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Hubert Nuss / The Book of Colours

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Hubert Nuss (p)
John Goldsby (b)
John Riley (ds)

Rec. November 27, 2008, at Topaz Audio Studios, Koln
Engineer: Reinhard Kobialka (Pirouet PIT3051)

ポスト・コープランド、静寂をあやつる異端のドイツ人ピアニスト

 ドイツ人ピアニスト、ヒューベルト・ヌッスは沈黙の支配者だ。彼の作品からは静寂が聴こえてくる。彼以上に「静謐」という言葉が似合うピアニストはいない。

 あきれるほど間を取り、性急に音を詰め込まない。尾を引くように響く1音の余韻を生かして音楽を創造する。音が消え入るその間際、音が死ぬ瞬間の刹那を大事にしている。このタイム感はマーク・コープランドに近い。

 本盤は彼の4枚目に当たる最新リーダー作だ。メンバーや編成はいつもと同じピアノトリオだが、ヌッスのそんな特徴がよく表れている。過去作のなかで最も静けさが漂う作品だ。ボサノヴァ調で彼にしては珍しく明るいM-2や、速いテンポのM-4でも音符を畳み掛けるような気配はない。むしろ音を開放し、野に放った響きが自然に作るハーモニーを楽しんでいるかのようだ。

 特にM-2はノリのいいボサノヴァであるにもかかわらず、これ見よがしの流麗なソロを取るわけでもない。一貫して雰囲気のあるコードを全編に散りばめることに腐心している。こういうストイックさには痺れてしまう。コードを主体にしながら要所にメロディを散りばめる独特の手法は、彼のトレードマークである。

 そうした抑制の美学はアルバム構成にもあらわれている。Pirouet Recordsからの2作目に当たる本盤には、色彩 (Colour) をテーマにオリジナル全16曲がずらりと並ぶ。スタンダードを一部取り上げたやや甘めの前作 「Feed the Birds」 (2005) と異なり、「聴きやすさ」 のようなものからははるかに遠い徹底した辛口の作りをしている。聴き手を突き放した超然性が潔い。疑いなく彼の最高傑作である。

 ヌッスは1964年生まれ。8歳でクラシックピアノを始めた。デビュー作 「The Shimmering Colours of the Stained Glass」 (1998) 以来、リーダー作では頑なにトリオ編成にこだわり続けている。ECMに多くの録音を残しているイギリス・マンチェスター出身のジャズピアニスト、ジョン・テイラーに師事したが、作風はむしろ現代音楽の作曲家であるフランス人オリヴィエ・メシアンの影響が濃い。本作に封入された和声が放つジャズ離れした異端性もそんなところにある。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Torben Waldorff / Wah-Wah

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Torben Waldorff (g)
Gary Versace (p, fender rhodes, org)
Matt Clohesy (b)
Jon Wikan (ds)

Rec. April 5, 2012, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Jon Rosenberg (ArtistShare AS0117)

北欧生まれのメロディメイカー、トーベン・ウァルドルフの美メロな世界

 最初に聴いたとき 「このギター下手ウマだなぁ」 と拍子抜けした。だがよく聴いてみるとアルバム全編に耳に残るキャッチーなメロディが転がっている。全9曲オリジナルだが楽曲がいい。そうか、この人は1プレイヤーというよりコンポーザーなんだな、と納得する。そう視点を変えてみるとあら不思議、たちまち彼の音楽性が伝わってくる。ニューヨークで活動するギタリスト、トーベン・ウァルドルフの6枚目に当たる最新アルバムである。

 トーベンは1963年デンマーク生まれ。バークリー音大を卒業後、いったん帰国し1999年にスウェーデンのL.J.Recordsから 「No Bass / Hello World」 でデビューを飾る。その後、ふたたび渡米してニューヨークに拠点を移した。売れっ子のダニー・マッカスリンとはバークリー仲間だ。その縁でマッカスリンはトーベンの3枚目のアルバム (ライヴ盤) の 「Brilliance」 (2006) や4枚目 「Afterburn」 (2008)、5枚目 「American Rock Beauty」 (2010) にもクレジットされている。トーベンはこれら3作品をすべてArtistShareレーベルから出しており、本作はそれに続く最新盤に当たる。

