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Seamus Blake / Guardians of The Heart Machine

Seamus_Blake

Seamus Blake (ts, ss, vo)
Tony Tixier (p)
Florent Nisse (b)
Gautier Garrigue (ds)

Recorded: November 11-12, 2017, at Studio de Meudon, Paris
Engineer: Erwan Boulay (Whirlwind Recordings WR4735)

S.ブレイクがパリから発信する最新作

 シェイマス・ブレイクといえば、ビル・スチュワート(ds)がリズミックに大暴れするノリノリの超名盤『Bellwether』(2009年)を思い出すが、なんとどうやら彼はフランスに活動の拠点を移したらしい。そしてリリースされた最新作が本盤だ。

 哀愁漂うメロディアスな佳曲をずらりと揃え、アルバムとしての完成度でいえば名盤『Bellwether』といい勝負といっていいデキである。

 本ブログでも初リーダー作『Aux Mages』(2014年、レビュー記事はこちら)を紹介している若手フランス人ベーシスト、フローレント・ニッセが参加しているのを見てなるほど納得した。

 というのもニッセのアルバムでも聴かれた、まるで湖面に落ちた水滴が描く波紋を音にしたような端正な楽曲が目を引くのだ。おそらく彼の音楽性がシェイマスに影響を与えているのだろう。

 かと思えば5曲目「Lanota」のように、ノリのいい派手でかっこいい楽曲も散らばっており、熱くエネルギッシュなジャズが好きな人にもおすすめだ。

 ちなみにニッセとリズムセクションを組むドラマーは、イタリアの若手ギタリスト、フェデリコ・カサグランデの傑作盤『The Ancient Battle of The Invisible』(2012年、レビュー記事はこちら)にも参加していたゴ-ティエ・ガリーグである。

 録音エンジニア、Erwan Boulayの手による音質も最高で、特に解像度の高いウッド・ベースの音が実によく録れており、オーディオマニアも納得の1枚だろう。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Joshua Redman Quartet / Come What May

Joshua Redman Quartet_Come What May

Joshua Redman(ts)
Aaron Goldberg(p)
Reuben Rogers(b)
Gregory Hutchinson(ds)

Recorded: May 8-9 and Mixed September 23-24, 2018, at Sear Sound, NY
Engineer: James Farber (Nonesuch 585291-2)

乾坤一擲のストライクゾーンど真ん中

 ジョシュア・レッドマンといえば「もう終わった人」だと思っていた。だが本盤を聴き、どっこいまだ生きてるんだなと驚いた。これぞコンテンポラリー・ジャズ全開な演奏で聴かせる。全盛期を彷彿とさせる20年ぶり「黄金のカルテット」の復活だ。

 私のなかでのレッドマンは、アーロン・ゴールドバーグ(p)、リューベン・ロジャース(b)、グレッグ・ハッチンソン(ds)という本作とまったく同じ4人のメンバーで吹き込んだアルバム『Beyond』(1999年録音、以下全て録音年)、『Passage Of Time』(2000年)がキャリアの頂点である。

 その後2000年代に入るとElastic Bandで「何か今までと違うことをやらなきゃ」と目先を変えることに囚われ始め、ついに『Compass』(2008年)でダブルドラムス、ダブルベースという奇をてらった曲芸を演じて自爆して果てた、てな印象がある。

 アーロン・パークスやエリック・ハーランドら豪華メンバーを集めたその後のJames Farmも「メンバーの名前で売る」のが見え見えで、試聴だけして「ああ、この人、完全に終わったな」と追いかけるのをやめた。

 それが全盛期のメンバーを再招集し、乾坤一擲で放った本アルバムである。いやはや、参った。おそらく彼の中でこれまでの紆余曲折した経験が糧となり、「本道」に戻ることで昇華できたのだろう。そう思わせるストライクゾーンど真ん中の音作りだ。

 アレンジに凝り、実にスタイリッシュ。変拍子あり、浮遊感ありで、決してインプロに頼らず楽曲としてのよさを追求した全7曲が珠玉のように光り輝く。名エンジニア、ジェームス・ファーバーによる録音もすばらしい。おすすめです。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Joe Martin / Étoilée

Joe Martin_Etoilee

Joe Martin (b)
Mark Turner (ts, ss)
Kevin Hays (p, fender rhodes)
Nasheet Waits (ds)

Recorded: February 22 & May 30, 2018 at Sear Sound, NY
Engineer: James Farber (Sunnyside SSC 1540)

