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Jacob Sacks Quintet / No Man's Land

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Jacob Sacks (p)
Andrew Bishop (cl, ts)
John Wojciechowski (ts)
Tim Flood (b)
Dan Weiss (ds)

Recorded: 2001, at Tedesco Studios, NJ
Engineer: Jon Rosenberg (Yeah Yeah Records YY0007)

ピアノの妖しいゆらぎに 「カチッ」 と頭のスイッチが入る

 オープニングの呆けたようなクラリネットが鳴った瞬間、「カチッ」 と頭のスイッチが入る。ひさしぶりに 「これがトンガったジャズだ」 というやつに出会えた。やっぱりサックス-ワイス組はやってくれる。ブルックリンを根城にする妖刀ピアニスト、ジェイコブ・サックスの最新作。現代音楽っぽいジャズにちょっぴりフリーをまぶしたような食感がピリピリくる。好きなヤツは好きだがダメな人は洟も引っかけない、わがままなジャズである。

 本作は単独名義としては 「Two Miles A Day」 (2007年) 以来、8年ぶりのリーダー作になる。メンバーは全員、ジェイコブのデビュー作 「Region」 (1999年) に参加していた面々だ。フロントが96年モンクコンペ3位入賞のジョン・ヴォイチェホフスキ(ts)と、アンドリュー・ビショップ(cl, ts)。リズムセクションはティム・フラッド(b)と、ダン・ワイス(ds)である。

 すべてジェイコブのオリジナルで合計8曲。ふたを開けると1曲目からアヴァンギャルドな地平が開ける。いきなりジェイコブが、「この人はタイム感がおかしいんじゃないか?」 的な妖しいピアノソロを見舞う。夢幻の世界に迷い込んだようなふわふわと足が地に着かない旋律の心地よさ。続くクラリネットのソロもふつうじゃない。まるで魂を抜かれた亡者が夜の街を彷徨うかのよう。この1曲目を聴いただけで、リスナーが彼の世界にシンクロできるかどうかがハッキリわかる。リトマス試験紙みたいな曲である。

 一方、M-5は、何拍子だかわからない不思議なノリのステキなナンバーだ。深々とした静かな幕開けから明るく盛り上がり、冒険的なピアノソロが聴き手の頭をシャッフルする。眠っていたリスナーのクリエイティヴィティが刺激される。二番手を務めるテナーのソロも最後に激しく炸裂し、大団円を迎える。

 続くM-6は室内楽のように静かでクラシックっぽい趣きだ。シンバル以外はほぼドラムレスで、これも聴く人を選びそう。テナーとピアノの粛然としたデュエットに途中からペースが入り、寄せては返す小波が次第に大きくなって行く。6分以上ある曲だが、張り詰めたテンションの高さに思わず聴き入りあっという間に終わってしまう。M-1、M-5と並び、本作のベストトラックのひとつだろう。

 このほかベースソロから始まる痺れるような美しいバラードのM-2、ルバートの不穏な導入部にゾクゾクさせられるM-3、次々に被ってくる複数のサックスが不気味に響くM-4あたりが印象に残った。最後を締めるM-8はアルバムカラーとは打って変わって強いビートのある曲で、まるで子供が悪戯するような演奏が続いて終わる。

 このアルバムは当然のようにすべての曲がジェイコブのオリジナルだが、作曲まで含めて自分を最大限表現しようとの強い意欲を感じさせる。彼がありふれたスタンダードをふつうに演奏するなんて、まったく悪い冗談だ。そんなジェイコブ・サックスという自分を曲げないアーチストの生き方に強く共感を覚える。

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Alex Norris / Extension Deadline

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Alex Norris (tp, fl)
Gary Thomas (ts)
George Colligan (org)
Rudy Royston (ds)

Recorded: June 8, 2013, at Skyline, NJ
Engineer: Paul Wickliffe (Brooklyn Jazz Underground Records BJUR052)

ルディ・ロイストンとコリガンが挑む現代オルガン・ジャズの威力

 ニューヨークで活動するトランペッター、アレックス・ノリスの新作がリリースされた。ブルックリンのジャズ・カルチャーを発信するインデペンデント系レーベル発だけに現代的なテイストだが、エネルギッシュなルディ・ロイストン(ds)が参加したオルガン・ジャズゆえイキがいい。対照的にクールな主役ノリスのプレイと合わせ、おもしろい化学反応を生んでいる。コンテンポラリー・ジャズのフォロワーなら聴いておいて損はない1枚だ。