 メンパーは4作続けてリズムセクションを務めるマット・クローシー (b)、ジョン・ウィカン (ds)のコンビに加え、新たにゲイリー・ヴァセイシ (p) が参加した。前作までメイン・ソリストの1人だったマッカスリンが抜け、トーベンのギターがよりフィーチャーされた内容になっている。

 まず冒頭、M-1の憂いを帯びたかっこいいテーマを聴いてほしい。これにはガツンとやられる。「なるほどこの人は才能あるんだな」てな感じだ。ぞくぞくするようなピアノによる導入部で幕が開き、ギターにテーマを渡すまでのスリリングな流れもすばらしい。アレンジャーとしてのセンスもありそうだ。変拍子や変態フレーズが入り乱れるニューヨークの 「先端」 ジャズ界にあって、トーベンはある意味まっ当でベーシックな曲作りをしている。逆にそれが新鮮である。

 イントロでベースがテーマを提示し、同じメロディをギターが引き継ぐM-4もいい。演奏が次第にヒートアップしてテンポが速くなり、頂点でギターが弾きまくりの速射砲状態になるが、こういうロック的なアプローチをするギターソロはひさしぶりに聴いた。トーベンはジャズを始める前、ジミヘンやストーンズにハマっていたらしいがなるほどだ。彼は下手ウマというより、どうやら介する文法がちがうのである。なんだかレッド・ツェッペリンを聴いていた高校時代がなつかしくなった。

 さてM-5でガラリと曲調が変わり、ボサノヴァ・フレーヴァーのきれいなバラードに。キュートでちょっとラテン風味のM-8も美しい。締めのM-9はこれまた美メロでドラマチックな展開だ。アルバム全9曲のうち6~7曲は相当なレベルにある。

 ぶっちゃけ、ギターテクニックだけならニューヨークには彼より上手いのはいくらでもいるだろう。だが技術は人の心を動かすための手段であり、それ自体が目的ではない。彼はこれからの人だが、いつの日にかテクニックではなく痺れるフレーズとセンスでリスナーを魅了するジョン・アバークロンビーあたりのポジションを築きそうだ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Pete Robbins / Do the Hate Laugh Shimmy

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Pete Robbins (as, fx)
Sam Sadigursky (ts, cl, bcl, fx)
Jesse Neuman (tp, fx)
Craig Taborn (fender rhodes)
Eliot Cardinaux (fender rhodes, fx, loops)
Ben Monder (g)
Ryan Blotnick (g)
Mike Gamble (g, loops)
Thomas Morgan (b)
Dan Weiss (ds)
Tyshawn Sorey (ds)

Released. 2007 (FSNT 313)

複雑なのにポップ、ブルックリンの新世代ニュータイプがこいつだ

 このところブルックリン界隈は個性的な若手アルト奏者を輩出している。このピート・ロビンズもそのひとりだ。1978年NY生まれ。ニューイングランド音楽院を卒業後、2002年からブルックリンを拠点に活動を始めた。ポール・ブレイやジョージ・ガゾーンらに師事し、変拍子を駆使したプログレッシヴな作風で知られている。

 本作はそんなピートの3枚目に当たるリーダー作であり、FSNTデビューとなった最新スタジオ録音盤だ。連鎖するキメと複雑なリズムパターンでゆくえが見えず、ジェットコースターのようにハラハラどきどきの展開が続く。かといって難解なわけでなく、曲調はむしろポップでさえある。まさにブルックリンのニュータイプといえる。

