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Stefano Bollani / Joy In Spite Of Everything

Stefano_Bollani_Joy_In_Spite_Of_Everything.jpg

Mark Turner (ts)
Bill Frisell (g)
Stefano Bollani (p)
Jesper Bodilsen (b)
Morten Lund (ds)

Recorded: June 2013, at Avatar Studios, NY
Engineer: James A. Farber (ECM 2360)

ビルフリやターナーが化学反応したECMらしからぬ解放感

 結論から言えば、この新譜はかなりの逸物である。ビル・フリーゼルの奇妙な明るさが随所であふれ出しており、彼がマーク・ジョンソンやメセニーと組んでやらかした名盤「The Sound of Summer Running」(1998)みたいなありさまになっている。そこに化学反応を与えるのが、(これまた組み合わせ的にありえない)マーク・ターナーなんだからやってられない。ちなみにボラーニ・トリオとビルフリ、ターナーは初顔合わせだ。

 もちろんこんなジョークが成立するのは軸になるボラーニ・トリオあればこそだが、組み合わせも含めてこの快挙がECMで実現したのは画期的だろう。先日レヴューしたマーク・ターナーのECM初リーダー作(レヴュー記事はこちら)といい、最近のECMは(いい意味で)すっかりおかしくなってきたようだ。

 その証拠に本盤のオープニングを飾るのは、昔なつかし渡辺貞夫の「カリフォルニア・シャワー」を思わせる陽気なカリビアンである。リゾート気分で腰をふりふり、ってあなた、いやこれECMなんですよ? (何度も言うけど)

 続くM-2も明るく楽しいメロディーだし(ECMなのに「明るく楽しい」?)。いったいマンフレート・アイヒャーの脳内でどんな心境の変化があったのか本人に聞いてみないとわからないが、何かとんでもない事態(内部改革?)が進行中であることだけは確かなようだ。おそらくECMは今後大胆な柔軟化路線を取るつもりなのだろう。

 さて話を本題に戻そう。

 本作は全曲ステファノ・ボラーニによるオリジナルであり、ECMの戦略うんぬんはともかくこのステキなアルバムを世に送り出したのがボラーニの才能であることは言うまでもない。

 アルバム構成は前半の明るく美しく躍動する「軟」路線から、後半の静かで思索的な「硬」派路線までバラエティに富んでおり、リスナーはジェットコースターに乗ったお客さん気分で「次は何が飛び出すか?」とハラハラドキドキ。決して聴き手を飽きさせないおすすめの1枚である。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Walter Smith III / Still Casual

1

Walter Smith III (ts)
Taylor Eigsti (p)
Matthew Stevens (g)
Harish Raghavan (b)
Kendrick Scott (ds)
Ambrose Akinmusire (tp on M-3,7,9)

Released: 2014. Recorded at Sear Sound, NY
Engineer: Chris Allen (自主制作盤)

スミス3世には「かっこいい」がよく似合う

「ウォルター・スミス3世はなかなか新譜を出さないなぁ」と思っていたら、やっときました。フタを開けてみれば1曲目からもうゴキゲン。かっこいいアレンジをばっちり決めたコンテンポラリー・ジャズの洪水である。共同名義を除けば4枚目のリーダー作になるが、コンポジションも含め自身のスタイルががっつり固まってきたようだ。

 メンバーは主役のスミス3世(ts)にマシュー・スティーヴンス(g)、リズムセクションはテイラー・アイグスティ(p)とハリシュ・ラジャン(b)、ケンドリック・スコット(ds)が務める。またアンブローズ・アキンムシーレ(tp)が3曲にゲスト参加している。

 まずメンバー別に見ると、ピアノのアイグスティは相変わらずキラキラした音色で正直好みじゃないが、かたやクリスチャン・スコット・バンドでレギュラー・ギタリストを務めるスティーヴンス(1982年生まれ)には目が止まった。彼は一時期恥ずかしいくらい完全にローゼンウィンケル化していたが、本作のプレイを聴く限りすっかりオリジナリティを備えて熟成されてきた。

 一方、リズム隊はサポートに徹しているが、そつのないプレイで不満はない。ベースのラジャンは初聴きかと思ったが調べてみるとけっこう聴いていた。よく弾むいいベースだ。今後は要チェックとしておこう。

