちら)に軍配が上がる。だが味わい深さや作品性では、本作のほうがはるかに上だ。

 スローカムはこれまで、地道に自主制作盤をリリースしてきた。同じバークリー出身のウォルター・スミスⅢ (ts) 、デイナ・スティーブンス (ts)、ジェラルド・クレイトンらをフィーチャーした初リーダー作『Portraits』(2008年録音、レビュー記事はこちら)がデビュー作である。

 聴けば、ピアノトリオ編成の楽曲が数曲に、なぜか管が入った曲もある未整理な構成だった。「なぜこの盤に管が入っているのか? 純粋なピアノトリオにしたほうがいいのに」と疑問に思ったものだ。

 その疑問に対する回答を作品として形にしたのが、純正ピアノトリオの本盤である。やっぱりこのスタイルのほうがはるかにいい。楽しんでください。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Tom Harrell / Something Gold, Something Blue

Tom Harrell_Something Gold, Something Blue

Tom Harrell (tp, flh)
Ambrose Akinmusire (tp)
Charles Altura (g)
Ugonna Okegwo (b)
Johnathan Blake (ds, Tambourine)
Omer Avital (oud on M4)

Recorded: August 29-30, 2015, at Water Music, NJ
Engineer: Sean Kelly (HighNote Records HCD7289)

チャールズ・アルトゥラ(g)に注目せよ

 最新作『Infinity』(2019年、レビュー記事はこちら)でトム・ハレルに感心したので、2006年リリースの本作を聴いてみた。

 ハレルの世界はどうも性に合わず、過去作はほとんど聴いているのだが今までレビューしていなかった。だが個人的にフェイバリットなギタリストのチャールズ・アルトゥラを、このところレコーディング・メンバーにフィーチャーし始めたので注目している。

 ハレルのオリジナル8曲に、スタンダード「Body and Soul」を加えた合計9曲。アルバム全編にチャールズ・アルトゥラの得も言われぬコードワークが聴かれ、その独特の響きがスぺーシーで空間的な広がりを感じさせる。そこが個人的には本盤のキモだ。

 まず1曲目では早くもアルトゥラのギターソロが聴ける。この人のフレージングはホントに個性的で何度聴いてもうっとりしてしまう。続くM2はハレル得意の朝焼け感のあるさわやかなソロが登場する。二番手はまたもアルトゥラで大満足だ。ハリルにならい、水中を泳いでいるかのようなさわやか系のフレージングがおもしろい。

 M3はドラムソロで始まる曲。同じフレーズのリフレインの上にトランペットが乗り、非常にスタイリッシュな雰囲気だ。続くトランペットのソロもちょっとダークで歯ごたえがある。二番手を務めるアルトゥラのギターソロが勇壮でかっこいい。

 4曲目には中近東っぽいオマー・アヴィタルのウードがフィーチャーされているが、なんだかキワモノ的で個人的には好きじゃない。ただし二番手のアルトゥラのギターソロは破壊的でめちゃかっこいい。これが聴けるだけでもおトクだ。

 M6は冒頭から畳みかけるようなリフが襲い、冒険的なトランペットのソロが続く。二番手のアルトゥラは深く静かに潜行する味のあるソロを聴かせる。かなり構成に凝った楽曲である。

 それにしても好みじゃなかったミュージシャンのアルバムに、好みのミュージシャンが採用され始めただけでこんなに楽曲の雰囲気が変わり、肌に合うようになるもんなんだなぁ。なんだか不思議だ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Joshua Redman / Still Dreaminng

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Joshua Redman (ts)
Ron Miles (cornet)
Scott Colley (b)
Brian Blade (ds)

Recorded: April 2-3, 2017, at Sear Sound, NY
Engineer: James Farber (Nonesuch 7559-79330-8)