知的で玄妙なジョーの世界

 アルバム全編をマーク・ターナー特有の「ヒョロヒョロヒョロ~」という弱々しくか細いブローが覆っている。それが本盤の知的な雰囲気を決定づけている。このターナー独特の「例のアレ」が大好きな私にはたまらない。だが逆に嫌いな人には受け入れ難い盤かもしれない。

 全体に暗いダークなムードで、ちょっと哲学的なところも感じさせる(だが決して難解ではない)。明るく元気でエネルギッシュなジャズが好みの人には敬遠されるかもしれないが、私のようにひと捻りある屈折したジャズが好きな人間にはバッチリだ。

 ひさしぶりに聴くケヴィン・ヘイズが、非常に深いピアノソロを披露していておいしい。ターナーとヘイズのこのプレイを聴けるだけでも買う価値がある。

 主役のジョー・マーチンは例によってやや細めのタイトな音で、全体をしっかり引き締めている。意欲的にソロも取っておりいいプレイを聴かせている。

 崩れたようなラフなドラミングが特徴のナシート・ウェイツも、うまくアルバム全体のカラーに合わせている。本盤購入前には彼がマッチするかどうかがいちばん危惧されたが、杞憂に終わった。なかなかいい。

 てなわけで人によっては好き嫌いが分かれる盤だが、私にはドンピシャだった。本盤と同時に5~6枚のアルバムを買ったが、こやつの稼働率がいちばん高い。マーク・ターナーのダークな世界が好みの人には絶対ハマれます。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Matt Brewer / Ganymede

Matt Brewer_Ganymede

Matt Brewer (b)
Mark Shim (ts)
Damion Reid (ds)

Recorded: September 11, 2018 at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Michael Marciano (Criss Cross 1403)

ヒリヒリするような緊張感、サックストリオの傑作だ

 個人的に「サックストリオはつまらない」という固定観念があった.。だが本作はそんな私の妄執を見事に吹っ飛ばしてくれた傑作だ。こいつはすごい。

 単にサックスがだらだらアドリブを繰り広げるのでなく、要所で3人によるキメがバシッと入る。ただの感性まかせのインプロ大会に終わらず、1曲1曲がしっかり楽曲として成立している。そこがいい。

 アルバム全編を貫くヒリヒリするような緊張感も尋常じゃない。この異常なテンションは、あのトランぺッター、アヴィシャイ・コーエンの名作「Trumpet Player」を思い起こさせる。聴き手をぐいぐい引き込む吸引力がハンパない。

 また私は音数の多いうるさいドラムが大嫌いなのだが、トリオ編成により生まれる空間を生かしたDamion Reidの非常に手数の多いドラミングはむしろ爽快ですらあった。なによりドラムの音がすばらしい音質で録れている。ゆえに本盤は、可能な限り爆音で聴くと脳に効く。

 むろん主役であるMatt Brewerのベースもツボを心得ている。ソロを取れば弾けるような躍動感で空間を引き裂き、ときにはアンサンブルを重視して脇役に回る。その押し引きが絶妙であり、「この人は本当に音楽をわかってるなぁ」と感心させられる。

 もちろん彼らの上に乗っかるMark Shimのテナーもいいのだが、本盤は「リズム隊フェチ」の人にこそぜひ聴いてほしい逸品だ。おすすめです。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

最近買ってよかった新譜はコレだ

 例によってずいぶん更新が滞ってしまった(汗 なわけで本日は簡単に「最近買ってよかったCD」をばひとつ。

 まずアーロン・パークスとベン・ストリート、ビリー・ハートの3人名義の『Find The Way』だ。これ、私とまるで肌が合わないECM謹製なのだが、この盤はアーロン・パークスのピアノがどえらくすばらしいデキでECM嫌いの人も気に入ること受けあい。静的な音世界はやはりECMならではだが、パークスがなんともいえないメロディの美しさを添えて別格の盤に仕上がっている。

 お次はチャーリー・ヘイデンとブラッド・メルドー共同名義の『Long Ago and Far Away』。つまりピアノとベースのデュオだ。こちらも静的なところは同じだが、決定的にちがうのは音色やフレーズに暖かみがあること。ECMの冷たい音と対照的だ。まったり、ゆったりくつろげる演奏が心地いい。