 さて収録曲はスティーヴンスが1曲を持ち寄ったほか、すべてスミス3世のオリジナル全10曲だ。基本的にはクリスクロスからリリースされた前作 「III」 (2010) の延長線上にある音だが、アイグスティのピアノの音使いの関係でもう少し明るく華やかな仕上がりになっている。テーマやキメはたまに過去作で聴いたフレーズがちょいよぎるが、まあ愛嬌である。

 コンポジション的には前作 「III」 そのままなノリのM-1やM-3のほか、ゆらゆら漂うリズムアレンジが面白いM-2、アイグスティが華麗なピアノソロを決めるM-4、スミス3世が泣きのサックスを聴かせるバラードのM-5「Greene」(この曲は2012年に亡くなったジミー・グリーンの娘さんに捧げられている)など、どれも水準をクリアした良い出来だ。おそらくどんな好みの人が聴いても「いい」と言いそうな普遍性がある。この中庸感を持たせた曲作りがうまい。

 かたやプレイスタイルの方は、彼はクリス・ポッターのように「俺が俺が」とごりごり力でねじ伏せるようなタイプではない。だが、かといって逆にマーク・ターナーみたいに脱力し切ったトリスターノ系でもない。ちょうどその中間あたり(からポッター寄り)にうまくポジショニングされている。この絶妙な位置取り感が作曲同様、うまいと言うほかない。

 その結果、曲を聴いても「いい」し、プレイも「いい」。(しかも誰が聴いても)。そんな100点満点で常に80点の水準作を作り続けられる原動力になっている。誤解を恐れずに言えば飛び抜けた天才ではないが、後天的なトレーニングで身につけた(広い意味での)スキルに長けた人なのだろう。大いなる職人、スミス3世に乾杯である。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Mark Turner Quartet / Lathe of Heaven

1

Mark Turner (ts)
Avishai Cohen (tp)
Joe Martin (b)
Marcus Gilmore (ds)

Recorded: June 2013, at Avatar Studios, NY
Engineer: James A. Farber (ECM 2357)

ひんやりした音色、ヒリヒリするような緊張感

 寒色系のひんやりした色味がアルバム全編を支配している。無調っぽい無機的な音が続き、まるで修行僧の祈りのようにストイックな演奏が繰り広げられる。この世界にシンクロできる人と、できない人とにリスナーはハッキリ分かれるだろう。ヒリヒリするような緊張感が漂う逸品。ECM初リーダー作になるマーク・ターナーの新作だ。

 メンバーはターナー(ts)、アヴィシャイ・コーエン(tp)の2管に、ジョー・マーティン(b)、マーカス・ギルモア(ds)という現代最高峰のリズム隊によるピアノレス・カルテットである。

 収録曲はすべてターナーのオリジナルで全6曲。どれも長く、10分以上の曲が6曲中、3曲もある。ちなみにM-2の「Year of the Rabbit」は、2012年にECMからリリースされたFLYのアルバム『Year of the Snake』の続編的な位置づけだ。またM-6の「Brother Sister 2」は、同アルバムに収録されていた「Brother Sister」のニュー・ヴァージョンである。

無彩色の世界が限りなく広がる

 扉を開けると、そこには無彩色の世界が限りなく広がっている。まるで哲学者がひっそりと孤独な作業に打ち込むかのような演奏が続く。「明るさ」とか「わかりやすさ」などとはまったく対極にある、抽象的でビターな作風である。どこまでがアレンジされ譜面化された世界で、どこからがインプロなのか、境界が朦朧とした「ヤバい」プレイが展開される。

 2管が組んずほぐれつひらひら舞い、リズム隊がホットに煽る。ターナーは音色が冷たいのでクールに聴こえるが、本作での演奏は(彼にしては)やや温度感が高い。M-4で聴かせる、速射砲のように音符を叩きつけるソロなどは典型だ。かたやコーエンは、ターナーにそっと寄り添うようなプレイをしている。2人はまるで双生児のように息が合っている。

