Lage Lund / Unlikely Stories

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Lage Lund (g)
Edward Simon (p)
Ben Street (b)
Bill Stewart (ds)

Recorded: November 5, 2009, at Systems Two Recording Studio, ,NY
Engineer: Michael Marciano (Criss Cross 1321)

ヒリヒリするような緊張感と冷たい殺気が圧倒する

 2005年モンク・コンペで優勝したノルウェー出身のギタリスト、ラーゲ・ルンドが2010年にリリースしたCriss Crossレーベル2作目だ。ノルウェーの厳しい冬を音にしたかのような寒色系のひんやり冷たい肌触り。荒涼としたモノクロームの世界に、凄まじい勢いで速射砲のように無機的なフレーズが繰り出される。メカニカルなマシンっぽい音使いを武器に、スタンダードが象徴する温和なジャズから最も遠い地点に到達したスリリングな問題作。初の全10曲オリジナルで、強烈に 「自分」 をアピールしたアルバムである。

 メンバーは主役のルンドにエドワード・サイモン(p)、リズム隊は売れっ子のベン・ストリート(b)とビル・スチュワート(ds)。ピアノのエドワードが、アーロン・パークスを思わせる華麗なプレイで実に効果的なバッキング&ソロを取っている。自身のリーダー作も含め、彼のベストワークではないだろうか。明らかに彼のプレイが楽曲に緻密さを与え、一段上のものに仕上げている。ルンドのオリジナル作品では、ピアノがカギを握っていると思わせるゆえんだ。

 主役のルンドは正確なピッキングとクールな音使いで押しまくる。ひところ漂わせていたカート・ローゼンウィンケル臭が消え、本作でははっきり独自のオリジナリティを打ち出している。こんな氷のように冷たいギターを弾くギタリストはほかにいない。

 かたやビル・スチュワートのプレイにも目を見張らされる。細やかなシンバルワークと変幻自在の弾むドラミングで楽曲に山あり谷ありの流れを作って行く。同じルンドのCriss Cross 3作目 「Foolhardy」 (2013年、レヴュー記事はこちら) や、先日リリースされた最新作 「Idlewild」 (2015年、レヴュー記事はこちら) でもビルはレコーディングに呼ばれている。よほどルンドの信頼が厚いのだろう。

 さて実はこのアルバム、リリース当時に聴いていた頃はリスナーを拒絶するかのような緊張感について行けず、聴き疲れして及び腰だった。逆に暖かみのあるスタンダードも交えて構成したCriss Crossデビュー作 「Early Songs」 (2008年) のほうが馴染みやすく、作品として上だと思っていた。

 だが本作を聴き込むうちにハードルの高さが消え、だんだんカラダに馴染むようになった。耳障りと感じていた神経質でクールすぎる音使いが逆に気持ちよくなり、アルバムとしての難解さが頭の中でほぐれて行った。そんなわけで今では彼の最高傑作のひとつと認識している。メンバー個々のプレイもすばらしいが、精巧に作り込まれたアレンジにもぜひ注目してほしい。

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Lage Lund / Idlewild

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Lage Lund (g)
Ben Street (b)
Bill Stewart (ds)

Recorded: November 6, 2014, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Michael Marciano (Criss Cross 1376)

トリオ編成で往年の名曲にチャレンジした一作

 リリース前から 「えっ? トリオで大丈夫だろうか。間が持つのだろうか?」 などと心配していたが半分は当たり、半分は取り越し苦労だった。ルンドはときどきとんでもないハズし方をするのでひやひやする。どうもデキの悪い子供を心配する親のような気分だ。

 結論から先にいえば、本作は以下に説明する何点かで明らかに損をしている。だがそれでも駄作とまではいえず、とはいえ傑作かといえばそれもまた違う微妙なラインに位置している。 (おそらくピアニストを呼び、しっかりアレンジして演ればデキは見違えるのだろう)

 実際、水の中に潜って海底から水面を眺めているような面白い楽想のM-1を聴き、 「惜しいな」 と思った。もしこれがピアノ入りだったなら──いや、 「たられば」 は無しにしよう。

