【2014 イチ押し新譜ベストテン】 年間ランキング ~これだけは聴いとけ

【第1位】 Mark Turner Quartet / Lathe of Heaven (←クリックするとレヴュー記事へ。以下、同)

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Mark Turner (ts)
Avishai Cohen (tp)
Joe Martin (b)
Marcus Gilmore (ds)

2014年、マーク・ターナーの第二期黄金時代が始まった。

 2014年の1年間でインパクトの強かった作品を順に並べて行くと、奇しくも1~3位はすべてマーク・ターナー(ts)の参加作になった。出る新譜、出る新譜、めぼしい盤には彼が関わっている、注目作がリリースされると必ず彼がサックスを吹いている――そんな1年だった。2014年はターナーの第二期黄金時代が幕開けを告げた年といえるだろう。

 それにしてもこのブログでは意識してどこかしらトンがったものを紹介するようにしているつもりだが、いざ年間ベストテンを選ぶとなると結局は誰が聴いても「いい」と言いそうな作品が並んでいる(1位以外)。不思議なものだ。これが人間のバランス感覚のなせる技か。まあそれだけ普遍性のあるランキングなんだとポジティヴ・シンキングしておこう。

【第2位】 Tom Harrell / Trip

2 音で物語を表現したハレルの意欲作

Tom Harrell (tp, flh)
Mark Turner (ts)
Ugonna Okegwo (b)
Adam Cruz (ds)

【第3位】 Jochen Rueckert / We Make The Rules

3 漆黒の闇夜を疾走するダークな饗宴

Mark Turner (ts)
Lage Lund (g)
Matt Penman (b)
Jochen Rueckert (ds)

【第4位】 OPUS 5 / Progression

4 クールな新世代ハードバップ

Alex Sipiagin (tp, flh)
Seamus Blake (ts)
David Kikoski (p, fender rhodes)
Boris Kozlov (b)
Donald Edwards (ds)

【第5位】 David Weiss / When Words Fail

5 煙草が香るスタイリッシュな男の美学

David Weiss (tp)
Myron Walden (as)
Marcus Strickland (ts)
Xavier Davis (p)
Dwayne Burno (b)
E.J. Strickland (ds)
Ben Eunson (g on 3, 8)

【第6位】 Stefano Bollani / Joy In Spite Of Everything

6 ビルフリ、ターナーが化学反応したECMらしからぬ解放感

Mark Turner (ts)
Bill Frisell (g)
Stefano Bollani (p)
Jesper Bodilsen (b)
Morten Lund (ds)

【第7位】 Donald Edwards / Evolution Of An Influenced Mind

7 巧妙な組織プレイが織り成すアレンジの妙

Donald Edwards (ds)
Walter Smith III (ts)
David Gilmore (g)
Orrin Evans (p)
Eric Revis (b)

【第8位】 Rodney Green Quartet / Live at Smalls

8 ロドニーは大魚をモノにした

Rodney Green (ds)
Seamus Blake (ts)
Luis Perdomo (p)
Joe Sanders (b)

【第9位】 Steve Cardenas / Melody in a Dream

9 夏草の香りがするギタリスト

Steve Cardenas (g)
Thomas Morgan (b)
Joey Baron (ds)
Shane Endsley (tp on 3,7,9)

【第10位】 Ricardo Izquierdo / Ida

10 キューバの妖星、鮮烈デビュー

Ricardo Izquierdo (ts, bcl)
Sergio Gruz (p)
Juan Sebastien Jimenez (b)
Mauro Gargano (b on 5,6,9)
Lukmil Perez(ds)

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

David Weiss / The Mirror

David_Weiss_The_Mirror.jpg

David Weiss (tp)
Myron Walden (as)
Marcus Strickland (ts on 1-5)
Xavier Davis (p)
Dwayne Burno (b)
E.J.Strickland (ds on 1-5)

Craig Handy (ts on 6-7)
Steve Davis (tb on 6-7)
Norbert Stachel (bs, bcl on 6-7)
Nasheet Waits (ds on 6-7)

・Recorded February 15, 2004 by Joe Ferla at Avatar Studios, NY (M-1~5)
・Recorded March 24, 2004 by Joe Marciano at System Two, NY (M-6~7) (FSNT 204)