 最後はShamie Roystonの『Beautiful Liar』。女性ピアニストなのだがまったく知らないアーチストで、試聴してみたらすごくよかったので買ってみた。2管のアレンジがばっちりで、ジャリール・ショウ(sax)やルディ・ロイストン(ds)、中村恭士(b)ら豪華メンバーが暴れていてかっこいい。

 名前がRoystonなので、ひょっとしたらこの盤で共演しているルディ・ロイストンの奥さんか? などとゲスの勘ぐりをしてみたが真相は不明。ま、そんなこた、どうでもよろし。以上、3枚とも、絶対買ってソンはない良盤です。はい。

Jim Rotondi / Dark Blue

Jim_Rotondi_ Dark_Blue

Jim Rotondi (tp)
Joe Locke (vib)
David Hazeltine (p)
David Wong (b)
Carl Allen (ds)

Recorded: July 15, 2015 at Sear Sound, NY
Engineer: Roman Klun (Smoke Sessions Records SSR-1602)

NYCの夜景がみえてくる現代版ハードバップ

 さあ新年一発目は現代版ハードバップで行こう。「One For All」で知られるトランペッター、ジム・ロトンディの2016年リリース最新作である。実は昨年末の本ブログ・年間ベストテンに入れようかさんざん迷ったのだが、あんまりメインストリーム系がふえると、アウトサイダーな(笑)当ブログらしくないなぁとハズした曰くつきのアルバムだ。

 したがって内容は保証つき。ジムのオリジナル6曲のほか、参加メンバー・デヴィッド・ヘイゼルタイン「Highline」、モンク「Monk's Mood」など合計10曲。心地いい疾走感とノリの良さ、グルーヴ感。ニューヨークの夜景が見えてきそうなしゃれた雰囲気だ。

 ただまあ、音楽的にはひねりも頓智も何もなし。なーんてことはないんだけど、でもいいんだよねぇ、こういうの。ずっと流しておいてもまったく聴き飽きない。不思議なものだ。メインストリーム系のジャズがなぜ何十年も支持され続けているのか? その秘密の一端を覗かせてくれる盤である。

 いやはや昨年、すっかりベーシック系ジャズのよさに目覚めてからというもの、しばらくこの系統ばっかり聴いている。そうなると逆の意味でまたブログの内容が非常に偏るので(笑)バランスを考えながら記事化して行こう、というのが今年の抱負である。

 てなわけで王道系が多い「Live at Smalls」シリーズなんかは今までほとんどスルーしていたのだが、新年からいきなり同シリーズを6枚も発注してしまった。ピーター・バーンスタインも過去盤を何枚かオーダーしたし。Posi-ToneやMax Jazz、High Noteあたりもこのテが多いので、これから開発して行かなきゃならない。なにごとも「新しく始める」というのは大変なものだ。……って趣味でやってるんだから、まっいいか。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

​Peter Bernstein / Let Loose

peter_B.jpeg

Peter Bernstein (g)
Gerald Clayton (p)
Doug Weiss (b)
Bill Stewart (ds)

Recorded: January 3, 2016 at Sear Sound, NY
Engineer: Chris Allen (Smoke Sessions Records SSR-1604)

オーセンティックであることの誇り

 ピーター・バーンスタインは、ファッションでいえばトラッドだ。変わらないことの価値、変わらないことに対する誇りがある。リスナーにとってはそこに自分の好きな時代や、好きなトレンドがいつまでも存在するという安心感がある。「ピーターのアルバムを買えば必ず『あの味』を味わえる」。そんな信頼感がある。スモーキーな音色と暖かな温度感、哀愁のある味なメロディーー。それらが堪能できるという一種のブランド性がある。だからピーターには価値がある。

 てなわけでピーター・バーンスタインの最新作である。実は本盤に手を出した大きな理由は「ジェラルド・クレイトンのピアノが聴ける」という誘惑だった。だが聴いてるうちにそんな邪道な欲望などみるみるどうでもいい話になり、眼前には燦然として主役のギタープレイがそそり立つことに相成った。

 それにしてもこの荒い岩肌が露出したような、ゴツゴツとしたピッキング感はどうだろう。誤解を恐れずに言えばピーターはどちらかといえばヘタウマにカテゴライズされるギタリストだろう。

 リズムが微妙にたどたどしく、「アリ / なし」でいえばスレスレなのだがそこがいい。譜面では表せない彼のミクロなタメやツッコミにこそ味がある。そんなギタリストだと思う。もちろん純粋な意味でテクニカルなギタリストを挙げていけばキリがないが、決してそこに名前が並ばないところにピーターのよさがあり、味わいがある。

 え? ピーター・バーンスタインは指が速く動かないだろう、って?

