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Jim Rotondi / Dark Blue

Jim_Rotondi_ Dark_Blue

Jim Rotondi (tp)
Joe Locke (vib)
David Hazeltine (p)
David Wong (b)
Carl Allen (ds)

Recorded: July 15, 2015 at Sear Sound, NY
Engineer: Roman Klun (Smoke Sessions Records SSR-1602)

NYCの夜景がみえてくる現代版ハードバップ

 さあ新年一発目は現代版ハードバップで行こう。「One For All」で知られるトランペッター、ジム・ロトンディの2016年リリース最新作である。実は昨年末の本ブログ・年間ベストテンに入れようかさんざん迷ったのだが、あんまりメインストリーム系がふえると、アウトサイダーな(笑)当ブログらしくないなぁとハズした曰くつきのアルバムだ。

 したがって内容は保証つき。ジムのオリジナル6曲のほか、参加メンバー・デヴィッド・ヘイゼルタイン「Highline」、モンク「Monk's Mood」など合計10曲。心地いい疾走感とノリの良さ、グルーヴ感。ニューヨークの夜景が見えてきそうなしゃれた雰囲気だ。

 ただまあ、音楽的にはひねりも頓智も何もなし。なーんてことはないんだけど、でもいいんだよねぇ、こういうの。ずっと流しておいてもまったく聴き飽きない。不思議なものだ。メインストリーム系のジャズがなぜ何十年も支持され続けているのか? その秘密の一端を覗かせてくれる盤である。

 いやはや昨年、すっかりベーシック系ジャズのよさに目覚めてからというもの、しばらくこの系統ばっかり聴いている。そうなると逆の意味でまたブログの内容が非常に偏るので(笑)バランスを考えながら記事化して行こう、というのが今年の抱負である。

 てなわけで王道系が多い「Live at Smalls」シリーズなんかは今までほとんどスルーしていたのだが、新年からいきなり同シリーズを6枚も発注してしまった。ピーター・バーンスタインも過去盤を何枚かオーダーしたし。Posi-ToneやMax Jazz、High Noteあたりもこのテが多いので、これから開発して行かなきゃならない。なにごとも「新しく始める」というのは大変なものだ。……って趣味でやってるんだから、まっいいか。

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

​Peter Bernstein / Let Loose

peter_B.jpeg

Peter Bernstein (g)
Gerald Clayton (p)
Doug Weiss (b)
Bill Stewart (ds)

Recorded: January 3, 2016 at Sear Sound, NY
Engineer: Chris Allen (Smoke Sessions Records SSR-1604)

オーセンティックであることの誇り

 ピーター・バーンスタインは、ファッションでいえばトラッドだ。変わらないことの価値、変わらないことに対する誇りがある。リスナーにとってはそこに自分の好きな時代や、好きなトレンドがいつまでも存在するという安心感がある。「ピーターのアルバムを買えば必ず『あの味』を味わえる」。そんな信頼感がある。スモーキーな音色と暖かな温度感、哀愁のある味なメロディーー。それらが堪能できるという一種のブランド性がある。だからピーターには価値がある。

 てなわけでピーター・バーンスタインの最新作である。実は本盤に手を出した大きな理由は「ジェラルド・クレイトンのピアノが聴ける」という誘惑だった。だが聴いてるうちにそんな邪道な欲望などみるみるどうでもいい話になり、眼前には燦然として主役のギタープレイがそそり立つことに相成った。

 それにしてもこの荒い岩肌が露出したような、ゴツゴツとしたピッキング感はどうだろう。誤解を恐れずに言えばピーターはどちらかといえばヘタウマにカテゴライズされるギタリストだろう。

 リズムが微妙にたどたどしく、「アリ / なし」でいえばスレスレなのだがそこがいい。譜面では表せない彼のミクロなタメやツッコミにこそ味がある。そんなギタリストだと思う。もちろん純粋な意味でテクニカルなギタリストを挙げていけばキリがないが、決してそこに名前が並ばないところにピーターのよさがあり、味わいがある。

 え? ピーター・バーンスタインは指が速く動かないだろう、って?

