Gian Tornatore / Blackout

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Gian Tornatore (sax)
Nate Radley (g)
Jon Anderson (fender rhodes)
Thompson Kneeland (b)
Jordan Perlson (ds)

Rec. August 31 & September 1, 2005, at Acoustic Recording, NY
Engineer: Michael Brorby (FSNT 259)

ストイックなヤマ場のなさが新しい

 ニューヨークを拠点に活動する若手サックス奏者、ジアン・トルナトーレは 「やおいジャズ」 の使い手だ。楽曲に劇的なヤマやオチがなく、淡々とひたすら平坦に展開する。起伏に乏しく無機質だが、でもそこが先鋭的じゃん、という新世代ジャズである。

 彼は決して熱くならないクールなサックスを吹く。あえてカテゴライズすればクリス・チークやマーク・ターナー、ウィル・ヴィンソンあたりに近い。逆にマイケル・ブレッカーやクリス・ポッター、ラルフ・ボウエンみたいな熱血系とはまるで対極に位置している。

 バークリー音大卒、名手ジョージ・ガゾーンに師事した。2003年にFSNTからリリースされた 「Sink Or Swim」 でデビューし、2008年モンク・コンペではセミ・ファイナリストになっている。最新作は 「The Heights」 (2012) だ。現在まで4枚のアルバムを出しており、本作はセカンド盤に当たる。

 全7曲すべてオリジナル。ニューヨークにいる若手の例に漏れず、完全オリジナル志向である。テーマがかっこいいM-1やM-2、珍しくヤマ場で盛り上がるM-4、逆に何ごとも起こらないのが新鮮なM-5あたりが目を引く。

 メンツ的には、個人的に注目しているギタリストのネイト・ラドリーが2作目から最新作までずっと参加しているのが興味深い (ただしバッキング主体のかなり抑えた演奏だが)。バンド的にはキーボード奏者のジョン・アンダーソンがキーパーソンであり、要所で耳に残るソロやバッキングを聴かせる。またパワーヒッターのドラマー・Jordan Perlsonは、M-4で本領を発揮したハデなプレイをかましている。

 使用上の注意としては、好きな人はすごく好きだがハマれない人にはまるで乗れない音楽であること。特に熱くエネルギッシュなジャズが好みの人にはおすすめしない。同じジャズと名はつくが、音楽的にはずいぶん幅広いものである。いやはや。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Jostein Gulbrandsen Trio / Release of tension

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Jostein Gulbrandsen (g)
Ike Sturm (b)
Ronen Itzik (ds)

Rec. October 24, 2009, at Peter Karl Studios, NY
Engineer: Peter Karl (自主制作盤)

空間をあやつるスペイシーなノルウェー人ギタリスト

 暴れ馬のジョン・イラバゴン (ts) とアイヴィン・オプスヴィーク (b)、ジェフ・デイヴィス (ds) を擁した強力なデビュー盤が衝撃的だったので期待して聴いた。ニューヨークで活動するノルウェー人ギタリスト、ヨステイン・グルブランドセンのセカンド・アルバムだ。

 全体に凛とした透明感と繊細さ、気だるくメランコリックな雰囲気が漂う。前作よりややメロディアスだが、はるか上空に北欧の薄ぼんやりした曇り空が乗っかっているところは前作と同じだ。これが彼の音楽性なのだろう。

 本作ではメンバーを一新し、ギタートリオ編成にした。ベーシストは、セント・ピータース教会(マンハッタン)の副音楽ディレクターとして知られるIke Sturm。一方、ドラマーは、セバスチャン・ノエルと今年ヨーロッパ・ツアーに出る予定のRonen Itzikだ。

 全9曲すべてオリジナル。キャッチーで美しいメロディのM-5がひときわ目立つ。ヨステイン得意のしっとりしたアコギが聴ける極上のキラーチューンだ。ほかには叙情的で美メロなM-1やM-2、ノリのいい4ビートのM-3、空間の広がりを感じさせるM-4が耳に残った。

