Jason Seizer / Time Being

Jason Seizer  Time Being

Jason Seizer (ts)
Marc Copland (p)
Matthias Pichler (b)
Tony Martucci (d)

Rec. August 20-21, 2006, at Pirouet Studios, Munich
Engineer: Stephan van Wylick (Pirouet Records PIT3027)

コープランドのピアノが際立つ優良盤

 ドイツのテナー奏者、ジェイソン・ザイツァーの最新リーダー作だ。アレンジ面ではピアノを弾くマーク・コープランドの出番がふんだんに用意されており、いわば双頭バンドのような内容である。同じくコープランドをフィーチャーし、2004年にザイツァーがリリースしたアルバム「Serendipity」(レヴュー記事はこちら)と対になるような作品だ。

 ザイツァーのしっとり潤いのあるサックスもいいが、やはりどうしても妖しく光るコープランドのピアノに耳が引き付けられる。リズム隊は初聴きだが、まあ可もなく不可もなく。参加作を名前でわざわざ指名買いするほど際立った個性はない。

 ザイツァーのオリジナルが3曲、コープランドの曲が2曲、スタンダード1曲の合計6曲。楽曲はどれも水準をクリアしている。退屈な曲は1曲もない。なかでも叙情的なピアノのイントロからサックスが入るととたんに妖しい雰囲気になるM-1や、サックスのテーマが親しみやすいオーソドックスな4ビートのM-2とM-5、同じくテーマが秀逸なバラードのM-3が印象に残った。

 それにしてもコープランドは自分を変えないピアニストだ。サイド参加したときも、リーダー作とほとんど変わらないプレイをする。「共演者のタイプに応じて」とか、「クライアントの要求に合わせて」みたいな自分の変え方をしない。むしろサイド参加作で「自分を出す」ことが、その作品に得もいわれぬ「色」をつける。逆に言えばサイド参加するときには、コープランドは自分の色を出してこそ意味があるのだ。

 このへんは、サイド参加作では注意深く自分を抑えてプレイしている才人ブラッド・メルドーと対照的で興味深い。自分を出すとバンドのアンサンブルをぶち壊しにするタイプのプレイヤーがいるかと思えば、自分を出してこそサイド参加作に呼ばれた意味が出る人もいる。プレイヤーのタイプというのは、本当に千差万別でおもしろい。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Jason Seizer / Serendipity

js_s

Jason Seizer (ts)
Marc Copland (p)
Henning Sieverts (b) 
Jochen Rueckert (ds)

Rec. August 10, 2003, at Pirouet Tonstudio, Munich
Engineer: Stefan van Wylick (Pirouet Records PIT3008)

コープランド (p) とヨッケン・リュッカート (ds) がおいしい

 ドイツのテナー奏者、ジェイソン・ザイツァーの5枚目になるリーダー作だ。脇を固めるマーク・コープランド(p) の妖しい音使いと、ヨッケン・リュッカート(ds) のメリハリの効いた俊敏なプッシュが脳にくる。音圧が低すぎるのはPirouet盤の難点だが、まあボリュームを大きくすればすむ。内容がいいのでよしとしよう。

 ザイツァーのテナーはコンテンポラリー系プレイヤーのように、抑えたクールさで聴かせるわけじゃない。かといって躍動感にあふれて熱くブロウするタイプでもない。いやどちらかといえば前者に近いが、このほどほどな中庸感がリラックスできる。反面、強烈な個性がないため存在感やインパクトに欠け、やや脇に食われている感もないではない。だがアルバムとしては軽く水準をクリアしている。

 ザイツァーは1996年にデビュー作「Patience」を発表して以降、最新アルバムの「Time Being」(2008)まで6枚のリーダー作を出している。

 シュトゥットガルト出身で4歳からリコーダーとフルートを始めた。以後、クラシックのコンテストで受賞歴を重ねたが、コルトレーンのアルバム 「バラード」を聴いてショックを受け、23才でサックスに転向したという遅咲きのプレイヤーだ。

翳りと愁いのあるヨーロッパらしいジャズ

 本作はザイツァーのオリジナル4曲に加え、参加メンバーのコープランドが3曲、ベーシストのヘニング・ジーヴェルツ(1966年ベルリン生まれ)が1曲を持ち寄った。

 翳りのあるテーマがスタイリッシュなM-1や、一転して明るくファンキーなM-2、疾走感のあるテンポがいいM-4、モーダルでテンションの高いM-7、明るいボッサ調のM-8が印象に残った。

 M-2はブルース進行の能天気な明るさと、にもかかわらずあくまでいつもの自分のペースで危ない音を選んでバッキングしようとするコープランドとのギャップがおもしろい。バッキングだけでなくピアノソロまでも、「この曲でそのノリと音使いのソロを取るのか?」と聴き手の意表をつくコープランドがすごい。空間にポツリ、ポツリと音を置いて行く彼のタイム感はやっぱりオンリーワンだ。常に自分の相撲を取るコープランドはえらい。

 ドラマーのヨッケン・リュッカートは、いままで聴いた中ではたぶんベストプレイに近い。メリハリの効いたいいドラミングをしている。強弱のアクセントがはっきりしていて、スネアやタムのアタック感もスパンと決まり気持ちいい。この人はエリック・ハーランドみたいに沈み込むような重さはないし、むしろ対照的にあっさり淡白な軽量系ドラマーだ。だが俊敏さと軽快さ、細かく分割して行くリズムの解釈、メリハリ感で楽曲に生気をもたらしている。

 さて主役のザイツァーは本作の4年前にサードアルバム「Sketches」 (2000)で、ラリー・ゴールディングス(org)とピーター・バーンスタイン(g)、ビル・スチュワート(ds)という超マンハッタンなオルガントリオと共演しているが……まるっきりそのときと同じ人とは思えないアルバムになっている。あのNYCなサードアルバムとくらべ、本作ははっきりヨーロッパの音だ。翳りと愁いのあるしっとり落ち着いたこういう盤もいい。

「NYコンテンポラリーなジャズを中心に」なんて言いつつ最近めっきりドイツづいているが、いいものに国境やカテゴリーなんて関係ない。いいものはいいのだ。

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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