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Gary Peacock Trio / Now This

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Marc Copland (p)
Gary Peacock (b)
Joey Baron (ds)

Recorded: July 12-14, 2014, at Rainbow Studio, Oslo
Engineer: Jan Erik Kongshaug (ECM 2428)

空間の魔術師、コープランドの異界の作り方

 ベースの巨人、ゲーリー・ピーコックの80才の誕生日(5月12日)にリリースされたばかりの新作だ。彼のECM40作目でもある。ピアノの魔術師、マーク・コープランドが過去作とはひと味違った異界の作り方を披露している。ピーコックとの、テンポを失ったコンビネーションが人間の不安を掻き立てる。美しくも儚い走馬燈のような夢幻の世界が、リスナーの眼前に姿を現す。

 ピーコックとコープランドの組み合わせといえば、あのコープランドの名作、ニューヨーク・トリオ・レコーディング・シリーズを思い出す。実際、本作のM-9 「Vignette」 は、同シリーズvol.2のアルバム 「Voices」 (2007年) に収録されていた曲だ。だが今回のコープランドは、あのときとはまたちがった空間のひねり方をしている。ひとことでいえばリズムのない時間の作り方である。

 ルパートで静謐感のある静かな導入部から、徐々にコープランドとピーコックのインタープレイが立ち上がる。そして創造的なインプロヴィゼーションが導き出されて行く。そんな展開の曲が多い。ドラムのジョーイ・バロンはシンバルワーク中心のかなり抑えた演奏をしており、ほぼ完全に2人の会話の記録といえる。ピーコックもコープランドも老いて衰えるどころかジャズの最前線に屹立し、ただならぬ妖気を発している。

 コープランドが印象的な美しいフレーズを提示するM-1では、2人が絡まりながらインプロを展開する。またM-4ではルバートの静的な幕開けからコープランドのモノローグのような独奏にシンバルが加わり、ベースが入ってくる。そしてコープランドとピーコックの丁々発止がだんだん熱を帯び豊穣になって行く。即興芸術の極致である。

 そして最終曲のM-11では、ちょっとクラシックを思わせるようなイントロからベースソロが導き出され、それを合図にリズミックな3人のインプロが展開される。曲のラストもクラシック的なフレーズで締めくくり安息を得る。知的刺激をかき立てるような仕上がりだ。ピーコックが7曲、コープランド2曲、バロンが1曲をそれぞれ持ち寄り、スコット・ラファロの 「Gloria's Step」 を加えた合計11曲が収録されているが、どの曲も秀逸なアドリブが楽しめる構成である。

 文法としては往年の実験的なスタイルのジャズでありながら、インプロがこれだけ饒舌だと古さなどまったく感じさせない。2015年の今でも最高にトンガっている作品といえる。特にコープランドが何気なくつま弾く1音1音から、たちまちこの世のものとは思えない異界が立ち上るさまは驚異ですらある。

 ほんの1週間前のレヴューで 「2000年以降のジャズはインプロヴィゼーションからアンサンブル志向へと移っている」 と書いたばかりだが、本盤ではその旧勢力であるはずのインプロ組が 「これならどうだ?」 とばかりに圧倒的なイマジネーションを突きつけてくる。リスナーは痺れて言葉を失い、ただひたすら沈黙するのみ。ここまでやるなら認めざるをえない、と言うしかない。圧巻だ。

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

【2015年版】 マイフェイバリットなピアニストたち

1
※サイド参加のアーロン・パークスがきらめく
デイナ・スティーブンス「Reminiscent」(2015年)

■3年前の「第一回大会」とくらべガラリ様変わりしたベストテン

 本コーナーは3年前の2012年にネタに困って苦し紛れで、いやゴホゴホッ、ほんの気まぐれでひねった企画なんですが、最近なぜか異常にアクセスが多くて(笑)。で、3年前と比べりゃ、ずいぶん自分の好みも変わってますから、それならとピアニスト編 「2015年バージョン」 を選出しました。

 選考基準はなるべく若く、かつ、これからが楽しみな人を優先的に推してます。なお1~3位の受賞者には後日、有名某スポンサー様から豪華賞品が届きません。

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【ピアニスト編ベストテン】

1. アーロン・パークス (サイド参加限定)
2. ジェラルド・クレイトン
3. ダニー・グリセット
4. ローレンス・フィールズ
5. ダヴィ・ヴィレージェス
6. ジェイコブ・サックス
7. サム・ハリス
8. Matija Dedic
9. ピート・レンディ
10.オマー・クライン

【惜しくも選外】

ブラッド・メルドー
マーク・コープランド
ジェイソン・モラン (サイド参加限定)
ルイス・ペルドモ (ラテン以外限定)
オリン・エヴァンス
キャスパー・ヴィヨーム

