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Matthew Stevens / Woodwork

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Matthew Stevens (g)
Gerald Clayton (p)
Vicente Archer (b)
Eric Doob (ds)
Paulo Stagnaro (per)

Recorded: May 26-27, 2014, at the Clubhouse Studio, NY
Engineer: Paul Antonell (P-VINE RECORDS PCD-93908)

若手イチ押しギタリスト、待望のデビュー作見参

 ひとことでいってクールな枯山水。淡々としていて端正な音だ。まったく新しいコンテンポラリー・ジャズの地平を提示している。あえていえばずっと共演してきたトランペット奏者、クリスチャン・スコットの作品世界に近い。若手ギタリスト、マシュー・スティーヴンスがリリースしたばかりのデビュー作である。

「わかりやすさ」 みたいな言葉とは対極にある世界だ。かなりアレンジは凝っているが、耳に残るリフやキャッチーな仕掛けをほとんど使ってない。そのためハデさはないからパッと聴きではピンとこないかもしれない。だが2~3日聴くうちすっかり気持ちよくなってくる。典型的なスルメ盤だ。

 若いのにずいぶん渋い作りでまとめてきたなぁ、という感じ。ちょうど同じ時期にリリースされた、ホットで派手でひたすらわかりやすいジョン・パティトゥッチの新作 「Brooklyn」 (2015年) とはまるで対照的な音である。

 メンバーは天才ピアニストのジェラルド・クレイトンに、粘っこいノリのヴィセンテ・アーチャー(b)が目をひく。あとはエリック・ドゥーブ(ds)とパウロ・スタナーロ(per)。M-4とM-5でクレイトンが緊張感のあるすばらしいピアノソロを披露している。欲をいえばドラムが軽くてやや物足りないが、まあ及第点だろう。

 ちなみにマシューは今年2015年1月に自己のトリオ・ユニットを率い、ベン・ウィリアムス(b)、ジャマイア・ウィリアムス(ds)という豪華メンバーで来日している。生で観た人もいるだろう。

 さて本作はマシューのオリジナル12曲に、デヴィッド・ボウイの 「Sunday」 を加えた計13曲。熱くエネルギッシュで有機的、とはいえないが、かといって無機的というのともちがう。似た作風のミュージシャンが思い当たらない。その意味ではオンリーワンといえるだろう。聴く人を選ぶタイプのジャズだが、比較的テイストが近いクリスチャン・スコットの諸作よりデキは上かもしれない。

 マシューのプレイはギターソロを熱くバリバリ弾きまくる、というよりもテーマっぽいリフを提示したり、緻密なバッキング構成で貢献している。全体のアンサンブルで聴かせる典型的なコンポーザー・タイプだ。楽曲を重視してけっこう音色を変えながら、それぞれの曲に個性的な表情をもたらしている。

 このあたりは、サイド参加で実績を積み上げてきた彼ならではのアプローチだろう。とはいえもちろん、ほとんどの曲ですばらしくテクニカルなソロを決めたり、アコギも披露している。意味もなく速弾きに走ったりせず、フレーズで聴かせるいいギターを弾く。

 彼はつい先日リリースされたばかりの盲目の若手ピアニスト、ジャスティン・カウフリンの秀作 「Dedication」 (2015年、レヴュー記事はこちら) でも獅子奮迅の活躍をしている。興味があればぜひ聴いてみてほしい。かなりいい作品だ。

 マシュー (愛称マット) は、1982年カナダのトロント生まれ。バークリー音楽院では、最優秀ギタリストに授与されるジミ・ヘンドリックス賞を受賞している。バークリー卒業後はニューヨークに拠点を移し、クリスチャン・スコットの3作目 「Rewind That」 (2006年) に参加。以降、「Christian aTunde Adjuah」 (2012年) までクリスチャンの4作品でプレイし、楽曲提供もしている職人肌だ。

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Kurt Rosenwinkel Quartet / Zhivago - Live in Paris



ブンブン飛ばす超・白熱のライヴをどうぞ。

 このカート・ローゼンウィンケルのライヴはすごい。なんだか画面からアッチッチな熱が立ち上ってきそう。ここまで激しいライヴは初めて観たような気がする。

 クレジットがないので不確かだが、メンバーは顔から判断するとマット・ブリューワー(b)とテッド・プア(ds)かな?