 どうも世の中には、「音数が多くて指や手足が速く動くほど技巧的ですごい」みたいに思っている人が多い。だがどうなんだろう。芸術はなんでもそうだが、問題は演奏を聴いたリスナーの脳内に、いかに爪痕を残すか? である。ピッキングが速いことや音数が多いことはそれを達成するための「手段」にすぎない。「目的」ではない。要は聴き手の心を動かせれば手段なんて何だっていいのだ。

 確かに速くて音数が多ければ手っ取り早くインパクトは与えられる。だがピーターのように別の手段を使えば、別種のインパクトを聴き手にもたらすことができる。絵でいえば写実画と抽象画のちがいみたいなもんだ。そう、実は描くことも書くことも詠うことも撮ることも芸術はなんだって同じ。手段が目的化してしまっては意味がない。そういうことなのである。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Aki Rissanen / Amorandom

aki_01.jpeg

Aki Rissanen (p)
Antti Lötjönen (b)
Teppo Mäkynen (ds)

Recorded: June 29-30, 2015 at Kallio-Kuninkala Studios, Finland
Engineer: Mikko Raita (Edition EDN1067)

映像的スリルで魅せる音の迷宮

 2015年ダウンビート誌で「ヨーロッパからのライジングスター」と絶賛されたフィンランド出身の若手ピアニスト、アキ・リッサネンがリリースしたばかりのピアノトリオ作品。のっけからミステリアスで荘厳な雰囲気を漂わせ、畳み掛けるようにリスナーを幻惑するスリリングな1枚だ。

 これは単に美しいだけのピアノトリオではない。まるで演劇のように、流れる音が明らかにストーリーをもっている。妖しい音を響かせながら、1音1音が心の襞に分け入ってくる。そしてリスナーは嘘を見透かされたときのように、どこか落ち着かない心理にさせられる。人間を丸裸にする嘘発見器のような音楽だ。

 主役のアキは1980年生まれ。2002年から2009年にかけ、同じフィンランド人ピアニストのヨーナス・ハーヴィストと同様、フィンランドの名門音楽院シベリウス・アカデミーでジャズピアノと作曲を学んだ(修士号取得)。2005年以降、ソロピアノからカルテットまで本作も含め10枚のアルバムをリリースしている。

 全9曲すべてアキのオリジナル。全編、不思議感でいっぱいだ。ミステリアスでちょっとシュール、ジャズだけでなく現代音楽やクラシックの影響も感じさせる。M-4はちょっとなごめるが、特に冒頭の3曲はすごい緊張感でヒリヒリするような焦燥感をかき立てられる。高い音楽的知性を感じさせる作風だ。

 何が始まるのかまったく先が読めない音の迷宮。往年のハードバップあたりの予定調和ぶりとはまるで対照的な現代ジャズだ。とはいえ楽器はピアノとベース、ドラムスしか使ってないのに、ピアノの抑揚だけでよくこれだけ曲調に変化がつけられるなぁ、と感心しきり。才能をピリピリ感じさせる。

 まるで映画を観ているかのように、音で表現される映像が次々と眼前で場面転換して行くスリル。劇場で音楽鑑賞しているような仮想現実感に一瞬囚われる。ストーリー性のあるコンポジションが味わい深い。ちょっとトンがったジャズが好みの人にはおすすめです。

ここで試聴できます。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Stephan Plecher Trio feat. Bert Joris / Jungfernballett

Stephan_Plecher.png

Stephan Plecher (p)
Benjamin Zalud (b)
Peter Primus Frosch (ds)
Bert Joris (tp on 1, 3, 4 and 7)

Recorded: June 11-12, 2015 at Hard Studios, Winterthur
Engineer: Martin Peason (TCB 35102)

ヨーロッパの郷愁が漂う端麗なピアニズム

 まだHip-Hopに行く前の初期のロバート・グラスパーを想わせるドラマティックなM-1でアルバムは幕が開く。本盤はとにかく曲がいい。端正なヨーロッパの郷愁を漂わせながらも、なかにはM-3やM-5のように超グルーヴィなナンバーを聴けるのもうれしい。

 ドイツ生まれでスイス在住の若手ピアニスト、シュテファン・プレチェルのピアノトリオに、トランペッターのバート・ジョリスが加わったトレトレの新作。記念すべきデビュー盤である。

