Jordi Matas Quintet / Racons

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Jordi Matas (g, vo)
Marti Serra (ts, ss)
Jorge Rossy (p, Fender Rhodes)
Pere Loewe (b)
Oscar Domenech (ds)

Rec. during August 2004, January 2005, at Bon Repos, Barcelona
Engineer: Jordi Matas (FSNT 236)

カート・ローゼンウィンケル系の荒ぶる若手ギタリスト

 アルバム「DEEP SONG」 (2005)あたりのカート・ローゼンウィンケルが好きな人におすすめの1枚だ。ダークで妖しいブルックリンの香りぷんぷん。スペイン・カタルーニャ出身の若手ギタリスト、ジョルディ・マタスのセカンド・リーダー作である。

 のたうつようにうごめくギター。クリス・チークやマーク・ターナーを思わせる、当てどもなくクールに浮遊するサックス。作曲面では、人間の焦燥感を掻き立てるようなナーバスな音を使う。これはいわばNYコンテンポラリー系ジャズに対するスペインからの回答である。元ブラッド・メルドー・トリオのドラマー、ホルヘ・ロッシがピアニストとして参加しているのも目を引く。

 全11曲すべてオリジナル。翳りと愁いを感じさせる陰影感のある作風だ。マタスのギター・プレイは音色やタイム感にカート・ローゼンウィンケルの影響を感じさせる。というか楽曲によっては「クリソツ」といっていい。

 一方、サックスのマルティ・セラは、ひょうひょうとして絶対に力まない現代的な演奏をする。乾いた音で醒めたサックスを吹く、雰囲気作りのうまいプレイヤーだ。このバンドの表情は、明らかに彼らギターとサックスが決定付けている。

 主役のマタスは、2003年にファースト・リーダー作「All That Matas」 (FSNT176)でデビューした。同作もホルヘ・ロッシがピアノで参加し、ニューヨークとカタルーニャの触媒の役割を果たしているのが興味深い。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Albert Vila Quintet / Foreground Music

Albert Vila Quintet  Foreground Music

Albert Vila (g)
Enrique Oliver (ts)
Roger Mas (p, Fender Rhodes)
Tom Warburton (b)
Marc Ayza (ds)

Rec. December 9-10, 2006, at Studio Le Roy, Amsterdam
Engineer: Mikel Leroy (FSNT 302)

明るく浮遊するスペイン人ギタリスト

 スペイン・バルセロナ出身のギタリスト、アルバート・ヴィラがFSNTからリリースしたデビュー作だ。全10曲オリジナル。今っぽく浮遊する味のあるコンポジションが冴えている。

 ヴィラは耳に残るフレーズを量産するメロディ・メーカーだ。メカニカルで印象的なテーマやキメを多用する。このあたりはカート・ローゼンウィンケルや、マーク・ターナーの影響を感じさせる。だがそこはスペイン人らしいおおらかさがある。NYの若手みたいに暗く無機的な音に走らず、明るく陽性のコンテンポラリー・ジャズを演じている。

 ギター・プレイは音色や間の取り方にローゼンウィンケルの気配がするが、はっきりとしたオリジナリティがある。カッチリしたピッキングには、師であるジェシ・ヴァン・ルーラーの影響も見える。正確さやスピードでなく、フレージングの上手さで聴かせるギタリストである。

 彼はオランダのアムステルダム芸術学校でジェシ・ヴァン・ルーラーに5年間師事。2004年に Dutch Jazz competition で、本作にも収録されている 「Gym-Jam」 がベスト・コンポジションを受賞した。2005年にはニューヨークへ渡りマンハッタン音楽院で学び、翌年バルセロナでこのクインテットを結成。2007年に Debajazz contest で優勝し、本作をリリースした。

 このバンドはギターだけでなくテナーとピアノもいい。特にピアニストはおおらかで伸びのあるピアノを弾く。リズム隊はややルーズすぎる嫌いもあるが、これは低音がボケた盤自体の音質も影響しているのだろう。