 新ベーシストのSturmは中高域を多用するジャコ・パストリアスみたいなプレイスタイルだ。そのためボトムが欠落して感じられ、彼のプレイにどうも乗れない。かたやドラマーのItzikは、ベーシストが音数多く前に出るぶんバランスを取るため抑えているのか、極端に控え目な演奏をしている。

 主役のグルブランドセンは、本作でメロディ・メイカーとしてのセンスがはっきり証明された。余韻を生かしたスペイシーなプレイスタイルもワン・アンド・オンリーで、才能にまちがいない。 これでメンバーさえよければなぁ、ホントに惜しい、と思うのは私だけだろうか。次回作に期待したい。

 ※本作は自主制作盤のため入手しにくいが、通販サイト 「CDBaby」「vento azul」 あたりでゲットできる。

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『Jostein Gulbrandsen / Twelve』

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Pete Robbins / Centric

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Pete Robbins (as)
George Garzone (ts)
Mike Gamble (g)
Chris Van Voorst Van Beast (b)
Pete Zimmer (ds)

Rec. February-May 2001, at PBS Studios, MA
Engineer: Pete Robbins (Telepathy Records)

ダークに鬱屈したブルックリンの暗黒夢

 ブルックリンを拠点に活動する若手アルト奏者、ピート・ロビンスは、自らの音楽をプログレッシブ・ポスト・モダン・ジャズと呼ぶ。ダークに鬱屈した都市の夢をサンプリングしたような音楽だ。歪んだギターや刺激的なリフ、変拍子を多用し、現代ニューヨークの猥雑な闇を描き出す。

 そんな彼の音楽性は、2002年にリリースされたこのデビュー盤ですでに垣間見える。計算された複雑なアレンジと効果音のようなギター、淫靡なフレーズをリピートするベースライン。まるで地球が終わる寸前に奏でられるレクイエムのような世界である。

 テナーに恩師ジョージ・ガゾーンを迎え、ギタリストは4作目まで行動を共にするマイク・ギャンブル。また昨年、5枚目のリーダー作 「Prime Of Life」 を出したばかりのピート・ジマー (ds) の顔も見える。全8曲すべてオリジナルだ。

 暗くドロドロしていながら耳に残る覚えやすいメロディーが随所に聴かれる。とっつき難そうな作風だけど思わず口づさんでしまう――ポップ以上、アヴァンギャルド未満な、このわかりやすさは不思議である。

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『Pete Robbins / Do the Hate Laugh Shimmy』

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Maciej Grzywacz / Black Wine

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Maciej Grzywacz (g)
Yasushi Nakamura (b)
Clarence Penn (ds)

Released. 2011, at Sound and More studio, Warsaw
Engineer: Rafat Smolen (Black Wine Records)

ワイルドな悪漢どもがファイトする豪快ギタートリオ

 ジャズのギタートリオというより、クリームとかベック・ボガート&アピスがジャズをやってます、みたいな暴れ者バンドだ。アクの強い3人のキャラがギラギラと脂ぎり、悪漢どもが組んずほぐれつファイトする。ハードボイルドな世界である。

 主役のポーランド人ギタリスト、マチェク・グジィヴァチュは、ワルシャワの旧ショパン音楽院 (ショパン音楽大学) 卒。これまでに、トランペッターのアヴィシャイ・コーエンを迎えたカルテット作品 「Things Never Done」 (2006) のほか、「Forces Within」 (同)、「Fourth Dimension」 (2009) という3枚のリーダー作をリリースしている。

 スタイルをひとことで表現すれば (変な言い方だが) ロック・スピリットにあふれたジャズギタリストだ。野太い音で、空間をバリバリ引き裂くダイナミックなギターを弾く。微妙に歪んだ音色と、ほの暗いフレージングがいかにも東欧のミュージシャンっぽい。

 一方、リズム隊も目茶かっこいい。中村恭士 (b) とクラレンス・ペン (ds) の顔合わせだ。中村は相変わらず日本人離れしたドライヴ感のあるベースを弾く。対するペンもひとつひとつの打音にしっかりタメが利いており、重心の低い持ち味がよく出ている。速いオカズを叩いても決して前へ突っ込まない。速いんだけど、ゆったりしてる。そこがいい。

