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Matt Slocum / Black Elk's Dream

1

Walter Smith III (ts on 1,2,6,9,10)
Dayna Stephens (ts on 3-5,7,9,11)
Gerald Clayton (p)
Massimo Biolcati (b)
Matt Slocum (ds)

Recorded: April 2013, at Tedesco Studios, NJ
Mixed and mastered: Michael Marciano (Chandra Records CHR8096)

ジェラルド・クレイトンの萌え立つピアノがおいしい

 ニューヨークの若手ドラマー&コンポーザー、マット・スローカムがリリースしたばかりの3rdリーダー作だ。当ブログのいち押し天才ピアニスト、ジェラルド・クレイトンの萌え立つようなプレイがすばらしい。彼のピアノを聴くためだけに買っても損はない1枚である。

 メンバーはスウェーデン人ベーシストのマッシモ・ビオルカティとクレイトン(p)、スローカム(ds)のリズムセクションに加え、曲に応じてウォルター・スミス3世(ts)とデイナ・スティーブンス(ts)が参加している。ちなみに彼ら5人は全員バークリー出身だ。

 スローカムは決して重たくならない軽やかなプレイが特徴のドラマーである。だがプレイヤーとしてだけでなく、コンポーザーとしても優れている。論より証拠、(パット・メセニーの「Is This America?」を除き)今回もすべてオリジナルの12曲で勝負している。アルバム・タイトルにある通り、ネイティヴ・アメリカンであるスー族のメディスンマン(呪医)、「ブラック・エルク」にインスパイアされた楽曲を揃えた。

 幕開けは、夜明けを想わせるゆったりした美メロのスローバラードだ。デキのいいコンポジションに早くもうっとりさせられる。一方、M-5では、哀愁のメロディを乗せたスピード感豊かな演奏が疾走する。全編にクレイトンの美しいピアノを散りばめ、要所をホーンで締める構成である。ほかにスローカムがスネアとタムのコンビネーションでリズミックなプレイをするM-2、のんびり陽気な4ビートのM-3、スミス3世がドラムとのデュエットでソロを取るM-6が印象に残った。

 スローカムのデビュー盤「Portraits」 (2009年、レヴュー記事はこちら)は本作のリズムセクションに加え、曲によっては同じホーン陣が加わる布陣だった。

 続くセカンド盤では、デビュー作からホーンを抜いたおいしいピアノトリオ編成に変えた。で、セカンド盤のレビューでは「クレイトンが生きるピアノトリオに変えて大正解だ」と書いたのだが、今回はM-8を除き全曲にホーン陣がまた復帰した。そのスミス3世とスティーブンスは抑えた演奏でチームプレイに徹している。

 結論として聴き物はやはりクレイトンのピアノである。M-1では、ソロ冒頭の1小節で必殺の美メロをかまし早くもわくわく。かと思えばM-2やM-5ではリズミカルなフレージングでノリのいいプレイを見せる。M-7のインプロもリリカルを絵に描いたようで圧倒的だ。まるでメロディの玉手箱である。クレイトンは自身のリーダー作では効果音モドキやヴォイスを入れるなど余計な小細工満載だが、ぜひ今後は本盤のように純粋なピアノ演奏だけで真っ向勝負するアルバム作りを期待したい。

 と、なんだかクレイトンのリーダー作みたいな書き方になってしまったが、スローカムのコンポジション+クレイトンのピアノが最大のキモなんだから仕方ない。テナーの2人は明らかに付け足しみたいになっているのが残念だ。彼らはあまりにも抑えたプレイぶりで何のためにいるのかよくわからない。ピアノトリオにすれば主役がはっきりするのだが、この編成では軸が見えないまま全員が遠慮し合ってなんとなくアルバムが終わってしまう。スローカムは作品作りを根本から見直す時期に来ているのかもしれない。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Matt Slocum / Portraits

1

Gerald Clayton (p on 2,4-9)
Massimo Biolcati (b)
Matt Slocum (ds)
Walter Smith III (ts on 1,3)
Dayna Stephens (ts on 6,8)
Jaleel Shaw (as on 6)

Rec. December 7, 2008, and January 13, 2009(tracks 1,3), at Peter Karl Studios, NY
Engineer: Michael Perez Cisneros (Chandra Records CHR8093)