 ノリスとフロントを組むのは、80年代後半にグレッグ・オズビーと並びジャック・ディジョネット・スペシャル・エディションのフロントマンとしてのし上がってきたゲイリー・トーマス(ts)だ。ヘビーな吹きぶりで今っぽい楽曲に喝を入れる。一方、核になるオルガンを弾くのはジョージ・コリガン。彼が繰り出すベースラインに、ロイストンのドラミングが熱くからむ。リズム好きにはたまらない魅惑の布陣である。

 ノリスのトランペットは、ショーン・ジョーンズのように野性味あふれる剛球タイプではない。かといってデイヴ・ダグラスやラルフ・アレッシみたいに、おどけて跳ね回るフリーっぽい系統でもない。曲によってはあえて力を抜き、ゆらゆらと波間を漂うようなブルックリン系コンテンポラリーに散見されるスタイルだ。サックス奏者なら見かけるタイプだが、ストレートなプレイになりがちなトランペッターでこの種のひねりは珍しい。

 そんなわけで主役のプレイは絵に描いたようにクールだが、コリガンあやつるオルガン・ベースとロイストンが組む熱いリズム隊だけに、バンド全体の温度感はニュートラルからややホット寄りに振れている。ただし昔のオルガン・ジャズみたいにコテコテじゃなく、底流にどこかしら醒めた現代風味が覗くところが興味深い。

 ノリスのオリジナル6曲にコリガンが1曲を持ち寄り、ボビー・ハッチャーソンの 「Little B's Poem」 を加えた合計8曲。唯一、M-2だけは90年代から2000年代初頭にかけ一世を風靡した浮遊感のあるテーマでやや時代遅れな感じだが、その他の楽曲に大きな穴はない。アルバム前半は颯爽としたちょっとダークな4ビートのM-1や、ゲイリー・ヴァセイシのアルバム 「Outside In」 (2008年、レヴュー記事はこちら) を思わせる世紀末チックなM-3、ノリのいいダンディな4ビートのM-4とバラエティに富む。

 続くアルバム後半は、シリアスでかっこいい現代ジャズのM-6や、真っ向勝負の男前な4ビートのM-7、アップテンポでスリリングな4ビートのM-8あたりが印象に残った。前半とくらべ、力でねじ伏せる保守本流ぶりが顔を出すのがおもしろい。

 それにしてもアルバム全編で、ロイストンのドラミングが冴え渡っている。特にM-1とM-8ではドラムソロまで披露しているし、彼のプレイを聴いてるだけでかなり楽しめる。リズムに強弱をつけるのがうまく、パワフルなプレイをしても絶対にうるさく感じさせないところがすごい。ロイストンはここ数年レコーディングの仕事が激増しており、乗りに乗ってる時期なのだろう。

 なお、主役のノリスはメリーランド州コロンビア出身。高校卒業後、ボルチモアのPeabody Conservatory of Musicでトランペットを学んだ。90年に同音楽院を卒業し、1992年にニューヨークへ進出した。2000年にFSNTからアルバム「A New Beginning」でデビューしている。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Jesse Van Ruller / Phantom -The Music of Joe Henderson

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Jesse Van Ruller (g)
Clemens Van Der Feen (b)
Joost Van Schaik (ds)

Recorded: November 18, 2014, at Electric Monkey Studio, Amsterdam
Engineer: Kasper Frenkel (55 records FNCJ-5560)

【収録曲】

1. Jinrikisha (Page One)
2. A Shade of Jade (Mode for Joe)
3. Black Narcissus (Power to The People)
4. Punjab (In 'n Out)
5. Isotope (Inner Urge)
6. La Mesha (Page One)
7. Tetragon (Tetragon)
8. Serenity (In 'n Out)
9. Inner Urge (Inner Urge)

ギター・トリオで贈るジョー・ヘンダーソンへのトリビュート作品

 オランダ出身のギタリスト、ジェシ・ヴァン・ルーラーの今度の新作は、あの偉大なサックス奏者ジョー・ヘンダーソン (2001年没) に捧げるアルバムだ。なんでもジェシが温めていた企画だそうで、選り抜かれた楽曲は全9曲。いずれもジョーヘンの名盤である 「Page One」 (1963年) や 「In 'n Out」 (1964年)、「Inner Urge」 (同)、「Mode for Joe」 (1966年) あたりのおいしい時代からピックアップされている。

