JD Allen / Grace

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JD Allen (ts)
Eldar Djangirov (p)
Dezron Douglas (b)
Jonathan Barber (ds)

Rec. February 20, 2012, at Tedesco Studios, NJ
Engineer: Tom Tedesco (Savant Records SCD2130)

気だるいフリー色を漂わせるアレンの新境地

 3作目の 「I Am I Am」 (2008) から前作 「Matador & The Bull」 (2012) まで、4作続けて不動のサックス・トリオを組んでいたJD アレン。その彼がついにレギュラートリオを解体し、20008年グラミー賞にもノミネートされた若き天才ピアニスト、エルダー・ジャンギロフを迎え新メンバーで発表したばかりの最新作だ。

 アレンは大好きなプレイヤーだが、さすがにコードレスのトリオ作品が4作も続くと飽きがくる。そこに今回トリオを解散し、コード楽器 (ピアノ) を入れて路線変更したというので飛びついた。結果は大当たり。私好みの妖しい音が出迎えてくれた。フリーすれすれのスリリングな演奏が詰まった好盤だ。

 前作 「Matador & The Bull」 でもフリーの予兆はあったが、今回はメンバーも変えて新コンセプトでスッキリ出直したいということだろう。集まったのはエルダー・ジャンギロフ (p) に、リーダー作も3作ある若手のデズロン・ダグラス (b)、ジョナサン・バーバー (ds) だ。ピアニストのエルダーは、1987年キルギス共和国生まれ。弱冠18才のとき3枚目のリーダー作 「Eldar」 (2005) でメジャーデビューした。今年3月には8枚目になるリーダー作 「Breakthrough」 を発表している。

 全11曲、すべてオリジナル。全編フリーっぽくはあるが、60~70年代の力まかせにドシャメシャやるフリーじゃない。バンド全体がまったく力まず、むしろ完全に脱力してゆらゆら漂うような演奏をしているのがおもしろい。エルダーのピアノもリーダー作での華麗な指使いとまるで異なり、「えっ、こういうのも弾けるんですか?」 という感じだ。新境地開拓である。緊張感いっぱいの中、子守唄みたいなメロディーのM-10にはなごまされる。

 アレンはもともとアンドリュー・ヒルにもインスパイアされているし、セカンド・リーダー作の 「Pharoah's Children」 (2002年、レヴュー記事はこちら) でも、フリー的な曲をやっていた。ゆえに今回はまったくの想定外でもない。だがそれにしてもアルバム冒頭からラストまで 「それ一色」 とは恐れ入った。

 ぶっちゃけ似たような楽曲が続くのだが、まったく飽きずに聴き続けられる。呆けたように醒めた演奏が今っぽい。個人的には今までレギュラーメンバーだったルディ・ロイストン (ds) を手放したのが惜しいが、まあこれをやるなら納得も行く。ロイストンのメリハリの利いたはっきりしたドラミングはこういうのには合わないだろう。

 さて、ちょっと気が早いが、次回作はいったいどうなるのか? この路線を続けるのか、それともまた新機軸を打ち出すのか。なんだかアレンから目が離せなくなってきた。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

J.D.Allen / Pharoah's Children

J.D.Allen / Pharoah's Children 

J.D. Allen (ts)
Jeremy Pelt (tp,on 1,3,11)
Orrin Evans (p)
Eric Revis (b)
Gene Jackson (ds)

Rec.December 18, 2001, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Max Bolleman (Criss Cross 1221)

浮遊する脱力系テナーの味わい

 ジェレミー・ペルトのグループで聴ける脱力系のプレイが印象的なテナー奏者、J.D.アレンのセカンド・リーダー作である。(2002年リリース)

 デビューアルバムの「In Search Of 」(1998)はコルトレーン丸出しで熱く60年代していたが、こちらは打って変わって現代的だ。クールで力まない思索的なジャズをやっている。

 アレンのオリジナルが10曲、参加ベーシストのエリック・レヴィス曲が1曲の計11曲。無機的でクールな4ビートのM-1に、謎めいたバラードのM-5、遊びを利かせたリズムが面白いM-6、とぼけたテイストのM-7、テーマが耳に残る4ビートのM-10がツボにきた。

 奇妙に明るいメカニカルなメロディと浮遊するリズムが、ブイブイ言わせてた頃のマーク・ターナーやカート・ローゼンウィンケルを思わせる。だがその一方で60年代のアンドリュー・ヒル、ウェイン・ショーター的でもある。往年のBN新主流派と現代のNYコンテンポラリーな人たちってやっぱり繋がってるんだなぁ、と再認識させられるアルバムだ。

 妖しいM-2やフリー寄りのM-4あたりは取っつきにくいが、それでも繰り返し聴くうちに気持ちよくなってくる。典型的な麻薬盤である。

 そうとは知らず試聴時にM-1を聴き「カッコイイ!」と即買いしたが、M-1的な曲がズラリ並んでいるとばかり思っていたので、アルバムを通して聴いたら「なんじゃこりゃ?」。で、しばらく放置していたが、懲りずにまた聴くと今度は「えっ? こんなによかったっけ?」。以後すっかりカラダに馴染み、聴けば聴くほど味が出るスルメと化した。

 アレンは目下、メンバーを完全固定した自己のサックス・トリオで「I AM I AM」(2008)、「SHINE!」(2009)、「VICTORY!」(2011)と作品を連発している。ジャズでメンバー固定は珍しいし、ピアノレスのサックストリオでひたすら押しまくるというのも異例だ。個人的には、ふつうにワンホーンカルテットくらいでM-1、M-7、M-10あたりの路線をやってほしいが……きっと変わった人なんだろうな。大好きです、そういう人。

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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