Nir Felder / Golden Age

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Nir Felder (g)
Aaron Parks (p)
Matt Penman (b)
Nate Smith (ds)

Recorded: September 12-13, 2011, at Sear Sound, NY
Engineer: Chris Allen (Okeh-Records 88883796292)

スッキリさわやかポストロックな未来派ジャズ

 お気に入りのフェンダー・メキシコ製ストラトキャスターを抱えたロック出身のニア・フェルダーが、自身のルーツであるロック的要素をあしらいながら 「こんなコンテンポラリー・ジャズもアリじゃない?」 と世に問う初リーダー作である。

 アルバム冒頭からもうさわやかな西海岸系ロック全開、「ええっ、これがジャズなの?」 と意表をつくアルバム構成だ。お約束のボイスも数曲に散りばめられ、これまた好みがわかれそう。2014年のリリース当時からネット上のジャズ・コミュニティを賛否両論の渦に叩き込んだ問題作である。

 当然のように全10曲すべてニアのオリジナル。M-3や後半の数曲でジャズらしいインプロヴィゼーションが聴けるが、かといってギタリストのリーダー作らしく 「弾きまくり」 なわけでもない。むしろ1~2曲目なんてギターのインプロ自体が出てこない。M-5のバラードあたりもひたすら鎮静的で大人しい (これお気に入りだが)。

 いったいなぜ彼はアルバムをこういう構成、切り口にしたのか? アルバムの顔ともいえる冒頭で、なぜ彼はこれらの曲を出してきたのか? それはおそらくインプロバイザーとしての自分を訴えたいのでなく、コンポーザーとしての才能をアピールしたかったからだ。「インプロ志向から楽曲志向へ」 という時代の流れである。

 ジャズ・マニアとしては当然、「ニア・フェルダーはただギターを弾くだけでかっこいいんだから、もっとふつうにアルバムを作ってほしいよね」 と考える。だが彼は 「ふつう」 には作らなかった。「50年代の耳とセンス」 で時間が止まっているジャズ・マニアのニーズなんぞは華麗にスルーし、移り行く時代の先っぽに作品をフォーカスさせた。それがこのアルバムなのである。 

ネット試聴して 「ハズしてる」 と思ったが買ってびっくり

 それにしてもジャズだと思って買ったCDの1曲目から、こんなさわやかロックが飛び出せばそりゃ誰だって引くだろう。しかもボイス使いまくりだし。ご多分にもれず私も去年、本作がリリースされてすぐネット試聴した時点でボイスの嵐にうんざりし 「うわ、こりゃハズしてるわ」 とあっさり買うのをやめた。そんないわくつきの作品だった。

 ところがその後、本盤の収録曲を収めたライヴ映像をYouTubeで観たりしているうちに考えが変わった。で、この6月に彼が来日したこともあり、来日記念てことで試しに本盤を買ってみた。するってぇと……。

 なんのことはない、実際に聴いてみたらふつうによかった。

 内容はほぼロックのアルバムと思っていい(これならまだ70年代のリトル・フィートのほうがテクニカルでジャズに近い)。しかもアメリカ西海岸あたりのカラッと乾いたロックである。すなわち70年代のドゥービー・ブラザースやイーグルス、(東出身だが)オーリアンズなんかを現代風にアレンジしたようなスッキリさわやかな舌触り。いかにもロックのミュージシャンが作ったジャズの要素 「も」 あるアルバム、という仕上がりだ。

 いまの若い人たちはネット検索しまくり、こういう記事を読んで昔のロックを聴いている。あるいは当時のロックに影響を受けたいまのアーチストのアルバムを買っている。つまりニアはそこに焦点を合わせてきた。まあジャズ・ファンとしては試聴してみて好みじゃなければハナから買うのをやめるもよし。ただし私はロックも聴くので違和感なかった。「これはこれ」 として楽しめた。

 もっとも数曲に散りばめられたボイスだけはカンベンしてほしいが、これとてヒラリー・クリントンやマルコムXなどの言葉がサンプリングされているらしく、英語がわかる外国人リスナーなら社会的メッセージとしてうなずけるのかもしれない。

 ちなみに私の 「ニア遍歴」 を書いておくと、まずデヴィッド・ワイス & Point of Departure名義のアルバム 「Snuck Out」 (2011年) でサイド参加のプレイを聴いたのが初めてだった。かなりインパクトがあり、ニアが参加したワイス作品はすべて聴いた。その後、ジェイソン・パーマーのアルバム 「Here Today」 (2011年) でまたもや出会い、ますます気になる存在に。

 続いてルディ・ロイストンの初リーダー作 「303」 (2014年、レヴュー記事はこちら) で彼に対する評価が確定し、最近ではEnoch Leeのデビュー・アルバム 「Finish Line」 (2014年、レヴュー記事はこちら) を聴いて完全にぶっ飛んだ。

今後インプロ志向のジャズは希少種になる?

 で、このアルバムを聴いて確信をもったのだが、やはり今後インプロ志向のジャズは希少な天然記念物になって行くのかもしれない。前回レヴューしたマーク・コープランドのようなインプロの神様クラスはそれはそれで 「国宝」 として鎮座し、だがしかし若い世代の 「先端」 部分はインプロではなくアンサンブルを求めてジャズ以外の辺境へとぐいぐいトライする。

 もちろんここまでロックに割り切り、ロック・サイドへ振った作品ばかりが生まれてくるとは思わないが、70~80年代のフュージョンみたいにロックをミクスチャーしたジャズ寄りのテイストでなく、はっきりロック寄りのジャズが今後は当たり前になって行くのだろう。

 たとえばクリス・モリッシーの諸作やマーク・ジュリアナの 「Family First 」 (2015年、レヴュー記事はこちら)、またジェレミー・ユーディーンくらいのロックへの寄り方をするミュージシャンはふつうになるはずだ。

 そのことによりたとえ既存のコアなジャズ・マニアが一部離れたとしても、「2010年代の耳」 をもつ若く新しいリスナーを開拓できれば、破綻スパイラルに陥っているジャズが生き延びる活路が開ける。そういうことだろう。

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ニア・フェルダー Live at Smalls



2時間ぶっ通し映像でございます

 ニューヨークに住んでるとこういうライヴが毎晩観られるのかぁ、と思うと、思わずエイヤッしちゃいそうになる。ニアは、シャツの胸元をはだけてガバッと白いTシャツ見せてるところが石田純一ちっくではあるが、ギタープレイのほうはそれとはまた別モノである。

 さり気なくアーロン・パークスがおいしいところを持って行っていて、さすがサイド参加ではいい仕事するなぁ、という感じ。パワフルなネイト・スミスの見せ場もてんこもりだ。

 いちばん目立たないのが2枚の超傑作リーダー盤を出してるマット・ペンマン、てところが巡りあわせの不思議か。

 お楽しみください。

Nir Felder (g)
Aaron Parks (p)
Matt Penman (b)
Nate Smith (ds)

June 19th, 2013.

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ソロを取るニア・フェルダーの背後で……



意識しまくりなのに「気にせぬ風」を装いバッキングするアダム・ロジャース

 ニア・フェルダーのクレイジーなギターソロがすごい――のはその通りだが、背後でバッキングするアダム・ロジャースの表情に注目。

「はぁ? こんなソロ、大したことないねぇ」って風を装いながら、明らかにニアを意識しまくりなのがおかしい。


【ニア・フェルダー関連記事】

Nir Felder / Golden Age」 スッキリさわやかポストロックな未来派ジャズ

(赤字をクリックするとアルバムのレヴュー記事へ飛びます)

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