 ヴィラは同じくFSNTからセカンド・リーダー作 「Tactile」 (2011) もリリースしている。さっそく仕入れて聴いてみたい。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Ralph Bowen / Total Eclipse

Ralph Bowen  Total Eclipse

Ralph Bowen (ts, ss)
Jared Gold (org)
Mike Moreno (g)
Rudy Royston (ds)

Rec. October 20, 2011, at Acoustic Recording, NY
Engineer: Nick O'Toole (Posi-Tone Records PR8097)

ボウエンの「光」とモレーノの「影」が交錯するオルガン・ジャズ

 サックス奏者、ラルフ・ボウエンの新譜はゴキゲンなオルガン・ジャズだ。メンバーはジャレッド・ゴールド (org)にマイク・モレノ (g)、ルディ・ロイストン (ds)。モレノとロイストンが大のお気に入りだけに、期待は大だ。

 フタをあけてみると割にオーソドックスなノリノリのオルガン・ジャズだった。全9曲がオリジナルである。ゴールドがオルガンで弾くベースラインがゴリゴリと楽曲の核になっている。ボウエンの熱いブロウ、ロイストンのホットなプッシュとあわせ、力強い演奏だ。

 ギターのモレノはオルガンが弾くコードワークとのバッティングを避けるためかほとんどバッキングしていないが、大部分の曲でソロを取っている。彼のギターソロになると空気がまるで変わるのが興味深い。

 ボウエンが吹いているときは、熱き血潮が煮えたぎる系の古典的なよくある4ビート・ジャズなのだが、モレノがソロを弾き始めるとあたりの空気が一変し、ちょっと屈折したクール系の現代的なジャズに変貌する。モレノは楽曲を「まったく別の何か」に変える力をもっている。本当にスペシャルなギタリストだ。おすすめです。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Dave Allen / Untold Stories

Dave Allen  Untold Stories

Dave Allen (g)
Seamus Blake (ts)
Carlo De Rosa (b)
Mark Ferber (ds)

Rec. April 7-8,11, 2004, at Walker Recordings Jazz
Engineer: George Walker Petit (FSNT 220)

NYっぽいダークでシリアスな世界

 ニューヨークの若手ギタリスト、デイヴ・アレンのファースト・リーダー作だ。たまたま先に最新作のセカンド盤 「Real And Imagined」 (2007、レヴュー記事はこちら) を買い、興味がわいたのでデビュー盤も聴いてみた。

 メンバーは次作のセカンド盤でベーシストがドリュー・グレスに替わっている点を除けば、すべて同じメンツだ。シェイマス・ブレイク(ts)、マーク・ファーバー(ds)の起用が目を引く。

 音楽的にもセカンド作同様、NYっぽいダークでシリアスな世界が展開されている。ニッティング・ファクトリーや55バー、コーネリア・ストリート・カフェ等に出演歴があるというのもいかにもな感じ。全9曲すべてオリジナルだ。

 アレンのギター・プレイは、最初にセカンド作で聴いたときには線が細いと感じた。だが本盤も含め何度も聴くうちこの音色とスタイルに耳が慣れ、これもひとつの個性かなと感じるようになった。なにより作曲の方向性がドンピシャで好みだし、全曲オリジナルで勝負している意欲を買いたい。

 ただ一点、ベーシストのちがいは気になった。ベースの音に芯がなく、音の輪郭が曖昧でぼんやりボケている。それがバンド全体の演奏の躍動感にも影響している。セカンド作のドリュー・グレスの方が段違いにいい。

 ドラムスのマーク・ファーバーもそんな相方に影響されてか、スネアの鳴り方や歯切れのよさが落ちる。セカンド作のグレスとのコンビの方がいい。本作をたまたま手に取った人は、ぜひ進化したセカンド盤の方も聴いてみてほしい。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Josh Ginsburg / Zembla Variations