 ペンは 「俺のリーダー作だから」 的な無理くり感の漂う前への出方をしていた最新作 「Dali in Cobble Hill」 (レヴュー記事はこちら)より、本作のドラミングの方が圧倒的にいい。彼はこの一歩引いたところからワザを繰り出すスタイルが渋い。アダム・ロジャース 「Sight」 (2009) での好演を連想させるデキだ。

 汗だくの漢(おとこ)3人に揉みしだかれるような野生のギタートリオ。おすすめです。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Hubert Nuss / Feed the Birds

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Hubert Nuss (p)
John Goldsby (b)
John Riley (ds)

Rec. February 19-20, 2005, at Pirouet Tonstudio, Munich
Engineer: Jason Seizer (Pirouet PIT3014)

ピリ辛混じりのドイツ式ピアノトリオはいかが?

 大海原を漂うようなゆったりしたテンポで幕が開く1曲目に、この人の持ち味が凝縮されている。少ない音数で1音の響きを生かす妙演にうっとり。正直、この曲だけでお腹いっぱいだ。ドイツ人ピアニスト、ヒューベルト・ヌッスの3枚目のリーダー作である。

 ヌッスは1964年生まれ。コローニュ音楽院で現代音楽の作曲家、オリヴィエ・メシアンの楽理を学んだ。そのせいかプレイがジャズ離れしている。不協和音ぽい音を交えながら綱渡りのような際どい演奏をするのが流儀だ。

 ところが本作の様子はちがう。難解になりがちなオリジナルを4曲に抑え、そのぶんメロディーの美しい既成曲を集めた。ヌッスの作品の中ではいちばん親しみやすいアルバムだ。特にM-3の 「What's New」 などは目いっぱいリラックスしており、左手による禁断の和声を封じ、彼にしてはかなりオーソドックスな演奏をしている。

 だがそこは辛口の異端派らしく、ただでは終わらせない。M-2は冒頭のわかりやすい美メロが彼っぽくなく 「おや?」 と思わせるが、すぐにパターンを崩して自分の世界へ持って行ってしまう。M-4の不安を煽るような妖しい音使いもヌッスらしい。

 とはいえ全体としてはやはり原曲の美しさが支配的な内容になっており、スタンダードをやるとこの人でもこう変わるのか、という感じ。これから彼の作品を聴こうという入門編にはぴったりかもしれない。くつろげます。

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『Hubert Nuss / The Book of Colours』

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Marc Mommaas / Landmarc

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Mark Mommaas (ts)
Nate Radley (g)
Tony Moreno (ds)
Vic Juris (g on 2, 6, 9)
Rez Abbasi (g on 4, sitar on8)

Rec. February 16-17, 2009, at Charlestown Road Studios, NJ
Engineer: Paul Wickliffe (Sunnyside SSC1249)

ギターの夢魔な響きと空間の広がり

 ベース・レスなバンド編成の可能性は、いろんなミュージシャンによって探求されている。数をあげればキリがないが、ここ数年ではポール・モチアンの 「Lost in a Dream」 (2010) などは新鮮だった。

 ベース・レスのメリットはふたつある。ひとつはバンドの音が重たくならないこと。そしてもうひとつは空間が生まれることだ。ベースをなくすことで空間を音で埋めてしまわず、何もないスペースを作り出す。その空間にプレイヤーが自由に入り込み、クリエイティヴなプレイを繰り広げる。ニューヨークで活動するオランダ人テナー奏者、マーク・モマースの最新作は、そんなスペイシーなおもしろさにあふれている。

 バンド編成はテナー、ギター、ドラムの3人だ。ギターパートはネイト・ラドリーを軸に、楽曲に応じてベテランのヴィック・ジュリスとパキスタン出身のレズ・アバシら2人のギタリストが交互に参加している。全9曲すべてオリジナルだ。