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■若手No.1はやっぱりジェラルド・クレイトンだ

 1~3位は妥当なところでしょうか。「なぜメルドーやコープランドが選外なんだ!」 と、さぞお怒りの皆様もおられるでしょう。ごもっともです。ですが彼らを入れると 「かつて私のカラダを燃えさせた男たち」 シリーズとなり、今回の主旨と食い違うので、おっ外しております。

 それに彼らはウチみたいな辺境の屈折系ブログなんぞが推さなくとも、イチオシする人が掃いて捨てるほどいるでしょうし。

 てなわけで 「なるべく若く将来性のある人を」 の標語がさっそく崩壊し、結局、1位と3位はすでにスターのアーロン・パークスとダニー・グリセットですか、そうですか。いや、しかし彼らはすでに終わったメルドーあたりとちがい、現役バリバリで乗りまくりなので外しようがありません。

 パークスは相変わらず出る新譜、出る新譜、サイド参加して夢のようなピアニズムをぶちかましております。いちばん最近聴いたのは今年3月にリリースされた若手サックス奏者、デイナ・スティーブンスの 「Reminiscent」 (2015年、レヴュー記事はこちら) でのプレイでした。いやはや、参りました。

 かたやグリセットは現在、日本じゃ誰も注目してないデンマーク出身の女性ベーシスト、アンネ・メッテ・アイヴァーソンのレギュラー・カルテットの一員として気を吐きまくっております。このアイヴァーソンさん、メロディ・メイカーとしてのセンスが超一級で、にもかかわらず日本じゃブログ 「灼熱怒風」 さんとかウチ、あとはディスクユニオンくらいしか言及していない、という恐ろしい状況です。明日の日本はどうなるのでしょうか。

 さて手順前後して2位の若手ナンバーワン、ジェラルド・クレイトンも文句なしでしょう。この人もあっちこっちの新譜にサイド参加しては、とんでもないプレイをやらかしております。1位のアーロン・パークスさま同様、自身のリーダー作よりサイド参加作のほうが肩の力が抜けるのか、断然イイのはご愛嬌です。

 最近聴いた彼のプレイは今年5月に出たばかりの若手ギタリスト、マット・スティーヴンスの 「Woodwork」 (レヴュー記事はこちら) になります。

 ちなみにクレイトン狙いならぜひ一度、彼がサイド参加しているデイナ・スティーブンスの 「I'll Take My Chances」 (2013年、レヴュー記事はこちら)、および若手ドラマー、マット・スローカムのピアノトリオ作品 「After the Storm」 (2011年、レヴュー記事はこちら) を聴いてみてください。その真価に必ずや脳天逆落としとなりますでしょう。

 さて4位のローレンス・フィールズを初めて聴いたのは、若手アルト奏者ジャリール・ショウが2013年3月にリリースした最新作 「Soundtrack of Things to Come」 (レヴュー記事はこちら) でした。あまりの興奮に、文中で 「本盤は世界がローレンス・フィールズを発見した作品だ」 てな日刊ゲンダイ風・飛ばしコピーを書いちまいました。スンマセン。

 いちばん最近ではジョー・ロヴァーノとデイヴ・ダグラスの共同名義クインテット 「Sound prints」 のデビュー盤 「Live at Monterey Jazz Festival」 (2015年、レヴュー記事はこちら) でも聴きましたが、こちらのフィールズのプレイは両スターのお守りということもありさほど前に出てきません。

■リーダー作は聴く人を選ぶが才能は確かなダヴィ・ヴィレージェス

 一方、5位のダヴィ・ヴィレージェスは、リーダー作が聴く人を選びます。好みに合わない人が聴くと 「なんなの、これ?」 になります。なのでとりあえずサイド参加作として、サックス奏者ブライス・ウィンストンの 「Child's Play」 (2014年、レヴュー記事はこちら) あたりをお聴きください。ぶっ飛ぶでしょう。

 6位のジェイコブ・サックスは有名なので置くとして、7位のサム・ハリスは初リーダー作 「Interludes」 (2014年、レヴュー記事はこちら) がおすすめです。熱くエネルギッシュな派手めのジャズが好きな人にはミスマッチですが、余韻たっぷりの芸術系ジャズが好みの人にはハマります。

 彼を初めて聴いたのはルディ・ロイストンの初リーダー作 「303」 (2014年、レヴュー記事はこちら) でした。M-8で弾いてる妖しいピアノソロが圧倒的です。持ってかれました。で、速攻で上記のリーダー作を仕入れました。