 主役のシュテファンは1990年生まれ。ドイツやスイス、オーストリアの数々のジャズ・コンテストを勝ち抜いてきた。2013年にこのピアノトリオを結成し、2014年には「Fidelio」コンテストで特別審査員賞を受賞している。

 2曲を除き7曲がオリジナルの計9曲。ピアノのシュテファンは圧倒的な超絶技巧で独り舞台を演じるのではなく、あくまでオリジナル楽曲のよさを生かして抑え気味の渋い演奏で場を盛り上げる。ただし5曲用意されたピアノトリオ曲では、持ち前のテクニックに裏打ちされた端麗辛口な味わいを存分に披露している。メロディアスで耽美的だが、エネルギッシュなプレイも聴かせる味のあるピア二ストである。

 一方、4曲にゲスト参加しているベルギーのベテラン・トランペッター、バート・ジョリスのプレイもピアノトリオの存在をスポイルすることなく、楽曲の味わいが増す方向でしなやかに演奏しており好感が持てる。また目を見張らされるのはドラマーのペーター・プリムス・フロッシュである。適度な重さと太さがあり、音数少なく要所をキメまくる。楽曲をドラマティックに謳い上げる非常にいいドラマーだ。

 このアルバムは誰か一人の飛び抜けた「技巧」を聴くためでなく、「いい音楽」を堪能するためにこそ存在する。一家に一台。あわただしい年末に休息を得るにはもってこいの作品である。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

A Lifetime Treasure / Yasushi Nakamura

Y_Nakamura.jpg

Yasushi Nakamura (b)
Lawrence Fields (p)
Clarence Penn (ds)

Recorded: May 20, 2016 at Avatar Studios, NY
Engineer: Katsuhiko Naito (澤野工房 YN001)

中村はまっすぐ攻めてくる

 NYの大物だけでなく尖った若手とも次々共演するなど、ワールドワイドに活躍する超ベーシストの中村恭士。その待望の1stリーダーアルバムがお目見えした。ごまかしなし、まじりっけなしの元気でストレートな4ビートジャズが脳天を直撃する。エネルギッシュな躍動感に満ちあふれ、生の喜びを謳歌するような楽しい音だ。リズム隊の煽りがハンパない。

 メンバーは、まずピアノが本ブログ選定『2015年版マイフェイバリットなピアニストたち』で4位にチャートインしている若手の天才ローレンス・フィールズ。そして主役とコンビを組むドラマーはご存知クラレンス・ペンとくれば、音を聴いてみたくなるのが人情である。

 中村恭士は1982年東京生まれのシアトル育ち。バークリー音大とジュリアード音楽院を卒業するや、超大物だけでなく知る人ぞ知る若手の旗手たちと次々共演しジャズ業界では話題を呼んだ。

 アルバム内容は、まず6曲用意された自作のオリジナル曲がすばらしい出来栄えだ。彼は極上のメロディーメイカーであり、溢れ出るようなコンポーザーとしての才能がある。その上にコルトレーン「Naima」、ベニー・ゴルソン「Stablemates」など既成曲の選曲も見事にツボを射抜いており満足度が高い。かくて全12曲、まったく捨て曲なしの傑作アルバムに仕上がっている。

 形式的にはピアノトリオの形だが、これはピアノがメインのアルバムではない。主役の中村が暴れまくり、それに呼応してドラマーのペンがドカドカど派手に叩きまくる。いわばリズム隊フェチのための作品だ。

 とはいえ決してピアノも負けてはいない。ノリのいい曲が乗れるのは当たり前だが、反対にM-10のようなしっとりしたオリジナル・バラードでのピアノのつぶやきがこれまたうっとりさせてくれる。中村が提示した楽曲のエッセンスに、俊英ローレンス・フィールズが見事にピアノ・プレイで応えて化学反応を起こしている。

 エンジニアは、知る人ぞ知る名作を送り出してきたNYCのアバター・スタジオで常駐エンジニアとして部屋を構える名匠・内藤克彦(バークリー音大卒)。内藤が狙った録音はすっきりクリアーな音質でなく、微かに意図した「濁り」がある。いわばライブ演奏を手持ちのマイクでそのまま録ったような、といえば伝わるだろうか。そのいい意味でラフな音作りが、壮絶なドライブ感とスピード感を生んでいる。