手に汗握るホットな現代版ハードバップ

 のっけからバリバリに装飾されたホーンセクションがテクニカルなキメを繰り返し、華やかな4ビートが豪快に疾走する。変拍子も織り込みながらのアレンジがかっこいい。ウェイン・ショーター在籍時のジャズメッセンジャーズを現代に蘇らせたようなハードバップが聴ける。トランペット奏者、デヴィッド・ワイスが2004年にリリースしたセカンド・リーダー作である。

 骨格になるメンバーは、ワイスの最新リーダー作 「When Words Fail」 (2014年、レヴュー記事はこちら)とほぼ同じだ。フロントは主役のワイスにマイロン・ウォルデン(as)、マーカス・ストリックランド(ts)の3管。リズムセクションはザビエル・デイビス(p)とドウェイン・ブルーノ (b) 、E.J.ストリックランド(ds)が務める。またアルバム後半では5管になり、スティーブ・デイビス(tb)やナシート・ウェイツ(ds)らも参加している。

 収録曲はワイスのオリジナル5曲のほか、ケヴィン・ヘイズの「Our Trip」、ウェイン・ショーター「Mr. Jin」を合わせた計7曲だ。基本的にはデビュー作である前作「Breathing Room」(2001年、レヴュー記事はこちら)の延長線上にある音だが、要所で複数の管楽器が織り成すホーンセクションがきらびやかにアレンジされている。アレンジャーとしてのワイスの能力を証明した一作だ。

 聴き物はワイスとストリックランド、ウォルデンの3管の華麗な競演である。3人ともソロを取ればエネルギッシュで力強い。正統派ハードバップの醍醐味が堪能できる。ただしそこはやはり現代ジャズ。ノリがいい中にも、どこかクールに醒めた装いをまとっているのが今っぽい。

 たとえばM-1やM-4のようにストレートな4ビートでは思わずカラダでリズムを取ってしまう。かと思えばM-2やM-3のようにちょっとクールで漂うような物憂い曲では、ふと物思いにふけってしまう。全体にウェイン・ショーターの影響が感じられるコンポジションである。

 ちなみにジャケ写はアンドレイ・タルコフスキー監督の映画「ストーカー」(1979年)をイメージしたもの。またM-1~3、M-5はいずれも同じ映画からインスパイアされたオリジナル楽曲だ。とにかく理屈抜きで楽しめる逸品。おすすめである。

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Tom Rainey / Obbligato

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Ralph Alessi (tp)
Ingrid Laubrock (ss, ts)
Kris Davis (p)
Drew Gress (b)
Tom Rainey (ds)

Recorded: February 28, 2013, at Systems Two, NY
Engineer: Joe Marciano (Intakt CD 227)

お茶目なユーモア精神たっぷり、フリーっぽい山葵を利かせたスタンダード集

 のっけからフリー一歩手前のスリリングな演奏が飛び出す。楽器のとっ散らかり方がおもちゃ箱をひっくり返したよう。2管がずっとインプロで掛け合いをくり返し、あっちの世界寸前だ。だがご安心あれ。本作にはわかりやすいオチがついている。「フリーなんてちょっと…」 という人にこそぜひ聴いてほしい1枚。凄腕ドラマー、トム・レイニーがリリースした最新リーダー作である。

 メンバーはまず 「この世界」 には欠かせない奇人ラルフ・アレッシ(tp)に、ドイツ出身の女性サックス奏者イングリッド・ローブルックの2管。リズムセクションはフリー界隈では鉄板のスタメン、クリス・デイヴィス(p)にドリュー・グレス(b)、そして主役のレイニー(ds)である。全員が互いのリーダー作で共演し合う慣れたメンバーだ。

 全10曲、素材はすべてスタンダードか既成のジャズメン・オリジナル。もっと難解なのを予想していたが、思ったよりはるかにわかりやすい。スタンダードばかりでフリーをやるとは一種のジョークにも取れるが、 「スタンダードでフリーをわかりやすく」 というのがコンセプトなのだろう。メロディーラインがはっきりした曲ばかりなので、フリーっぽい演奏でも展開を追いやすい。

