Ralph Alessi / Cognitive Dissonance

Ralph Alessi_Cognitive Dissonance

Ralph Alessi (tp)
Drew Gress (b)
Jason Moran (p)
Andy Milne (p on 7, 12)
Nasheet Waits (ds)

Rec. September 10-11, 2004 and December 19, 2005, at Context Studios, NY
Engineer: Bobo Fini (Cam Jazz CAMJ 7827-2)

ジェイソン・モランの「隠れ名盤」である

 サンフランシスコ交響楽団出身で、M-BASSを通過してきたトランペット奏者、ラルフ・アレッシが2010年にリリースしたリーダー作だ。

 フリー人脈のメンバー構成だが、演奏はマニアックなひとりよがりに終わっていない。アヴァンギャルドでやや難解なのはM-9だけ。どの曲もメロディーが非常によく、退屈な楽曲は1曲もない。とてもエキサイティングな作・編曲能力である。また才人、ジェイソン・モランのピアノを楽しむアルバムとしても聴ける。ひと粒で二度おいしい作品だ。
 
 アレッシのオリジナルが11曲、メンバーとの共作が2曲、その他2曲の全15曲。3分台の短い曲が多く、変拍子の曲もあるが畳みかけるように一気に聴かせる。

 アレッシはなんというか、フェリーニの映画に出てくるような、ヨーロッパの片田舎を巡業する鄙びたサーカスの音楽隊みたいな味わいの曲を書く(どないやねん)。きっとユーモアのセンスがある人なのだろう。冒頭からいきなり大仰でこっけいなメロディーをトランペットが奏でたかと思うと、後を引き継いだジェイソン・モランが必殺のピアノソロを決める。このM-1でつかみはOKだ。

 個人的にいちばんのキラーチューンはM-10だった。ドラムスのリズムキープで始まり、次にベースとピアノが「せーの」で入るのだが……この2楽器がインした瞬間にドッと鳥肌が立つ。モランの挑発的な音の選び方と、のたうつようなベースのリフレインにはまったく痺れる。

 かたやモランのピアノに目を移せば、脳天ワシづかみなソロを取るM-2に、ベースが打ち出すフレーズに呼応したシュールなM-4、間を生かしたソロが鮮烈なM-5もいいし、M-10はバッキング時の音の使い方が絶妙だ。このCDは彼のピアノを聴くだけでも価値がある。本当にすごいピアニストである。

 さてこんなふうに楽曲のよさとモランのプレイに目を奪われがちになるが、実はこのアルバムで重要な役割を演じているのがベースのドリュー・グレスである。

 彼はリフレインを効果的に使い、ちょっと奇妙で耳に残る印象的なフレーズを提示する。それにナシート・ウェイツがフリーっぽく崩したドラミングで応じる。で、この土台の上にモランとアレッシが乗っている、という構造になっている。

 余談だが、本盤は録音が2004年9月と2005年12月なのに、発売されたのは2010年。5~6年も遅れてリリースされているわけで、「いったい何があったんだろう?」と野次馬的な興味をかき立てられる。制作のウラにはいろいろあるんだろうなぁ、みんな大変だよねぇ、的な感慨もひとしおの深い一作だ。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Jaleel Shaw / Optimism

Jaleel_Shaw_Optimism

Jaleel Shaw (as)
Lage Lund (g)
Robert Glasper (p, except 3,5,9, Rhodes on 2,4,6,8)
Joe Martin (b)
Johnathan Blake (ds)
Jeremy Pelt (tp on 7, flh on 11)

Rec. June 25-26, 2007, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Joe Marciano (Changu Records CR001)

音楽的な多様性を見せたメロウな快作

 アルト奏者、ジャリール・ショウが、2008年にリリースした2枚目のリーダー作だ。前々回にレヴューしたファースト・アルバムとくらべアンビエントで静かな楽曲も目立つが、テーマをばっちり決めた4ビートなどもあり満足度は高い。ショウが音楽的な多様性を見せつけた意欲作だ。

 ショウのオリジナルが9曲、スタンダードが2曲の計11曲。キメを多用したテーマがかっこいい4ビートのM-1に、浮遊するリズムが妖しい3拍子のM-3、ロバート・グラスパーがメロウなローズピアノを聴かせるM-4、ジェレミー・ペルトのトランペットが利いたM-7、シリアスでフュージョン的なM-10がいい。

 メンバー的には、ベーシストが前作のヴィセンテ・アーチャーからジョー・マーティンに替わり、新たにトランペッターのジェレミー・ペルトが2曲参加している。あとは前回と同じメンバーだ。

 ドラマーのジョナサン・ブレイクは前作とくらべ、バタバタした「あたふた感」がなくなり、プレイが落ち着いた。いい意味で力を抜き、抑えた演奏をするようになったようだ。相変わらず音数は少なくはないが、以前とちがい枯れた味わいが漂ってきた。

 また前作で抜群のメロディーセンスを発揮したギタリストのラーゲ・ルンドは、本作ではややサポートに回っている(M-5のソロは美しいが)。個人的にはルンドのソロがもっと聴きたいが、静的な楽曲を増やした関係上しかたないだろう。

