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The New Gary Burton Quartet / Guided Tour

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Gary Burton (vib)
Julian Lage (g)
Scott Colley (b)
Antonio Sanchez (ds)

Released. 2013, Recorded at MSR Studios, NY
Engineer: Pete Karam (Mack Avenue Records MAC1074)

ゲイリー・バートンはもはや 「ポップ」 の領域に突入した

 キャッチーで耳に残るメロディーが続出する。「ポップ」と呼んでいいくらいわかりやすく、親しみやすい楽曲がずらりと並んでいる。天才ギタリスト、ジュリアン・レイジを擁するゲイリー・バートンの新作だ。

 メンバーはリーダーのゲイリー・バートン(vib)に、ジュリアン・レイジ(g)、リズム隊はスコット・コリー(b)とアントニオ・サンチェス(ds)という豪華版だ。前作 「Common Ground」 (2011年、レヴュー記事はこちら) で編成された新カルテットである。

 レイジは今やすっかりこのメンバーに馴染んでいる。実にのびのびした演奏だ。また前作では譜面に書かれた通り抑えて演奏していたかのようなリズム隊も、本作ではかなりリラックスし、生き生きしている。明らかに前作より、アントニオ・サンチェスの音数が多くなっているのがおもしろい。

 推測だが、レイジが本カルテット・デビューした前作では彼を売り出すため、リーダーのバートンがリズム隊に 「極力、音数を少なくしてギターを引き立てろ」 とでもオーダーしていたんじゃないか? (それくらい前作ではリズム隊がカッチリ遊びなく演奏していた)。

 バートンは過去にアルバム 「Generations」 (2003)、「Next Generation」 (2004) でも立て続けにレイジをフィーチャーしているし、彼に対する思い入れがよほど強いのだろう。レイジの存在がモチベーションになり、彼のためにわざわざコリーとサンチェス入りのカルテットをセッティングしたのかもしれない。

 さて本作ではメンバーがまんべんなく曲を持ち寄っているが、さすがバートン、ベテランだけに売るためのツボを心得ている。このアルバムは前作同様、かなりメロディアスで聴きやすい。前々回に紹介した、聴き手を冷たく突き放すかのようなラーゲ・ルンドの新作 (レヴュー記事はこちら) と対照的だ。

 楽曲の構成も明らかに一定の法則に乗っ取って作られており、そのぶん意外性はないが覚えやすく安心して聴ける。ただ親しみやすいのはいいが、この作り方だと聴き飽きるのも早いだろう。前作がそうだったように。ジャズに予測不能な 「スリル」 を求める人には向かないかもしれない。

【関連記事】

『The New Gary Burton Quartet / Common Ground』
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Dayna Stephens / That Nepenthetic Place

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Dayna Stephens (ts)
Taylor Eigsti (p)
Joe Sanders (b)
Justin Brown (ds)
Ambrose Akinmusire (tp on 1-3, 7-10)
Jaleel Shaw (as on 1-3, 9,10)
Gretchen Parlato (vo on 6, 7)

Rec. January 21, 2010, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Mike Marciano (Sunnyside SSC1306)

前作よりエネルギッシュ、作曲のセンスを感じさせる

 クリスクロスから出た前作 「Today is Tomorrow」 (2012) が鮮烈だった若手テナー奏者、デイナ・スティーブンスが発表したばかりの3作目だ。前作とくらべエネルギッシュな曲が増えており、3管が弾ける1曲目を聴いただけで引き込まれる。楽曲がすばらしく作曲のセンスを感じさせる。今年上半期のベストテンに入りそうだ。

 漂うような心地いいリズムが流れる。あるときはふんわりと、またあるときはひたひたと潮のように満ちてくる。前作より凝ったアレンジの楽曲が目立つが、派手さはなくとても渋くて聴き飽きない。なによりスティーブンスの力まない枯れたテナーが味わい深い。