 続いて8位のMatija Dedicは、最近にわかにディスクユニオンが推しまくり、ちょっとした祭りになってます。ユニオンさんの通販サイトへ行くと、どうやらこの6月に固めて仕入れたらしく彼の過去作がテンコ盛りです。私が初めて聴いたのはリーダー作 「Sentiana」 (2015年、レヴュー記事はこちら) でしたが、力強いタッチでスタイリッシュ、華麗な世界を演出しています。

 このほか9位のピート・レンディはサイド参加した 「Marlon Browden Trio」 (2000年、レヴュー記事はこちら) で、まったく新しいタイプのピアノトリオを提示しています。あのミクスチャー職人、ジェレミー・ユーディーンの諸作にも一枚かんでるクセ者です。彼は耳に残るリフを繰り返すなど、おいしいフレージングと絶妙な間の取り方で勝負しています。既成の饒舌な優雅系ピアニストとははっきり一線を画したニュータイプです。

 最後、10位につけたオマー・クラインの最新作は 「Fearless Friday」 (2015年、レヴュー記事はこちら) です。薄めのイスラエル色がありますが、食当たりもせずサクッと聴けます。おすすめです。

 とまあ、こう見てくるとピアノって楽器は次から次へとおいしい人が出てきますな。なのでこのコーナーはまた随時、更新して行きます。次回は同じく順位変動の激しい2015年版ギタリスト編です。ではまた会う日まで。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Antonio Sanchez / Three Times Three

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50年代となんら変わりない文法で演奏する人たち

 人気ドラマーのアントニオ・サンチェスが、ブラッド・メルドー(p)、ジョン・スコフィールド(g)、ジョー・ロヴァーノ(ts)という現代ジャズの3人の巨匠に声をかけ、3人それぞれのトリオ・ユニットを編成。3つのユニットごとに3曲づつ聴かせる趣向の2枚組アルバムだ。

 わかりやすくてド派手で単純。よくいえば理屈抜きに楽しめる演奏であり、「これはこれ」 である。だが私はこの盤を2014年の年間新譜ベストテンに入れなかったし、今後も入れるつもりはない。なぜなら時代性が反映されてないからだ。というかサンチェスの作品はすべて完全なエンターテインメントであり、単なる 「個」 の集積だ。ことさら 「意味」 を求めるのはナンセンスだろう。

 とはいえ 「2014年のべスト」 というからには、そこには 「2014年なり」 の新規性や作品性があってしかるべきだ。むしろ作品性という意味では、サンチェス盤ならまだ 「Live in New York」 (2010年) のほうが上だろう。本盤は各ユニットごとに3曲すべてを聴き通すだけの求心力が続かない。では3人の主役ごとに内容を見て行こう。

メルドーは相変わらず 「手クセ」 のオンパレードだ

 まずメルドーはさすが1曲目の頭の音が出た瞬間、「おっ」 と思わされる。だがその後は結局、アルバム 「Ode」 (2012年、レヴュー記事はこちら) で評したように、本作も過去の彼のアルバムで出てきたのと同じようなフレーズのオンパレードだ。手クセの集合体みたいな演奏である。元メルダーとしては残念だが 「メルドーは終わった」 感がますます強くなった。2曲目の途中で完全に聴き飽き、静かなだけで退屈きわまりない3曲目はただの苦痛だった。

 ここで聴けるメルドーは職人としての彼だ。リーダー作におけるメルドーとはちがう。あくまで仕事として黙々とクライアント様の注文をこなし、きっちり一定水準の 「製品」 を作り上げる大量生産マシンである (それがメルドーの 「作品」 か? といえば別の話だ)。

 一方、ジョン・スコの容色の衰えはなんとも痛々しい。あのワイルドにアウトする禿をリアルタイム体験した身としては、「これがあの90年代にわが身を焦がした神ジョン・スコか?」 という思いがする。まるで80代の老人のような演奏であり、よくいえばすでに侘びサビの境地に達している。

 いや実際、本盤の中では彼のセットがいちばん飽きずに聴けた (リズム隊に助けられている側面がかなり強いが)。いわば若いころは剛球ピッチャーとしてならした選手が、盛りを過ぎ年を取ったらそれまでの経験を生かし、今度は変化球ピッチャーとして再生し第一線で活躍する。そんな感じだ。ある意味すごいことだと思う。

 最後のロヴァーノのセットは美しいメロディの2曲目が目を引いたが、総体としてリズム隊のド派手な演奏ばかりが耳に残り、3曲目の途中ですっかり興味を失った。ロヴァーノの大ファンとしては寂しい限りだ。もちろんサンチェスのドラミングは個体としてはすごいし3人のベーシストもいい仕事をしているのだが、あいにく私は 「個人」 のプレイだけで 「アルバム全体」 を評価しないのでいかんともしがたい。