Josh Ginsburg  Zembla Variations

Eli Degibri (ts, ss)
George Colligan (p, Fender Rhodes)
Josh Ginsburg (b)
Rudy Royston (ds)

Rec. June 22, 2011, at Peter Karl Studios, NY
Engineer: Michael Perez-Cisneros (bju records BJUR 030)

NYC最先端、ダーク&クールなコンテンポラリー・ジャズ

 ブルックリンを拠点に活動している若手ベーシスト、ジョシュ・ギンズバーグの初リーダー作だ。ピアノにジョージ・コリガン、サックスにエリ・デジブリ、ドラムスにルディ・ロイストンを配した豪華なワンホーン・カルテットである。

 本作は全8曲、すべてギンズバーグのオリジナルと気合いが入っている。ベースとピアノが妖しくからむ導入部がかっこいい冒頭のM-1から、いかにもブルックリンっぽいダークな楽曲が続く。肌触りがひんやり冷たい現代的なジャズだ。私的にはどストライクな音である。

 デジブリに関しては過去のリーダー作にさっぱり乗れず完全スルーしていたが、ここでのプレイはいい意味でクールに醒めており非常に冴えている。そしてなんといっても本作の聴き物はコリガンである。アルバムの方向性にドンピシャなうすら寒い (ほめてます) ソロをバシバシ決めていて超かっこいい。

 ちなみに主役のギンズバーグは、コリガンのリーダー作 「Living For The City」 (2011)、「Runaway」 (2008)にも参加している旧知の間柄だ。ギンズバーグはもともと故郷のボルチモアでプロ生活をスタートさせ、その後ニューヨークでジョン・パティトゥッチに師事した。サイドメンとしてはトム・ハレルやマルグリュー・ミラー、ケニー・バロン、カート・ローゼンウィンケル、マーク・ターナーなどと共演歴がある。

 さて最後に見逃せないのが個人的なお気に入り、ルディ・ロイストンのドラミングである。「スパン!」と切れ味のいい彼のスネアとバスドラのがっつり感が、本作のカラーを完全に決定付けている。重さとノリのよさを両立させたいいドラマーだ。ギンズバーグのベースとも相性バッチリで、ずっしりした独特のノリを聴かせている。ニューヨークの先っぽが見えてくるおすすめの1枚である。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Dave Allen / Real And Imagined

Dave Allen  Real And Imagined

Dave Allen (g)
Seamus Blake (ts)
Drew Gress (b)
Mark Ferber (ds)

Rec. 2007, at Skyline Productions, Warren, NJ
Engineer: Paul Wickliffe (FSNT 297)

ニューヨークの 「今」 を聴かせる若手ギタリスト

 ニューヨークの若手ギタリスト、デイヴ・アレンがFSNTからリリースしたセカンド・リーダー作だ。デビュー作は同じくFSNT発の 「Untold Stories」 (2005) 。メンバーは前作に引き続きシェイマス・ブレイクをテナーに迎え、リズム隊はドリュー・グレス (b) とマーク・ファーバー (ds) という豪華な布陣だ。

 全曲オリジナル勝負とあって陰影感のある佳曲が続く。ニューヨークの 「今」 を感じさせるコンテンポラリーなジャズだ。カート・ローゼンウィンケルばりの無機質でメカニカルなテーマが出てきたり、かと思えばスピード感のある手に汗握る展開が聴けたり。16ビート系、4ビート系とバラエティに富む。ちょっと一時期のマーク・ターナーを思わせる曲調だ。

 フィラデルフィア出身のアレンはマンハッタン音楽院(MSM)で学び、卒業後そのままニューヨークで活動している。本人によればジョン・アバークロンビーやパット・メセニー、ジム・ホールらに影響を受けたという。確かにジム・ホールをかすかに歪ませたような音色だ。

 バンドの演奏は過度にアツくならず、感情を抑制したクールな今風の醒めたジャズである。楽曲や方向性は私にはかなりストライクゾーンだ。ただし 「熱くなければジャズじゃない」 的な好みの人には少々とっつきにくいかもしれない。

