Andrew Rathbun Quartet / Number & Letters

1

Andrew Rathbun (ts, ss)
Phil Markowitz (p)
Jay Anderson (b)
Bill Stewart (ds)
Taylor Haskins (tp on 8,10)

Recorded: May 30, 2012
Engineer: Michael Marciano (SteepleChase SCCD31781)

先鋭性と躍動的なダイナミズムが同居したクールなNYコンテンポラリー

 ニューヨークを拠点に活動するカナダ出身のサックス奏者 / 作曲家、アンドルー・ラスバンがリリースしたばかりの最新リーダー作だ。曲調は4ビートと非4ビートが混在するクールなコンテンポラリー・ジャズ。練り上げられたコンポジションで、先鋭性と躍動的なダイナミズムがうまくブレンドされている。メロディー感は2000年頃のクリス・チークやマーク・ターナー、またちょっとローレン・スティルマンを思わせるゆらぎ感もある。
 
 テナーとソプラノを持ち替えるラスバンのサックス・プレイは変幻自在だ。最近の若手によくある温度感の低いプレイもすれば、ジョージ・ガゾーンばりの力強くアグレッシヴなソロも取る。参加プレーヤーのアドリブもとにかく熱く、緊張感いっぱいで手に汗握る。楽曲とインプロヴィゼーションがどちらも高水準でまとめられており、楽しめるおすすめ作品である。

 メンバー構成を見ると、まずキャリア40年を数える名ピアニスト、フィル・マーコウィッツの名が目を引く。彼は1978年から、当時充実期にあったチェット・ベイカーを支えてメジャー・デビューしたベテランだ。グラミー賞歴のあるボブ・ミンツァーやデイヴ・リーブマンとの共演でも知られる。本作参加ベーシストのジェイ・アンダーソンとは、ボブ・ミンツァー・ビッグバンドでの同僚である。

 一方、90年代から2000年代にかけ、NYの名だたるセッションを総なめにしたビル・スチュワート(ds)は言うに及ばず。また自身の作品でもラスバンと共演しているゲスト参加のテイラー・ハスキンス(tp)は、前衛的な音楽性で時代を切り開く個性派である。ベン・モンダー(g)、ベン・ストリート(b)らを起用し、サニーサイドやFSNTからリーダー作を5枚リリースしている。

 アルバム収録曲は全11曲。すべてオリジナルだ。計算されたコンポジションと楽想の豊かさに驚かされる。バラエティに富み引き出しが多い。ノリよくエネルギッシュに弾むナンバーもあれば、静かでアブストラクトなバラードもあり。静と動、陰と陽、クール&ホットなど相反する要素が全編に散りばめられている。

 特にシェイマス・ブレイクの傑作盤「Bellwether」(2008年録音、以下すべて録音年)を思わせる劇的な4ビートのM-1とM-7がいい。ほかに三拍子のゆらめきがミステリアスなM-2、マーコウィッツのピアノソロが圧倒的なM-3とM-5、静かな幕開けから後半アップテンポになりラスバンが爆発するM-4、マーク・コープランド風のピアノとソプラノのデュエットで始まる粛然としたM-6、津波のように激しい4ビートのM-9、ひらりひらりと踊るようなリズムでラスバンがスティルマン化するM-11が印象に残った。

 個々人のプレイでは、特にフィル・マーコウィッツのシリアスなピアノソロが痺れるくらいすばらしい。畳みかけるようなグルーヴとタイム感、テンションの高さに圧倒される。彼のインプロを聴くためだけに買っても損はない秀作だ。

典型的なコンポーザー志向である

 ラスバンは典型的なコンポーザー志向のミュージシャンだ。プレイはもちろん、自作楽曲も含めた作品トータルで自身を表現するアーチストである。

 FSNTデビューを飾った「Jade」(1998)や「True Stories」(2000)では、女性ボーカルを大胆にフィーチャーして意表をついた(この歌物がスティーリー・ダンみたいでまたイイのだ)。かと思えばインスト系ではスコット・リー(b)、ジェフ・ハーシュフィールド(ds)を従えたローレン・スティルマン・チックなサックス・トリオ作のほか、本盤のようにこれぞコンテンポラリーなかっこいいリーダー作を10枚以上リリースしている。

 特に本作が好みと感じた人には、FSNT発の「Sculptures」(2001)と「Days Before And After」(2004)、Steeple Chaseからリリースされている「The Idea Of North」(2008)をおすすめしておく。

 ラスバンはカナダ・トロント出身。1991年にボストンへの芸術留学資格を得て、ニューイングランド音楽院で学んだ。パット・ラバーベラやジョージ・ガゾーン、ジェリー・バーガンジーらに師事。ジョージ・コリガン(p)とジョン・エイベア(b)、ジェフ・ハーシュフィールド(ds)らを擁したリーダー作「Scatter Some Stones」(1998-99)でデビューした。
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