 ジェシが今回、ギター、ベース、ドラムスによるトリオ編成で臨むのは、2004年のライヴ盤 「Live at Murphy’s Law」 以来11年ぶりになる。もっとトリオでやっていそうだから意外な感じだが、ファンにとっては彼のプレイがたっぷり聴けるギター・トリオは望むところだろう。今回のメンバーにはクレメンス・ヴァン・デル・フィーン(b)、ヨースト・ヴァン・サイク(ds)というオランダの若手2人を従えている。

 個人的には、ジェシのベスト盤はクリスクロスからリリースされたオリジナル曲中心のオルガンジャズ 「Circles」 (2002年、レヴュー記事はこちら) や 「Views」 (2006年) あたりだと認識している。本作にはこれらの作品のような共演者の高い演奏力や、メンバーとのスリリングなやり取りはないものの、何か俗世の煩悩を突き抜けてしまったかのような1人のアーチストの達観した円熟味を感じさせる。

 また、なによりジョーヘン作品をジェシのギターで聴けるという替え難い魅力もある。ジェシ、ジョーヘン、どちらのファンにとってもいい贈り物だろう。ちなみに収録曲9曲のうち8曲はジョーヘンのオリジナルだが、1曲だけケニー・ドーハム作の 「La Mesha」 が含まれている。これはアルバム 「Page One」 に収められていた曲である。

 さて、本作をアルバム冒頭から順に聴いて行くと、まず耳に留まるのはM-1の 「Jinrikisha」 だ。イントロのゆったりしたコードワークから4ビートに突入して行くが、相変わらず正確無比な超絶ピッキングに驚かされる。とはいえ彼の場合は単にアクロバチックな技術を見せつけるだけでなく、そこに込められた想いまでが伝わってきて心がなごむ。決してテクニックだけをひけらかす 「サーカス」 に終わることなく、人生の機微に光を当てる小説か何かを読み聞かせられているような気分にさせてくれる。

 もちろん1曲目に限った話ではない。物憂く爪弾かれるギターに情感が詰まった気だるいバラードのM-3や、さりげないピッキングのひとつひとつにセンスが匂う美メロのM-6にも共通している。その繊細でやわらかな指使いと美しい旋律につい、うっとり眠ってしまいそうになる。毎晩こんなバラードで夢を見られたら最高だろう。

 とはいえジェシの本領はむろん、バラードだけに止まらない。たとえばM-2の速射砲のように繰り出される目にも止まらぬテクニカルなプレイや、ブルージーな音使いで熱く魂を訴えかけるノリのいいM-5、有名なメロディーに乗って畳みかけるような攻撃性を見せるM-8、M-9あたりを聴くと、ハイレベルな技巧とそれを裏打ちするハートが高い次元で融合していることが伝わってくる。

 さてこれを聴きながら、今夜はどんな夢を見ようか。とうぶん楽しめそうである。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Joe Lovano & Dave Douglas Sound prints / Live at Monterey Jazz Festival

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Joe Lovano (ts)
Dave Douglas (tp)
Lawrence Fields (p)
Linda Oh (b)
Joey Baron (ds)

Recorded: September 21, 2013, Live at Monterey Jazz Festival
Engineer: Ron Davis (Blue Note Records 4710914)

にぎやかな二管と跳ねるグルーヴがやけに楽しい

 ジョー・ロヴァーノ(ts)とデイヴ・ダグラス(tp)による初の共同名義クインテット 「SOUND PRINTS」 のデビュー盤が出た。2013年9月に行われたモンタレー・ジャズ・フェスティヴァルでのライヴ演奏が収録されている。おもちゃ箱をひっくり返したような賑々しさで、強力な二管が縦横無尽に宙を舞う。このバンドのためにウェイン・ショーターが書き下ろした新曲2曲を含んでいるのも話題である。

 今回の新クインテットはショーターにインスパイアされており、バンド名の 「SOUND PRINTS」 なるネーミングもショーターの名曲 「Footprints」 にちなんでいる。とはいえロヴァーノとダグラスの新曲もそれぞれ2曲づつ用意されており、バンドとしてのオリジナリティも高い。アグレッシヴに跳ねる特徴的なノリで、パッと聴きではダグラス単独名義の作品といっても通りそうなテイストだ。

