Hubert Nuss / Feed the Birds

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Hubert Nuss (p)
John Goldsby (b)
John Riley (ds)

Rec. February 19-20, 2005, at Pirouet Tonstudio, Munich
Engineer: Jason Seizer (Pirouet PIT3014)

ピリ辛混じりのドイツ式ピアノトリオはいかが?

 大海原を漂うようなゆったりしたテンポで幕が開く1曲目に、この人の持ち味が凝縮されている。少ない音数で1音の響きを生かす妙演にうっとり。正直、この曲だけでお腹いっぱいだ。ドイツ人ピアニスト、ヒューベルト・ヌッスの3枚目のリーダー作である。

 ヌッスは1964年生まれ。コローニュ音楽院で現代音楽の作曲家、オリヴィエ・メシアンの楽理を学んだ。そのせいかプレイがジャズ離れしている。不協和音ぽい音を交えながら綱渡りのような際どい演奏をするのが流儀だ。

 ところが本作の様子はちがう。難解になりがちなオリジナルを4曲に抑え、そのぶんメロディーの美しい既成曲を集めた。ヌッスの作品の中ではいちばん親しみやすいアルバムだ。特にM-3の 「What's New」 などは目いっぱいリラックスしており、左手による禁断の和声を封じ、彼にしてはかなりオーソドックスな演奏をしている。

 だがそこは辛口の異端派らしく、ただでは終わらせない。M-2は冒頭のわかりやすい美メロが彼っぽくなく 「おや?」 と思わせるが、すぐにパターンを崩して自分の世界へ持って行ってしまう。M-4の不安を煽るような妖しい音使いもヌッスらしい。

 とはいえ全体としてはやはり原曲の美しさが支配的な内容になっており、スタンダードをやるとこの人でもこう変わるのか、という感じ。これから彼の作品を聴こうという入門編にはぴったりかもしれない。くつろげます。

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『Hubert Nuss / The Book of Colours』
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Hubert Nuss / The Book of Colours

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Hubert Nuss (p)
John Goldsby (b)
John Riley (ds)

Rec. November 27, 2008, at Topaz Audio Studios, Koln
Engineer: Reinhard Kobialka (Pirouet PIT3051)

ポスト・コープランド、静寂をあやつる異端のドイツ人ピアニスト

 ドイツ人ピアニスト、ヒューベルト・ヌッスは沈黙の支配者だ。彼の作品からは静寂が聴こえてくる。彼以上に「静謐」という言葉が似合うピアニストはいない。

 あきれるほど間を取り、性急に音を詰め込まない。尾を引くように響く1音の余韻を生かして音楽を創造する。音が消え入るその間際、音が死ぬ瞬間の刹那を大事にしている。このタイム感はマーク・コープランドに近い。

 本盤は彼の4枚目に当たる最新リーダー作だ。メンバーや編成はいつもと同じピアノトリオだが、ヌッスのそんな特徴がよく表れている。過去作のなかで最も静けさが漂う作品だ。ボサノヴァ調で彼にしては珍しく明るいM-2や、速いテンポのM-4でも音符を畳み掛けるような気配はない。むしろ音を開放し、野に放った響きが自然に作るハーモニーを楽しんでいるかのようだ。

 特にM-2はノリのいいボサノヴァであるにもかかわらず、これ見よがしの流麗なソロを取るわけでもない。一貫して雰囲気のあるコードを全編に散りばめることに腐心している。こういうストイックさには痺れてしまう。コードを主体にしながら要所にメロディを散りばめる独特の手法は、彼のトレードマークである。

 そうした抑制の美学はアルバム構成にもあらわれている。Pirouet Recordsからの2作目に当たる本盤には、色彩 (Colour) をテーマにオリジナル全16曲がずらりと並ぶ。スタンダードを一部取り上げたやや甘めの前作 「Feed the Birds」 (2005) と異なり、「聴きやすさ」 のようなものからははるかに遠い徹底した辛口の作りをしている。聴き手を突き放した超然性が潔い。疑いなく彼の最高傑作である。

 ヌッスは1964年生まれ。8歳でクラシックピアノを始めた。デビュー作 「The Shimmering Colours of the Stained Glass」 (1998) 以来、リーダー作では頑なにトリオ編成にこだわり続けている。ECMに多くの録音を残しているイギリス・マンチェスター出身のジャズピアニスト、ジョン・テイラーに師事したが、作風はむしろ現代音楽の作曲家であるフランス人オリヴィエ・メシアンの影響が濃い。本作に封入された和声が放つジャズ離れした異端性もそんなところにある。

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松岡美樹

Author:松岡美樹
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