 いい意味でしっとり地味だった前作は典型的なスルメ盤だった。文字通り盤が擦り切れるまで聴いた。本作はそれよりノリのいい楽曲が増え、さらにパワーアップしている感じだ。若手イチ押しのリズム隊、ジョー・サンダース(b)とジャスティン・ブラウン(ds)を採用したのが大きい。彼らコンビがよく跳ねている。

 メンバーはほかに、テイラー・アイグスティ(p)、アンブローズ・アーキンムシーレイ(tp)、ジャリール・ショウ(as)。グレッチェン・パーラト(vo)も2曲参加している。アイグスティはアーロン・パークスばりの透明感のあるピアノを弾くなかなかの逸材だ。アーキンムシーレイとショウもよく利いている。

 2004年モンク・コンペで優勝したパーラト入りなのは最近のお約束っぽくてなんだかなぁだが、ただし彼女の歌と楽曲はすごくいい。個人的には突然歌物が出てくると引きまくるのだが、このパーラト曲はアルバム全体の雰囲気を損ねてない。それどころかぐんと引き立てている。

 オリジナル8曲、その他2曲の合計10曲。モーダルでエキサイティングなM-1や、気だるいリズムが心地いいM-2、冒頭からアグレッシヴでかっこいいM-4、スピード感のある攻撃的な4ビートのM-9など、オープニングからエンディングまで全曲魅力的だ。捨て曲は1曲もない。本作も前作同様、噛めば噛むほど味が出るスルメぶりである。

 スティーブンスはバークリー出身で、1978年ブルックリン生まれ。ファースト・リーダー作 「The Timeless Now」 (2007年) でデビューした。なお2作目としてリリースされた前作 「Today is Tomorrow」 は本盤より後の2011年10月に録音されており、演奏自体は本アルバムより新しい。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Lage Lund / Foolhardy

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Lage Lund (g)
Aaron Parks (p)
Ben Street (b)
Bill Stewart (ds)

Rec. January 22, 2013, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Michael Marciano (Criss Cross 1360)

ルンドが放つ 「Early Songs」 (2008) 以来の傑作

 NYで活動するノルウェー出身の売れっ子ギタリスト、ラーゲ・ルンドが、クリスクロスから発表したばかりのレーベル3作目だ。ほどよい緊張感とクールな肌触りにゾクゾクさせられる。ルンドはもちろん、彼と相性バツグンのアーロン・パークス (p) が冴えまくりだ。ルンドがクリスクロス・デビューを飾った 「Early Songs」 (2008) 以来の傑作である。

 いかにもNYコンテンポラリー最先端のトンがった音が聴ける。温度感が低く、シーンと静まり返った涼やかさがある。張り詰めたテンションが心地いい。「大らかさ」 とか 「躍動感」 とはまるで対極にある音作りである。そのため少し神経を使うが、そのぶん知的好奇心を刺激される。氷がひんやり背筋を伝うようなスリルを味わえる。

 メンバーは2006年モンク・コンペ優勝者のパークス (p) のほか、ベースにはベン・ストリートを据えた。彼は1991年にNYへ進出し、カート・ローゼンウィンケルの「The Enemies of Energy」 (2000)、「The Next Step」 (同)に参加し一躍注目を集めた。以来、2000年以降、スタジオワークで引っ張りだこになっている。

 一方、ドラマーは説明するまでもなく、90年代~2000年代にかけ一時代を築いたビル・スチュワートである。鉄壁の布陣だ。すなわちルンドのクリスクロス2作目 「Unlikely Stories」 (2010、レヴュー記事はこちら) のメンバーから、エドワード・サイモン (p) だけをパークスに差し替えたおいしい顔ぶれである。

 自身のオリジナル6曲に加え、D. Rose 「Holiday for Strings」、R. Carter 「Keystone」、Altman-Lawrence 「All or Nothing at All」 の合計9曲。冒頭からM-6までオリジナルを並べ、後半のM-7~9を既成曲で構成している。M-6までのオリジナルは突き放したような冷たさが魅力だ。一方、後半のオーソドックスな既成曲になると、ぐっと暖かく有機的な色彩感が強まる。リスナーによっては 「後半のほうが好みだ」 という人もいるかもしれない。