 2人のリーダーをサポートするメンバーは、ローレンス・フィールズ(p)にリンダ・オー(b)、ジョーイ・バロン(ds)とおいしいところを揃えた。本盤で初めてバロンのプレイを聴いた人は、その大音響で炸裂する強烈なドラミングに驚くことだろう。かたや相棒のリンダは相変わらず女性とは思えないノリでブンブン飛ばす。だが同時に二管とドラムがけっこう遊ぶこのクインテットの命綱を握っているのは、バランサーとしての彼女であることは間違いない。

 一方、ローレンス・フィールズは、ジャリール・ショウの最新作 「Soundtrack of Things to Come」 (2013年、レヴュー記事はこちら) でのプレイがとにかく鮮烈だった。本作では全体のバランスを取るためやや控えめだが、それでも艶のある芳醇な音色と繊細なタッチを武器にひと波乱起こしそうな予感がある。

 さてアルバムはいかにもロヴァーノ作らしい、素っ頓狂でトリッキーなフリーっぽいナンバーで幕が開く。二管が喚きまくり非常に活発だ。続く2曲目はダグラス作。途中から4ビートになりグイグイ行く。ダグラスが数パターンのスタイルを使い分け、トランペッターがまるで複数いるかのようなソロを聴かせていておもしろい。フィールズのピアノソロもスリリングで聴き応えがある。

 続く3曲目と4曲目はショーターの作品だ。彼から渡された譜面はすべて手書きで、細かなニュアンスまで記してあったという。まずベースの滑らかなイントロで入るM-3は、ちょっと不思議なテイストだ。静的なイメージから次第に盛り上がって行く。ロヴァーノの奇矯なプレイが 「あっちの世界」 へ行っちゃいそうな雰囲気を醸し出している。

 一方、M-4は明るい楽想だ。二管が同時に吹きまくり、にぎやかそのもの。ショーター作だが、おどけたように躍り上がるグルーヴがデイヴ・ダグラスの作品群を思わせる。ロヴァーノ作の小品M-5を挟み、ダグラス作の最終曲は彼らしく、とっ散らかった感じの陽気で楽しいナンバーだ。終盤にベースソロ、ドラムソロが続き、大団円を迎える。

 総評としては全体に約束事が多いわりにおかずを大胆に散りばめるなど、自由なところとそうでないところのコントラストが強い。構成も複雑で難曲ぞろいだ。あたかもステージ上で役者を使った透明な演劇が行なわれており、その進行に合わせて山あり谷ありの舞台音楽を演奏しているかのよう。聴いてるほうは気が楽だが、これを 「演奏しろ」 と言われたら誰もが裸足で逃げ出すだろう。かなり高度な演奏であり、情報量も多い。このライヴを楽しめるかどうかはリスナーの想像力にかかっているかもしれない。

 なお音質はライヴの宿命かあまり良くない。全体に解像度が低く、音像がうすいベールを1枚まとっているような感じ。音場も狭い。二管とドラムはとにかく音がデカいのでよく聴こえるが、ベースがその谷間に埋もれてこもり気味なのがちょっと残念だ。とはいえ内容がハイレベルなので、まあよしとしよう。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

E.J. Strickland Quintet / The Undying Spirit

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E.J. Strickland (ds)
Jaleel Shaw (as)
Marcus Strickland (ts, ss)
Luis Perdomo (p)
Linda Oh (b)

Recorded: February 3, 2014, at Sear Sound, NY
Engineer: Andy Taub (Strick Muzik SMK007)

都会的でスタイリッシュなNY発ポストバップ

 ドラマーのE.J.ストリックランドが、初リーダー作 「In This Day」 (2009) 以来、6年ぶりになる新作をリリースした。ストリックランド兄弟のレーベル、Strick Muzikから発売されたばかりの本作は、都会的でしゃれたコンテンポラリー・ジャズだ。ドラマーがパワフルなE.J.だけにビートはしっかり利いているが、バンド全体が決して力まず、クールでスタイリッシュな演奏をしているところがいかにもNY発ポストバップという感じだ。

 メンバーはNYCでも1、2を争う若手のホープが揃った。ジャリール・ショウ(as)、マーカス・ストリックランド(ts)の二管に、ルイス・ペルドモ(p)、リンダ・オー(b)、主役E.J.のリズムセクションという構成だ。テーマを奏でるホーンセクションにショウのアルトが混ざっているぶん、ちょっと洒脱な雰囲気に仕上がっている。