 さて本盤は若手ギタリスト、ラーゲ・ルンドがクリスクロス・レーベルから発表したばかりの最新作だ。彼のクリスクロス第2作だった 「Unlikely Stories」 (2010年、レヴュー記事はこちら)、およびレーベル第3作 「Foolhardy」 (2013年、レヴュー記事はこちら) の編成から、ピアニストだけを除いた同じメンバー、すなわちベン・ストリート(b)とビル・スチュワート(ds)との組み合わせだ。つまりギタートリオである。

 ルンドはいかにも北欧ノルウェー出身らしく、氷のように冷たい音色が特徴だ。プレイ時の音使いやオリジナル楽曲のテイストもそうで、故国ノルウェーの厳しい自然のようにピリピリと緊張感の高い音をリスナーに突きつける。暖かみがあり、ゆったりくつろげる大らかな音とはまるで正反対に位置している。

 で、ギタートリオとなると当然このキツい音色をアルバム1枚通して聴き続けることになる。するとどうしても耳に飽きがきてしまうし、なによりこのシビアな音を聴くために緊張感を持続させ続けることになり、神経がちと疲れる。

 すなわち、どうしても箸休めとしてピアノの音が聴きたくなる。加えて緻密なアレンジを身上とする彼の作風からいってもピアノは外せない。まずこの点がトリオ編成である本盤の損している第一のポイントだ。

 第二に、楽曲構成の問題がある。本作はルンドのオリジナル4曲のほか、コルトレーンの 「Straight Street」、ケニー・カークランドの 「Chance」 などジャズメンオリジナル、スタンダードを含む合計12曲だ。つまりオリジナルは4曲しかない。

 しかもたった4曲のオリジナルのうち、半分の2曲 (M-2とM-8) はそれぞれ 「Intro to~」 と題された次曲のための 「導入部」 であり、まとまったオリジナル曲は実質M-1と最終曲の2曲しかない。本作はそのなけなしのオリジナル2曲をオープニングと最後に配し、申し訳程度に形を整えて出来上がっている。うがった見方をすれば、実はルンドは今回レコーディングできる体勢にはなかったんじゃないか? とすら思えてしまう。

 往年のジャズメンオリジナルやスタンダードを聴くなら、別にルンドでなくていい。往年の名盤を引っ張り出して聴けばいい。

 ほかでもない若手のルンドを聴く理由は、彼の手による最新のオリジナル作品を聴きたいからである。彼の能力を傾注したオリジナル楽曲を聴き、彼にしかない感性や才能のシャワーを浴びたいからだ。その意味で本盤は既成曲を中心に構成されている時点で、かなり興味が半減してしまう。

 結論としてこのアルバムは往年の名曲集としては聴けるが傑作かといえばそれもまた違うし、という微妙な位置に置かれている。さて、ピアノ入りでオリジナル楽曲中心の次回作に期待しよう。

(追記)

 結局その後、なんだかんだいって今回クリスクロスからリリースされた作品群の中では、本盤の再生率がいちばん高い (なんのこっちゃ)。で、気づいたのだがどうやらルンドは、2014年2月10日に録音されたヨッケン・リュッカート作品 『We Make The Rules』 (レヴュー記事はこちら) でのプレイあたりから、スタイルを変えたようだ。以前の 「寒冷地仕様」 の冷たくピリピリ耳に刺さる音使いがややマイルドになっている。ファンにとってはそのへんの違いも聴き物だろう。

 またトリオならではの空間を生かし、ビル・スチュワートがいろんな小技を投入してるのも面白い。特にシンバルワークがいい。オリジナル楽曲希望は相変わらずだが、まあこういうのもたまにはいいか。

テーマ : JAZZ
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Lage Lund / Foolhardy

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Lage Lund (g)
Aaron Parks (p)
Ben Street (b)
Bill Stewart (ds)

Rec. January 22, 2013, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Michael Marciano (Criss Cross 1360)