隠れた主役はアンビエントな安らぎ感だ

 ルンドがバッキングに回ったこととも符合するが、今回のアルバムを象徴しているのは冒頭で挙げた派手な楽曲ではない。スローバラードのM-8であり、アンビエントなM-9、ミニマルミュージック的なM-11である。悠久の母なる海をゆらゆら漂うような、心地よくリラックスできる楽曲群だ。前作でも一部、「こっち系」の片鱗は見えたが、今回はそれが全面開花した感じである。

 一方、M-6はラップ的なビートだが嫌味にならず、たゆたうようなノリを気持ちよく聴かせる。若い黒人ジャズマンはとかく新しいことをやりたがり、ヒップホップやエレクトリックな要素を取り入れるなどして自己崩壊するパターンが多い。だがショウの場合はそうした要素を、あくまでピリッと利いたワサビ程度に留めているところがうまい。

 さて本作のキーマンはズバリ、ピアニストのロバート・グラスパーである。アコースティック・ピアノのみだった前作から今回は一気に4曲でローズを採用しており、サウンド面でかなりの化学変化を生んだ。グラスパーの操るローズが独特のメロウな音色をいかんなく発揮し、これがアルバムのカラーを決定付けている。

 シングルカット向けのメロディアスな要素やノリのよさでは前作が鮮烈だが、本作は一度ハマると飽きない味わい深さがある。冒頭で挙げたキャッチーな楽曲とミニマル&アンビエントな楽曲、それにスタンダードをアレンジした王道系の楽曲がばっちりハーモナイズしている。

 アルト奏者としてだけでなく、コンポーザー、メロディメイカーとしての才能も見せつけたショウは、次はいったい何をプレゼントしてくれるのか? 今年発売されるサードアルバムがいよいよ楽しみだ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Jimmy Greene / Mission Statement

Jimmy Greene  Mission Statement

Jimmy Greene (ts,ss)
Lage Lund (g)
Stefon Harris (vib on M-5)
Xavier Davis (p,rhodes)
Reuben Rogers (b)
Eric Harland (ds)

Rec. October 13-14, 2008, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Mike Marciano (Razdaz SSC4608)

都会的で洗練されたコンテンポラリージャズ

 ジミー・グリーンはサックス奏者としてより、むしろコンポーザーとしての能力が高いように思う。曲調は都会的でコンテンポラリーかつ洒脱、1曲を除きすべて彼のオリジナルだ。どの曲も地味めでさり気ないが、繰り返し聴くほどに味が出る。

 グリーンの作品はルーベン・ロジャース(b)とエリック・ハーランド(ds)の参加に目がくらみ、本作と「True Life Stories」(2006)、「Gifts and Givers」(2007)を立て続けにリズム隊買いした。が、買った当初は正直激しく後悔した。

「うわぁ、このサックス、パッとしないなぁ。フレーズがなんとなく流れて耳に残らないし、飛び抜けた部分が感じられない。楽曲も地味でイマイチだし。やっぱり脇のメンツに騙されてリーダー・プレーヤーに思い入れがないCDを買うと後悔するなぁ」

 そんな感じだった。

 だが聴き込むうち、だんだん楽曲に惹かれて行った。

 グリーンが書く曲は突き放した不思議な明るさがある。ただわかりやすい美メロじゃないから、一度や二度聴いただけではよさがわかりにくい。「つかみ」として成立する大仰なメロディではないので返ってしつこくないし、暑苦しくなくていい。こういうあっさりしたサラダ味はいったんハマると飽きがこない。

 グリーンは胃薬を飲むように毎日聴け。そうすれば必ず効く。

 本日の格言である。

ラーゲ・ルンドのクールなギターがいい

 さて本作は楽曲のよさ以外にも、冴えたギタープレイとリズムセクションのノリが魅力的だ。まずM-1、M-2、M-7で聴けるラーゲ・ルンドのクールで洗練されたギターソロがいい。

 ルンドはマイク・モレノ、アダム・ロジャースと並び、コンテンポラリー・ジャズギタリストの御三家だ。「誰もがローゼンウィンケルになりたかった時代」にデビューしたルンドとモレノは、初期の頃にはカートっぽい浮遊系のノリと硬い音質、フレージングがウリふたつだった。どっちがルンドでどっちがモレノか、2人は見分けがつかなかった。だがその後めいめい順調に自分の色を出してきている。

 モレノがより柔和で美しく繊細な方向へ進んだのに対し、ルンドは無機質なマシンっぽさはそのままにシャープで厳格なピッキングとフレージングで記憶に残るメロディを量産し続けている。

 一方、お目当てだったルーベン・ロジャースとエリック・ハーランドのリズムセクションも期待通りだ。彼らの地を這うようなうねるグルーヴは、どのアルバムでも非常に質が安定している。プロなら80点以上の作品をコンスタントに作り続けられるのは当たり前だが、彼らの場合は80点じゃなく120点なのだから驚かされる。