 メンバーは、ギターにベン・モンダーとマイク・ギャンブル。リズム隊はトーマス・モーガン (b)、ダン・ワイス (ds) というブルックリンでおなじみのコンビを軸に、今や日の出の勢いの若手ドラマー、タイション・ソーリーも4曲叩いている。ピートはアルト奏者である以上にコンポーザーであり、収録曲10曲すべてが当然のようにオリジナルである。

 朝焼けを想わせるベン・モンダーのギターで始まるM-1は、傑作を予感させるに充分だ。キメを多用し凝ったアレンジで聴き手を飽きさせない。トーマス・モーガンのベースラインがかっこいいM-2も同様にアレンジの勝利である。

 また複雑な構成のM-3では、途中クライグ・テイボーンがアブストラクトな必殺のピアノソロを見舞う。ほかに浮遊感漂う展開からファンキーに転じるM-5、終始抽象的な構成と音使いがミステリアスなM-7、たたみかけるようにキメが連なるM-9、ロック的アプローチが光るマイク・ギャンブルのギターが印象的なM-10が耳に残った。

 プレイヤー別ではトーマス・モーガンのセンスが随所に光っている。若手ながら最近仕事が急増しているのもうなずける。また新鋭タイション・ソーリーも、ピートの次作に当たるライヴ盤 「Silent Z live」 (2009) での叩きまくりほどではないものの片鱗は見せている。全体にホーンアレンジもよく、編曲のトンガリ具合が現代ブルックリン派のひとつの究極を提起したアルバムである。

 なおピートはヴィジェイ・アイヤー (p)、アイヴィン・オプスヴィーク (b)、タイション・ソーリー (ds) をフィーチャーした最新作をすでに録り終えたばかり。リリース日やレーベルはまだ未定だが発売が楽しみだ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Jake Saslow / Crosby Street

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Jake saslow (ts)
Mike Moreno (g)
Fabian Almazan (p)
Joe Martin (b)
Marcus Gilmore (ds)

Rec. May-Jun, 2011, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Mike Marciano (14th Street Records 14SR 1101)

モレノ、M・ギルモアらNYオールスターズが結集した癒し系コンテンポラリー

 疲れた時に流しっ放しにしておきたいCDってある。本作はまさにそんな1枚だ。ゆったりしたテンポでリラックスでき、知らず知らずのうちに1日の疲れが飛んで行く。だが本盤は単なるヒーリング・ミュージックではない。曲調は緩いが演奏はハイレベルだ。NYのオールスターが繰り広げるインタープレイに耳を奪われること請け合い。若手テナー奏者、ジェイク・サスロウのデビュー作である。

 サスロウのテナーは最近紹介したオハッド・タルマー、マーク・モマースらと同様、若いのに枯れた味わいがある。非エネルギッシュで脱力し、ゆらゆら漂う感じがなんともいえない。ざっくり分類すれば3人ともマーク・ターナー系だ。現代NYの若手の間ではこのスタイルがひとつのスタンダードなのだろう。

 彼は2004年にマンハッタン音楽院を卒業し、ディック・オーツやジョージ・ガゾーン、デイヴ・リーブマンらに師事した。その後、The Thelonious Monk Institute of Jazzで学び、2009年からニューヨークを拠点に活動している。

 メンバーは我らがマイク・モレノ (g) に、テレンス・ブランチャードのレギュラー・コンボも務めるキューバ出身のファビアン・アルマザン (p)。かたやリズム隊はジョー・マーティン (b) とマーカス・ギルモア (ds) という強力な布陣だ。

 ホレス・シルバー曲とオリジナル6曲の合計7曲。キャッチーでかっこいいM-1のインパクトが特に強い。ミディアム~スローの似た楽曲が並びやや変化に乏しいが、そのぶん統一感はある。あえてカテゴライズすれば癒し系のNYコンテンポラリーである。