父デューイ・レッドマンへのオマージュ

 先日聴いた最新作『Come What May』(2019年、レビュー記事はこちら)ですっかりジョシュア・レッドマンを見直した。で、昨年リリースされた旧作も聴いてみた。一聴して、なんだかオーネット・コールマンっぽいなぁ、と思ったら……道理で。

 どうやらジョシュアの父、デューイ・レッドマンが、オーネット・コールマンとの共演者たちと組んだバンド「オールド・アンド・ニュー・ドリームス」にインスパイアされた作品らしい。

 ちなみに「コールマンの共演者」というのはドン・チェリーとチャーリー・ヘイデン、エド・ブラックウェルである。(昔、よく聴いたメンツだなぁ)

 アルバムは内容的には、5曲目までの前半部分と、6曲目以降の後半に分かれる。どちらかといえば前半はストレートで明るい曲作りで、後半はやや思索的でフリーキーなテイストだ。

 1曲目。理屈抜きに明るく楽しいオープニングである。華やかな喧噪とともにアルバムは幕を開ける。次いでスリリングなキメが利いたM2は、のっけからジョシュアが畳みかけるように攻めまくる。

 3曲目は一転して静かな佇まいだ。侘びサビ系のサックスがもの悲しくメロディを奏でる。そして前半の最後を飾るM5は、スローテンポでアレンジに凝りまくった導入部から楽しい4ビートの後半部分へとバトンタッチされる。6曲目以降、アルバムの後半はやや退屈なので、以下、省略。

 いや、本盤は前半の5曲目までを聴いただけでも十分に価値がある。いやはや、やっぱりジョシュア・レッドマンを見直しました。名手ジェームス・ファーバーが録音エンジニアを手掛けるだけに、やたらと音質がいいのもマル。おすすめです。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Tom Harrell / Infinity

Tom_Harrell_Infinity

Tom Harrell (tp, Flh)
Mark Turner (ts)
Charles Altura (el-G, ac-G)
Ben Street (b)
Johnathan Blake (ds)
Adam Cruz (Per on M3)

Recorded: September 24 & 30, 2018, at Sear Sound, NY
Enginer: Chris Allen (HighNote Records HCD 7321)

T.ハレル、『Trip』(2014年)と並ぶ優秀作を世に問う

 本盤は、ドン・キホーテを題材にした『Trip』(2014年、レビュー記事はこちら)と並ぶトム・ハレル(tp)の優秀作といえるだろう。ギタリスト、チャールズ・アルトゥラの起用がキモになっており、彼のコードワークがアルバム全編を覆い、得も言われぬ空間的な広がりをもたらしている。彼に曲者マーク・ターナー(ts)が絡み、こたえられない展開になっている。私みたいなターナー好きには、たまらない。

 ちなみにアルトゥラの演奏はデイナ・スティーブンスの『I'll Take My Chances』(2013年、レビュー記事はこちら)で初めて聴いたが、ひとクセある個性的なプレイにたちまち一目惚れしてしまった。

 さて肝心の内容だが、1曲目ではベースのリフレインが畳みかけ、それに乗りアルトゥラとターナーが切迫感のあるソロを取る。最後はドラムソロだ。

 続くM2はのっけからマーク・ターナーが得意のうねうねソロを繰り出し、ハレルの爽やかなソロ・パートが続く。M3は余韻のある静かな立ち上がりから、途中4ビートになりノリのよさを聴かせる。

 M4は冒頭からアルトゥラのスペイシーなギターソロが聴ける秀曲。M5はハレルの朝焼けを想わせる上昇感のあるソロがすばらしい。アルトゥラの美しいアコギのソロがそれに続き思わず昇天してしまう。M8はまたもハレルの朝焼け感が漂い、ゆったりした静かな展開が心地いい。そんな曲調に合わせたアルトゥラのギターソロも聴き物だ。

 それにしてもトム・ハレルという人は、よくこれだけ次々に曲想が湧くのだから感心してしまう。NYコンテンポラリーなジャズにありがちな、単にダークな曲調とは明らかに一線を画した変拍子調も含めながらの個性的な作風が光る。これで70歳過ぎというのだから驚かされる。