 特にテッド・プアはずいぶんアグレッシヴなドラミングをしており、スタジオ録音参加作とはかなり落差があって興味深い。

 それにしても、やっぱりローゼンウィンケル様は死んでないなぁ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Kirk Knuffke / Arms & Hands

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Kirk Knuffke (cor)
Mark Helias (b)
Bill Goodwin (ds)

Brian Drye (tb)
Daniel Carter (as)
Jeff Lederer (ss, ts)

Released: 2015, recorded at Acoustic Recording, NY
Engineer: Michael Brordy (Royal Potato Family)

おもちゃ箱をひっくり返したようなアヴァンギャルドな世界

 これはジャズを聴くというより、演劇を観るつもりで聴くといい。でないと楽しめないかもしれない。2005年からニューヨークを拠点に活動している前衛コルネット奏者、カーク・ナフクがリリースしたばかりの新作である。

 1曲を除き、すべてカークのオリジナルで計14曲がずらりと並ぶ。ほとんどが1~2分の短い曲で、彼の脳裏に瞬間的に浮かんだモチーフをそのまま音にしたような構成だ。かなり聴く人を選びそうだが、好きな人は好きなジャズである。

 あるときは攻撃的に、またあるときは子供がおふざけするように。変幻自在のインプロヴィゼーションが繰り広げられる。演奏スタイルは自由自在だ。ベースとのデュオになったり、コルネットが独奏したり。基本はリズム隊との3人編成だが、曲によってはゲストのトロンボーンやアルト、ソプラノ・サックスなどがおもちゃ箱をひっくり返したように錯綜する。

 ルパートが頻出し、フリーっぽい要素がそこかしこに漂う。アンダーグラウンドな臭いがプンプンする。かと思えば突然わかりやすいノリのいいリズムが湧き出し、白熱のバトルになったりする。即興演劇のようにリズム・パターンが刻々と変化し、先がまったく読めない。フリーからファンク、ブルースまで、音楽ジャンルでカテゴライズするのが無意味なくらいの奔放さだ。

 彼はオーネット・コールマン、ウィントン・マルサリスという似ても似つかない両巨頭に師事していたあたりが興味深いが、プレイスタイルの豊富なバリエーションはそんなところからきているのかもしれない。

 またおどけたようなユーモアが感じられるあたり、デイヴ・ダグラスが90年代に結成していたマイ・フェイヴァリットな 「The Tiny Bell Trio」 プロジェクトに近い。ジョークを好むアメリカ人はきっとこういうのが大好きで、喜んで楽しむんだろうなぁ。日本じゃサッパリ売れないけど。

 なお、カークはアルバム 「Big Wig Quartet」 (Clean Feed, 2008) でデビュー以来、ジェシ・スタッケン(p)と組んだピアノとのデュオや、敏腕ドラマー、ケニー・ウォールセンが加わったトリオ作、またトリスターノ系ベテラン・サックス奏者、テッド・ブラウンをフィーチャーしたアルバムなど、Steeple Chaseレーベルに多くの作品を残している。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

ニア・フェルダー Live at Smalls



2時間ぶっ通し映像でございます

 ニューヨークに住んでるとこういうライヴが毎晩観られるのかぁ、と思うと、思わずエイヤッしちゃいそうになる。ニアは、シャツの胸元をはだけてガバッと白いTシャツ見せてるところが石田純一ちっくではあるが、ギタープレイのほうはそれとはまた別モノである。

 さり気なくアーロン・パークスがおいしいところを持って行っていて、さすがサイド参加ではいい仕事するなぁ、という感じ。パワフルなネイト・スミスの見せ場もてんこもりだ。

 いちばん目立たないのが2枚の超傑作リーダー盤を出してるマット・ペンマン、てところが巡りあわせの不思議か。

 お楽しみください。

Nir Felder (g)
Aaron Parks (p)
Matt Penman (b)
Nate Smith (ds)

June 19th, 2013.

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Justin Kauflin / Dedication

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Justin Kauflin (p, key)
Matt Stevens (g)
Christopher Smith (b)
Billy Williams (ds)
Etan Haziza (nylon g on M-12)

Recorded: July, August, and September 2014
Engineer: Helik Hadar and Rob Ulsh (Jazz Village JV579003)

ハートフルで暖かいポピュラリティがいい

 コンテンポラリーな香りもするが、どちらかといえば王道に近い。奇をてらわないストレートな作りだ。ほんのりハートフルで暖かい。日の出の勢いのギタリスト、マット・スティーヴンスの顔も見える。盲目の若きピアニスト、ジャスティン・カウフリンがリリースしたばかりのセカンド・リーダー作である。