 もちろん構成の妙という意味では見るべきものもある。メルドーのセットでは本盤最大の売りであるメルドーを最大限目立たせるため、3人のベーシストの中ではいちばんバックに回るタイプのブリューワーを組み合わせた。逆にジョンスコのセットでは、ジョンスコの衰えをカバーさせるため前面に出るタイプのマクブライドを当て、3曲すべてでベースソロをバンバン弾かせている。そういう意味ではプロデュースがうまい。

2000年以降のジャズはアンサンブル志向である

 この作品は大物がパッと集まり、さっとラフなセッションをしたただのお祭りだ。そこにはインプロヴィゼーションはあっても、練り上げられたクリエイティヴィティやコンポジションがない。ざっくりいって1950年代となんら変わりない文法で繰り広げられる演奏であり、2010年代ならではの新しいジャズの試みはまったく見られない。

 加えて大物さえ集めれば売れるだろうてなミエミエの商業主義が露骨に臭う。この作品をレヴューでほめ、彼らの 「商売」 に手を貸す気にはとてもなれない。むろんこれら参加ミュージシャンの盲目的なファンは喜んで買うだろうが、それは単にサインを欲しがっているのと同じだ。あいにく私は部屋にサインを飾る趣味がない。

 さて、いうまでもなく2000年以降のジャズのキモは、インプロヴィゼーションからアンサンブルへと移っている。ソロ演奏志向より、作曲志向がますます強くなっている。もう 「このソロ (あるいは個人のプレイ) のここがかっこいいんだよ」 という時代ではない。「この楽曲のここがよくできている」 という時代だ。リスナー個人の好みはどうあれ、時代は確実にそっちの方へ向かっている。

 もちろん音楽は好みの問題だから、「いや、オレはあくまでインプロにこだわって聴きたいんだ」 というのもむろんアリだ。音楽を私的にどう楽しもうと個人の自由だし、他人がそれに口を差し挟むいわれはない。だが少なくとも 「それ」 は50年代となんら変わりないジャズの聴き方であり、時代はもうそこにはないことだけはハッキリしている。


【CD 1】

Brad Mehldau (p)
Matt Brewer (ac-b)
Antonio Sanchez (ds)

Recorded: October 27, 2013, at Sear Sound Studio, NY

【CD 2 / M-1~3】

John Scofield (g)
Christian McBride (el-b, ac-b)
Antonio Sanchez (ds)

Recorded: December 4, 2013, at MSR Studio, NY

【CD 2 / M-4~6】

Joe Lovano (ts)
John Patitucci (ac-b)
Antonio Sanchez (ds)

Recorded: December 16, 2013, at MSR Studio, NY
Engineer: Pete Karam (Cam Jazz CAMJ7879-2)

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Luis Perdomo & Controlling Ear Unit / Twenty-Two

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Luis Perdomo (p, el-p on 4, 6, 7, 10, 12)
Mimi Jones (b, vo on 9)
Rudy Royston (ds).

Recorded: December 29, 2014, at The Bunker Studio, NY
Engineer: Aaron Nevezie (Hot Tone Music HTM107)

ルイス・ペルドモはジャズ界の「横山やすし」である

 基本はリリカルなピアノ・トリオだが、ラテンやクラシック、フュージョン的な要素もふんだんに盛っている。加えて参加メンバー、ルディ・ロイストン(ds)の弾けぶりがすさまじい。自らが持つあらゆる音楽的素養をさらけ出したような作品だ。ベネズエラ出身のピアニスト、ルイス・ペルドモがリリースしたばかりの最新作である。

 全12曲中11曲がオリジナルという力の入れよう。ペルドモをはじめ総勢11人が織り成すアルバム「Balance」(2014年)が話題になった女性ベーシスト、ミミ・ジョーンズの起用も目を引く。それになんといってもドラマーのロイストンである。M-2とM-11でドラムソロを披露しているが、どちらもまるで海の潮が満ちていくかのような圧倒的なソロだ。

 ほかにはクラシックっぽい展開から激しくなるM-1、テーマが耳に残る涼やかなM-2、リリカルで美しいM-3、フュージョン的な盛り上がりを見せるM-4、ラテンのノリが楽しいM-11あたりが印象に残った。

 さてルイス・ペルドモというジャスマンは、「人がやらないことをやろう」として苦心惨憺する人だ。エッセイ「天才に賞味期限はあるか?」(記事はこちら)に書いたようなこだわりのあるタイプである。ラテン色を出していた初期のころもそうだったし、ラテンを控えるようになって以後も、あのテこのテで独自色を出そうと工夫している。

 だが悲しいかな、彼が気張れば気張るほどその努力は空回りし、作品トータルの価値として結実しない、という不思議な特徴をもっている。もっとも彼の場合はそれが必ずしもマイナスになっておらず、本人の四苦八苦ぶりを「笑って楽しめる」という余禄がついてくるところがすごい。つまりひと粒で二度おいしい。