 一方のリズム隊は、かなり挑戦的だ。例えばM-1の冒頭、静かにテーマを奏でる2管に対し、マーカス・ギルモアが非常にアグレッシヴなアプローチをしており「おっ?」と思わされる。醒めた2管と熱いドラミングとのギャップがおもしろい。

 ギルモアは全体に比較的手数が多いプレイぶりでけっこう「行って」いる。知的好奇心をくすぐるドラミングがあちこちで聴ける。かたやベースのジョー・マーティンも非常にクリエイティブなプレイをしており、リズム隊の絡みに注意して聴くと10倍楽しめるだろう。例えばM-6冒頭のペースとドラムスのスリリングなコンビネーション! もうここだけでご飯が食べられる。

 結論として本作は聴き手を冷たく突き放すかのような作りではあるが、能動的に自分からこの世界へ入って行けば深々とした聴き応えがある。ターナーのキャラとECMのブランドカラーも親和性が高い。ECMでの彼のプレイをもっと聴きたい気分にさせてくれる1枚だ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

ソロを取るニア・フェルダーの背後で……



意識しまくりなのに「気にせぬ風」を装いバッキングするアダム・ロジャース

 ニア・フェルダーのクレイジーなギターソロがすごい――のはその通りだが、背後でバッキングするアダム・ロジャースの表情に注目。

「はぁ? こんなソロ、大したことないねぇ」って風を装いながら、明らかにニアを意識しまくりなのがおかしい。


【ニア・フェルダー関連記事】

Nir Felder / Golden Age」 スッキリさわやかポストロックな未来派ジャズ

(赤字をクリックするとアルバムのレヴュー記事へ飛びます)

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Sean Jones Quartet / Im・pro・vise-Never Before Seen

1

Sean Jones (tp)
Orrin Evans (p)
Luques Curtis (b)
Obed Calvaire (ds)

Released: 2014.Recorded at Avatar Studios, NY
Engineer: Todd Whitelock (Mack Avenue MAC1080)

正統派の贅沢ジャズで夢見るように眠りたい

 熱く躍動する「エネルギー系ジャズ」と、クールに思索する「脱力系ジャズ」にジャズを大きくふたつに分ければ、典型的なエネルギー系ジャズである。野性味にあふれ、理屈抜きで楽しく手に汗握る。ゴキゲンな4ビートのオープニングを聴いただけで幸せになれる。リンカーン・センター・ジャズ・オーケストラのリード・トランペッターも務めたショーン・ジョーンズの新作だ。

 野人オリン・エヴァンス(p)、暴漢オベド・カルヴェール(ds)らワイルドな面々を従えた主役、ジョーンズのプレイはストレートでアグレッシブ。力強く屈託のない正統派である。真正面から敵をぶった斬るようなオーラを放つ。M-6での畳みかけるような暴れっぷりを聴けば誰もが納得するだろう。

 一方、エヴァンスのピアノがこれまたぐっとくる。弾きまくるソロプレイでは剛腕な推進力を見せ、はたまたバッキングでは余韻をなびかせたコードプレイが美を極める。かたやカルヴェールの今にもドラム・セットをぶっ壊しそうなドラミングもすさまじい。ド派手なサンバ調のM-9やM-3での突き抜けた煽りぶりには口をあんぐりだ。

 さて、そんなクセ者どもの集まりだけにノリのいい楽曲が良いのはもちろんだが、同時に収録されたバラードがまたどれもすばらしい。イントロからエヴァンスが静かに音をたなびかせるM-2の雰囲気にはうっとりだし、粛然とした幕開けから後半ものすごく盛り上がるM-4も聴き応え満点。また靄のかかった朝空をゆったり漂うようなM-8も気持ちいい。

 かと思えばスタンダードのM-7「How High The Moon」のゆらめくようなリズムアレンジには思わず乾杯したくなるし、超オーソドックスなブルースのM-5がこれまた光り輝いてることったら。いや何の変哲もないブルージーな4ビートなんだけど、これら楽曲群の中に何気なく差し込まれるとすごく新鮮に感じる。なるほどアルバム構成の仕方もうまいなぁ(ちなみにプロデューサーはクリスチャン・マクブライド)。てなわけですっかり夢見心地な1枚でした、ハイ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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