スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Mark Copland / Poetic Motion

Mark Copland  Poetic Motion

Marc Copland (piano)

Rec. October 24-25, 2001, at Studio La Buissonne, Pernes les Fontaines
Engineer: Gerard de Haro (Sketch SKE 333020)

ささくれ立った人間の不安を音にしたような

 ポップさを排除した芸術性の高いソロピアノ作品だ。ささくれ立った人間の不安を音にしたようなアルバムである。同じコープランドのソロピアノでも、美しさを前面に出した 「Alone」 (2009) や 「Time Within Time」 (2005) とはかなり雰囲気がちがう。

 あの傑作 「Hunted Heart」 (2002) の妖しさたっぷり (録音も同じ2001年)。冒頭から独特の危ない音使いが連続する。ぶっちゃけ暗いがただの陰鬱に陥らず、人間のダークなイマジネーションを掻き立てるような哲学作品として成立している。

 コープランドは 「何もない空間」 をたっぷり背負って演奏するほどによさが出る。おいしいです。
スポンサーサイト

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Mark Copland / Alone

Mark Copland  Alone

Mark Copland (p)

Rec. November 21, 2008, at Pirouet Studio, Munich
Engineer: Jason Seizer (Pirouet Records PIT3044)

余韻を生かした漂うようなソロピアノ集

 ひねりをきかせた同じコープランドのソロピアノ作品「Poetic Motion」 (2001) とは対照的に、のっけから極めて美しいストレートな演奏が続く。

「Poetic Motion」が儚いガラス細工の脆さを味わうようなセンシティブな作品だとすれば、本作はM-1からファンおなじみの楽曲が次々登場し、美しさを割にまっすぐ表現している。屈折した音作りの「Poetic Motion」より聴きやすい。(ただしどっちがいい悪いの問題ではない)

 オリジナル3曲のほか、ジョニ・ミッチェルの3曲 (「I Don't Know Where I Stand」、「Rainy Night House」、「Michael From Mountain」)、ウェイン・ショーターの「Fall」ほか計10曲。

 冒頭から美メロの楽曲が続くが、M-4まで来て初めてアルバム 「Hunted Heart」 (2002) で見せたような、得体の知れない不安を体現した妖しい世界観が提示される。

 コープランドは (彼にしては) オーソドックスに美しさをアピールするタイプの演奏と、それとは対照的に触れると壊れそうなナイーブで妖しい音使いの演奏を使い分ける。陰と陽だ。そのカテゴライズでいえば、本作の中ではM-4とM-6、M-7、M-8が後者、つまり 「不安」 系に当たる。

 M-1の 「Soul Eyes」 はアルバム「Hunted Heart」 (2002) でも取り上げられたマル・ウォルドロンの曲だ。またジョニの M-2 「I Don't Know Where I Stand」 は 「Some More Love Songs」 (2012) に収録されているし、M-3 「Night Whispers」 は2008年リリースの同名アルバムで、さらにM-5の「Rainy Night House」 は 「Some Love Songs」 (2005) でもクレジットされている。こんなふうに本盤はダブリが多い。

 その意味ではこのアルバムは、過去に一度演奏した曲をソロ演奏で見つめ直そう、という意味が込められているのかもしれない。

 もちろんコープランド・マニアとすれば演奏形態の違う同じ曲が聴けて楽しめるが、ひょっとしたらマニア以外の一般ピープルの中には 「曲がだぶって損だ」 と感じる人がいるかもしれない。とはいえ演奏内容は、そんなケチな話とはまったく関係ないすばらしさだ。

 何もない虚無の空間をひとりで背負ったコープランドが、何者にも邪魔されることなく自分の間合いで音の創造を繰り返す。

 コープランドに共演者なんていらない――。

 自己完結した彼の圧倒的なソロ演奏を聴くと、思わずそんな気にさせられる。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Marc Copland / Some More Love Songs

Some_More_Love_Songs.jpg

Marc Copland (p)
Drew Gress (b)
Jochen Rueckert (ds)

Rec. October 12-13, 2010, at Pirouet Studio, Munich
Engineer: Jason Seizer (Pirouet PIT3062)