 どうも世の中には、「音数が多くて指や手足が速く動くほど技巧的ですごい」みたいに思っている人が多い。だがどうなんだろう。芸術はなんでもそうだが、問題は演奏を聴いたリスナーの脳内に、いかに爪痕を残すか? である。ピッキングが速いことや音数が多いことはそれを達成するための「手段」にすぎない。「目的」ではない。要は聴き手の心を動かせれば手段なんて何だっていいのだ。

 確かに速くて音数が多ければ手っ取り早くインパクトは与えられる。だがピーターのように別の手段を使えば、別種のインパクトを聴き手にもたらすことができる。絵でいえば写実画と抽象画のちがいみたいなもんだ。そう、実は描くことも書くことも詠うことも撮ることも芸術はなんだって同じ。手段が目的化してしまっては意味がない。そういうことなのである。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Aki Rissanen / Amorandom

aki_01.jpeg

Aki Rissanen (p)
Antti Lötjönen (b)
Teppo Mäkynen (ds)

Recorded: June 29-30, 2015 at Kallio-Kuninkala Studios, Finland
Engineer: Mikko Raita (Edition EDN1067)

映像的スリルで魅せる音の迷宮

 2015年ダウンビート誌で「ヨーロッパからのライジングスター」と絶賛されたフィンランド出身の若手ピアニスト、アキ・リッサネンがリリースしたばかりのピアノトリオ作品。のっけからミステリアスで荘厳な雰囲気を漂わせ、畳み掛けるようにリスナーを幻惑するスリリングな1枚だ。

 これは単に美しいだけのピアノトリオではない。まるで演劇のように、流れる音が明らかにストーリーをもっている。妖しい音を響かせながら、1音1音が心の襞に分け入ってくる。そしてリスナーは嘘を見透かされたときのように、どこか落ち着かない心理にさせられる。人間を丸裸にする嘘発見器のような音楽だ。

 主役のアキは1980年生まれ。2002年から2009年にかけ、同じフィンランド人ピアニストのヨーナス・ハーヴィストと同様、フィンランドの名門音楽院シベリウス・アカデミーでジャズピアノと作曲を学んだ(修士号取得)。2005年以降、ソロピアノからカルテットまで本作も含め10枚のアルバムをリリースしている。

 全9曲すべてアキのオリジナル。全編、不思議感でいっぱいだ。ミステリアスでちょっとシュール、ジャズだけでなく現代音楽やクラシックの影響も感じさせる。M-4はちょっとなごめるが、特に冒頭の3曲はすごい緊張感でヒリヒリするような焦燥感をかき立てられる。高い音楽的知性を感じさせる作風だ。

 何が始まるのかまったく先が読めない音の迷宮。往年のハードバップあたりの予定調和ぶりとはまるで対照的な現代ジャズだ。とはいえ楽器はピアノとベース、ドラムスしか使ってないのに、ピアノの抑揚だけでよくこれだけ曲調に変化がつけられるなぁ、と感心しきり。才能をピリピリ感じさせる。

 まるで映画を観ているかのように、音で表現される映像が次々と眼前で場面転換して行くスリル。劇場で音楽鑑賞しているような仮想現実感に一瞬囚われる。ストーリー性のあるコンポジションが味わい深い。ちょっとトンがったジャズが好みの人にはおすすめです。

ここで試聴できます。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Stephan Plecher Trio feat. Bert Joris / Jungfernballett

Stephan_Plecher.png

Stephan Plecher (p)
Benjamin Zalud (b)
Peter Primus Frosch (ds)
Bert Joris (tp on 1, 3, 4 and 7)

Recorded: June 11-12, 2015 at Hard Studios, Winterthur
Engineer: Martin Peason (TCB 35102)

ヨーロッパの郷愁が漂う端麗なピアニズム

 まだHip-Hopに行く前の初期のロバート・グラスパーを想わせるドラマティックなM-1でアルバムは幕が開く。本盤はとにかく曲がいい。端正なヨーロッパの郷愁を漂わせながらも、なかにはM-3やM-5のように超グルーヴィなナンバーを聴けるのもうれしい。

 ドイツ生まれでスイス在住の若手ピアニスト、シュテファン・プレチェルのピアノトリオに、トランペッターのバート・ジョリスが加わったトレトレの新作。記念すべきデビュー盤である。

