David Gilmore / Numerology - Live at Jazz Standard

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David Gilmore (g)
Miguel Zenon (as)
Claudia Acuna (vo)
Luis Perdomo (p)
Christian McBride (b)
Jeff "Tain" Watts (ds)
Mino Cinelu (per)

Recorded: January 13-14, 2010, Live at Jazz Standard, NY
Engineer: Tyler McDiarmid & Geoff Countryman (Evolutionary Music EVMU001)

この単調なライヴが2時間続くとキツいわ

 この盤は書くとメタクソになりそうなので控えていたが、せっかく聴いたんだからやっぱり書こう。M-BASE系ギタリスト、デヴィッド・ギルモアの3枚目に当たる最新作だ。

 リズム隊がマクブライド(b)とワッツ(ds)なので、当然、音が太くて重い。だが (悪い意味で) 重たいノリだ。どんよりしたファンク・ビートが続く。前の2作 「Ritualism」(2000年、レヴュー記事はこちら)、「Unified Presence」(2006年)のような軽快な躍動感がない。メロディの暗さもあり、重く沈みこんだような演奏だ。

 リズムが(拍子は変わっていても)単調で変化がない。同じテンポ、同じパターンで楽曲がえんえん続く。おまけにインプロっぽい雑なパーカッションが、バンド演奏全体に「とっ散らかった散漫な感じ」を与えている。

「いや、こういう雑然とした猥雑な音がコンセプトなんだよ」といわれれば返す言葉がないが、個人的には前2作のほうが明らかに好みだ。この暗くて退屈なライヴを2時間ぶっ通しで聴かされたら相当ツライだろうな、という感じがする。

 リズムのネカティヴ面に気を取られるせいか、ソロパートのよさも伝わってこない。ギルモアは随所でソロを弾いているが刺さらない。すごく買っているゼノン(as)も印象がうすい。なにより残念なのは、個人的に期待しているペルドモ(p)のよさがまったく出てないことだ。

 ベースになるリズム隊が退屈で単調。その上に乗っかるソロも耳に残らない。結局、何も取るところがない。前2作がものすごくよかっただけに、この肩すかしは強烈でした、ハイ。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Kait Dunton / Mountain Suite

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Kait Dunton (p)
John Daversa (tp)
Bob Mintzer (ts)
Darek "Oles" Oleszkiewicz (b)
Peter Erskine (ds, per)

Rec. August 17-18, 2011, at Firehouse Recording Studios, CA
Engineer: Rich Breen (Real and Imagined Music R&I-002)

秘められた物語を感じさせるピアノの響き

 ジャケ写の首にかかる鮮やかな赤いストールを見た瞬間、「ピピッ」と来た人はぜひ買うべし。本作は音楽的興味だけでなく、アートや映画など聴き手の芸術的センスをくすぐる作品だ。ロサンゼルスを拠点に活動する女性ピアニスト、ケイト・ダントンのセカンド・リーダー作である。

 ピーター・アースキン(ds)やボブ・ミンツァー(ts)など、クレジットされた豪華メンバーに騙されてはいけない。このアルバムはとにかくケイトのピアノに尽きる。余韻たっぷりに物語性を放ちながら美しく響くM-1のピアノのイントロを1小節聴いただけで、後頭部をズゴンとやられた人は必ずハマれるだろう。

 アルバム全編に独特の翳りと憂いが漂い、メランコリックな物思いに耽ってしまう。繊細な気持ちの波がひたひたと押し寄せ、あたりの空気をすっかり静謐でリリカルなものに変えてしまう。

 全9曲すべてオリジナル。ピアノトリオ編成の4曲と、2管クインテット編成の5曲という内訳だ。トリオ編成のほうはジャズ的だった前作(デビュー盤)のピアノトリオ演奏とくらべ、現代音楽の要素が強い。そのため真正ジャズ・マニアなら本作のピアノトリオ曲を聴き、「おや?」と感じるだろう。

 つまりこのアルバムを現代音楽のピアノトリオとして聴くのか、それともジャズ的に躍動する2管クインテット作品として聴くのかでリスナーの評価はガラリと変わりそうだ。前者の聴き方をする人たち、すなわちM-1のピアノのイントロだけで後頭部ズゴンな人ならば本作に深く満足し、かたや後者のエネルギッシュな要素を求める人にはちょっと静かすぎて食い足りないかもしれない。

 たとえぱ中~終盤にかけ、ドラマティックに盛り上がるM-2やM-9のような方向性の楽曲がもうあと何曲かあれば、たぶん彼女が志向するのとまったく別の客層、つまり後者のリスナー達をもごっそり獲得できるのだろう。だがビジネスを考えてそうするかどうかは、彼女の芸術家としての生き方の問題でもある。その結論が出そうな次作が楽しみだ。

 ケイト・ダントンは1983年、テキサス生まれ。南カリフォルニア大学ソーントン音楽学校でアラン・パスクァ、作曲家ヴィンス・メンドーサに師事した。本作のアースキン参加は、彼との共演が多いパスクァ人脈かもしれない。なおケイトがデビューしたピアノトリオ作品「Real & Imagined」(2008) はジャズ批評でも紹介されている。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

OPUS 5 / Progression

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Alex Sipiagin (tp, flh)
Seamus Blake (ts)
David Kikoski (p, fender rhodes)
Boris Kozlov (b)
Donald Edwards (ds)

Recorded: September 4, 2013, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Michael Marciano (Criss Cross 1369)