 メンバー個々を見るとマイク・モレノは相変わらずだ。ふんわり浮遊するファンタジーなプレイがすばらしい。彼のまったりしたギターの音色とタイム感が本作のテイストを完全に印象付けている。

 一方、リズム隊もすばらしい。特にひさしぶりに聴いたジョー・マーティンには感心させられた。しなやかに揺らめきながら聴き手をリズムに乗せ、バンド全体のグルーヴを完全に牛耳っている。絶妙なノリとリズム感だ。

 彼はマーク・ジョンソンあたりと同じく、細くタイトでクッキリした音のペースを弾く。ふつうのベーシストは音の中心部に芯があり、それを中心に周囲へ広がるごとに音がぼけて行く感じだが、この人は音そのものがコリッとした芯でできているかのようだ。

 かたやマーカス・ギルモアはいつもの 「ズリ・ズリ・ズリッ」 と地を這うようなノリである。ムチのようにしなるアタック感が弾力的で非常にバネがある。ズンと重心が低く安定しており、それを核としてたわみながらおいしいオカズを入れて行く。

 最後にエンジニアを務める名手マイク・マルシアーノの仕事は当たりだ。エッジをくっきり出すジョー・マーティンのペースがよく録れている。音の肉付きも申し分ない。中高域の解像感も高く満足なデキだ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Loren Stillman / Winter Fruits

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Loren Stillman (as)
Nate Radley (g)
Gary Versace (org)
Ted Poor (ds)

Rec. June 4-5, 2008, at Bennett Studios, NJ
Engineer: Jason Seizer (Pirouet Records PIT3042)

空間の創造者、スティルマンのアルトが静寂を演奏する

 ローレン・スティルマンは静寂を演奏する若手サックス奏者だ。10枚目の最新リーダー作に当たる本盤でもそれは同じである。間を生かして必要以上に音を刻まず、粛然とした何もない空間を作り出す。いわば空間の創造者である。

 本作はギター入りのオルガン・トリオにサックスを加えた編成だが、オルガン・ベースの音圧が (意図してかどうか) かなり低い。つまり低音部を埋めず余白を残す音作りをしており、たっぷりとしたスペース・メイキングがますます生きている (まるでベースレスのようだ)。

 そのためスティルマンならではの奇妙な味のあるテーマやキメが、従来作以上に何もない空間にぽっかり浮かび上がる仕掛けになっている。このアレンジ手法がアルバム全編にちょっとシュールな雰囲気を漂わせている。

 メンバーは別プロジェクトのグループ 「Bad Touch」 の顔ぶれと同じだ。ゲイリー・ヴァセイシ (org) 、ネイト・ラドリー (g)、テッド・プア (ds) といういつもの面々が共演した。

 メンバーのプアによる2曲に加え、スティルマンのオリジナル6曲の合計8曲。サウンド面では、中高音部を受け持つヴァセイシのオルガンとラドリーのツボを押さえたバッキングが重要な役割を担う。

 スティルマンが作ったスペースにヴァセイシとラドリーが代わる代わる顔を出し、印象的なフレージングとコードワークでアルバムに 「顔」 をつけて行く。2人の音使いはスティルマン同様アンダーグランドな色があり、この味付けがアルバムカラーを完全に決定付けている。ただし本作はNYの若手によくある暗くダークな音でなく、むしろクールに突き抜けた奇妙な明るさが印象的だ。

 一方、彼らを支えるプアのドラムは太くどっしりした安定感がある。ややため気味の重いプレイが特徴の彼のドラミングには壮大なスケール感があり、ニューヨークの若手の中でははっきりトップクラスである。

 それにしても、この変てこなメロディーを生み出すスティルマンのセンスにはまったく脱帽だ。 「技術」 は人の心を動かす道具のひとつだが、彼が発散する奇態な 「感性」 も技術に劣らず重要なツールとして機能する。後天的なトレーニングでは身に付けられないサムシングを、スティルマンが持っているのは明らかだ。