 特にクリス・デイヴィスは頭でっかちな自身のリーダー作より、明らかにこっちのほうがいい。正直、こんなにいいピアニストだとは思わなかった。新しい発見ができて本当に聴いてよかった。また耳になじんだアレッシやグレス、レイニーが妖しい旨みたっぷりなのは想定内だが、初聴きの女性サックス奏者、ローブルックが発する斬新な才気にも驚かされた。

 さて曲順を追ってみよう。まず全員が暴れるオープニングに続くM-2は、2管の囁き合いが妖しい静かなバラード 「In Your Own Sweet Way」 (Dave Brubeck) だ。平静さの向こう側に秘められた不穏な空気に早くもうっとりさせられる。メロディーが美しい4ビートのM-3 「Long Ago and Far Away」 (Jerome Kern) では、今度は2管だけでなくピアノまで3者同時にインプロを繰り広げる。

 M-4はゆったりした大らかなグルーヴで聴かせるおなじみの 「Reflections」 (Thelonious Monk)。ため気味のクリスのピアノソロがすばらしい。続くM-5 「Secret Love」 (Sammy Fain) は、飛び跳ねるようなリズム隊のノリがおもしろいちょっとフリーキーな明るい4ビートである。

 と、そう油断しているとお次のM-6 「Prelude to a Kiss」 (Duke Ellington) はいきなり長いドラムソロで始まり、リスナーを煙に巻く。ソロが終わるとまた2管が静かにうごめき合い、内に秘めた狂気を発散させる。なんとも刺激的な妖曲だ。 

 M-9の 「You Don't Know What Love Is」 (Gene de Paul) もサビにくるまでほぼ原型をとどめてないが、聴き手に何かをインスパイアさせるゾクゾクするようなバラードになっている。締めのM-10はオーソドックスなフリーの 「Just in Time Again」 (Jule Styne) である。

 いずれもフリー的手法がスパイスになっているが、すんでのところで正気の世界にとどまっている。聴きづらさや分かりにくさなどまるでなく、激流を小船で下るようなスリリングなアンサンブルとインプロが楽しめる。フリーっぽいのに妙に明るいところもマル。名エンジニア、ジョー・マルシアーノが手がけた録音も、透き通るような解像度と立体感でべらぼうに音質がいい。絶対に買って損のない優良盤だ。

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Christian Vuust / Urban Hymn

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Christian Vuust (ts)
Aaron Parks (p)
Ben Street (b)
Jeff Ballard (ds)

Recorded: June 3, 2013, at Sear Sound, NY
Engineer: James Farber (Cloud DDCJ-4014)

NYの大物がずらり、アーロン・パークスのピアノに癒される

 癒される音楽だ。心に染みる。アーロン・パークス(p)が陰の主役としてアンサンブルを完全に仕切る。ベン・ストリート(b)、ジェフ・バラード(ds)らNYジャズ界の気鋭が脇を締める。デンマークのベテラン・テナー奏者、クリスチャン・ヴーストが本邦デビューを飾った日本仕様盤、もちろん最新作である。

 10曲すべてクリスチャンのオリジナル。全編でヒット請負人のパークスが獅子奮迅の活躍をしている。ほとんどの曲で主役より多めにソロを取り、テーマを弾き、コードワークで盛り上げる。かなり重要な仕事をこなしている。もしパークスがいなければ、本作はこうはならなかっただろう。単なるイージー・リスニングで終わっていたかもしれない。それほど彼は痺れるような美しいピアノを弾いている。

 一方、ヤン・ガルバレクみたいな主役の軽いサックスは腹八分目な感じ。絶対に力まず、ふわふわと漂うように流れて行く。よく言えばクリス・チークだがそこまで奥深さはなく、強いインパクトはない。だがそこがいい。くつろげるのだ。誤解を恐れずに言えば、本作は和らぐ優しい楽曲を味わい、パークスのピアノを聴くための作品である。

 実は最初、 「なんだこれ? ただのイージー・リスニングじゃないか」 と思っていた。盤がリリースされてすぐ (メンバー表を見て) 速攻で買ったが、正直レヴュー化するのをためらっていた。書くだけの価値を確信できなかったのだ。だがあるときふと、えらく疲れていた夜に聴くと、なぜか「すごくいいなぁ」と感じた。そうか、癒しのための音楽だったのか――。