 だれもが 「いい」 と感じるようなポピュラリティがある。聴く人を選ばない音だ。翳りと憂いのある4ビートが炸裂するかと思えば、美しく大人っぽいバラードが漂う。全12曲すべてジャスティンのオリジナルだが、かなり優れたコンポーザーである。おまけにクインシー・ジョーンズがプロデュースしているのだから鬼に金棒だ。

 ギター入りのカルテットで8曲、ピアノトリオで3曲、ソロピアノ1曲の3パターンが収録されているが、ピアノトリオはドラマチックなM-3やM-6、M-9などまさに堂々の王道。カルテットのほうが現代的で今っぽい。

 ホットでノリノリの4ビートを聴かせるM-1や、6拍子でミステリアスな現代ジャズのM-2、ソウルっぽくドラマチックなM-3、3拍子でメロディーラインに強い惹きがあるM-4、カントリー的でアーシーなM-12あたりが印象的だ。ちなみにM-4の 「The Professor」 は、2013年5月に57才の若さで亡くなったジャスティンの師マルグリュー・ミラーに捧げられている。

 ジャスティンは1986年シルバースプリング生まれ。柔らかな軽いタッチで繊細さや透明感を武器にするタイプだ。その意味では師事していたマルグリュー・ミラーに近い。ゴスペルっぽい演奏で盛り上がっても決してオリン・エヴァンスのようにピアノを壊しそうにはならず、どこか客観的で超然としたところがある。意図的に狙ってそうしているのかはわからないが、我を忘れず黙々と弾く。かたやドラマチックな曲では微かにブラッド・メルドーの影響も垣間見える。

 一方、ギターのマット・スティーヴンスも非常にいい味を出している。彼の現代的な演奏が本作にコンテンポラリーな味つけをしている。もし彼が参加していなかったら、このアルバムはまったくちがったものになっていただろう。それくらい存在感が大きい。最近ではウォルター・スミス3世の最新作 「Still Casual」 (2014年、レヴュー記事はこちら) でもいいプレイをしていたが、自身のリーダー作のリリースも控え公私共に充実しているのだろう。

 彼は細めの軽やかな音使いで、1小節の中に音を無闇に詰め込もうとしない。若いのになかなか渋いプレイをする。彼の演奏を初めて聴いたのは同じくスミス3世のアルバム 「Bronze」 (2009年) だったが、そのときは単にカート・ローゼンウィンケルの真似をしているだけのギターだった。それが今や押しも押されもしないオンリーワンのスタイルを確立しているのだから、時の流れは早いものだ。

 本作はクインシー・ジョーンズ・プロデュースのせいか、要所でR&Bやゴスペルっぽい要素が顔を出す。ひょっとしたらジャスティン自身がキリスト教を深く信仰していることも関係しているのかもしれない。だがその黒っぽいエッセンスが決して主張しすぎず、嫌味になっていない。心が温まる1枚である。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Soren Dahl jeppesen / Pipe Dreams

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Soren Dahl jeppesen (g)
Oskar Gudjonsson (sax)
Simon Toldam (p)
Klaus Norgaard (b)
Jakob Hoyer (ds)

Recorded: January 3-5, 2013, Copenhagen
Engineer: Aske Bode (Dog Day Music DDM003)

墨絵のように淡くせつない美しさ

 静かな湖面に水滴がしたたり落ち、その波紋がゆっくり水面に広がって行く。そんな粛然とした自然の風景を音にすればこういうジャズになるのだろう。コペンハーゲンを拠点に活動するデンマークのギタリスト、ソーレン・ダール・イエッペセンが描く幽玄の世界。2013年にリリースされたサード・アルバムに当たる最新作だ。

 残響を生かし、空間の広がりを感じさせる音が満ちてくる。目を瞑って聴くと地球の鼓動を感じ、スピリチュアルな想念が湧き上がる――。初リーダー作 「Route One」 (2010)、セカンド盤 「Red Sky」 (2011) とも共通するテイストだ。煙のようにたなびく音の響きや、ふんわり大らかなリズムが心地いい。まるで墨絵の世界のように枯淡で美しい。

 すべてイエッペセンのオリジナルで合計11曲。ほとんどドラムレスのようなまったりした曲が続く。特にメロディアスで哀感が漂うオープニングのM-1と、サッド・コアを思わせるピアノが味わい深いM-3がダントツでいい。ほかには、本作では珍しくリズミックなM-2や、アコギのアルペジオをバックにゆるいサックスが泳ぐM-5とM-7、ちょっと民族音楽風の美しいピアノで始まるM-6、ふんわりリバーブのかかったギターソロを聴かせるM-8あたりが印象的だ。