 そして逆に奇をてらわず、肩の力をすっかり抜いた作品に限っていいものができる。たとえば何の変哲もない4ビートをやった「Links」(2013年、レヴュー記事はこちら)あたりがそれだ。オーソドックスの極致とでもいうべき演奏だが、アルバム全編に素敵なさりげなさがあふれている。

 では本作はどちらのパターンかといえば、まちがいなく前者だ。と、言い切るのはちと採点が辛すぎるので、まあその中間としておこう。クラシックあり、ラテンあり、ソウルあり、フュージョンあり。ドラムソロとベースソロもふんだんに盛り込み、女性ボーカルまで登場する。「これでどうだ!」みたいな詰め込み方である。

 だがこれら異種のエッセンスが必ずしも相乗効果を生んでおらず、逆に散漫な印象を受ける。いろんなものがあるなぁ、とは思うが、「すごいなぁ」では決してない。どの曲もかっこいいのだが、5+5が10にならず7や8で収まっている。

 ところが前述した通り、彼の場合はそれが決定的な減点ポイントにはならず、起死回生の起爆剤が埋め込まれていたりする。たとえばM-7では突然、80年代ディスコソウルみたいなベタなリズムパターンが出てきて笑わせてくれる。いや、本人は決して笑わせようとしてやってるわけじゃないのだが、笑ってしまう。現代ジャズ界の「横山やすし」と言っていいかと思う。

 横山やすしは、「ただそこにいるだけ」でおかしかった。別に本人は笑わせようとしてるわけじゃないのに、おかしかった。そんな魅力がペルドモにはある。この圧倒的な天然ぶりは、決して後天的な努力で身につけられるものではないだけに貴重だ。彼には今後も横山やすしを継ぐ者として、音楽で人を幸せにしてほしいと思う。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Mark Guiliana Jazz Quartet / Family First

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Mark Guiliana (ds)
Chris Morrissey (b)
Shai Maestro (p)
Jason Rigby (ts)

Recorded: January 2015, at The Bunker Studio, NY
Engineer: John Davis (Agate/Inpartmaint AGIP-3559)

ジャズとロックをミクスチャーしたナチュラルな肌触り

 効果音やボイス・電子音みたいな混ぜ物は一切なし。自然な生音オンリーがあふれ出すナチュラルな肌触り。ジャズとロックを掛け合わせたミクスチャー・ポストロックが心地いい。音楽ジャンルの垣根を越えた若手人気ドラマー、マーク・ジュリアナがリリースしたばかりの最新アルバムだ。

 マーク・ジュリアナと聞いて 「引く」 ジャズ・ファンは多いだろう。いや、その気持ちはよくわかります。なんせ彼ったらブラッド・メルドーとの 「Mehliana: Taming the Dragon」 (2014年) だの、ピコピコ音満載のリーダー作 「My Life Starts Now」 (同) みたいな粗大ゴミ、いやゴホゴホっ、ビート・ミュージックを大量生産してるからだ。

「だから若手は嫌なんだよ」、「ミクスチャー○○なんて糞食らえだ」。いや、お怒りはごもっとも。ですが、ちょっと待って下さい。今回のはまったくちがいます。そのセリフはこの自然なサウンドを聴いてからにしてください――。

 てなわけでおすすめの新作である。マーク・ジュリアナの一連の作品は上記の通り、私のいちばん苦手な 「ゲテモノ」 系なので要注意物件だ。だが本作は出てすぐ試聴し、えらく素直な音だったので一発で気に入った。おまけに大好物のクリス・モリッシー入りだったので即買いである。

わかる人だけにわかる垂涎のメンツを揃えた

 メンバーは、シャイ・マエストロ(p)にジェイソン・リグビー(ts)、クリス・モリッシー(b)と、わかる人だけにわかる垂涎のメンツだ。まずシャイ・マエストロはベーシストのアヴィシャイ・コーエンが発掘し惚れ込んで離さなかった若手ピアニストである。今回の主役ジュリアナも同じくコーエンと2003年から活動していたこともあり、ジュリアナとマエストロはコーエン作品 「Gently Disturbed」 (2008年) で共演している。

 興味深いことにマエストロのピアノ・プレイは、コーエン作品より心なしかのびのびしている。特にM-2のホンキートンクなとぼけたソロやM-10の黒っぽく跳ねるR&B的なプレイを聴くと、「ええっ。あなた、そんなプレイができたの?」 って感じ。やっぱ見上げるような存在のコーエン御大に監視されてりゃ、縮こまるよねぇ。わかるわかる。それよかジュリアナたちのほうが若い世代で感性も近く、やりやすいのだろう。