 E.J.のオリジナル9曲に、Cedar Waltonの 「Hindsight」 を加えた合計10曲。メカニカルなフレーズが繰り返されるM-1や、R&Bっぽいテイストが熱いM-2、ベースがかっこいいリフを繰り返しサックスが暴れるノリのいいM-3と、粒の揃った滑り出しを見せる。

 一方、ラテン・アレンジで賑やかなM-6では、マーカスとショウの激しいサックス・バトルが聴き物だ。また退廃的なバラードのM-7や、漂うような醒めたグルーヴのM-9あたりも印象に残った。際立って個性的な曲はないが、そのぶんアルバムとしての統一感を感じさせるコンポジションである。

 演奏の温度感は冷たいとまでは行かないが、各メンバーがやや抑え気味でプレイしている。そのなかでドラムに要所で見せ場を作り、相対的に主役が目立つようアレンジが工夫されている。E.J.とすれば自分にスポットライトが当たるのだから 「うまく作っている」 のだが、バンド全体の演奏をトータルで楽しみたいリスナーにとっては痛し痒しかもしれない。とはいえ全体に一定水準はクリアしており、充分に楽しめる作品といえるだろう。

 個人的には、買っているペルドモの 「らしいソロ」 を聴けなかったのがちと残念。そんななか、ベースのリンダは地味ながら強い存在感を見せつけた。主役のE.J.は相変わらず、キレのいいエネルギッシュなドラミングを聴かせている。ジャズだけでなくR&Bあたりを叩いてもハマりそうな幅の広さは魅力的だ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Jure Pukl / The Life Sound Pictures of Jure Pukl

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Jure Pukl (ss, ts)
Adam Rogers (g)
Sam Harris (p)
Joe Sanders (ac-b, el-b)
Rudy Royston (ds)

Melissa Aldana (ts on M-3)
Sachal Vasandani (vcl on M-6)

Recorded: September 26, 2014 at the Samurai Hotel Recording Studios, NY
Engineer: David Stoller (FSNT 458)

東欧の鬱蒼と茂った深い森のような暗さがじんわり

 スロベニア出身で、ニューヨークを拠点に活動するサックス奏者、ユーレ・プカルが7枚目のリーダー作を発表した。いかにも東欧っぽい暗くてダークな雰囲気が全体を覆う。フリー的な要素も散りばめられ、「好きな人はすごく好きだがダメな人はダメ」 なリスナーを選ぶジャズである。

 プカルは1977年生まれ。ウィーン音楽院でサックスを学んだ。渡米後はバークリー音大でジョー・ロヴァーノやジョージ・ガゾーンらに師事。2003年のデビュー作 「The Wizard」 以来、コンスタントに6枚のリーダー作をリリースしてきている。

 さてメンバーは豪華絢爛だ。若手ギタリスト界ではもはや帝王のアダム・ロジャースに、ルディ・ロイストンの初リーダー作 「303」 (2014年、レヴュー記事はこちら) での好演が光ったサム・ハリス(p)、そのロイストン本人も参加している。ベーシストはこれまた若手のホープ、ジョー・サンダースを持ってきた。ひとクセもふたクセもある顔ぶれにわくわくさせられる。

 主役プカルのオリジナルが8曲、その他2曲の合計10曲。圧倒的に暗かった前作 「Abstract Society」 (2012) のような救いようのない悲壮感はないが、それでも鬱蒼と茂った東欧の深い森のような空気感が続く。ただし選んだメンバーのせいで適度なコンテンポラリー感があり、その意味ではなかなか楽しめる。

 リズム隊を組むサンダースとロイストンはどっちも 「ハジける系」 でマッチングが抜群にいいし、ハリスのほかにない個性的なピアノソロも魅力的だ。またアダム・ロジャースはいつもより微妙に抑え気味なところが味わい深い。

 楽曲的にはエレクトリック・ベースを採用したノリのいいM-1や、ロジャースがナチュラルトーンで迫るギターソロ入りのM-2がいい。また浮遊感が漂うバラードのM-3、ハリスが弾く例によって不思議系のピアノソロが絶妙なM-5が印象に残った。一方、M-7ではこのテのアルバムでは珍しく男性ヴォーカルをフィーチャーしているが、メロディラインが涼やかで非常によく雰囲気のある歌物に仕上がっている。