 辛口の私がこれだけ褒めるんだから内容は推して知るべし。年末恒例「今年のベスト10アルバム」入りはもう確実だ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Florian Hoefner Group / Luminosity

1

Seamus Blake (ts, ss)
Florian Hoefner (p)
Sam Anning (b)
Peter Kronreif (ds)

Recorded: June 8-9, 2015, at Acoustic Recording, NY
Engineer: Michael Brorby (Origin Records ORIGIN82706)

S.ブレイク参加、渋さを極めたコンポラの秀作

 ドイツ出身のピアニスト、フローリアン・ホフナーがリリースしたばかりの最新作だ。彼にとってはOrigin Recordsから3枚目の作品になる。派手さとは対極で、さりげない渋さの中にコンテンポラリーな独特のセンスがきらりと光る秀作である。

 主役のフローリアンは、あのカート・ローゼンウィンケルが客演した「Roman Ott Inner Shape」名義の隠れ名盤「Seeing People」(2009)にも参加している知る人ぞ知るピアニストだ。ベルリン芸術大学でジャズピアノの学位を取り、その後、NYCのマンハッタン音楽院でジェイソン・モラン、デイヴ・リーブマンらに師事している。

 全8曲すべてフローリアンのオリジナル。どちらかといえばベン・ヴァン・ゲルダー的な、あえてヤマ場を作らないようなウネウネしたクールなジャズだ。とはいえゲルダーほど無味乾燥さは極端でなく、適度に見せ場を作りながら随所で盛り上がるうまいアレンジがなされている。

 アルバム全編、シェイマス・ブレイクが前面に出て現代的なプレイをかます。それもおいしいのだが、なにより主役フローリアンのピアノがまた素晴らしい。特にM-2、M-3、M-4、M-5のピアノソロは飛び切りスリリングでかっこいい。ピアノ好きなら彼のピアノを聴くためだけに買っても損はない。リズム隊もしっかりしたサポートで全体の土台を支えている。

 とにかく渋い作りなので、一度聴いただけではピンとこないかも? 2度3度と聴いてるうちにジワジワと滋味が滲み出す。そのぶん飽きずに長く楽しめる盤である。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Romain Pilon / The Magic Eye

1

Romain Pilon (g)
Yoni Zelnik (b)
Fred Pasqua (ds)

Ben Wendel (ts on M-1, 3, 4, 7)
Walter Smith III (ts on M-1, 3, 4, 7)

Recorded: December 18, 2014, and February 14, 2015
Engineer: Andre Charlier & Nicolas Charlier (Jazz & People JPCD-815004)

スタイリッシュで華のあるギタリズム

 フランス人若手ギタリストのロメイン・ピロンが、2015年11月にリリースしたばかりの3枚目のリーダー作だ。芸風はちょっとフュージョンがかった都会的なコンテンポラリー・ジャズ。2管に豪華ゲストを配し、きらびやかな音の世界を演出している。

 ピロンは10才でギターを始め、1997年にシャンベリ・ジャズ音楽院に入学。その後、バークリー音大でピーター・バーンスタインやミック・グッドリックに師事した。卒業後、ニューヨークへ進出したが、現在はパリを拠点に活動している。2012年春に初リーダー作「NY3」をリリース。翌年には2nd作「Colorfield」を発表している。

 メンバーは、長年活動を共にしてきたフランス在住のイスラエル人ベーシスト、ヨニ・ツェルニックと、フレッド・パスクアがリズム隊を組む。加えてベン・ウェンデル、ウォルター・スミス3世の豪華2大テナーが4曲でフィーチャーされている。

 1曲を除きオリジナル7曲の合計8曲。M-1のイントロを爪弾くギターを聴いただけで、「ああ、この人は独特の雰囲気をもってるな」とすぐわかる。ギターによるM-5の導入部もゾクっとさせられるし、スタイリッシュでかっこいい華のあるギターを弾く。

 カッチリしたピッキングはジェシ・ヴァン・ルーラーを連想するし、全体的な雰囲気はラーゲ・ルンドにもちょい近い。要はギタープレイのみ、取り出してみれば文句なしだ。ただ一点、アルバム・コンセプトとコンポジションにはやや疑問が残る。

 まず第一に、全8曲中4曲を、2管にまでする必要があったのかどうか?