 さて、お次は屈折系サックス奏者、ジェイソン・リグビーである。彼は暗黒のクセ者ギタリスト、マイク・バジェッタと行動をともにしているマイナー系サックス奏者だ。リーダー作は 「The Sage」 (2008年)、「Translucent Space」 (2006年) がある。オーネット・コールマンとウェイン・ショーターから影響を受けており、ご多分にもれずリーダー作はトンガっております。聴くのにちょっと勇気がいるが、慣れるとかなり気持ちよくなれる。おすすめです。

 最後に我がクリス・モリッシーは、ジャズとロックをミクスチャーした傑作アルバム 「North Hero」 (2013年、レヴュー記事はこちら) と、「The Morning World」 (2009年、レヴュー記事はこちら) をリリースしている。才能豊かな気鋭の若手メロディメイカー&ベーシストだ。変拍子や4ビート、8ビートを散りばめて、ナチュラルな生音だけで聴かせるのびのびした音が気持ちいい。ちなみに前者の最新作 「North Hero」 にはマーク・ジュリアナも参加し、モリッシーとリズムセクションを組んでいる。

 てなわけで、こう並べると音楽的な共通点がまったくない4人である。しかしこのマッチングにより出てきた音は、なんとまあ無農薬野菜みたいに自然で伸びやかな音だった。というか、ほとんど前述したクリス・モリッシーのリーダー作そのまんまのサウンドなんで、詳しくは上記のレヴュー記事をお読みください。(おい)

モリッシー作品より都会的でおしゃれなテイストだ

 本盤には、ジュリアナのオリジナル8曲が収録されている。加えてボブ・マーリーの奥さんであるリタ・マーリーが作曲し、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのアルバム 「Rastaman Vibration」 (1976年) に収録されていた 「Johnny Was」、さらには日本盤のみのボーナストラックとしてRufus Wainwrightの 「Beautiful Child」をあわせ合計10曲が入っている。

 本作の名義 「Mark Guiliana Jazz Quartet」 は、彼のアコースティック系・新プロジェクトである。今後、このプロジェクトでの活動も平行して続けて行くのだろう。個人的には彼の従来の路線より、今回の新機軸のほうが断然興味がある。要チェックだ。

 ではなぜ彼は新プロジェクトを作ったのか? ちょっと説明しておこう。まずまちがいなくマーク・ジュリアナは、上にあげたモリッシーの最新作 「North Hero」 に参加して 「ほう、こんな世界もあるのか」 と感化された。で、自身のピコピコ路線をいたく反省し悔い改め、まるっきり正反対でナチュラルな本作を作ろうと思いついたのだ。だって目を瞑って本作を聴かされて、 「これ、モリッシーの新作だよ」 って言われてもまったく疑いませんもん私。

 とはいえ何から何まで同じなわけじゃない。モリッシー作品とのちがいは、まず本作のほうがより都会的でしゃれたテイストであること。またアレンジがモリッシー作よりややジャズ的でちょっと凝っている。その意味ではモリッシー作品のほうがワイルドで、 「ロックも混ざってますよ」 的なミクスチャー感が濃い。作曲能力は2人ともいい勝負だ。どちらもあふれるような才能がある。ただし耳に残るメロディー作りのセンスはぶっちゃけモリッシーのほうが上だ。

 もともとモリッシー買いの私としては、うまくマスコミに乗ってブレイクしたジュリアナばかりが持て囃され、モリッシーが相変わらずマイナーなままなのがなんとも割り切れない。本作を聴いてもし気に入った人は、ぜひモリッシー作品も買ってみてください。コンセプトは同じだし、ぜったい後悔はさせません。(って別の話になってるなぁ)

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Chris Carroll / Current Shifts

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Chris Carroll (ds)
Rez Abbasi (g)
Apostolos Sideris (b)
Roman Filiu O Reilly (as, ss on 4, 5, 6)
Alejandro Aviles (as on 2, 3, 7)
Milton Barreto (ts on 2, 3, 7)

Recorded: June 4-5, 2013, at Studio B, NY
Engineer: Chris Carroll (223 Records)

怪人レズ・アバシ参加、超おすすめコンテンポラリーの快作

 ブルックリンらしいかっこいい音である。怪人レズ・アバシ(g)が独特のトーンで自分のリーダー作であるかのように弾きまくる。ソロに、バッキングに大活躍だ。明るいアルバムカラーも楽しく、極上のコンテンポラリー作品に仕上がっている。NYを拠点に活動する若手ドラマー、クリス・キャロルの新作である。