 まずM-1とM-2はいきなりパークスのピアノがすごい。この2曲はクリスクロスでの前作 「Unlikely Stories」 と、いい意味で無機的な質感が近い。M-3とM-5はバラードだが、キャッチーで美しいメロディなどカケラもない。硬派な作りだ。

 M-3の冒頭はルバートのギター独奏で幕を開ける。リズムセクションが入ったあともインテンポからルバートになりかけるような物憂いリズムだ。だが往年の古いジャズが持つウォームな物憂さとは明らかに違う。クールな音使いをしている点が新しい。この曲もパークスのピアノがすばらしい。

 M-4は一転して機敏なノリ。頭のキメが終わると、またもパークスの必殺のピアノが始まる。うーん、痺れる。M-5は気だるいリズムと中性的なギターが味わい深い。ふとした瞬間にブルージーな音が顔を出すなど意外性がある。

 M-6はミディアム・テンポの曲だ。ふたたびギターの物憂いメロディにわくわくさせられる。ベン・ストリートの雰囲気のいいベースソロも聴ける。残るM-7~9はリラックスできる既成曲で固めた。前半の尖ったオリジナルが放つピリピリ感から開放され、ゆったり箸休めできる構成になっている。

 2005年モンク・コンペで優勝しているルンドは、サイド参加作では無数のすばらしい仕事をしている。だがリーダー作であまりいい作品を残してなかった。たとえばクリスクロス2作目の 「Unlikely Stories」 は、聴き手を拒絶するかのようなメカニカルな冷たさと緊張感が強すぎ聴き疲れた。だがクリスクロス1作目の傑作 「Early Songs」 と同様、本アルバムにはそれらの要素がちょうどいいあんばいで配合されている。やっとルンドが本気で 「2枚目の本物」 を作った感じだ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Antonio Sanchez / Migration

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Chris Potter (ts, ss)
David Sanchez (ts)
Scott Colley (b)
Antonio Sanchez (ds)

Pat Metheny (g on 3, 8)
Chick Corea (p on 1)

Rec. January 10-11, 2007, NY, Track ♯1: January 21, 2007, FL
Engineer: Joe Ferla, Track ♯1: Bernie Kirsh (Cam Jazz CAMJ7804-2)

豪華メンバーが勢揃い、現代最高度を誇るテクニックの見本市

 名うての腕自慢たちが次々にワザを繰り出し、それら個々人の技術の総和が自動的に作品全体のクオリティになっている、というタイプの音楽。インプロヴィゼーションで聴かせるジャズだ。パット・メセニーと縁が深いドラマー、アントニオ・サンチェスのリーダー作である。

 メンバーは豪華だ。クリス・ポッター(ts, ss)にデヴィッド・サンチェス(ts)、スコット・コリー(b)。それだけでなくパット・メセニーとチック・コリアまでゲスト参加している。オリジナル4曲に加えメセニーとコリアが1曲づつ持ち寄り、ジョー・ヘンダーソン「Inner Urge」、マイルス・デイヴィス「Solar」を加えた全8曲だ。

 まずラテンっぽいM-1頭のピアノで「おおっ」と耳をひかれる。コリアは一撃であたりの空気を自分のものにしてしまう。全員がスリリングにテクを披露するブルースっぽいM-2も息詰る。やさしいメロディのM-3でちょっとひと休み。サンバ調の壮絶なM-4でまたネジが巻かれ、M-7「Inner Urge」では冒頭からいきなりドラムソロの嵐。M-8「Solar」では今度はメセニーが暴れまくる。もう圧巻だ。

 ただしこういうテクニック志向の作品では、ややもすると楽曲の存在感がお留守になる。アルバムを聴き終え、「さて、どんな作品だったっけ?」と振り返ろうとしても曲が思い浮かばない。

 ふつうなら「○曲目のメロディーがよかった」とか「○曲目の浮遊感が面白かった」などとアルバムの「色」が印象に残るはすだが、本作には色がない。私がよく聴くジャズは楽曲が「主」、個人技は「従」なものが多いから余計そう感じるのかもしれないが、いずれにしろ本作は楽曲よりメンバー個々が放つ技術のインパクトが強い。