【関連記事】

『Loren Stillman Quartet / How Sweet it is』

『Loren Stillman / It Could Be Anything』

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Ohad Talmor / Newsreel

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Ohad Talmor (ts)
Shane Endsley (tp)
Jacob Sacks (p, Fender Rhodes on M-3)
Matt Pavolka (acoustic bass, electric bass on M-3)
Dan Weiss (ds, voice)

Rec. September 2008, at Peter Karl Studio, NY
Mixed by Pete Rende (Auand AU9023)

イスラエル系テナー奏者が仕掛けるユーモラスな悪戯

 現代NYの息吹が聴こえてくるような作品だ。アルバムの随所に新しさと悪戯心をくすぐる仕掛けがある。ユーモアのセンスが感じられる逸品である。イスラエル系アメリカ人の若手テナー奏者、オハッド・タルマーの最新作だ。

 タルマーはマーク・ターナー系の脱力した今風テナーを吹く。リー・コニッツを師に持ち、コニッツとのプロジェクトでも共演しているだけに芸風が似ている。前回紹介したマーク・モマース (ts) と同じく、決して熱くならないストイックな緊張感をウリにする。

 メンバーも豪華だ。トランペットにスティーブ・コールマンとの共演で知られるシェーン・エンズレイ、リズムセクションにはジェイコブ・サックス (p) とマット・パヴォルカ (b)、ダン・ワイス (ds) を配した。特に本作ではジェイコブ・サックスがブッ飛んだプレイをしている。またパヴォルカとワイスのリズム隊が曲中で自在にテンポを変えるなど、リズミカルなからみも非常にエキサイティングだ。

 オリジナル8曲に加え、オーネット・コールマンの「New York」など全10曲。トラディショナルなM-1とM-10のほか、リズムの解釈がおもしろいM-4や美しいバラードのM-6、凝った構成が知的なM-8、ノリがよくスタイリッシュなM-9あたりは真っ向勝負の秀曲だ。

 ただし曲に合わせてダン・ワイスがセリフをしゃべるシュールなM-2や、エレクトリック・ベースでスラップ奏法を聴かせるM-3などは人によってはギミック (こけおどし) と感じて乗れないかもしれない。

 アメリカ国歌のパロディが登場するなど、本作にはこの種の風変わりなアイデアが至るところに盛り込まれている。そこをユーモアと取るか悪ふざけと感じるかで、作品に対する評価が変わりそうだ。聴き手のセンスが問われるリトマス試験紙のようなアルバムである。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Armen Donelian / Leapfrog

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Armen Donelian (p)
Marc Mommaas (ts)
Mike Moreno (g)
Dean Johnson (b)
Tyshawn Sorey (ds)

Rec. July 19-20, 2010, at Firehouse 12 Studio, CT
Engineer: Nick Lloyd (Sunnyside SSC4010)

エスニックなスパイスを効かせたNYコンテンポラリー最前線

「これが60才を過ぎた演奏家の作るアルバムか?」 と驚くほどコンテンポラリーな作風だ。独特のエスニックな愁いを帯びた翳りのあるメロディーと、効果的なリフが耳に残る。レア盤ピアノトリオ作品 「Trio 87」 で知られるアルメニア系ピアニスト、アーメン・ドネリアン (1950年・NY生まれ) がサニーサイド9作目として放った最新作である。

 フロント陣がユニゾンで奏でるテーマやキメは、とことんいま風でトンガリ感が漂う。ギターのリフがド派手なM-1のインパクトが強いが、イントロのピアノが美しいM-3やラテン風でゆったりしたメロディーが心地いいM-7など、アルバム・トータルとしての完成度はかなり高い。ミディアム~スローの味わい深い佳曲が多く、満足感の高い作品だ。