カヴァーを自分色に読み替える魔術師ぶりは健在だ

 コープランドは独自の体内時計を持ち、そのフィルターを通して他人の曲を一瞬にして自らの間合いに読み替えてしまう。そんな独特の文法を持っている。

 本作でもその魔術師ぶりは相変わらずだ。発売されたばかりの最新作だが、全7曲中、彼のオリジナルは1曲のみ。ジョニ・ミッチェル曲、ロン・カーター曲、スタンダード等がずらり並ぶが、どれもオリジナル曲であるかのように妖しく光る自分色に塗り替えている。

 タイトルを見ればわかる通り、本作は2005年にリリースされた彼のヒット作「Some Love Songs」の続編的な位置づけだ。前回同様、愛をテーマに構成されている。なるほど確かに優しくリラックスできる音である。参加メンバーも前回と同じく、ベースがドリュー・グレス、ドラムスがヨッケン・リュッカートの必勝体制だ。

 前作の「Some Love Songs」は、適度にコマーシャルで適度に妖しかった。名作のNew York Trio Recordingsシリーズとくらべポップだし、傑作「Haunted Heart」ほどの底知れなさはなかったが、あの「ほどほど感」がヒットの理由なのだろう。そのパート2を出してきたのだから、今度も「売ろう」ということだ。

 そんな視点から見れば、本作はいかにも穴がない。そつなくプロ的に仕上げている。3人のインタープレイもマニアックにならない程度に収め、明らかに最大公約数を狙う音作りをしている。個人的にはもう少しコープランド的な異界を垣間見せられるような刺激がほしい気もするが、セールスを考えればまあこういう線に落ち着くのだろう。

 プロはたとえインスピレーションが湧かない時でも、蓄積したノウハウと技術を駆使して常に80点以上の作品を作れる。それが90点のときもあれば120点の回もあるが、常に80点以上であることに変わりない。コープランドがそんなアルバム制作の経験を生かし、うまくまとめた。変哲もないが、でも水準以上。そんな印象の好アルバムだ。

(追記) 2012年6月20日付

 しばらく聴き込むにつれ、じわじわと味が出てきた。いまやかなりヘビーローテーション化している。「変哲もない」というのは前言撤回。これは「Some Love Songs」に劣らない傑作である。スミマセン。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Marc Copland / Another Place

mc_a

Marc Copland (p)
John Abercrombie (g)
Drew Gress (b)
Billy Hart (ds)

Rec. July, 2007, at Pirouet Studios, Munich
Engineer: Jason Seizer (Pirouet PIT3031)

アバクロのリーダー作とまちがえそうなある種の迷盤

 ドラマーのビリー・ハートのプレイがひどくて痛い目に遭った Contact名義の「 Five on One 」 (2010年、レヴュー記事はこちら) の姉妹盤みたいな本作が、はるばるドイツからやっと届いた。

 いや別に「今度もどれだけひどいか見てやろう」などと考えて仕入れたわけじゃない。両盤ともほぼ同時に別ルートで発注していたため、届くのにタイムラグができただけだ。たまたま前者が早く着いたのである。

 前者はドラマーのビリー・ハートが不安定で走ったりもたったりを繰り返し、とても聴く気になれなかった。だが一方の本作も、前者の盤からテナーのデイヴ・リーブマンが抜けただけ。あとはまったく同じメンバーなので恐れていたが、結論からいえば前者よりはマシだった。

 いや正確にいうなら、Pirouet盤ならではの異常な録音レベルの低さのおかげで、幸いにもドラムが「よく聴こえない」のが理由のひとつ。もうひとつは参加メンバーが5人から4人に減り、1人1人がプレイする空間が広がったためだ。

 前者の盤はまさに「満員電車状態」だった。サックス、ギター、ピアノの3者がたがいにスペースを殺し合い、ただでさえ音が未整理なところにドラマーが不安定で聴きづらかった。

 だってサックスがソロを取ってる最中に、ギターが単弦弾きでフレーズをサックスソロに絡めながら差し挟み、その上にピアノがコードを弾いたりしているのだ。そんな混雑ぶりに加え、ドラマーが突っ込んだりもたったり、果ては「ドシャッ」と崩れたリズムで致命的なおかずを入れたりするもんだから「助けてくれ」といいたくなった。

 だが本作はソリストの人数がピアノとギターの2人に減ったぶん、ピアノがソロを取ったら一方のギターはバッキング(または全く弾かない)、あるいはギターがソロを取ったら今度はその逆、というふうに役割分担が明確になり、音がかなり整理された。実際、このアルバムではコープランドがソロを取ると、アバクロはコードすら入れずそもそもギターを弾かないようにしている。

