Nate Radley / Morphoses

1

Nate Radley (g)
Loren Stillman (as, ts)
Matt Pavolka (b)
Ted Poor (ds)

Recorded: May 9-10 and June 19, 2013, at Bunker Studios, NY
Engineer: John Davis (FSNT 452)

ビルフリ調のカントリー・フレイバー漂う最新作

 オープニングでいきなりビル・フリーゼルみたいな朗らかで開放的なナンバーが飛び出してびっくり。アルバム全体にカントリー・フレイバー漂う奇妙な明るさを散りばめ、新境地を開拓した問題作だ。ニューヨークの個性派ギタリスト、ネイト・ラドリーがリリースしたばかりの3rdリーダー作である。

 参加メンバーは盟友ローレン・スティルマン(as, ts)にマット・パヴォルカ(b)、テッド・プア(ds)と、気心の知れた顔ぶれが揃った。ちなみに主役のラドリーは、スティルマン率いるグループ「バッド・タッチ」のメンバーでもある。

 全9曲すべてラドリーのオリジナル。だが中身は過去作とちょいちがう。アコギを使ったキャッチーなメロディのM-4や、ロック的でノリのいい8ビートのM-5、おおらかで気持ちよいバラードのM-6など、屈折した作風だった今までの彼からは考えられないストレートな曲作りをしている。

 とはいえよく聴くと、たとえば明るく開けっ広げに聴こえるM-1も、中間部ではラドリーらしい翳りのあるコード進行がスパイスとして顔を出す。また憂いのある従来路線の曲もM-2~3、M-7~9と巧妙に散らしている。そんなわけで新・旧路線の楽曲が複雑に絡み合い、アルバム全体が陰と陽のないまぜになった不思議な空間を形成している。意表を突くリズムの変化と七色のコードワークで聴かせる点は相変わらずだ。

 こんなふうに細かく聴くと、楽曲の構成やメロディー&リズム・アレンジに驚くほど凝っているのがわかる。なかでも陰影感のあるメロディがのたうつM-2や、リズミックな導入部がおもしろいM-3、イントロのアコギと冒頭のメロディが鮮烈なM-4、サビがよくギターソロがかっこいいM-8あたりが強く印象に残る。

 振り返ればデビュー盤の「The Big Eyes」(2011年、レヴュー記事はこちら)、セカンド作「Carillon」(2013年、レヴュー記事はこちら)のどちらにも似ていないが、ただし散りばめられたエッセンスはどこか共通している、という不思議なバランスを保っている。

 この3作目で次はどこへ行くのか、見当もつかなくなったラドリーの今後に目が離せない。
スポンサーサイト

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Nate Radley / Carillon

1

Nate Radley (g)
Chris Cheek (ts)
Matt Clohesy (b)
Ted Poor (ds)

Recorded: January 2012
Mixing & Produced: Nils Winther (SteepleChase SCCD31758)

オンリー・ワンの個性で聴かせる七色ギター

 M-1のギターとペースのリズミックなコンビネーションを聴いただけで、既成のありふれたジャズではないことがすぐわかる。ローレン・スティルマン&バッド・タッチのメンバーでもあるギタリスト、ネイト・ラドリーがリリースした最新セカンド・リーダー作だ。

 アクロバチックな技巧派か? といえばまるで対極にある。むしろぎこちなく屈折した「味」で聴かせる個性派だ。ともすれば調子っぱずれなヘタうまに見えるオンリー・ワンのプレイスタイルが、好きな人にはたまらない。本作にはそんな彼の特異なキャラクターがみっちり詰まっている。

 サポートするメンバーはクリス・チーク(ts)にマット・クローシー(b)、テッド・プア(ds)とおいしいところが揃った。ニューヨークの「いま」が聴ける魅力の布陣である。