 ハーランドは重いドラムを叩くが、おかずになると速いパッセージをびっくりするほど軽やかにこなす。彼のように「重くて軽やかな」ドラマーは珍しい。

 回りの音もよく聴いている。M-3、M-10ではソロを取るサックスのフレージングに反応し、瞬時に答えを返す彼のドラミングにハッとさせられる。広がりのある音質もよく、絶対買って損はない良盤だ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Jaleel Shaw / Perspective

Jaleel Shaw Perspective

Jaleel Shaw (as)
Mark Turner (ts, on 8, 10)
Lage Lund (g, except 8, 9)
Robert Glasper (p, except 9)
Vicente Archer (b)
Johnathan Blake (ds)

Rec. February 12-13, 2004, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: James Farber (FSNT 222)

ポスト・バップへの回答

 ミンガス・ビッグバンドやロイ・ヘインズのグループで頭角を現したフィラデルフィア生まれのアルト奏者、ジャリール・ショウが2005年にリリースしたデビュー盤だ。

 ショウの手によるオリジナルが7曲、その他3曲の全10曲。冒頭からメロディーが耳に残る明るい佳曲が続く。なかでもコンテンポラリーで軽やかなM-1、哀感漂うメロディアスなM-2、気だるいミディアム4ビートのM-3、キメを多用したノリのいいM-5が印象に残った。(M-1イントロでのロバート・グラスパーのピアノが、モロにメルドーの手クセそのものなのが微笑ましい)

 楽曲だけでなくメンバーもいい。2005年モンク・コンペで優勝したラーゲ・ルンドのギターはどの曲もすばらしい。特に導入部がわくわくするM-1のソロはリズムが面白く、M-2のアドリブは構成がいい。

 グラスパーのピアノがリズミカルに爆発するM-5では、ドラマーのジョナサン・ブレイクが背後でドカドカ煽るわ、煽るわ。彼のバタつくドラミングは個人的には好みじゃないが、非常に個性的なドラマーといえる。このほかコルトレーン曲をショウがアレンジしたM-8、M-10の2曲でマーク・ターナーが参加しているのも話題だ。
 
 ただひとつ文句をいえば、低域がモワつき、ベースのフレーズが聴き取りにくいのがいただけない。(ヴィセンテ・アーチャーはもっとエッジの利いたベースを弾く。音がボケているのはたぶんエンジニアのせいだろう)。だがそんな音質面のマイナスを差し引いても、やっぱりもう一度聴きたくなるコンテンポラリー・ジャズの好盤だ。

 なおショウは2作目の「Optimism」(2008年、レヴュー記事はこちら)に続く最新サードアルバムを録り終えたばかりで、2012年中にリリースする予定のようだ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

J.D.Allen / Pharoah's Children

J.D.Allen / Pharoah's Children 

J.D. Allen (ts)
Jeremy Pelt (tp,on 1,3,11)
Orrin Evans (p)
Eric Revis (b)
Gene Jackson (ds)

Rec.December 18, 2001, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Max Bolleman (Criss Cross 1221)

浮遊する脱力系テナーの味わい

 ジェレミー・ペルトのグループで聴ける脱力系のプレイが印象的なテナー奏者、J.D.アレンのセカンド・リーダー作である。(2002年リリース)

 デビューアルバムの「In Search Of 」(1998)はコルトレーン丸出しで熱く60年代していたが、こちらは打って変わって現代的だ。クールで力まない思索的なジャズをやっている。

 アレンのオリジナルが10曲、参加ベーシストのエリック・レヴィス曲が1曲の計11曲。無機的でクールな4ビートのM-1に、謎めいたバラードのM-5、遊びを利かせたリズムが面白いM-6、とぼけたテイストのM-7、テーマが耳に残る4ビートのM-10がツボにきた。

 奇妙に明るいメカニカルなメロディと浮遊するリズムが、ブイブイ言わせてた頃のマーク・ターナーやカート・ローゼンウィンケルを思わせる。だがその一方で60年代のアンドリュー・ヒル、ウェイン・ショーター的でもある。往年のBN新主流派と現代のNYコンテンポラリーな人たちってやっぱり繋がってるんだなぁ、と再認識させられるアルバムだ。

 妖しいM-2やフリー寄りのM-4あたりは取っつきにくいが、それでも繰り返し聴くうちに気持ちよくなってくる。典型的な麻薬盤である。

 そうとは知らず試聴時にM-1を聴き「カッコイイ!」と即買いしたが、M-1的な曲がズラリ並んでいるとばかり思っていたので、アルバムを通して聴いたら「なんじゃこりゃ?」。で、しばらく放置していたが、懲りずにまた聴くと今度は「えっ? こんなによかったっけ?」。以後すっかりカラダに馴染み、聴けば聴くほど味が出るスルメと化した。

 アレンは目下、メンバーを完全固定した自己のサックス・トリオで「I AM I AM」(2008)、「SHINE!」(2009)、「VICTORY!」(2011)と作品を連発している。ジャズでメンバー固定は珍しいし、ピアノレスのサックストリオでひたすら押しまくるというのも異例だ。個人的には、ふつうにワンホーンカルテットくらいでM-1、M-7、M-10あたりの路線をやってほしいが……きっと変わった人なんだろうな。大好きです、そういう人。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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