 しかしそんな中、M-3の歌心あふれるギターソロになると途端に耳が凍りつく。さすがはパット・メセニー。こんなふうにパッと1曲弾き、百発百中で必ず人の耳に残るメロディを弾けるというのはすごい。やはりメセニーは天才的だ。

 てなわけで終わってみればM-3のメセニーのギターがいちばん印象に残った作品だった。「技術のせめぎ合いをこそ聴きたいんだ」という人には、現代最高度のテクニックが詰まった本作は聴きごたえがあるだろう。だが私にとっては「ほう、すごくうまいね」といった感じである。

※なお国内盤では8曲目に、チック・コリア作のボーナストラックが加わっている。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

顔を見てるだけで楽しいアリ・ホーニッグ



私、スタジオでもスゴいんです

 マイク・モレノ公演のトラでの急遽来日を記念し、顔のアップも楽しめるアリ・ホーニッグをば。

 この人、ドラムの手数が多いだけでなく、顔の手数も多いのです。

 ドラミングにも表情にも「歌心」が感じられる。きっといいヤツなんだろうなぁ。このいたずらっぽい顔を見ていると、「友だちになりたい」って思っちゃうねッ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Bill Gerhardt & Cotangent / Stained Glass

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Bill Gerhardt (p)
Marc Mommaas (ts)
Mike Holstein (b)
Tim Horner (ds)

Ron Horton (tp, fl)
Mark Reboul (waterphone)

Rec. October 2005, NY
Engineer: Michael Marciano (SteepleChase SCCD 31629)

マーク・モマース(ts)参加、精巧なキメが連続するNYコンテンポラリー

 複雑なメロディのキメがそこかしこに散らばる。NYコンテンポラリーならではのクールな音だが、決して無機的ではない。もちろんコテコテの黒っぽい熱さなどとはまるで無縁。きわめて現代的でちょっと哲学チックな作品だが、なぜか構えず楽しめる。ニューヨークを拠点に活動するピアニスト、Bill Gerhardtのセカンド・リーダー作である。

 メンバーはBillのカルテット「Cotangent」のメンバーであるマーク・モマース(ts)、マイク・ホルスタイン(b)、ティム・ホーナー(ds)のほか、ゲストにロン・ホートン(tp, fl)の顔も見える。ホートンはBillの3作目「Thrive」にもゲスト参加している。やり慣れたメンバーだ。

 オリジナル4曲のほか、メンバーが持ち寄った3曲の合計7曲。ピアニストが主役なのに、売れる美メロを駆使するわけでもない。いやむしろキャッチーなメロディなんてどこにも出てこない。徹底して甘さを排除した硬派な作品だ。

 この作風は、当ブログで過去に紹介したドラマーのトニー・モレノによるピアノトリオ作「Trio Music」に近い。この盤にもBillとマイク・ホルスタイン(b)が参加しているが、Billはアレンジもやるので似ていて当然だろう。

 全編にピリピリした緊張感が漂うが、なぜか不思議とリラックスできる。マーク・モマースの決して熱くならない醒めたテナーがバンドの演奏を沈静化させ、アルバム全体のカラーを支配しているからだ。

 全体にかなり凝ったアレンジが施されており、テクニカルなキメも続出する。ゆえに全員が丁々発止で自由にワザを披露し合うような展開ではない。むしろ逆にバンド全体のアンサンブルでかっちり聴かせるタイプのジャズだ。その意味ではNYコンテンポラリーの「ある断面」を切り取ったような作品といえる。

 Bill Gerhardtは、1962年ミズーリ州生まれ。89年にアムステルダムへ移り、ヨーロッパのほかアジア・アフリカでも活動していた。99年からはニューヨークへ拠点を移し、テナー奏者のマーク・モマースや本作のベーシスト、マイク・ホルスタインらとともに、自身のカルテット 「Cotangent」 を率いてリーダー作を3枚、ソロピアノ作を2枚発表している。

