Avishai Cohen / Into The Silence

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Avishai Cohen (tp)
Bill Mchenry (ts)
Yonathan Avishai (p)
Eric Revis (b)
Nasheet Waits (ds)

Recorded: July 2015, at Studio La Buissonne, France
Engineer: Gerard de Haro (ECM 2482)

静まり返った街に朝もやが漂う

 トリオで暴れまくった「Triveni」三部作を経て、あの乱暴者のアヴィシャイをECMがこう変えたーー。しんと静まり返った朝の街に、ゆったり漂う朝もやを音にしたような盤。叙情的で、どこまでも粛然とした地平が広がる。トランペット奏者、アヴィシャイ・コーエンがリリースしたばかりのECM初リーダー作である。

 メンバーはまずイスラエル人ピアニストのヨナタン・アヴィシャイ。彼はこれまでアヴィシャイとさまざまな形で共演してきている。ドラマーのナシート・ウェイツも同じだ。そのほかビル・マクヘンリー(ts)とエリック・レヴィス(b)が加わっている。

 すべてアヴィシャイによるオリジナルで合計6曲。このアルバムは彼の父デヴィッドとの思い出に捧げられており、父の最期の日々を描いている。 ちょうどアヴィシャイが参加したマーク・ターナーの「Lathe of Heaven」(2014年、レヴュー記事はこちら)から、激しさや刺激成分を抜いたようなテイストだ。アブストラクトなところはかなり共通項がある。

 一曲が長く複雑な構成を取っており、各人のインプロヴィゼーションがふんだんに盛り込まれている。とはいえきっちりアレンジした部分もあり、フリーのように出たとこ勝負の音ではない。

 ある面では環境音楽のようでもあるし、またある面ではミニマリズムの影響を受けているような感じもある。仕事で疲れているときに、かけっぱなしにして何も考えずボーッとしていれば気持ちよくなれそうな音だ。

 ただしこういうジャズをやるなら、なぜナシート・ウェイツを起用したのだろう。彼は荒削りな激しさを叩かせてこそ生きるドラマーのような気がするが。ただそれをいうならなぜエリック・レヴィスを使うんだ? って話になるか。

 いやぁ、ECMだからやっぱりこういう静けさ系になるんだろうけど、このメンツを見てもっと骨のある音を予想していた。でもタイトルが「Into The Silence」なんだから読んで字のごとしか。いやはや、参りました。

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Avishai Cohen / Introducing Triveni

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Avishai Cohen (tp)
Omer Avital (b)
Nasheet Waits (ds)

Recorded: December 17-18, 2009, at Systems Two, NY
Engineer: Joe Marciano (Anzic Records ANZ-5103)

痛快! ワイルドな三銃士がホットに飛ばす

 熱くエネルギッシュで、ときにブルージー。泥臭く、男臭さムンムンのワイルドな奴らがヤラかしまくる。「The Trumpet Player」(2003年、レヴュー記事はこちら)で鮮烈なデビューを飾ったイスラエル出身の超絶トランペッター、アヴィシャイ・コーエンが2010年に発表した「Triveni」三部作の第一弾だ。

 主役のアヴィシャイを強力にサポートするリズム隊は、オマー・アヴィタル(b)とナシート・ウェイツ(ds)。このトリオ編成で、はるか地の果てまでぶっ放す。

 とにかく明るく楽しく躍動的で、爆発的な勢いがある。気が滅入っているときに聴いても、思わずカラダでリズムを取ってしまいそうな朗らかさ。そんな、だれもが親しめるポピュラリティ豊かなエンターテインメント作品に仕上がっている。

 本作のタイトルになっている 「Triveni」とは、アヴィシャイのパーマネントなユニット名である。その第一弾となった本盤に続き、「Triveni Ⅱ」(2012年、レヴュー記事はこちら)、「Dark Nights」(2014年)と過去に作品を3連発している。

 ちなみに第二弾の「Triveni Ⅱ」と本作は同じ日に録音されているが、ひたすら3人が暴れまくる第二弾に対し、本作はよりブルージーな面が濃くジャズの伝統的な要素にスポットライトを当てている。

 そのため緊張感でヒリヒリする尖った内容だったデビュー盤とくらべても、かなりおおらかでリラックスできるテイストだ。トンがっていたデビュー作と違い、より従来のジャズの方法論にのっとり原点回帰している。そのぶん度肝を抜くような斬新さはないが、比較的コンサバティブなジャズが好きな人には向く。おすすめである。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Avishai Cohen / The Trumpet Player

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Avishai Cohen (tp)
John Sullivan (b)
Jeff Ballard (d)

Special Guest: Joel Frahm (ts) on M-4, 5, 7
Recorded: November 25, 2001, at PureMix, NY (FSNT161)

無人島へ持っていきたい鮮烈デビュー盤

 もし無人島へ行くとしたら関連で必ず上がりそうな1枚だ。イスラエル人トランペッターのアヴィシャイ・コーエンが、初リーダー作にしていきなりモノにした自身最高傑作である。