 加えてサックスがいないぶんスペースができ、コープランドならではの余韻を生かしたプレイが聴けるようになったのも大きい。ただしあくまであっちの盤よりマシになったという話であり、ドラムの不安定さは相変わらずだが。

 さて聴きやすくなった理由をまとめよう。まず異常な音圧の低さでドラムの音が物理的に「聴こえにくい」のが逆に幸いしたことがひとつ。第二にソリストの人数が減り、役割分担がはっきりしたこと。第三にプレーヤーが減ったぶんスペースができ、リスナーに音の余韻を聴く空間的な余裕ができたのも大きい。第四は同じ理由で、コープランドならではの余韻と間(ま)を生かしたプレイスタイルを使いやすくなったことだ。

 コープランドがソロを取るとき、アバクロがギターを弾くのを全くやめれば、実質ピアノトリオなのだから当然である。

 その埋め合わせ(笑)かどうかは知らないが、コープランドのリーダー作だというのに妙にアバクロがソロを弾く機会がふんだんに用意されており、その意味では主役のバッキングを聴かされるコープランド・ファンとしては「不満だ」という、別の新たな問題が発生しているかもしれないが。(まあこれは好みの問題だから音楽的にはどうでもいい話だ)

 最後になったが、本作もあっちの「問題作」同様、参加メンバーが曲を持ち寄っている。コープランドが2曲、アバクロが3曲、ベースのドリュー・グレスが1曲、C.Porter 「Everything I Love」 の合計7曲だ。

 総評としては、ちょっとECMっぽいきれい系の音が好きならまあいいかも? アバクロのファンなら買うのは自由(笑)、コープランド・ファンだったら自主投票だろう。どう考えてもあのContact 「 Five on One 」より聴きやすいし、苦痛は少ない。

 え? お前自身の個人的な採点はどうかって? いや今後、ビリー・ハートの参加作は絶対買わないことだけは確実です、はい。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Marc Copland Trio / Haunted Heart

mc_h

Marc Copland (p)
Drew Gress (b)
Jochen Rueckert (ds)

Rec. April 2, 2001, at The Studio, NY
Engineer: Jon Rosenberg (HatOLOGY 690)

静謐な音の断片が生み出す空気感

 このアルバムは演奏を聴くというより、「空気感を味わう」という表現の方がふさわしい。

 マーク・コープランド (p) が操るピアノからポツリ、ポツリとたどたどしく断片的な音符が立ち上る。それらの音は尾を引くような余韻に包まれ、空間にぽっかり浮かんでは消える。

 音と音のはざまには間(ま)がたっぷりあり、その何もない空間とそこに置き去りにされた音、そして静謐感にあふれた余韻が織り成す独特の「空気の感じ」。それを体感するのがこのアルバムの醍醐味だ。

 コープランドが仕掛ける異空間に放り込まれた数々のスタンダード曲が、予想もしない方法論によって翻訳され、まったく新しい楽曲に生まれ変わる。そんなコープランドの創造の瞬間に立ち会える名作である。

 ただ旋律が美しいだけでなく、時おり混じる不協和音的な危ない音が刺激的だ。サポートするドリュー・グレス (b) 、ヨッケン・リュッカート (ds) の場の作り方もすばらしい。特にピアノ独奏のルバートから、リズム隊が入ってインテンポになる瞬間がスリリングである。平凡なプレイヤーなら、こんな独特のタイム感をもつピアノに合わせ、楽曲として成立する形にして演奏するのはむずかしい。

 儚い系ピアノトリオが辿り着いたひとつの究極。「繊細な」とか「叙情的」などと平凡な言葉をいくら並べたところで、この圧倒的な空気感の前にはただ空疎なだけだ。文字表現の無力を思い知らされる名盤である。前回のレヴュー作に引き続き、本作も2000年代のエポックメイキングな1枚であることはまちがいない。

(追記)

 2002年にリリースされた本盤オリジナルのタイトルは、「Haunted Heart and Other Ballads」 (hatOLOGY 581)。その後、2010年にタイトルを「Haunted Heart」と短くし、(HatOLOGY 690)として再発された。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

プロフィール

松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

最新記事
カテゴリ
ブログ内検索
全記事一覧・表示リンク

全ての記事を表示する

月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
RSSリンクの表示
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。