 パキスタン出身のギタリスト、レズ・アバシが妖しい音使いで縦横無尽に自己主張する。なんともいい味を出している。アバシのファンには絶対おすすめのアルバムだ。加えてサックス奏者のオライリーがこれまた味のあるからみ方をする。この2トップの働きがトンガったアルバムカラーを鮮烈に印象づけている。

 主役のクリスは初リーダー作「Facing Away」(1998)でデビューし、本作はセカンド・アルバムに当たる。オーネット・コールマンやセロニアス・モンク、チャーリー・ミンガスに影響を受けているが、本盤ではかなり現代的な音作りをしている。

 メンバー全員がまんべんなく曲を持ち寄ったが、主役クリスのオリジナルが1曲もないという珍しい構成の全7曲。ひとクセもふたクセもあるアレンジを利かせ、個人のインプロだけに頼らない今っぽい聴かせ方をする。

 凝った構成でずっしり聴き応えがあるM-1、ラテンっぽくカラッと明るいM-2、アバシが必殺の変態ソロを見舞うM-4、のっけからアバシが歪んだ音で暴れまくるM-5、ひとクセあるバラードのM-6、ラテン的なリズムとメロディが陽気なM-7と、どの曲も刺激的でわくわくする。楽曲のデキが非常によく、加えて2トップのキャラが立ちまくりで1枚通して飽きさせない。

 M-2やM-7のようにラテンっぽい曲もあるのだが、決してベタな単なるラテンに終わってない。いかにもブルックリンのクセ者がラテンの要素を加工しました的な、都会的でコンテンポラリーな仕上がりになっている。

 またM-6あたりもテンポやテイストはバラードなのだが、ただのバラードでは終わらせない。全員が探りを入れながら、たがいに反応し冒険的な丁々発止を繰り広げる。いやぁー、インスパイアされます、このアルバムはホント。世間的にはまったく話題になってない盤だがえらく内容がよく、小さい新興レーベルなのにいい仕事するなぁ、って感じ。

 なお本盤はちと入手しにくいが、本日現在でディスクユニオン通販に在庫があるのを確認済み (ただし3,564円とド高い(笑)。けど、その価値は充分あり)。もし安く上げるなら、アマゾン・マーケットプレイスで海外の業者さんから直接取り寄せるべし。

 実は私もマーケットプレイスで最初ドイツの業者に発注したが、現地から発送されたのに1ヵ月以上待ったあげくに届かずメールで怒鳴りこんで即キャンセル。輸送中に紛失したらしい。「スマミセン、すぐまた仕入れます」 というから 「だったら、まけろ」 と値引き交渉するもあえなく決裂 (クレーマーでごめん)。しかしすでにネット試聴済みで圧倒的に気に入ってたので、懲りずにまた1ヵ月かけて別のアメリカの業者さんから取り寄せました。都合3ヵ月、えらく苦労したけど、でもこいつはまじで買った甲斐あったです。いやほんと。

2
Chris's Web Site: http://chriscarrollmusic.com/

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Glenn Zaleski / My Ideal

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Glenn Zaleski (p)
Dezron Douglas (b)
Craig Weinrib (ds)
Ravi Coltrane (ts on 9)

Recorded: June 10, 2014, at Acoustic Studios, NY
Engineer: Michael Brorby (Sunnyside SSC1406)

【収録曲】

1. Nobody Else But Me (Jerome Kern)
2. Waltz For MD (Rick Rosato)
3. Make Someone Happy (Jule Styne)
4. Cheryl (Charlie Parker)
5. Body and Soul (Johnny Green)
6. REL (Peter Schlamb)
7. Arietis (Freddie Hubbard)
8. My Ideal (Richard A.Whiting)
9. I'm Old Fashioned (Jerome Kern)

スタンダードな正統派ピアノトリオの悦楽

 人間、いろんな経験をすると 「ふつうであること」 がいいと思えるようになってくる。そんな気分のときにぴったりの1枚がこれ。心地よい4ビート・マジックがそこかしこで花開く。ゆったりゴージャスな時間が流れて行く。ストレート・アヘッドを絵に描いたような安息の世界。若手ピアニスト、グレン・ザレスキがリリースしたばかりの初リーダー作である。

 グレンは、2011年にモンク・コンペでセミ・ファイナリストになった実力者だ。サックス奏者である兄マークとのデュエット・アルバム 「Duet Suite」 (2010) で実質デビューし、その後、カート・ローゼンウィンケルのスタンダード・トリオとしても来日したことがあるコリン・ストラナハン(ds)らとの共同名義でピアノトリオ作品 「Anticipation」 (2011)、「Limitless」 (2013) をリリースしている。

 スタンダード、ジャズメン・オリジナルをぎっしり詰めた合計9曲。前述したストラナハンらとのピアノトリオ作では3人がオリジナル曲を出し合いなかなかおもしろい音を聴かせていたが、今回は初リーダー作とあって既成曲でストレートに勝負して来た。