 エンジニアのクリス・アレンが手掛ける録音もよく、アルバムを通してどこか爽やかなハレル的な音調がうまく表現されている。

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The E.J. Strickland Quintet / Warriors For Peace

EJ-Strickland

E.J. Strickland (ds)
Godwin Louis (as)
Jure Pukl (ts, ss)
Taber Gable (P)
Josh Ginsburg (b)
Ulrich Edorh (Vo-M11)

Recorded & Mixed at Da Town Studios, Marseille, FR
Recorded & Mixed by Ulrich Edorh (Jammin'colors Records JC18-006-2)

都会的で洗練された現代ジャズ

 E.J.ストリックランドのリーダー作としては、前作の『The Undying Spirit』(2015年、レビュー記事はこちら)と変わらず都会的で洗練されたスタイリッシュなコンテンポラリージャズを演っている。

 だが前作とくらべ、メンバーの熱量と勢いが明らかに増した感じだ。

 前作はストリックランド以外のメンバー全員が意識して抑えた演奏をしていたが、本作はそんな遠慮などなく全員がグイグイ熱く弾ける勢いを感じさせる。まちがいなくE.J.ストリックランドの最高傑作といっていいだろう。

 のっけから2管がくんずほぐれつの熱演を聴かせるM-1で早くも「おっ」と思わせる。前作とくらべかなりアレンジに凝っており、インプロを交えながらも相当に緻密な演奏を聴かせている。

 2曲目は一転してゆったりしたノリからサックスが渋いソロを聴かせる。M-3は逆に急き立てるような不安を煽るアレンジの導入部から、テクニカルなサックスとピアノのソロが続く。

 どの曲も深謀遠慮な深い仕掛けが施されており、アルバム全体を通して聴いてもまったく飽きない。E.J.ストリックランドは3作目にして、どうやら大魚を仕留めたようだ。おすすめです。

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Seamus Blake / Guardians of The Heart Machine

Seamus_Blake

Seamus Blake (ts, ss, vo)
Tony Tixier (p)
Florent Nisse (b)
Gautier Garrigue (ds)

Recorded: November 11-12, 2017, at Studio de Meudon, Paris
Engineer: Erwan Boulay (Whirlwind Recordings WR4735)

S.ブレイクがパリから発信する最新作

 シェイマス・ブレイクといえば、ビル・スチュワート(ds)がリズミックに大暴れするノリノリの超名盤『Bellwether』(2009年)を思い出すが、なんとどうやら彼はフランスに活動の拠点を移したらしい。そしてリリースされた最新作が本盤だ。

 哀愁漂うメロディアスな佳曲をずらりと揃え、アルバムとしての完成度でいえば名盤『Bellwether』といい勝負といっていいデキである。

 本ブログでも初リーダー作『Aux Mages』(2014年、レビュー記事はこちら)を紹介している若手フランス人ベーシスト、フローレント・ニッセが参加しているのを見てなるほど納得した。

 というのもニッセのアルバムでも聴かれた、まるで湖面に落ちた水滴が描く波紋を音にしたような端正な楽曲が目を引くのだ。おそらく彼の音楽性がシェイマスに影響を与えているのだろう。

 かと思えば5曲目「Lanota」のように、ノリのいい派手でかっこいい楽曲も散らばっており、熱くエネルギッシュなジャズが好きな人にもおすすめだ。

 ちなみにニッセとリズムセクションを組むドラマーは、イタリアの若手ギタリスト、フェデリコ・カサグランデの傑作盤『The Ancient Battle of The Invisible』(2012年、レビュー記事はこちら)にも参加していたゴ-ティエ・ガリーグである。

 録音エンジニア、Erwan Boulayの手による音質も最高で、特に解像度の高いウッド・ベースの音が実によく録れており、オーディオマニアも納得の1枚だろう。

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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