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Federico Casagrande / At the End of the Day

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Federico Casagrande (ac-g)
Michele Rabbia (perc, electronics)
Vincent Courtois (cello)
Vincent Peirani (accordion)

Recorded: January 13-15, 2014, at Acousti Studios, Paris
Engineer: Didier Pouydesseau (Cam Jazz CAMJ7877-2)

色鮮やかな映像がフラッシュバックする音の物語

 ジャズの概念をまったく覆した問題作だ。主役のアコギはほぼインプロなしで和音を意識したプレイに徹する。そこにチェロとアコーディオンが絡み完全アンサンブル志向の音をリスナーに突きつける。インプロ重視からアンサンブル志向へ──。2000年以降に特徴的になった新しいジャズの流れを強く印象づけている。2007年ギブソン・モントルー・ジャズ・ギター・コンペで優勝したイタリアの若手ギタリスト、フェデリコ・カサグランデが2014年にリリースした3枚目のリーダー作だ。

 ピンと張り詰めた緊迫感がある。哀愁を帯びたフレーズが、まるで人生の機微をドラマ仕立てで歌い上げるかのようだ。弦の爪弾きのひとつひとつに生き方を感じさせる。聴き込むうち、ふと何かの映画のワンシーンや演劇のひとコマが色鮮やかにフラッシュバックする。彼のギターには物語がある。

 共作を1曲含むが全9曲すべてフェデリコのオリジナル。ちょっとスパニッシュなジプシー系の要素も感じさせ、ヨーロッパのどこか鄙びた地方の架空の民族音楽のような味わいがある。ただし全体的な雰囲気は静謐なクラシックの室内楽のようでもあり、あるいはダウナー系のゆったり鎮静的な一種の環境音楽ともいえる。かなりさまざまなエッセンスがミクスチャーされている。

アルペジオ主体でテンポや構成音で陰影をつける

 主役のフェデリコは終始アルペジオを繰り返し、テンポや強弱、構成音で楽曲に陰影をつける。逆にチェロやアコーディオンが主旋律を取っていたりする。肝心のギタープレイを聴かせるシーンもルバートでモノローグのような(インプロというより)フレーズ主体で悠久の時を刻む。まるでリスナーの要求を頑なに拒むかのように技巧的なギター・インプロをやろうとしない。つまり楽曲の完成度を最重視した非常にストイックな作りである。

 その豊かな楽想と緻密なアレンジには思わず鳥肌が立つ。しかもアルバムの随所に知的で巧妙な仕掛けが隠されており、2010年代の先端を行くトンガり感が満点だ。

 たとえばM-6はギターの静かなアルペジオ独奏の背後で「ゴォーッ」という小さな物音がだんだん轟音に変わっていく。ただそれだけの作りだ。最後に大音響がドンと鳴り、曲が突然死したかのように終わった瞬間、リスナーは激しいショックに見舞われる。

 またM-4ではボイスと効果音を控えめに効かせ、現代的でメカニカルな味つけをした。私はボイスが聴こえた途端アレルギーが出るタチなのだが、そのテの特殊効果がこれほどぴったり楽曲にハマった作品を聴いたのはまったく初めてだ。こういう使い方ならなるほど武器になる。その意味では現代ジャズの作・編曲法に一石を投じ、ひとつの斬新な回答を提示している。フェデリコのコンポーザー&アレンジャーとしての腕は超一級だ。

 このほか本作では珍しく翳りと憂いの漂うギターソロを聴かせるM-2や、チェロの切迫した叫びが70年代の後期キングクリムゾンを思わせる異様な緊張感のあるM-4、ギターとアコーディオンの奏でるテーマがすばらしく美しいM-5あたりが耳に残った。