ルンドが放つ 「Early Songs」 (2008) 以来の傑作

 NYで活動するノルウェー出身の売れっ子ギタリスト、ラーゲ・ルンドが、クリスクロスから発表したばかりのレーベル3作目だ。ほどよい緊張感とクールな肌触りにゾクゾクさせられる。ルンドはもちろん、彼と相性バツグンのアーロン・パークス (p) が冴えまくりだ。ルンドがクリスクロス・デビューを飾った 「Early Songs」 (2008) 以来の傑作である。

 いかにもNYコンテンポラリー最先端のトンがった音が聴ける。温度感が低く、シーンと静まり返った涼やかさがある。張り詰めたテンションが心地いい。「大らかさ」 とか 「躍動感」 とはまるで対極にある音作りである。そのため少し神経を使うが、そのぶん知的好奇心を刺激される。氷がひんやり背筋を伝うようなスリルを味わえる。

 メンバーは2006年モンク・コンペ優勝者のパークス (p) のほか、ベースにはベン・ストリートを据えた。彼は1991年にNYへ進出し、カート・ローゼンウィンケルの「The Enemies of Energy」 (2000)、「The Next Step」 (同)に参加し一躍注目を集めた。以来、2000年以降、スタジオワークで引っ張りだこになっている。

 一方、ドラマーは説明するまでもなく、90年代~2000年代にかけ一時代を築いたビル・スチュワートである。鉄壁の布陣だ。すなわちルンドのクリスクロス2作目 「Unlikely Stories」 (2010、レヴュー記事はこちら) のメンバーから、エドワード・サイモン (p) だけをパークスに差し替えたおいしい顔ぶれである。

 自身のオリジナル6曲に加え、D. Rose 「Holiday for Strings」、R. Carter 「Keystone」、Altman-Lawrence 「All or Nothing at All」 の合計9曲。冒頭からM-6までオリジナルを並べ、後半のM-7~9を既成曲で構成している。M-6までのオリジナルは突き放したような冷たさが魅力だ。一方、後半のオーソドックスな既成曲になると、ぐっと暖かく有機的な色彩感が強まる。リスナーによっては 「後半のほうが好みだ」 という人もいるかもしれない。

 まずM-1とM-2はいきなりパークスのピアノがすごい。この2曲はクリスクロスでの前作 「Unlikely Stories」 と、いい意味で無機的な質感が近い。M-3とM-5はバラードだが、キャッチーで美しいメロディなどカケラもない。硬派な作りだ。

 M-3の冒頭はルバートのギター独奏で幕を開ける。リズムセクションが入ったあともインテンポからルバートになりかけるような物憂いリズムだ。だが往年の古いジャズが持つウォームな物憂さとは明らかに違う。クールな音使いをしている点が新しい。この曲もパークスのピアノがすばらしい。

 M-4は一転して機敏なノリ。頭のキメが終わると、またもパークスの必殺のピアノが始まる。うーん、痺れる。M-5は気だるいリズムと中性的なギターが味わい深い。ふとした瞬間にブルージーな音が顔を出すなど意外性がある。

 M-6はミディアム・テンポの曲だ。ふたたびギターの物憂いメロディにわくわくさせられる。ベン・ストリートの雰囲気のいいベースソロも聴ける。残るM-7~9はリラックスできる既成曲で固めた。前半の尖ったオリジナルが放つピリピリ感から開放され、ゆったり箸休めできる構成になっている。

 2005年モンク・コンペで優勝しているルンドは、サイド参加作では無数のすばらしい仕事をしている。だがリーダー作であまりいい作品を残してなかった。たとえばクリスクロス2作目の 「Unlikely Stories」 は、聴き手を拒絶するかのようなメカニカルな冷たさと緊張感が強すぎ聴き疲れた。だがクリスクロス1作目の傑作 「Early Songs」 と同様、本アルバムにはそれらの要素がちょうどいいあんばいで配合されている。やっとルンドが本気で 「2枚目の本物」 を作った感じだ。

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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