【関連記事】

『Tony Moreno / Trio Music』

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Gilad Hekselman / This Just In

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Gilad Hekselman (g, synths & Glockenspiel)
Joe Martin (b)
Marcus Gilmore (ds)
Mark Turner (ts on M-3, 9, 13)

Rec. December 2011-January 2012, NY
Engineer: Michael Perez-Cisneros (Jazz Village JV570013)

M・ギルモアとJ・マーチンのリズム隊が究めた臨界点

 前々回で取り上げたスティーヴ・スワロウの世紀の絶品と同時に買ったため、相対的にかすんでしまったギラッド・ヘクセルマンの最新作だ。アルバムとしてはまずまずだが、ギタープレイにハマれない。このメンバーじゃ悪くなりようがないと思うが、つくづく私はヘクセルマンと縁がないらしい。

 まずアルバム最大の聴き物であるマーカス・ギルモア(ds)とジョー・マーチン(b)のリズム隊については、ヘクセルマン作品ではコンビを組んで3作目になる。彼らは本作でそのコンビネーションが究極にまで高まり、ひとつの完成形を見たといっていいだろう。2013年現在で最強クラスのリズムセクションだ。

 ジョー・マーチンは「何でもできる器用な便利屋」みたいなイメージをもっていたが、一連の作品群でギルモアとのからみを聴き、とんでもなく彼をナメていたなと反省した。ジャストビートからのはずし方、揺らぎ方がたまらない。ややもすると似たパターンになりがちではあるが、それも芸のうちだろう。

 かたやギルモアのすごさはわかっていたが、本作ではそれを再確認できた。とにかく重心が低く地を這うようなグルーヴがすさまじい。ライヴ映像で見ると1打1打のアタック音は案外軽かったりするのだが、その1打あたりに付帯するグリグリ生きたダイナミズムと瞬発力、ムチのようにしなるノリがハンパない。

 またアクセント(強弱)のつけ方が非常にうまく、起伏と陰影に富んだ表情豊かなプレイをする。M-1の地鳴りが増幅して行くようなドラミングや、M-3の細かく刻むタイム感、M-9のめくるめくドラムソロにはぶっ飛んだ。

楽曲の半分はいいが捨て曲も多い

 一方、収録されている楽曲については、半数はなかなかいい。ギターのリフが耳に残るM-1や、大胆で挑戦的なギターを聴かせるM-3、冒頭の謎めくフレーズが魅惑的なM-5、テーマにインパクトがあるM-7、テナーとギターの掛け合いがスリリングなM-9が印象に残った。またM-10はメロディが秀逸でベースとドラムのノリにも圧倒されるし、M-12はアコギが美しい文句なしの佳曲である。

 だが残念ながら、残り半分の楽曲には疑問が残る。M-2とM-4、M-6、M-8、M-11は「NEWSFLASH」という同じタイトルに「♯+数字」をつけただけ。どうでもいい数合わせみたいな短い曲だ。よく言えば「曲間にインタールードを挿入しました」みたいなパターンである。

 こういうのって、そりゃ作った本人は「いや、これには連作としての○○な意味があるんだよ」などと言い張るかもしれない。だがお客さんの側から見れば面白くもなんともない。自分だけが気持いい、一種のマスターベーションである。まだ若いのに直球で勝負せず、こういうギミック(特殊効果)に頼るのってどうなんだろう。

 またM-3と対になってる最終曲のM-13はアルバムを締めました、というだけの捨て曲だ。退屈この上ない。結局、本作はこれら6曲のどうでもいい楽曲で水増しされている。つまりこのアルバムは、実際には7曲しか収録されていない。すごい上げ底だ。そもそもM-1の出だしから、セカンド作のオープニングとクリソツだし「早くもネタ切れかい」みたいな感じもする。