 この編成でカギを握るのがギタリストのコードワークである。冒頭からラドリーが不思議な響きを放ちながら空間に彩りを添える。彼は本作でめざましい仕事をしている。その上空をモマースのテナーがクールなトーンですいすい泳ぐ。かと思えば2人がユニゾンでぐりぐりキメのフレーズを繰り返し、盛り上げて行く。

 モマースはけっこう速いパッセージを吹いたりしているが、額に血管浮き立たせて力んでいるようなところがまったくない。ひょうひょうと、淡々と、肩の力が抜けた老子のようなプレイぶりである。

 テナーが吹くのをやめればギターとドラムのデュオになり、ギタリストがソロを取る。そこにテナーがフレーズを挟むこともある。3人から2人へ、2人から3人へ。臨機応変にクルクル編成が変わるところがおもしろい。本盤はテナー奏者のリーダー作だが、アルバム全体のイメージを決定付けているのはギターの響きだ。このベース・レスな編成は無限の可能性を秘めている。傑作である。

 マーク・モマースは1969年オランダ生まれ。1997年にニューヨークへ渡り、マンハッタン音楽院で学んだ。1999年にリリースされた 「Global Motion Trio」 でデビューし、その後、Sunnysideから本盤を含め3枚のリーダー作を発表している。

テーマ : JAZZ
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Euan Burton / Occurrences

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Will Vinson (as, ss)
Steve Hamilton (p, Rhodes)
Mark McKnight (g)
Euan Burton (b)
James Maddren (ds)

Rec. June 2010, at Castle Sound Studios, Pencaitland
Engineer: Stuart Hamilton (Whirlwind Recordings WR4621)

ウィル・ヴィンソン参加、スコットランドの澄み渡る空のように

 音楽は国や地域の文化に深く根ざしている。同じジャズと名のつく音楽を演っても、その国の国民性やライフスタイルがはっきり出る。絶対同じ音にはならない。それがよくわかるのが本作である。スコットランド人ベーシスト、イアン・バートンが2012年にリリースしたばかりの最新作だ。

 まずニューヨークで活動しているイギリス人アルト奏者、ウィル・ヴィンソンの参加が目を引く。作風は涼やかな端麗甘口。クールで抑制的なヴィンソンのスタイルがうまくハマっている。M-1の爽快なバラードなんざアメリカ人にゃマネできないっしょー、みたいな感じだ。(いや本人がそう申しておるわけではございません)

 本盤に参加しているアイルランドのギタリスト、マーク・マクナイトとヴィンソンは共に主役のバートンと共演歴があり、それが縁で今回の顔合わせが実現したようだ。

 バートンはイギリスのバーミンガム芸術学院で学んだ後、スコットランドに帰国し活動している。デイヴ・ホランドやエド・ハワードに師事、スコットランドの国立ジャズ管弦楽団での演奏歴もある。2006年に初リーダー作 「Collective」 でデビューし、その後アリ・ホーニグとギラッド・ヘクセルマンをフィーチャーした 「Forgotten Things」 (2010) もリリースしている。

 さて本作はフュージョン的なM-2やM-6を交えつつ、5月の晴れ渡る空のようにスカッとさわやかに進行する。ニューヨークの若手あたりの鬱屈したダークな音とはまるで対照的だ。特に屈託のない美メロなバラードのM-3やM-5などは、ブルックリンの連中なら逆さに振っても出てこないだろう。

 客演するヴィンソンも最新リーダー作 「Stockholm Syndrome」 (2010年。レヴュー記事はこちら) ではNYCっぽい屈折した音を聴かせていたが、本作ではすっかり健やか系を地で行っている。実はヴィンソンも本領はこっち系統なのかもしれない。また往年のラリー・カールトンみたいなギターを弾くマクナイトはなかなかのテクニシャンであり、パワフルなドラマー、James Maddrenはエッジの利いた明快なプレイが印象的だった。