 ただひとつ惜しいのは、全体に持って回ったくどいアレンジが頻出する点だ。例えばM-1などは 「いい感じでバンド全体のノリが出てきたな」 と思ったら突然曲の途中でリズムがなくなり、無味乾燥なフリー調に変わってしまう。せっかく前半で生まれたグルーヴ感が台無しだ。

 またM-6は中間部の楽想はいいのに唐突にベースソロで曲が始まる構成にしていたり、M-3にしろわざわざ曲の冒頭を退屈なサックスの独奏で立ち上げる意味がわからない。かたやM-4の頭もつまらないフリー調でスタートする。ひとひねり多すぎるのだ。

 こんなふうに凝り過ぎたアレンジのせいでそれまでの流れがブチ切られ、せっかく盛り上げたバンド全体の勢いが寸断されてしまう。そこがもったいない。あちこちいじり回しているために曲がかえって散漫な印象になり、「聴き続けよう」 とするリスナーの求心力も損なわれる。コンポジション自体はいいのだから、もっとストレートに曲を作ればいいのにと感じた。

 あとは好みの問題だが、やっぱりちとテイストが暗いかなぁ。とはいえこればっかりは彼の個性なんだろうから、まあしゃーないか。

2
Pukl's Web Site: http://www.jurepukl.com/

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Kasper Villaume Trio / 117 Ditmas Avenue

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Kasper Villaume (p)
Jesper Bodilsen (b)
Jeff 'Tain' Watts (ds)

Recorded: June 23, 2004, at Systems Two, NY
Engineer: Michael Marciano (Stunt Records STUCD04122)

ジェフ・ワッツ参加、躍動する4ビートのシャワーを浴びる

 たまには肩の力を抜き、スタンダードなピアノトリオでも聴いてみるか? という人におすすめなのがこれ。デンマーク出身の若手ピアニスト、キャスパー・ヴィヨームの2004年録音盤だ。よく歌い、よく転がるノリのいいピアノと、ぐいぐい聴き手を惹きつける4ビート中心のゴキゲンな選曲。わかりやすく、力強く、理屈抜きに楽しめる1枚である。

 本盤は主役のキャスパーがベーシストのイェスパー・ボディルセンとともにニューヨークへ渡り、売れっ子ドラマーのジェフ・ティン・ワッツとレコーディングした一作だ。エンジニアは名匠マイケル・マルシアーノ。ワッツについては説明するまでもないが、ベースのボディルセンはモルテン・ルンド(ds)と組んだステファノ・ボラーニ・トリオでも知られる北欧を代表する名ベーシストである。

 キャスパーのオリジナル1曲を含むスタンダードなど合計9曲。オープニングを飾るM-1から早くも4ビートの悦楽が全開になる。音は北欧というより完全なアメリカンだ。明るく陽気で開放的なジャズの醍醐味が押し寄せてくる。とても華やいだ雰囲気である。

 ぴったり同じベクトルを向いたノリノリの3人が、躍動する音符を洪水のように浴びせかける。ピアノのキャスパーがいいのは無論だが、サッカーでいえば中盤に位置し、全体のバランスを取りながらトリオに推進力をもたらすボディルセンのベースがすばらしい。ムチのようにしなる弾力があり、よく弾むこと弾むこと。

 それになんといってもやはりワッツだ。ボディルセンと組むこの超強力なリズム隊がキャスパーを煽り、3人のテンションとグルーヴが見る見る天高く舞い上がって行くのがわかる。音のハジけ方がハンパない。

 M-3もオープニング同様、奔流のようにあふれ出る強烈な4ビートである。終盤のリズムが変わった後のピアノソロもガッツがあり秀逸だ。続くM-4の静かなバラードでホッとひと息つくが、それにしてもキャスパーはすばらしく描写力のあるピアノを聴かせる。後半のM-7、M-9も息が止まりそうになるような迫真の4ビートが炸裂し大満足。一気にアルバム1枚を聴かせてしまう。

 主役のキャスパー・ヴィヨームは1974年生まれ。これまでに7枚のリーダー作をリリースしている。ピアノトリオでのプレイも聴かせるが、ここはあえてLars Moller(ts)入りで元気のいいカルテット作品「Outrun」(2000)、「#2」(2003)をおすすめしておこう。

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Kasper's Web Site: http://villaume.dk/

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Rez Abbasi Acoustic Quartet / Intents And Purposes