 それからというもの、朝起きてまだ頭がぼんやりしているときや、夜寝る前によく聴くようになった。じんわりリラックスでき、心があたたまる。温浴効果がある。まさかこんなに効くCDだとは思わなかった。ある人はこれを「ポップス」と呼ぶかもしれない。「ジャズじゃない。ヒーリング・ミュージックだ」と言う人もいるだろう。だがいずれにしろ、とても薬効の高いアルバムであることはまちがいない。

 テイスト的には、先日レヴューしたスウェーデン人ベーシスト、ラーシュ・ダニエルソンの 「Liberetto II」(2014年、レヴュー記事はこちら) とほぼ同じ。ぶっちゃけ、日本人好みの甘ったるい音だ。その証拠にどちらのアルバムも半ば日本企画である。 「日本は北欧ブームだし、売れるだろう」。 国内業者がそう考えたであろうことは想像に難くない。いわば企画者がリスナーを見下し、甘く見た作品だ。エロ・ジャケのピアノトリオと同じである。

 だがアーロン・パークスの信じられないほど素晴らしいピアノと仕切りが、そんな売り手側の生臭い思惑を吹っ飛ばした。この作品を凡庸から救い上げ大化けさせている。

 ヨーロッパの甘いピアノトリオがバカ売れする日本市場に合わせ、北欧にうまく引っかけた。その上でNYの大物たちをずらりと並べたマーケティングは成功だ。わかりやすい音しか使わずテクニカルなところがまるでないクリスチャンのテナーはNYでは売れなかったが、この甘い曲作りとテイストなら日本では売れる可能性が高い。ひょっとしたら聴きやすい本盤を入り口にして、新しいジャズファンがふえるかもしれない。そう考えれば意義深い。

 かつてクリスチャンはアメリカで暮らし、リリースしたリーダー作は15枚。いまは故郷でスローライフを送る1964年生まれの苦労人に、やっとチャンスがめぐってきたようだ。

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Jonathan Crayford / Dark Light

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Jonathan Crayford (p)
Ben Street (b)
Dan Weiss (ds)

Recorded: August 2013, at Systems Two, NY
Engineer: Mike Marciano (Rattle Records Rat-j-1020)

D.ワイス、B.ストリート参加、沈黙を音に変えるピアノトリオ

 ニュージーランド出身でパリ在住のピアニスト、ジョナサン・クレイフォードが、ベン・ストリート(b)、ダン・ワイス(ds)らとNY録音した新譜である。クレイフォードが音数の少ないリフを弾き始めると、とたんにワイスが手数を多くしてスーッと浮上する。押したり引いたりの2人のコミュニケーションが知的で楽しい。音符のない空間を生かした静謐なピアノも聴き物だ。

 全7曲すべてクレイフォードのオリジナル。ECMっぽいちょっと先鋭的で憂いをたたえたメロディーを軸に、メンバー3人がインタープレイで聴かせる演奏をする。主役のクレイフォードは比較的抑えたピアノを弾くが、反対に茶目っ気たっぷりなのがドラマーのワイスである。

 ヘンなところに打音を入れたり、裏で遊んだり、ピアノにからむワイスの創造的なプレイにはまったく惚れ惚れする。ドラムだけ聴いていても充分面白い。ちょうどワイスのピアノトリオによる実験作「Timshel」(2010年、レヴュー記事はこちら)から、余分な実験性を削ぎ落としたような演奏をしている。おそらくクレイフォードはワイスの同アルバムを聴いており、似た方向性の作品にしたくてワイスと共演したんじゃないだろうか。

 その証拠にこれほど遊ぶドラミングが成立するのは、クライフォードが音数を減らしてそのための空間を作っているから。その意味では三位一体のトリオ演奏の妙といえる。M-1の冒頭でリズム隊がピアノに呼応してリズミカルな動きをし、「これから何が起こるのか?」とリスナーに期待を抱かせるオープニングなどはその象徴だ。

 本作は 「ピアニストが主役として美メロを弾き、リズム隊がその伴奏をする」 というタイプのピアノトリオを求める人には向かないかもしれない。逆に楽器を使った3人のクリエイティヴな会話を楽しみたい人にはおすすめだろう。