 もうひとつ興味深かったのは、M-4のようなノりのいい楽曲を演奏しても、バンドの音がアメリカ人みたいに脂っこくならないことだ。さっぱりしていて、いかにもスコティッシュな感じである。アメリカの黒人プレイヤーみたいにリズムが粘らず、淡々と流れて行く。このへんは好みの問題だが、泥臭くホットなジャズが好みの人にはおすすめしない。

 最後にいまさらな注文をつければ、曲名がいただけない。アルバム冒頭から順に 「One」、「Two」、「Three」 などと機械的なタイトルをつけているが、明らかに損である。いかにも無味乾燥で感動のない内容のアルバムであるかのように誤解されてしまう。なぜこんなタイトルをつけたのかまったく謎だが、制作にかかわったプロデューサーとかディレクターあたりは何も言わなかったのだろうか。不思議である。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Bad Touch / Like A Magic Kiss

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Loren Stillman (as)
Nate Radley (g)
Gary Versace (org)
Ted Poor (ds)

Rec. February 10-11, 2008, at Yonas Media, NY
Engineer: Ryan Ferreira (Bad Touch Music 884501032704)

スティルマンが仕掛ける新プロジェクトの光と影

 冒頭のM-1からいきなり攻撃的でかっこいいキメが続出する。テッド・プアが狂ったように叩きまくっている。えっ? これホントにあの根暗なローレン・スティルマンのプロジェクトだっけ? だが聴き進むうち、いつもの奇妙でこっけいなメロディが随所に登場し納得する。屈折した暗さも相変わらずだ。ふむ、スティルマン、きっと今回は抗鬱剤でも飲みすぎてハイになっちゃったんだろう。

 てなわけでスティルマンが中心となったグループ 「Bad Touch」 のデビュー盤である。メンバーはローレン・スティルマン (as) にゲイリー・ヴァセイシ (org) 、ネイト・ラドリー (g)、テッド・プア (ds) といういつもの面々が揃う。スティルマンの最新アルバム 「Winter Fruits」 (2009年。レヴュー記事はこちら) と同じメンツである。

 本作を聴いて思うのは、曲順の決め方の重要性だ。1曲目のド派手で暴力的な 「Bad Touch」 に耳を奪われ、「うわぁ、刺激的だなぁ。なんかいつもと様子がちがうぞ」 とアルバムの印象が強く決定づけられる。だがM-2以降をよく聴いてみると、やっぱりスティルマンの世界なんだな、これが。

 本作は収録曲6曲のうち、テッド・プアが毛並みのちがう活発な2曲 (M-1とM-4) を提供している。残りの4曲はスティルマンの作曲だ。つまり冒頭と真ん中にバランスよく配した元気なM-1とM-4により、「おっ、スティルマンは変わったぞ」 と感じさせる。だがそれ以外の4曲はいつもの彼らしく、静かでアブストラクトなスティルマン節である。

 ただし彼は今回ソリストというより、舞台装置を作る一職人として参加している。スティルマンが作ったスペースにヴァセイシとラドリーが入り込み、主旋律にからみつく。プアもバスドラでプッシュする。行儀よく順番にソロを回したりする瞬間はまったく訪れない。ステキな無秩序であふれている (実は計算されているのだが)。すなわち前出のアルバム 「Winter Fruits」 と似た構造の世界が繰り広げられる。違うのはこっちの方が殺気に満ちていることだ。

 特筆すべきはプアのドラミングである。この人はとにかく音が太くてスケールが大きい。特にM-1で披露した激しく食いまくるバスドラは劇的だ。彼のプレイを初めて聴いたのはマイク・モレノの 「Another Way」 (2012年。レヴュー記事はこちら) だった。正直、なぜかピンとこなかったのだが、その後参加作を何作か聴くうち印象がみるみる変わって行った。すごいわぁ、この人。本盤はそんなプアのダイナミックなドラミングがしこたま聴けてお腹いっぱい。スティルマンの変人っぷりも相変わらずです。興味のある方はぜひどうぞ。

*本作は自主製作盤のため入手しにくいが通販サイト 「CDbaby」 でゲットできる。

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『Loren Stillman Quartet / How Sweet it is』

『Loren Stillman / It Could Be Anything』

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Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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