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Rez Abbasi (steel string, fretless & baritone acoustic guitars)
Bill Ware (vib)
Stephan Crump (b)
Eric McPherson (ds)

Recorded: April 24-25, 2014, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Michael Marciano (Enja Records ENJ-9621 2)

【収録曲】

1. Black Market (Joe Zawinul)
2. Butterfly (Herbie Hancock)
3. Joyous Lake (Pat Martino)
4. Medieval Overture (Chick Corea)
5. Resolution (John McLaughlin)
6. Red Barron (Billy Cobham)
7. Low-Lee-Tah (Larry Coryell)
8. There Comes A Time (Tony Williams)

70年代ジャズ・ロックの名曲をアコースティック編成でカバー

 パキスタン出身の個性派ギタリスト、レズ・アバシの新作が登場した。今回はウェザーリポートやリターン・トゥ・フォーエヴァーなど、70年代の懐かしいジャズ・ロックの名曲を完全アコースティック編成で聴かせる趣向だ。

「あれ? ブラック・マーケットってこんなにいい曲だったかな?」

 いきなり1曲目でハッとさせられる。まるで艶やかな大輪の花がパッと咲き開いたかのように明るい。70年代の曲をリメイクしてる古めかしさなどまるでなく、まったく新しい 「何か」 を創造している喜びにあふれている。この曲のメロディーラインをアコースティック・ギターで弾くという発想が新鮮だし、それに絡むヴァイヴも透明感にあふれ非常に効果的だ。これはすごいアルバムになるぞ、という予感がする。

 次の曲もおなじみ、ハンコックの 「Butterfly」 だ。冒頭の聴き慣れたミステリアスなメロディーが聴こえた瞬間、思わずニヤリとさせられる。特に原曲を大幅にアレンジしている感じはないが、楽器の構成が違うせいか、これまた古さはみじんも感じさせない。テーマが終わり、ギターソロに入る瞬間なんてもう緊張感いっぱいでゾクゾクもんだ。

 続いてリズミックな冒頭がスリリングなM-3は、ひたすらギターのインプロヴィゼーションで聴かせる曲。ぐりぐりごりごり、あのテこのテのソロが続き、これはこれでまたおもしろい。すごいテクニックだなぁ、と感心させられる。

 ところが後半になるとその求心力が衰え、とたんに失速してしまう。

 M-4以降の後半は突然照明が落ちたかのように、すっかり 「どよよーん」 としてしまう。弾けるように明るかった1曲目の効果を完全に打ち消すかのように、70年代という時代性を反映した救いようのない 「暗さ」 が頭をもたげる。こねくり回したように鬱屈した古式ゆかしい世界に変わってしまう。 「ごくあたり前に当時の時代なりの演奏をしました」 的な、ひねりのないテイストに堕している。

 もし、このアルバム前半と後半の真逆のコントラストをアバシが 「狙ってやっている」 のだとすれば、それはそれで一聴の価値があるのかもしれない。 (後半のような70年代っぽい演奏を聴きたい人もいるのだろう)

 だが意図せずこういう選曲と曲順、演奏内容になったのなら、とても惜しい気がする。せっかく 「完全アコースティック編成でカバーする」 というひねりを入れているのに、肝心の演奏内容が 「70年代の曲を選び、70年代らしくジメジメと演奏しました」 というのではあまりにも真っ直ぐすぎて面白みがない。

 そうじゃなく、1曲目と2曲目の花が咲いたように明るいイメージをもっと引っ張っていれば……。アルバム後半にも、もっと陽性のキャッチーな曲 (と演奏内容) を選び、全編ハッピーなアルバムにでも仕上げていれば 「70年代を底抜けに明るく演奏する」 というひねりが効き、画期的ですごい傑作になったような気がする。なんというかコンセプト・ワークに失敗した感じだ。

 それだけ1曲目の 「ブラック・マーケット」 のデキがあまりにも飛び抜けてよく、 「1曲目を聴くためだけに買っても損はない」 といいたい衝動にかられはするのだが……。

 なお特筆すべきは音質のよさだ。エンジニアを務めた名匠マイケル・マルシアーノの底力を見せつけるかのようにすばらしい。透き通るような透明感と解像度があり、特にアコギとヴァイヴの質感が生々しい。まるで目の前で鳴っているかのようなリアリティがある。できるだけグレードの高いオーディオ機器で再生させるとかなり楽しめそうだ。

テーマ : JAZZ
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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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