リズムの変化で聴かせるクールな新世代ハードバップ

 ハードバップを今風に料理したファースト盤、変拍子を多用したセカンド盤と1作ごとに作風を微妙に変えてきている5人組ユニット、「OPUS 5」のサードアルバムがお目見えした。とはいえハードバップをベースにリズムの変化で聴かせる基本路線は変わらない。今回はバップ色の濃い1枚目とアレンジに凝りまくった2枚目の中間くらいのテイストだ。前作ほどメカニカルでなく、往年のジャズが好きな人にも親しめるだろう。

 メンバーは不動のスタメンだ。フロントはシェイマス・ブレイク(ts)とアレックス・シピアギン(tp)。リズムセクションはデヴィッド・キコスキ(p)にボリス・コズロフ(b)、ドナルド・エドワーズ(ds)がつとめる。オリジナル全7曲をメンバー全員で持ち寄った。

 それにしても今回クリスクロスから同時リリースされた、派手でインパクトが強いジョナサン・ブレイクの「Gone, But Not Forgotten」 (2014年、レヴュー記事はこちら)とまるで対照的な内容だ。ジョナサン盤が血気にはやるイケイケの若武者だとすれば、こっちは酸いも甘いも噛み分けた大人の渋さが漂う。一見、地味だが、演奏スタイルやリズムのアレンジに現代ジャズの蘊蓄がこれでもかと詰め込まれている。

 演奏の温度感でいえば、(M-7を除き) 熱くノリノリになるのを意図的に狙って避けている。全員がクールに「10の力でぶっ叩くところを7で抑える」みたいな感じ。そのためゆったりくつろげる作品に仕上がっている。決して脂っこくならず、さっぱりサラダ味なところがNYコンテンポラリー的だ。

 またなんとなく聴き流すと見落としてしまうのだが、本作には前作同様あちこちに細かい罠が仕掛けられている。宝探しでもするつもりで分析的に聴いてみると、未来のジャズってこうなのかなと思えてくる。

 リズムがめまぐるしく変わった前作ほどトリッキーではないが、よく聴けば今回も迷路のように入り組んでいる。バックビートや7拍子、6拍子など散りばめたリズムのバリエーションや複雑なキメが相変わらず刺激的だ。同じようにハードバピッシュな4ビートをやっても、往年のジャズとはどこかちがう異彩を放っているのもそのあたりが原因だろう。

 ただし本盤のよさは難しいことをやりながらこれ見よがしにならず、オブラートにくるんでやさしく見せているところだ。だから何気なく見逃してしまいそうな仕掛けの数々がいつのまにかサブリミナルのように効いてくる。ゆえに聴けば聴くほど旨みが出る。何度聴いても飽きがこない。このへんも、ストレートに力で勝負しているぶんパッと聴いただけで「すごくいい!」と感じさせる(が飽きるのも早い)ジョナサン盤と好対照だ。

 50年代のハードバップはそろそろ卒業したい。だけど最近のジャズはとんがりすぎててちょっとなぁ……。そんな人にはちょうどいいあんばいでハマりそう。頭でっかちにならず、ふかふかのソファにどっかとめり込み、のんびりリラックスして楽しみたい。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Johnathan Blake / Gone, But Not Forgotten

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Johnathan Blake (ds)
Chris Potter (ts, afl)
Mark Turner (ts, ss)
Ben Street (b)

Rec. February 20, 2014, at the Samurai Hotel Recording Studio, NY
Engineer: David Stoller (Criss Cross 1368)

クリポタが吠える生きる喜び

 底抜けに明るくエネルギッシュな演奏だ。これを「つまらない」という人がいたらぜひお目にかかりたい。力でねじ伏せる正統派ジャズが躍動するサックス2管カルテット。剛と巧をあわせ持つ敏腕ドラマー、ジョナサン・ブレイクがリリースしたばかりの新作だ。

 クリス・ポッターとマーク・ターナー。動と静、陰と陽のまったく対照的な2人の人気ソリストが、ジョナサン・ブレイク(ds)、ベン・ストリート(b)という鉄壁の土台の上に乗っているのだからおもしろくならないわけがない。ジャズの痛快さと生きる喜びに満ちあふれた彼らの演奏を聴いていると、こっちまで心がウキウキ浮いてくる。

 前作「The Eleventh Hour」(2012年、レヴュー記事はこちら)は、オリジナルが10曲中7曲を占める凝った作りだった。効果音を入れるなど、いま風のコンテンポラリーな要素でひとひねりしていた。だが今回のアルバムは、ジャズの王道を豪球一直線でブチ抜くまっすぐな音だ。「これで文句があるなら俺に言ってこい」的な自信と開き直りを感じさせる。

 オリジナル2曲のほか、シダー・ウォルトンやジム・ホール、ポール・モチアンらの作品など合計11曲。オリジナル比率を抑えたことで、彩り豊かなバラエティ効果が出た。ポッターがぶっ飛ばす豪快なナンバーあり、しっとり聴かせるバラードあり、往年の古き良き時代を想わせる佳曲あり。イントロからぐいぐいファンキーな1曲目を聴いただけで早くもノックアウトされてしまう。

 前作とくらべ必要以上にアレンジせず、素材のよさを活かした作りだ。そのため楽曲そのものより、ソロ演奏のほうにスポットライトが当たる仕掛けになっている。実際、緩急をつけた2管のソロの嵐は聴き応えがある。

 ターナーはポッターより力強さで劣るが、そのぶん屈折した独特の妖気がある。一方のポッターは爆発力では現代ジャズ界No.1だ。本作ではそんな彼の奔放な暴力がたっぷり味わえる。また主役ブレイクのドラムソロも11曲中、4曲で聴ける。漫然と叩く長いだけのソロではなく、起伏があり顔が見えるドラムソロである。

 本作にはコンセプトの新しさや時代を占うような先鋭性はない。だが理屈抜きの幸せがある。退屈しないジャズが聴きたい。そんなあなたにぴったりの1枚だろう。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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