 サックスはもろにクリス・チーク風。主役のイエッペセンも 「俺が俺が」 と熱くギターソロを弾きまくる、なんて場面は一切出てこない。個人技でなくバンド全体のアンサンブルを重視したコンポジションである。もちろんソロも一部登場するが、あくまでも 「従」 であり楽曲のパーツにすぎない。このへんはアメリカ的なジャズの概念とかなりちがう。全員が決して強奏せず、デリケートに柔らかく、弱々しく、消え入りそうに――。そんな儚い夢幻の世界が展開される。

 イエッペセンはデビュー作で同じデンマークの空間系ギタリスト、ヤコブ・ブロとも共演しているが、なるほど2人の音楽性は近い。霞のように立ち込める音の響きや、ドラムレスっぽいゆったりしたリズムが同じ世界観を共有している。

 ただしブロはメロディーが抽象的で、そのぶんリスナーを思索に耽らせるようなところがある。それにくらべイエッペセンはもっと具象的でメロディーラインがはっきりしている。その意味ではイエッペセンは、同じく彼と共演歴があるデンマークのサックス奏者、クリスチャン・ヴースト (レヴュー記事はこちら) にも近い。どちらも癒し系でメロディアス。物静かなダウナー系の音である。ただヴーストの方がはるかにポップで、適度な抽象性があるイエッペセンのような奥深さはない。

 ヤコブ・ブロ、クリスチャン・ヴーストと聞いてピンときたなら、本作を試してみる価値はある。特に 「ブロは抽象的でわかりにくいが、ヴーストは逆にポップすぎてちょっと……」 という人には、本盤はどストライクだろう。きっとあなたが心を預けて浸れる世界が待っているはずだ。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Jeremy Udden - Nicolas Moreaux / Belleville Project

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Jeremy Udden (as, pump organ, Prophet 5)
Nicolas Moreaux (b, toy piano)
Robert Stillman (ts, p, pump organ)
Pierre Perchaud (ac-g, el-g, banjo)
RJ Miller (ds)
Pete Rende (CS-60, Prophet 5, pump organ, organ)

Recorded: March 30-31, 2012, at Studio Pigalle, Paris
Engineer: Celine Grangey (Sunnyside SSC1388)

草原の輝きと入道雲が見えてくるなごみの良盤

 青々とした草原にゴロンと寝転がり、青空を見上げる。入道雲がもくもくと風に吹かれて移動している。今日はやけに時間がたつのが遅いなぁ――。そんなのんびりした風景が見えてきそうなアルバムだ。ブルックリンに拠点を置くミクスチャー職人、ジェレミー・ユーディーン(as)がリリースしたばかりの最新作である。

 ジャズにカントリーやフォーク、ロックをまぶし、3日間、コトコト煮込んだ深みのある味わい。アルバムに含まれるこれらの要素は驚くような密度でたがいに融合しており、完全にひとつの新しいジャンルとして成立している。のどかな自然をイメージさせる暖かみのある作品に仕上がっている。

 本作はパリを拠点に活動しているフランス人ベーシスト、ニコラ・モロー (1973年生まれ) との共同名義だ。アルバム・タイトルにもなっているパリ郊外のベルヴィルでレコーディングされている。実はこのプロジェクトは、ひょんなことから始まった。当時、パリでハウス・シッターをしていたユーディーンはセッション・アーティストを探していたが、SNSで知り合ったのがモローだったのだ。

 ユーディーンはすでに、生まれ故郷の名を冠した 「Plainville」 プロジェクトやリーダー作 「Folk Art」 (2012) で、ジャズ界にオンリーワンの地位を築き始めていた。一方のモローは、セカンドリーダー作 「Fall Somewhere」 (2013) のレコーディング・セッションで、ティグランやビル・マクヘンリーと共演していた頃だ。たがいにジャズという狭いカテゴリーに収まらない才能をもち、音楽的に気が合った2人は交流を続け、ついにレコーディングへと発展した。それが今回の作品である。

 ユーディーンが4曲、モローが5曲、メンバーのロバート・スティルマン(ts)が1曲を持ち寄った。アメリカのジャズやカントリー、フォークだけでなく、フランスの映画音楽の要素までがブレンドされている。特にバンジョーの音色がなごむのどかなM-1、哀感あるフレーズのリフが物悲しいM-3、ナチュラルなギタープレイが清々しいM-4、圧倒的にメロディアスなベストトラックのM-7が印象に残る。

