|Posted:2014/06/10 12:37|Category :
オーパス・ファイヴ|

Alex Sipiagin (tp, flh)
Seamus Blake (ts)
David Kikoski (p, fender rhodes)
Boris Kozlov (b)
Donald Edwards (ds)
Recorded: September 4, 2013, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Michael Marciano (Criss Cross 1369)
リズムの変化で聴かせるクールな新世代ハードバップ ハードバップを今風に料理したファースト盤、変拍子を多用したセカンド盤と1作ごとに作風を微妙に変えてきている5人組ユニット、「OPUS 5」のサードアルバムがお目見えした。とはいえハードバップをベースにリズムの変化で聴かせる基本路線は変わらない。今回はバップ色の濃い1枚目とアレンジに凝りまくった2枚目の中間くらいのテイストだ。前作ほどメカニカルでなく、往年のジャズが好きな人にも親しめるだろう。
メンバーは不動のスタメンだ。フロントはシェイマス・ブレイク(ts)とアレックス・シピアギン(tp)。リズムセクションはデヴィッド・キコスキ(p)にボリス・コズロフ(b)、ドナルド・エドワーズ(ds)がつとめる。オリジナル全7曲をメンバー全員で持ち寄った。
それにしても今回クリスクロスから同時リリースされた、派手でインパクトが強いジョナサン・ブレイクの「Gone, But Not Forgotten」 (2014年、レヴュー記事は
こちら)とまるで対照的な内容だ。ジョナサン盤が血気にはやるイケイケの若武者だとすれば、こっちは酸いも甘いも噛み分けた大人の渋さが漂う。一見、地味だが、演奏スタイルやリズムのアレンジに現代ジャズの蘊蓄がこれでもかと詰め込まれている。
演奏の温度感でいえば、(M-7を除き) 熱くノリノリになるのを意図的に狙って避けている。全員がクールに「10の力でぶっ叩くところを7で抑える」みたいな感じ。そのためゆったりくつろげる作品に仕上がっている。決して脂っこくならず、さっぱりサラダ味なところがNYコンテンポラリー的だ。
またなんとなく聴き流すと見落としてしまうのだが、本作には前作同様あちこちに細かい罠が仕掛けられている。宝探しでもするつもりで分析的に聴いてみると、未来のジャズってこうなのかなと思えてくる。
リズムがめまぐるしく変わった前作ほどトリッキーではないが、よく聴けば今回も迷路のように入り組んでいる。バックビートや7拍子、6拍子など散りばめたリズムのバリエーションや複雑なキメが相変わらず刺激的だ。同じようにハードバピッシュな4ビートをやっても、往年のジャズとはどこかちがう異彩を放っているのもそのあたりが原因だろう。
ただし本盤のよさは難しいことをやりながらこれ見よがしにならず、オブラートにくるんでやさしく見せているところだ。だから何気なく見逃してしまいそうな仕掛けの数々がいつのまにかサブリミナルのように効いてくる。ゆえに聴けば聴くほど旨みが出る。何度聴いても飽きがこない。このへんも、ストレートに力で勝負しているぶんパッと聴いただけで「すごくいい!」と感じさせる(が飽きるのも早い)ジョナサン盤と好対照だ。
50年代のハードバップはそろそろ卒業したい。だけど最近のジャズはとんがりすぎててちょっとなぁ……。そんな人にはちょうどいいあんばいでハマりそう。頭でっかちにならず、ふかふかのソファにどっかとめり込み、のんびりリラックスして楽しみたい。
テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