肝心のギタープレイはひ弱でか細い

 さてヘクセルマンのギタープレイについては相変わらずだ。すごくうまいが、ひ弱で線が細く個性に乏しい。まず音色が甘すぎて好みじゃないし、全体として聴く者を圧倒するようなインパクトに欠ける。ギターで奏でる各曲のテーマは美しく秀逸だが、アドリブに入ると途端にあいまいになって求心力を失う。では曲ごとに細かく見て行こう。

 まずM-10とM-12のソロは掛け値なくすばらしい。M-5もまずまずだ。だがM-1やM-7のソロの導入部は可能性を感じさせる美メロではあるものの、小節が進むにつれ何を弾いているのかわからなくなる。M-3のソロも滑り出しはガッツのある粘りを見せるが、時間がたつと失速し、次第にフレットの上を指が速く上がったり下がったりするだけになる。

 あらかじめ練りに練ったテーマ部がいいのは当たり前だ。問題はアドリブ・パートである。そこのキャラが立ってないからフレーズが耳に残らず、心に刺さらない。リズムもさらさらと淡白に流れがちで、粘っこく腰を踏ん張るようなところがない。ゆえに1曲聴き終わり、「いまどんなギターを弾いてたっけ?」と思案しても何も浮かんでこない。前々回の記事で紹介した「味」の固まりのようなスティーヴ・カーディナスのギターとは好対照だ。

 試しにジェシ・ヴァン・ルーラーやマイク・モレノとギターソロの構成を意識して聴きくらべてみたが、表情の豊かさがまるでちがう。彼らの場合は「3曲目の××の箇所では○○なソロを弾いていた」とフレーズがはっきり思い浮かぶ。だがヘクセルマンのソロは、金太郎飴みたいにどこを切っても金太郎で印象がうすい。

考えすぎて頭でっかちになってないか?

 はて? どのアルバムでもこうだっただろうか? 念のため彼のセカンド・アルバム「Words Unspoken」を引っ張り出し、ひさしぶりに聴いてみた。すると驚いたことにソロに関しては本作よりこの旧作の方がいい。フレーズが印象的だし、顔の見えるギターを弾いている。ひょっとしたら最近の彼はちょっと考えすぎ、頭でっかちになっているのかもしれない。

 現に本作ではシンセやインタールードを入れる小細工をしたり、得意分野と違う演奏をしてみたり。あのテこのテで作品を飾り立て、実際より自分を大きく見せている。これを外側から見れば「考えすぎ」、「真っ向勝負していない」とも映る。

 例えばヘクセルマンは「激しさ」とか「ノリのよさ」より、繊細さや透明感でしっとり静かに勝負するタイプだ。だがそういう自分の持ち味とあえて正反対のことにチャレンジしたM-3はどうか? ギターがアバンギャルドに暴れまくるM-3はいかにも無理やり感が漂い(彼がやるとうるさいだけ)、もっとこの曲が似合うワイルドな野郎なら破壊的な演奏になるんだろうなぁ、などと考えてしまう。

 思えばヘクセルマンの初リーダー・ライヴ「Split Life」と1stスタジオ盤「Words Unspoken」は(悪くはなかったが)すぐ聴き飽きたし、3作目の「Hearts Wide Open」は試聴しただけで「だめだこりゃ」と買うのをやめた。まあ相性が悪いのだろう。

 本作ではもっとマーク・ターナーが聴きたかったのだが、3曲しか吹いてないのが残念だ。YouTubeの映像ではターナーがいい感じで吹いていたのでずいぶん期待したが、CDバージョンでは残念ながらギタリストがメインを張っている(って主役なんだから当然か)。

 そもそも私はイスラエルのミュージシャンが肌に合わないのかもしれない。考えてみればアヴィシャイ・コーエン(b)にしろ、エリ・デジブリにしろ、ちっともいいと感じたことがない。人間の血と音楽の関係って、けっこう深いのかも?

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

どっちが勝つかな? ~ジュリアン・レイジとマイク・モレノ



黄金のツートップ見参!

 YouTubeでいろいろ検索したけど……。

 ジュリアン・レイジとまともに勝負になってるのは、マイク・モレノぐらいだねぇ。

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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