 全体にギターとバンジョーを操るフランス人ギタリスト、Pierre Perchaud (1981年生まれ) のプレイがとても利いている。まるでビル・フリーゼルがくり出す魔術のようだ。彼のつまびくギターとバンジョーが本作に夏草の香りと草原の輝きをもたらしている。Pierreは自身の最新リーダー作 「Waterfalls」 (2013) でも本作のモローと共演しているマジカルな気鋭の若手ギタリストである。

 うららかな春、iPodでこのアルバムを聴きながらオープン・カフェでちょっと一服。なごめる音と自然の風が心地いい。

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Chris Lightcap's Bigmouth / Epicenter

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Chris Lightcap (b, ac-g, org)
Craig Taborn (el-p, ac-p, org)
Tony Malaby (ts)
Chris Cheek (ts)
Gerald Cleaver (ds, per)

Recorded: December 16-17, 2013, at Brooklyn Recording, NY
Engineer: Andrew Taub (Clean Feed CF315CD)

才人ライトキャップの摩訶不思議な世界

 ひとクセもふたクセもある超豪華メンバーが織り成す摩訶不思議な音の世界。ジャズに軸足を置きながら、ちょっとだけポップ、でもフリーやロック、ミニマルの要素もある。それらをミクスチャーしながら、高度なテクニックとアレンジでハイセンスに聴かせる。そのボーダレスな音楽性が聴き手の固定観念を消し去り、頭の中をすっかり洗い流してくれる――。

 前回紹介したジェイコブ・サックス作品とは方向性が違うが、聴く人を選び、この音にハマれる人とそうでない人にハッキリ分かれるという意味では同じだ。トニー・マラビー、クリス・チークの対照的な強力二管が跳梁し、夢魔の地平が姿を現す。才人ベーシスト、クリス・ライトキャップがリリースしたばかりの最新作である。

 メンバーは、前述したダブル・テナーにワサビを利かせるのがクレイグ・テイボーン (p)。かたや低音組は主役のライトキャップ(b)と業師ジェラルド・クリーヴァー(ds)がタッグを組む。いずれもマルチな才能を持ち、ジャズをどう料理して聴かせるか? をテーマに活動している人脈だ。

 ライトキャップのリーダー作としては、今回とほぼ同じメンバーでレコーディングした前作 「Deluxe」 (2010年) に続く作品になる。自身のオリジナル7曲に、ルー・リードの 「All Tomorrow's Parties」 を加えた合計8曲を用意した。個人的にはM-3~4、M-6~8が印象に残った。

 まずM-3は冒頭のスリリングなベースソロに前衛的なピアノが乗っかってくる不穏なムードのナンバーだ。脱力し、当てどもなく彷徨するチークのソロがおいしすぎる。ドラムはおもちゃのタイコのようにドコドコ叩きまくり。最後はマラビーがアヴァンギャルドに決めて安息を得る。

 続くM-4はヒーリング・ミュージックのように静謐なナンバーだ。全編を覆うゆったりたゆたうサックスが心地いい。緊張感のあるトンガった曲が居並ぶ中で唯一ホッとさせてくれるオアシスのよう。一方、妖しいリフを刻むベースが麻薬のように効いてくるM-6は、ソロ一番手のチークがなんともいえない侘びサビ感を演出している。スパイシーなエレピのソロをはさみ、三番手のマラビーが力強く咆哮して再度テーマを呼び込む。冴えたコンポジションである。

 M-7は弱々しくたなびく2本のサックスとピアノの響きがスペーシーな広がりを感じさせる。小刻みなペースのリフレインと大らかなテナーの音の伸びの対比が効果的だ。たくさんの音で空間が満たされ、密度の濃い至福の時が流れて行く。ミニマル的な快感を生み出す魔術のような曲である。

 最終曲のM-8はロックのリズムに乗り、2本のテナーが同時にインプロを繰り広げる。だがそれをソロとしてではなく効果音として聴かせるような狙いが見える。ピアノが背後で狂ったように跳ね回り、かと思えばいつのまにかテナーがメインメロディに戻って静かにエンディングを迎える。

 なおこの最終曲は、伝説のロック・バンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビュー盤 「The Velvet Underground and Nico」 (1967年) の6曲目に収録されていたルー・リードのナンバーだ。アンディ・ウォーホールのバナナの絵のジャケットで有名なあれ、である。この曲を最後に持ってくるあたり、ライトキャップの芸術に対する思い入れを覗かせる。アルバム全体に詰め込んだエッセンスの多彩さといい、きっと多芸多才な人なんだろうな。

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プロフィール

松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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