 曲によっては2管が激しく絡まりながら盛り上がっているのだが、主役のギターはひたすらバッキングしてるだけ。ギターソロがまったく出てこない。しかもサックスがソロを取ってるときには、なんだか安物フュージョンのチープな匂いがしてしまう。ホーンアレンジもポップすぎるし、要は大々的にフィーチャーした管が生きるどころか、足を引っ張っている感じがするのだ。

 ちなみにピロンのデビュー盤「NY3」はギタートリオで、緊張感のあるちょっと屈折したトンがった味がよかった。この人はああいう切り口で、あくまでギタートリオでぐいぐい押してほしい気がする。

 うがった見方をすればデビュー盤がコアすぎる内容だったため、今回はセールスを考えてビッグネームを2人も呼び、売りやすいポップなテイストにしたのでは? などと余計な想像をしてしまう。まあそれはともかく、この人のギターが他人にないものをもってることは明らかだし、だったらそれを最大限に生かす売り出し方を考えるべきだろう。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Jae Sinnett / Zero to 60

1

Jae Sinnett (ds)
Ralph Bowen (ts)
Allen Farnham (p)
Hans Glawischnig (b)

Recorded: September 2015, at Bias Studio, VA
Engineer: Bob Dawson (J-Nett Music 8120)

肉汁したたるレアステーキのようなこってり盤

 ラルフ・ボウエン(ts)が火の玉みたいに吹きまくる。力強くホットな4ビートの饗宴が繰り広げられる。渋さ満開のベテラン・ドラマー、Jae Sinnettが発表したばかりの好盤だ。

 Jaeは1986年にデビュー盤をリリースして以来、本作も含め14枚のリーダー作を発表している。いままで作曲した楽曲は150曲以上。本作は2年ぶりの作品になる。

 メンバーはボウエンに加えアラン・ファーナム(p)、ハンス・グラヴィシュニク(b)と、主役に劣らず渋いところが揃った。その肝心の主役はツボを心得た音数の少ないドラミングで、リーダー作だというのに出しゃばらずチームの骨格になっている。

 1曲を除きすべてJaeオリジナルの計10曲。肉汁がしたたり落ちるレアステーキのような盤である。とにかくこってりドラマチックで熱い、熱い。わかりやすく、だれもが楽しめるこの爽快感と豪快さはすばらしい。

 おまけに楽曲がどいつもこいつもカッコいい。キメのひとつひとつが効いており、テーマもバッチリ決まってる。別段「新しさ」なんてどこにもないが、ふと気がつくと我を忘れてカラダがリズムを取っている。ジャズの、というより音楽の醍醐味ってこれだよなぁ、と忘れていたものを思い出す。

 エネルギッシュでノリノリのジャズが好みの人には絶対おすすめ。汗が飛び散るジャズでなければジャズじゃない、というあなたにはピッタリの1枚だ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Klemens Marktl Sextet / December

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Klemens Marktl (ds)
Seamus Blake (ts, ss)
John Ellis (ts, ss, bcl)
Aaron Goldberg (p)
Joe Locke (vib)
Harish Raghavan (b)

Recorded: April 8, 2015, at the Samurai Hotel Recording Studio, NY
Engineer: David Stoller (FSNT 489)

NYの顔役がズラリ、スッキリ辛口の大吟醸をどうぞ

 シェイマス・ブレイク(ts)ら現代ジャズ界のおいしいところがズラリ揃った。役者を得て、幾重にも塗り重ねられた豪華なアレンジに圧倒される。NYジャズ・シーンで敏腕サイドメンとして知られるドラマーのクレメンス・マートルがリリースした最新作だ。コンテンポラリー・ジャズの快作である。

 マートルは1976年オーストリア生まれ。オランダのアムステルダムでジャズ・ドラムを学び、2003年にニューヨークへ移住した。デビュー作は「The Challenge」(2003年)。以後、本作も含め6枚のリーダー作を出している。

 メンバーはシェイマス・ブレイク(ts)にジョン・エリス(ts)、アーロン・ゴールドバーグ(p)、ハリシュ・ラジャン(b)ら、NYの顔役たちが結集した。順番に何枚でもリーダー作が作れそうな面々である。