 ギタープレイは音色も含めオーソドックスそのもの。技術レベルは高いし、フィンガリングやリズムも正確きわまりない。バッキングもうまい。だが惜しむらくはパッと聴いて後頭部をぶっ叩かれるようなインパクト、強烈な個性がない。ひとことでいえば線が細い。

 注意深く聴けば相当高度なこともやっているしすごくうまいが、音色が特徴的なわけでもないし独特のノリを持っているわけでもない。耳に残るフレーズは時おり聴かせるものの、その人特有の手クセを耳にぐいぐいねじ込まれ 「あっ、あのギタリストだ!」 と名前を当てられるようなインパクトには欠ける。

 このプレイスタイルのまま、腕利き揃いで生き馬の目を抜くニューヨークのジャズ界でライバルより頭ひとつ抜きん出るには……何か音色を変えるとか間の取り方を個性的にするとか、大胆にアウトするとか考えないとなかなかむずかしいかなぁ、という感じはする。実際、この豪華なメンバーでなければ本作を手に取ることもなかっただろう。

 とはいえ楽曲はどれもいいし、NYの若手にありがちな難解なマスターベーションに陥る気配もない。過度にトンがるわけでもなく、かといって手垢の付いた平凡レベルに留まるわけでもない。音楽的センスは感じさせる。

 てなわけでもう少し聴いてみる気になり、速攻で彼のファースト・リーダー作 「Untold Stories」 (2005) を発注しました。おヒネリは投げたぞ、がんばれよー。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Steve Cardenas / Shebang

Steve Cardenas  Shebang

Steve Cardenas (g)
Larry Grenadier (b)
Kenny Wollesen (ds)

Rec. September 1-2, 1999, at Big House Recording, NYC
Engineer: Joe Ferla (FSNT 079)

夏草の香り、ふたたび

 セカンド・リーダー作 「Panoramic」 (2003) でカーディナスのギターに感じた「夏草の香り」を、このファースト・アルバムでも嗅ぐことができた。

 きらびやかな超絶テクニックで圧倒するのでなく、ルーズな「味」で聴かせるタイプだ。どこか牧歌的なまったり感を漂わせ、のほほんとしたくつろぎ感に心が和らぐ。艶と潤いのある音色もいい感じだ。 

 ギターのフレージングやメロディのセンスは、このデビュー当時からチラリとパット・メセニーを思わせる。だがそれもマイナスになっておらず、二番煎じ的なニセモノ感はまったくない。理由は、厳格なまでに正確なピッキングや速さが特徴のメセニーとまるで対照的な、いい意味でのラフなプレイスタイルが強烈な個性を放っているからだ。

 メンバーは、ブラッド・メルドーのレギュラー・トリオで一時代を築いたベーシストのラリー・グレナディアに、お気に入りのケニー・ウォールセンがスティックを握るのだから死角はない。本作のウォールセンのドラミングには今日のような線の太さや独特のため方はまだないが、それでも充分満足なデキだ。

 一方、音がぶっとく低域感あふれる音使いが特徴のグレナディアは、このころはまだエッジの立った高域が目立つ音色で弾いている。

 オリジナル9曲にその他1曲の合計10曲。カーディナスがいままでリリースしている3枚のリーダー作の中では、いちばん繊細でほのぼのしている1枚だ。強引に例えれば、初期のパット・メセニーがジャコと共演したソロ・デビュー作 「Bright Size Life」 (1976) に趣きが近い。

「バラエティを持たせるためにアコギの曲も入れたほうがいいな」と3曲(M-3、M-8、M-10)を散りばめ、「ノリのいい楽曲も入れとかなきゃ」とM-7を配置しました、というのが透けて見える構成だが、曲がいいのでそういうあざとさもマイナスになってない。ラストはM-10の美メロにどうぞノックアウトされてくださいませ。

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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