Danny Grissett / The In-Between

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Danny Grissett (p)
Walter Smith lll (ts)
Vicente Archer (b)
Bill Stewart (ds)

Recorded: April 29, 2015, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Michael Marciano (Criss Cross 1382)

コンテンポラリー・ジャズへ舵を切った最高傑作

 クリスクロスから5作目になるダニー・グリセットの新譜がお目見えした。アルバム10曲中、5
曲を占めるオリジナル曲では過去のピアノトリオ作と異なり完全にコンテンポラリー・ジャズへと路線変更しており、渋めだが自身最高傑作といっていいデキだ。元気に弾けまくるビル・スチュワート(ds)との白熱のバトルも熱い、熱い。

 本作はウォルター・スミス3世(ts)をフィーチャーしたワンホーン・カルテットである。リズム隊にはグリセットの過去すべての作品でベースを弾いているヴィセンテ・アーチャーと、90年代終わりから2000年代にかけ一斉を風靡したビル・スチュワートが参加している。特に今作でのビルは圧倒的といっていいほどエネルギッシュに叩きまくっており、相変わらずパターン豊富な「ワザのデパート」ぶりを披露している。

 本作での彼のドラミングは、過去に参加したジョン・スコフィールド(g)のライブ盤「EnRoute」(2004年)やシェイマス・ブレイク(ts)の名盤「Bellwether」(2009年)で披露していた彼のベストプレイをも凌ぐか? という快演ぶりだ。この軽快なドラミングを聴いてるだけで楽しくなってしまう。

 さて本題のアルバムだが、前半を目玉のオリジナル曲で固め、後半にはキラ星のごとく輝くスタンダードとジャズメン・オリジナルの名曲を配した構成になっている。クリスクロス盤ではよく見かけるバランスを考えた構成の仕方だ。前半のオリジナル群がやや重苦しい曲調のため、後半に来て明るいスタンダードでホッとひと息、という趣向である。

 特に3曲めにもってきた、いかにもジョー・ヘンダーソンらしい明るく弾ける「The Kicker」(1967年)がよく効いている。またオリジナル曲がすべて終わった直後の7曲めに収録してあるヘンリー・マンシーニの名バラード「Dreamsville」が、これまた息が止まりそうになるほど美しい。こんなふうにオリジナルと既成曲をうまく組み合わせたプロデュースが実にうまい。

 肝心のオリジナル曲は過去作とくらべ飛び切りコンテンポラリー度がアップしており、好きな人は好きだがダメな人は……という曲調。かくゆう私も最初はとっつきにくかったが、1ヶ月かけてじっくり聴き込んだらじんわり良さが滲み出てきた。パッと聴きで捨ててしまわず、カラダに馴染むまで聴き続けるのがコツだ。典型的な「噛めば噛むほど」のスルメ度満点なラインナップである。

 グリセットのプレイはオリジナル曲ではキレよくスピード感にあふれ行きまくりだが、個人的には7曲めや10曲めみたいに波間を漂うような弱音を生かしたバラード・プレイももっと聴きたかった。彼のバラード・プレイは本当に最高なのだ。まあ、そのへんは次回のお楽しみにしておこうか。

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Danny Grissett / Stride

1

Danny Grissett (p)
Vicente Archer (b)
Marcus Gilmore (ds)

Rec. January 17, 2011, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Michael Marciano (Criss Cross 1337)

熱くならない抑制の効いた現代ピアノ・トリオ

 ダニー・グリセットのリーダー作の中で最も賛否の分かれそうな最新作だが、個人的にはいちばん面白みを感じる。ひとことでいえば端整でクールな作品だ。

 それまで熱く躍動するふつうのピアノ・トリオをやっていたグリセットが、3管セクステットに挑んだ前作 「Form」 (2009) あたりで 「今までとちがうことをやろう」 と考え始めたのだろう。で、今回はレギュラートリオのドラマーを熱血系のケンドリック・スコットから屈折系のマーカス・ギルモアに替え、淡々と熱くならない抑制の効いた現代的なピアノ・トリオをやっている。

 グリセットは王道路線だった過去のリーダー作もよかったが、サイド参加しているジェレミー・ペルト・グループでの漂うような気だるいプレイが気に入っていたので本作はタイムリーだった。

 全8曲中オリジナルは3曲と少ないが、他人の楽曲もアルバム・コンセプトに合わせてうまく消化している。ショパンの曲まであるが本作のテイストに馴染んでおり、まったく違和感はない。パッと聴いてすぐ 「いい!」 と感じるキャッチーなアルバムとちがい、こういう玄妙な作品は聴けば聴くほど味が出る。

 それにしてもマーカス・ギルモアの繊細で細やかなドラミングにはうっとりさせられる。音数は多いがそれがまったく嫌味にならず、うるさく感じさせない。アタック感が軽やかで耳に障らず、1打1打に微妙な抑揚をつけて変化を持たせている。

 かたやヴィセンテ・アーチャーのベースは音の太さとノリ、音色が理想に近く文句なし。本作は 「熱くハジけるふつうのジャズには飽きたなぁ」 という人にはうまくハマるかもしれない。

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ジャンル : 音楽

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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