 全10曲すべてマートルのオリジナル。NYの若手によくあるような屈折したところがまるでなく、作風は堂々の内角高め。スッキリ辛口の大吟醸を思わせる。まるで楽想が耳の穴から湧き上がってくるかのようなアイデアの豊富さだ。

 例えばM-1とM-6では当代きっての豪華2管のスリリングな掛け合いが聴ける。M-6のテーマ部はホーンアレンジもバッチリ決まってかっこいい。「コンテンポラリー・ジャズってどんなふう?」と聞かれたら、黙って本作を差し出せばいい。

 ブレイクやエリスがいいのは当然として、今回はベーシストのハリシュ・ラジャンに改めて驚かされた。デイナ・スティーブンスの「Reminiscent」(2015年、レヴュー記事はこちら)やウォルター・スミス3世の「Still Casual」(2014年、レヴュー記事はこちら)などでも彼のプレイは聴いていたが、リズム感あふれる俊敏なノリと楽曲構成を生かすコレクティヴなプレイぶりがすばらしい。彼ははっきりベン・ストリートの後釜を狙えるだろう。

 マートルといえば、クリス・チークやマット・ペンマンらを従えた2ndリーダー作「Ocean Avenue」(2005年)もよくできていた。本作も重厚な音の厚みがあり、楽器の重ね方や聴き手の求心力を持続させるメロディ作りなど、いかにもコンポジションの才能があるなぁ、という感じがする。人によってはややアレンジ過多と解釈するかもしれないが、そこを「暑苦しい」と感じるかどうかでこの作品に対する評価が決まりそうだ。

ここに音源アリ



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ジャンル : 音楽

Svein Rikard Mathisen / Copenhagen Diaries

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Svein Rikard Mathisen (g)
William Larsson (p)
Paul Hinz (b)
Andreas Fryland (ds)

Aske Drasbæk (as on M-4, 6, 9)
Maylen Rusti (vo on M-4, 9)

Recorded: June 21-22, 2015, at the Village, dk
Engineer: Bjorn Gjessing (Curling Legs CLPCD150)

ノルウェーの新鋭ギタリスト、鮮烈デビュー

 非常にテクニカルだが、でも楽曲を聴かせたいーー。典型的なコンテンポラリー・ジャズギタリストである。ノルウェーの新鋭、スヴァイン・リカルド・マティセンが2015年10月にリリースしたばかりのデビュー盤だ。

 メンバーはスウェーデンとデンマーク、ノルウェーの混成。ヴィリアム・ラーション(p)にパウル・ヒンス(b)、アンドレーアス・フリューラン(ds)、アスケ・ドラスベク(as)、これにノルウェーの歌姫マイレン・ルスティが2曲でヴォイスを聴かせている。

 当然のように全9曲すべてオリジナル。冒頭からアダム・ロジャース似のテクニカルなギターが畳みかけてくる。なるほどそういう盤なのかと思ったら……M-2以降はにわかに様相が変わってくる。ありゃりや、こりゃギタープレイを聴かせるためのアルバムじゃないぞ。

 その証拠にM-4やM-9ではさりげなく女性のヴォイスが入ってきたり、曲によってはプログレッシヴ・ロックみたいな難度Aの超絶的なキメが続いたり。かなりアレンジに凝っており、明らかにギタープレイというより楽曲を聴かせようとしている。

 特にM-7のバラードなんかはかなりよくできている。なによりメロディが美しいし、曲の構成、アレンジとも凝りまくりで聴き手を決して飽きさせない。

 いやもちろんギターを弾けばバカテクなのだが(特にM-3の弾きまくり)、むしろソロという意味ではピアノがけっこうフィーチャーされている。このウィリアム・ラーソンというピアニスト、かなり斬れてるわぁーーと思って調べたら、あのイェスパー・ボディルセン(b)とかモルテン・ルンド(ds)ともやってる人でした。なるほどそうか。

 てなわけで新世代のジャズはこれだ、的な世界観をぐいぐい提示する1枚。聴き応え充分で、おそらくどんな好みの人にもフィットするだろう。かなりおすすめです。

ここに音源アリ



テーマ : JAZZ
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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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