 主役のシュテファンは1990年生まれ。ドイツやスイス、オーストリアの数々のジャズ・コンテストを勝ち抜いてきた。2013年にこのピアノトリオを結成し、2014年には「Fidelio」コンテストで特別審査員賞を受賞している。

 2曲を除き7曲がオリジナルの計9曲。ピアノのシュテファンは圧倒的な超絶技巧で独り舞台を演じるのではなく、あくまでオリジナル楽曲のよさを生かして抑え気味の渋い演奏で場を盛り上げる。ただし5曲用意されたピアノトリオ曲では、持ち前のテクニックに裏打ちされた端麗辛口な味わいを存分に披露している。メロディアスで耽美的だが、エネルギッシュなプレイも聴かせる味のあるピア二ストである。

 一方、4曲にゲスト参加しているベルギーのベテラン・トランペッター、バート・ジョリスのプレイもピアノトリオの存在をスポイルすることなく、楽曲の味わいが増す方向でしなやかに演奏しており好感が持てる。また目を見張らされるのはドラマーのペーター・プリムス・フロッシュである。適度な重さと太さがあり、音数少なく要所をキメまくる。楽曲をドラマティックに謳い上げる非常にいいドラマーだ。

 このアルバムは誰か一人の飛び抜けた「技巧」を聴くためでなく、「いい音楽」を堪能するためにこそ存在する。一家に一台。あわただしい年末に休息を得るにはもってこいの作品である。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

A Lifetime Treasure / Yasushi Nakamura

Y_Nakamura.jpg

Yasushi Nakamura (b)
Lawrence Fields (p)
Clarence Penn (ds)

Recorded: May 20, 2016 at Avatar Studios, NY
Engineer: Katsuhiko Naito (澤野工房 YN001)

中村はまっすぐ攻めてくる

 NYの大物だけでなく尖った若手とも次々共演するなど、ワールドワイドに活躍する超ベーシストの中村恭士。その待望の1stリーダーアルバムがお目見えした。ごまかしなし、まじりっけなしの元気でストレートな4ビートジャズが脳天を直撃する。エネルギッシュな躍動感に満ちあふれ、生の喜びを謳歌するような楽しい音だ。リズム隊の煽りがハンパない。

 メンバーは、まずピアノが本ブログ選定『2015年版マイフェイバリットなピアニストたち』で4位にチャートインしている若手の天才ローレンス・フィールズ。そして主役とコンビを組むドラマーはご存知クラレンス・ペンとくれば、音を聴いてみたくなるのが人情である。

 中村恭士は1982年東京生まれのシアトル育ち。バークリー音大とジュリアード音楽院を卒業するや、超大物だけでなく知る人ぞ知る若手の旗手たちと次々共演しジャズ業界では話題を呼んだ。

 アルバム内容は、まず6曲用意された自作のオリジナル曲がすばらしい出来栄えだ。彼は極上のメロディーメイカーであり、溢れ出るようなコンポーザーとしての才能がある。その上にコルトレーン「Naima」、ベニー・ゴルソン「Stablemates」など既成曲の選曲も見事にツボを射抜いており満足度が高い。かくて全12曲、まったく捨て曲なしの傑作アルバムに仕上がっている。

 形式的にはピアノトリオの形だが、これはピアノがメインのアルバムではない。主役の中村が暴れまくり、それに呼応してドラマーのペンがドカドカど派手に叩きまくる。いわばリズム隊フェチのための作品だ。

 とはいえ決してピアノも負けてはいない。ノリのいい曲が乗れるのは当たり前だが、反対にM-10のようなしっとりしたオリジナル・バラードでのピアノのつぶやきがこれまたうっとりさせてくれる。中村が提示した楽曲のエッセンスに、俊英ローレンス・フィールズが見事にピアノ・プレイで応えて化学反応を起こしている。

 エンジニアは、知る人ぞ知る名作を送り出してきたNYCのアバター・スタジオで常駐エンジニアとして部屋を構える名匠・内藤克彦(バークリー音大卒)。内藤が狙った録音はすっきりクリアーな音質でなく、微かに意図した「濁り」がある。いわばライブ演奏を手持ちのマイクでそのまま録ったような、といえば伝わるだろうか。そのいい意味でラフな音作りが、壮絶なドライブ感とスピード感を生んでいる。

 辛口の私がこれだけ褒めるんだから内容は推して知るべし。年末恒例「今年のベスト10アルバム」入りはもう確実だ。

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プロフィール

松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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