 クレイフォードは1964年9月生まれ。学卒後、作曲家として映画業界で働き、オリジナル映画音楽でthe GOFTA (Guild of Film and Television Awards)を授与された。90年代にはニューヨークを拠点に活動し、カート・ローゼンウィンケルやデヴィッド・ビニーらとも共演歴がある。ピアノトリオ作品「Our Own Sweet Way」(2012)のほか、「Big Foot」(2007)、「Madrugada」(2004)などをリリースしている。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Michael Eaton / Individuation

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Michael Eaton (ts, ss)
Jon Crowley (tp)
David Liebman (ts, ss on M-4, 5, 13)
Brad Whiteley (p)
Daniel Ori (b on M-3, 4, 6, 8-12)
Scott Colberg (b on M-1, 2, 5, 13)
Shareef Taher (ds)

Recorded: May 18-19 and June 1, 2014, at Bunker Studio, NY
Engineer: Jacob Bergson and Nolan Thies (Destiny Records DR-0003)

D.リーブマン参加、都会的で「いかにも」なコンテンポラリー・ジャズ

 都会的で「いかにもNYC」なコンテンポラリー・ジャズである。敬愛するデヴィッド・リーブマンをゲストに招き、熱いセッションを繰り広げた3曲を含む、計13曲。ブルックリンを拠点に活動するサックス奏者、マイケル・イートンがリリースしたばかりのデビュー作だ。

 イートンは1981生まれ。2004年にインディアナ大学のジェイコブズ音楽学部でジャズ研究の学位を取得した。当時インディアナで活動していた「(x)tet」というセクステットに参加し、アルバム「Strange Visitation」(2009)をリリース。2008年初めにブルックリンへ進出し、デヴィッド・リーブマンやダグ・ウェッブらに師事した。フレッド・ハーシュ、フィル・マーコウィッツらとも共演歴がある。

 アルバム収録曲はすべてイートンのオリジナル。リーブマンとの掛け合いがホットな、ひょうひょうとしたノリの4ビート曲、M-5が飛びぬけていい。ほかに同じくリーブマン参加のスタイリッシュなM-4と、不穏な雰囲気がおもしろいM-13もおいしい。大物との共演曲だけに、これら3曲は他の曲と明らかに演奏の温度感がちがう。気持ちが伝わってくる。

 ただ残念ながらその他の曲は、いかにもブルックリンでやってる若手が作りました、という手合いの曲だ。いや確かにどの曲もかっこいいんだけれど、でもどっかで聴いたことありそうな気もするしなんだかなぁ、てな感じ。強烈なオンリーワンの個性がない。とはいえまだデビュー盤だし、プレイヤーとしての風格や作・編曲の旨みはこれから備わって行くのだろうが。

 もうひとつ気になるのは、M-8からM-12までの5曲が 「Individuation」 (=アルバムタイトル) と題した連作風の作りになっていることだ。この5曲の固まりだけが明らかに前後の曲とテイストがちがう。個人的な意見かもしれないが、この連作部分はぶっちゃけ安手のプログレみたいでちっともおもしろくない。現代ジャズ的な他の曲とかなりギャップがあり、ちぐはぐ感が免れない。アルバムとしての統一感がなく違和感アリアリである。

 これら連作集の題名をそのままアルバムタイトルに据えてることから考えて、「ホントはこの連作みたいな音楽がやりたいんだけど、セールスを考えてその前後に『いま風』のコンテンポラリー・ジャズをもってきました」ということなのかもしれない。

 だがもしそうだとすれば、連作とその他の曲のミックスはどう考えても相乗効果を生んでない。別々の作品として、2枚のアルバムに分けたほうがいい。もちろんデビュー盤を出すチャンスを得て、「このとき」 とばかりにあれこれやりたいことを詰め込んだのかもしれない。気持ちはわかるけれど、アルバム構成の問題は今後の課題として考えてほしい。

 ただひとついえることは、売るためのアルバム作りでよくあるようにマット・ペンマン(b)だの、エリック・ハーランド(ds)だのとスターばかりで固めるのでなく、あくまで自分の率いるグループで彼はチャレンジしたということ。潔いし、応援したい。がんばれマイケル。

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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