 メンバーは現代NYの才能たちが集まった。さながらヒット作請負人と化したマイク・モレノ (g) に、オランダ出身でニューヨーク在住のマーク・モマース (ts)。リズム隊はディーン・ジョンソン (b) と、今や熱狂的なファン層を獲得しつつあるタイション・ソーリー (ds) だ。中堅ピアニストが旬な若手を集めて作ったアルバムという観がある。

 メンバーのモマースが持ち寄ったM-5以外、7曲すべてオリジナルだ。冒頭に書いた通り、この年齢の音楽家が作ったとは思えないほど今っぽいナンバーが続く。ドラマーのタイション・ソーリーはM-1で音数の多い暴力的なドラミングをぶっ放すが、M-2以降は打って変わって周囲の状況を把握したプレイぶりでプロっぽい。もちろんM-1のアグレッシヴなプレイもいいが、2曲目以降の通好みな展開もオツである。

 悠久の大地を想わせるかのようにたゆたうモレノのギターもすばらしい。決して強くピッキングせず、ほんのり軽いタッチを大切にしながら爪弾く彼のセンスにはまったく痺れる。

 一方、有望な「これからの人」であるモマースのテナーもすごくいい。この人は絶対にわかりやすく爆発しない。ジョー・ロヴァーノ~マーク・ターナー系の決して力まない抑制的な侘びさび感がたまらない。

 彼らとくらべドネリアンのピアノは強烈なアクこそないが、技術レベルとセンスのよさは充分伝わってくる。質の高いコンポジションを土台に、彼ら3人がそれぞれソリストとしての個性をいかんなく発揮した。この作品は総合力の勝利である。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Jeff Denson / Secret World

Jeff Denson Secret World

Jeff Denson (b, vo)
Ralph Alessi (tp)
Florian Weber (p)
Dan Weiss (ds)

Rec. August 17-18 & 20, 2011, at Acoustic Recording, NY
Engineer: Michael Brorby (Between The Lines BTLCHR 71229)

みずみずしい透明感と夢見るような繊細さ

 みずみずしい透明感があり、繊細な響きに思わず引き込まれる。リズミカルに差し込まれるピアノの美味なコードに乗り、ラルフ・アレッシのトランペットがいたずらっぽくちょっと前衛寄りのメロディーを奏でる。ヨーロッパの香りがする現代ジャズだ。

 冒頭からため息が出るような美しい楽曲が続く。かといって綺麗なだけでなく、リフをうまく使った独特のノリに熱く身体が突き動かされる。これはまちがいなく2012年に聴いたアルバムのベストテンに入るだろう。

 名エンジニア、マイケル・ブロービーが手がけるべらぼうな音質のよさも手伝い、プレーヤーの思考が聴き手の脳に直接伝わってくるかのよう。リー・コニッツ・カルテットのメンバーとしても知られる若手ベーシスト、ジェフ・デンソンの初リーダー作である。

 メンバーは鬼才ラルフ・アレッシに、数々の受賞歴を誇るドイツ人ピアニストのフローリアン・ウェーバー、NYコンテンポラリー界の才人ドラマー、ダン・ワイスと俊英ぞろい。主役のデンソンは前出のウェーバー率いるピアノトリオ 「Minsarah」 でも活動している。

 全10曲すべてデンソンのオリジナル。M-1からいきなりベースソロを弾いたり、M-2とM-6では自分で歌まで歌って相当自己顕示欲が強そうだが、内容はすごくいい。構成的には、アレッシの妖しくも素っ頓狂なトランペットの妙味が全体のカラーを決定付けている。リリカルで印象的なフレーズを繰り出すウェーバーのピアノも惹きが強い。

 このコンポジションなら作曲家としても将来性は大だ。 「端麗」 という言葉はまさに本作のためにある。後半にやや中だるみがくるがそれも愛嬌、この音質、この曲のよさなら文句なしだろう。今から次回作を予約できないか、えらく気の早い期待を抱かせる好アルバムである。

テーマ : JAZZ
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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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