 先鋭的だった前作「The Big Eyes」(2011年、レヴュー記事はこちら)とくらべ、ナチュラルなトーンで楽曲も聴きやすい。オリジナル6曲のほかモンクの「Hornin'in」、スタンダードの「All through the Night」を取り上げていることからも、前作より 「やわらかく」 しようという意図が感じられる。狙いは成功だ。

 ただしそこはやはり先端派のネイト・ラドリー。オーソドックスな王道志向では決してない。既成曲もただやるのでなく、例えばモンク曲のイントロには現代的なかっこいいコードプレイを仕込んである。

 彼のギターの根底にはいつも「楽曲」がある。単にギターソロを聴かせるのでなく、常に楽曲構成をイメージした演奏をしている。またチークがソロを取っている時の彼のコードワークを聴くと、この人はバッキング時に最大限自分のよさを出すタイプなのだとわかる。

 例えばM-4はギターのみの独奏曲だ。こういうのは往々にしてテクニックを見せつけるだけの独りよがりなマスターベーションで、退屈なものと相場は決まっている。だがこの人の場合、バッキング仕事で培った巧みな音使いでリスナーを飽きさせない。むずかしいことは何もやっていないが、七色のフレージングと独特のセンスについ引き込まれてしまう。

 ニューヨークにはこんな個性のかたまりみたいなプレーヤーがひしめき合っているのだから、まったく恐ろしい。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Nate Radley / The Big Eyes

1

Nate Radley (g)
Loren Stillman (as)
Pete Rende (fender rhodes)
Matt Pavolka (b)
Ted Poor (ds)

Rec. September 21-22, 2010, at Exile Recording, NY
Engineer: Matt Marinelli (FSNT 395)

これぞブルックリン、奇妙な味の思索系ギタリスト

 不思議なメロディーとグルーヴが連鎖する催眠のような音の断片。物語性のあるテーマとリフが頻出する。そこにはどんなストーリーが隠されているのか? 頭で考えさせられる思索系の現代ジャズだ。ブルックリンを拠点に活動するギタリスト、ネイト・ラドリーの初リーダー作である。

 躍動感とは程遠い今にも止まりそうなグルーヴがぎくしゃく波打ち、いかにもブルックリンな先っぽ感を演出する。魂を抜かれたかのように無機的なギターとアルトがユニゾンでテーマを奏でたり、彷徨うようにソロを取る。非4ビートを中心に全9曲すべてオリジナル。クールに醒めたストイックなコンテンポラリー・ジャズだ。

 メンバーは、まずリー・コニッツを思わせるアルト奏者、ローレン・スティルマン。次にピアノのピート・レンディとベースのマット・パヴォルカは若手ドラマー、マーロン・ブロウデンのリーダー作 「Marlon Browden Trio」 (2001年、レヴュー記事はこちら)でも顔を合わせている。

 最後にドラマーはマイク・モレノの 「Another Way」 (2012年、レヴュー記事はこちら)にも参加していたテッド・プアだ。彼はため気味のバスドラとスネアで独特のグルーヴを生み出し、メリハリの利いたいいドラミングをしている。

 主役のラドリーはボストンのニューイングランド音楽院で学び、ジョン・アバークロンビーやボブ・ブルックマイヤーなどに師事。その後、ローレン・スティルマンのバンド 「バッド・タッチ」 に参加している。ちなみにテッド・プアやゲイリー・ヴァセイシなども 「バッド・タッチ」 のメンバーである。

 ラドリーは、パット・メセニーやギラッド・ヘクセルマンのようにうまくて速い華麗な王道系ギタリストとは対極に位置している。音をのったり置きに行くことで奇妙な味を醸し出す。ブラッド・シェピックあたりと同様、ハマるとクセになりそうな個性派ギタリストだ。ブルックリン、思索的、ストイックというキーワードにピンときた人にはおすすめである。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

プロフィール

松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

最新記事
カテゴリ
ブログ内検索
全記事一覧・表示リンク

全ての記事を表示する

月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
RSSリンクの表示
QRコード
QR