挑戦的な実験性と芸術性を極限まで突き詰めた壮絶さ

 フェデリコの演奏は2ndリーダー作の「The Ancient Battle of The Invisible」(2012年、レヴュー記事はこちら)で初めて聴き、まるで湿った地下室を這い回るようなダークでテクニカルなインプロに強いショックを受けた。即座にマークし、その次作に当たる本作もリリース前から期待して待っていた。

 ところがいざフタを開けてみると……前作の(いい意味で)汚れて歪んだ音色のエレクトリック・ギターから、ずいぶん透明感のあるアコギに持ち替え、しかもドラムレス、ベースレスの変則的な構成にすっかり及び腰に。で、おっかなびっくりスルーしていたのだが、今回聴いて本当によかった。あやうくこんな稀代の問題作をみすみす聴き逃すところだった。あぶない、あぶない。

 チャレンジャブルな実験性と芸術性を極限にまで突き詰めた壮絶な一作。クリエイティヴな音の魔術を耳にぐいぐいねじ込まれ、あまりの興奮に思わずじんわり涙腺がゆるみ涙が何度も出た。もしリリースと同時に聴いていれば、まちがいなく2014年の脳内年間ベストテン上位に食い込んでいたのは確実だ。

 音質も驚くほどいい。透き通るような解像感があり音色がみずみずしい。くっきりシャープな音像が立体的に屹立するさまを聴いてるだけでも楽しい。かなり高度でマニアックなオーディオ的快楽をもたらしてくれる優秀録音盤だ。この高音質を味わえるだけでも買う価値アリの1枚だろう。

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Federico Casagrande / The Ancient Battle of The Invisible

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Federico Casagrande (g)
Jeff Davis (vib)
Simon Tailleu (b)
Gautier Garrigue (ds)

Recorded: December 5-6 2011 at Acousti Studios
Engineer: Didier Pouydesseau (Cam Jazz CAMJ7850-2)

2007年ギブソン・コンペ優勝の若手ギタリストが仕掛けるダークな世界

「これでもかッ」ってくらい明るい要素がない。どよよ~んと暗く沈殿しているのだが「そこがいい!」というたぐいの音。実際、かなりツボにきた。2007年ギブソン・モントルー・ジャズ・ギター・コンペで優勝したイタリアの若手ギタリスト、フェデリコ・カサグランデの2012年リリース作だ。

 なぜ本作を知ったのか? といえばドラマーつながりだった。以前レヴューしたフランス人ベーシスト、フローレント・ニッセの「Aux Mages」(2014年、レヴュー記事はこちら)でドラムを叩いていたフランス人のGautier Garrigueがえらく気に入り、「この人、まだ若いのにいいドラマーだなぁ。ほかに参加作はあるのかしらん?」とネット検索したところ、Google先生に本作を紹介された、てな経緯だ。

 そんなわけでたまたま知ったアルバムではあるが、内容はいい。なんか貧乏ったらしい風采の上がらないヒゲ面の男たちが並んだジャケ写だが、そんなもんは無視してよろしい。

 まず主役フェデリコのギターだが、ぶっちゃけ誰にも似ていない。かなり個性的だ。強いて言えば一時期のマイク・モレノを思わせるところがあるが、もっと軽く歪んだ音だし、なによりフレーズがもう圧倒的に暗いのだ。モレノみたいに優等生的で華麗なところがまるでない(もちろんいい意味で)。汚れた感じのギターを弾く。

 全9曲すべてオリジナルの楽曲は、みなミディアムなテンポでゆらゆら漂うようなノリ。フェデリコがひとりでアルペジオを弾いているシーンがたびたび出てくる。ギターソロにヴィブラフォンが合いの手を入れ、絡まりながら盛り上がって行ったりする。どの曲もダークな質感で統一されている。透明感のある音質もバツグンによく、立体的に音像が浮かび上がる。オーディオ・マニアなみなさんにもおすすめだ。

 本作が気に入ったので次作を楽しみにしていたのだが、2014年12月にリリースされた最新作「At the End of the Day」は変則的な編成だったので見送った。次の次に期待します。

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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