 痺れるような緊張感と高いテンション。ワイルドに暴れまくる3人の野獣たち。野に放たれたコードレスの自由な地平を1本のラッパが切り裂く。ド迫力のカッ飛びジャズだ。

 メンバーはジョン・サリヴァン(b)、ジェフ・バラード(d)とのトリオに、サックス奏者のジョエル・フラームが3曲でゲスト参加している。

 アヴィシャイのオリジナルが5曲にコルトレーンの「Dear Lord」、オーネット・コールマンの「Giggin」を加えた計7曲。オープニングでさっそくぶっ放してくれるM-1や胸が熱くなるバラードのM-3、粘っこいノリのM-6など、どの曲も生き馬の目を抜く自由奔放ぶりだ。

 またジョエル・フラームがゲスト参加したM-5では、本作の粗野な魅力を象徴したようなアヴィシャイとのモーレツな掛け合いが聴ける。2人は非常にバランスがよく、たがいに激しく罵り合いながら楽曲が二転三転していく。本盤きっての聴き物である。

 トリオの命運を握っているのはベーシストのサリヴァンだ。彼は自由奔放なトランペットと手数が多く遊びまくるドラムスとを仲立ちし、ユニットのバランスを取っている。彼のおかげでトリオは爆発はするが暴発はしない。さながら2匹のドーベルマンと1人の猛獣使いだ。よく弾むが、ノリまかせではないクレバーなベーシストである。

 本作を聴いていると、あるパラドックスに気づく。ある種のルールや作法に則って演じられる後年のアヴィシャイ作品「Introducing Triveni」(2010)、「Triveni II」(2012)、「Dark Nights」(2014)のTriveni三部作より、このデビュー作のほうがはるかに革新的なのだ。

 本来なら順番は逆のはずだ。まず何編かの習作でいったんジャズのイディオムを極め、次にそうした既存の規制を取っ払った末に生まれてくるのが本作の世界であるように思える。

 そう、おもしろいことにアヴィシャイの作品群は、鮭が遡上するかのように逆行している。まるで胎内回帰願望を音にしたかのように。その意味ではこのデビュー作とTriveni三部作をすべて聴いた上でなければ、アヴィシャイの懐の深さは正確にはジャッジできない。

 なお同三部作はすべて物足りず、どれもデビュー作には及ばない、という評をよく目にするが、個人的には必ずしもそうは思わない。

「理屈抜きで暴れるジャズがいい」なら前述の評価になるのはよくわかる。だが奥行きという意味では三部作も賞賛されてしかるべきだろう。というか4枚ともぜひ聴いてもらいたい現代ジャズの金字塔である。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Avishai Cohen / Triveni Ⅱ

Triveni_Ⅱ

Avishai Cohen (tp)
Omer Avital (b)
Nasheet Waits (ds)

Recorded: December 17-18, 2009, at Systems Two, NY
Engineer: Joe Marciano (Anzic Records ANZ0039)

悪漢たちが暴れる男臭さ満点の剛腕トリオ

 これ1枚で 「ジャズは暴力である」 ことがあっさり証明された。殴りかかるトランペット。唸って跳ねるベース。乱雑に叩きつけるドラム。ワイルドな3人がエネルギッシュに躍動する。イスラエル人トランペッター、アヴィシャイ・コーエンによる男臭さ満点の2012年作品である。

 メンバーはオマー・アヴィタル(b)、ナシート・ウェイツ(ds)とのトリオ編成。アルバム・タイトルにもなっている 「Triveni」 はアヴィシャイの固定的ユニットであり、これまでに 「Introducing Triveni」 (2010)、本作 (2012)、「Dark Nights」 (2014) とアルバムを3連発している。

 ちなみに本盤は前作 「Introducing Triveni」 と同日録音だ。このとき録り溜めた演奏を2作品に分け、新作としてリリースした第二弾に当たる。とはいえ出がらし感などまるでなく、むしろ3連作の中では本アルバムがいちばんインパクトが強い。落ち着いたコク深さでは 「Introducing Triveni」 に軍配が上がるが、ノリのよさやパワフル感、アグレッシヴさでは本作が頭ふたつ抜けている。

 たとえばジャズを 「アッパー系ジャズ」 と 「ダウナー系ジャズ」 のふたつに大きく分ければ、本作は典型的なアッパー系だ。ラフな荒くれ男たちが、明るく元気にやらかしまくる。けっこう自由度の高い演奏で、たがいの出す音にインスパイアされながら曲調が二転三転して展開する。

 オリジナル4曲のほか、オーネット・コールマンやチャーリー・ミンガス、ドン・チェリーらのナンバーが続出しバラエティにも富む。アヴィシャイの力強くストレートなブロウが存分に楽しめる。3人がめいっぱい暴れる冒頭のM-1だけでお腹いっぱいになりそうだが、続くM-2では軽快な4ビートが楽しめる。ほかに能天気なプルースのM-5やM-7も異彩を放つ。

 オーソドックスな4ビートはもちろん、ファンクやブルージーな曲もやっているが、それにしてもナシート・ウェイツはこういう粘っこいのをやらせるとドンピシャだ。逆に繊細なピアノトリオなんかで叩くと楽曲を壊しまくるが、こういう荒っぽいところが 「味」 になってるような作品だとピカイチ。ベースのノリも最高です。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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