ジェラルド・クレイトンのピアノに酔う

 ほとんどの曲でピアノを弾いているジェラルド・クレイトンが事実上の主役だ。陰影感に富む彼のピアノには本当にうっとりさせられる。

 一部の曲でウォルター・スミスⅢ (ts) とデイナ・スティーブンス (ts)、ジャリール・ショウ (as) が彩を添えているが、ピアノのクレイトンの存在感があまりにも突出しており、「なぜこれに管が入ってるの?」 てな気分にさせられるのはご愛嬌である。

 本盤が初リーダー作だったドラマーのマット・スローカムも反省したのか、次作のセカンド盤 「After the Storm」 (2011年、レヴュー記事はこちら) ではクレイトン中心に完全なピアノトリオ構成にしているのがおもしろい。

 さて主役のスローカムはドラマーとしては軽快なノリでツボを押えた地味めの人という印象だが、プレイヤーとしてだけでなくコンポーザーとしての能力も高い。

 1曲を除き8曲すべてがオリジナルだが、美メロなピアノトリオのM-2やM-5、M-7は秀逸だし、管とピアノが入り乱れるM-6のアレンジやメロディも印象的だ。音楽性が偏っておらず、本作は恐らくどんな好みの人が聴いても楽しめてしまうだろう点には感心する。

 特定の嗜好を追究した独自性や専門性にも一聴の価値があるが、こういう徹底的な普遍性をもつ作品というのもある意味すごい。スローカムはどうやら 「売れるもの」 を作る才があるようだ。本作がクレイトンのピアノに負うところが大きいのは事実だが、それ以前に楽曲がつまらなければこんなふうに楽しめる作品にはならない。楽曲の重要性を思い知らされる1枚だ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Matt Slocum / After the Storm

Matt_Slocum_After_the_Storm

Gerald Clayton (p)
Massimo Biolcati (b)
Matt Slocum (ds)

Rec. January 12-13, 2011, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Mike Marciano (Chandra Records CHR8095)

美メロ連発のリリカルな強力ピアノトリオ

 ニューヨークの若手ドラマー、マット・スローカムのセカンド・リーダー作だが、お目当てはピアノのジェラルド・クレイトンだ。リリカルで端麗な味わいを前面に出したピアノトリオである。どんな好みの人が聴いても、たぶん「いい」と言うだろう普遍性のある美しさがすごい。

 スローカムは2009年にデビュー作 「Portraits」 (レヴュー記事はこちら)をリリースしている。このときはクレイトンのピアノに加え、ウォルター・スミスⅢ (ts)、ジャリール・ショウ (as) など管も入った編成だった。そこからピアノトリオだけをおいしく抜き出したのがこの最新作だ。

 前作のスミスとショウもよかったが、ピアノトリオにして明らかに正解だろう。クレイトンの美メロが引き立つのはもちろん、トリオ編成にしたことで主役スローカムの繊細なドラミングも映えている。

叙情性と力強さを兼ね備えた打鍵感

 スローカムのオリジナルが6曲、その他3曲の計9曲。どれもデキがいいが、特に美メロの嵐なM-1とM-3、ノリのいいM-2、M-9、ベースのリフがかっこいいM-4が気に入った。録音はブルックリンのSystems Two Recording Studios、名手のマイク・マルシアーノがエンジニアを務めた。音質はとてもクリアで、立体感もあり満足度が高い。

 ピアノのジェラルド・クレイトンは、1984年オランダ・ユトレヒト生まれ。幼少時代にアメリカへ移住し、2006年のモンク・コンペで2位になっている。自身のレギュラートリオでは、ジョー・サンダース(b)とジャスティン・ブラウン(ds)という若手でピカイチのリズム隊が相棒だ。

 彼はいままでにデビュー作の「Two-Shade」(2009)、セカンドアルバム「Bond:The Paris Sessions」(2011)を発表している。どちらもおすすめだが、音楽的には断然後者を推したい。本盤はリーダー作ほど弾きまくりではないが、適度に抑えたこういうピアノも味がある。

 クレイトンは匂い立つようなリリカルな陰影感がちょっとケヴィン・ヘイズを思わせる。だが反面、ロバート・グラスパーのようなストレングス、パワフル感もある。リリカルで繊細でありながら、黒人ミュージシャン特有のアタック感と力強さが光る。美しいのに豪胆不敵、相反する要素を兼ね備えている。

 打鍵感に音の芯があり、力と美しさを併せ持つこういうピアニストって最近の人ではブラッド・メルドー以外ちょっと思い当たらない。ビル・エヴァンス~キース・ジャレット~フレッド・ハーシュ~マーク・コープランド~みたいな流れのリリカル&繊細タイプとはひと味違う。メルドー後はこの人で決まり、という感じだ。

テーマ : JAZZ
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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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