 いやはや、まったり安心できる音だ。じゃまにならない。たとえば誰かと会話しているときも、小ボリュームで流しておくと場が落ち着く。グレンのプレイはさすがモンク・コンペのセミ・ファイナリストらしく安定したテクニックで、比較的強いタッチではっきりしたピアノを弾く。最終曲ではラヴィ・コルトレーンが参加し花を添えているのも話題だ。リズム隊もかなりレベルが高く、このテのストレートなピアノトリオを聴きたいときにはおすすめである。

 また特筆すべきは音質のよさだ。特にピアノとペースの音のエッジがくっきり出て、音をあいまいに滲ませない。ことに低音部の解像度の高さが目を引く。そのため例えばベーシストが速いフレーズを弾いても、1音1音が絶対に潰れずハッキリ出る。音がスッと立ち上がり、歯切れよく立ち下がる。

 また音場感もよく、各楽器があるべき位置にビシッと定位し立体感がある。それぞれの奏者が目の前で実際に演奏しているかのような 「ビジュアル感」 を楽しめる。どうせ音楽を聴くならやっぱり音質はいいに越したことはないな、と感じさせられる1枚だった。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Chris Morrissey Quartet / The Morning World

1

Michael Lewis (sax)
Peter Schimke (p on 3, 4, 5, 7, 9)
Bryan Nichols (p on 1, 2, 8)
Chris Morrissey (b)
David King (ds)

Recorded: August 2008, at Pachyderm Studio, MN
Engineer: Brent Sigmeth (Sunnyside ‎SSC1208)

自然な風合いが心地いい傑作ミクスチャー・ポストロック

 生音オンリーのナチュラルな音作りと、メロディックなコンポジションが気持ちいい。ジャズとロックをミクスチャーし、全く新しいコンテンポラリー・ジャズを生み出している。ブルックリンを拠点に活動する名メロディ・メーカー、ベーシストのクリス・モリッシーが2009年にリリースしたデビュー・アルバムだ。

 音の方向性は最新作のセカンド盤 「North Hero」 (2013年、レヴュー記事はこちら) とくらべブレておらず、クオリティも甲乙つけがたい。現在へと至る道程がはっきり見て取れるデキだ。もしタイムマシンで時間を遡り2009年に戻れたら、迷うことなくその年の新譜ベストテンに入れたいおすすめ作である。

 全9曲すべてクリスのオリジナル。不良のテーマ風っぽいメロディーが耳に残るM-1や、3拍子の滑り出しから急にアップテンポになるのが快感のM-2、途中から4ビートになるがリズムの変化が目まぐるしく凝った曲のM-3、デイヴ・ダグラスが90年代に結成していた 「The Tiny Bell Trio」 風でサーカスの楽隊がふざけて演奏しているようなテイストのM-7あたりが印象に残った。

 どこか奇妙に懐かしい和むメロディーがあたりを覆っている。ジャズをまったく知らないか、知ったかぶりした悪ガキが背伸びしてやってるジャズ、という感じだ。

 明らかにロックの影響があり、だがそれだけでなくいろんなものが混ざってるミクスチャー系。むしろロックのミュージシャンによる、ポストロックの側からの新時代への回答という感じがする。とはいえ作りはワンホーンで要所では4ビートも散見される。純粋なジャズ・マニアが聴いてもまったく違和感ない音だ。

 絶対に機械で作った音に頼らず、あくまで自然な生音で真正面から立ち向かっているのもポイントが高い。ナチュラルだけど先端派。そこが大きなセールスポイントだ。とっても好感が持てる。

 すごく高度なことをやってるんだけど、決してそれをこれ見よがしに表へ出さない。そこがかっこいい。クリスはきっと、テストの前日に 「オレぜんぜん勉強してねえんだよなぁ」 と言いながら100点を取るタイプの子供だったのだろう。

 それくらいハデさがまったくない。うんと素朴なテイストだ。だがそれでいて、やってることはえらくハイレベルでおしゃれ。センスがいいなぁ、と唸らされる。ハイ、参りました。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

John Patitucci Electric Guitar Quartet / Brooklyn

1

John Patitucci (el-b)
Adam Rogers (el-g)
Steve Cardenas (el-g)
Brian Blade (ds)

Released: 2015, recorded at The Bunker, NY
Engineer: Joe Barbaria (Three Faces Records 8829523477)

思わずカラダでリズムを取ってしまう楽しさ

 超絶技巧ベーシスト、ジョン・パティトゥッチの今回の新作の相棒はエレキ・ベースだ。で、「パティトゥッチのことだから、どうせエレベでバリバリ早弾きとか難しいことをやってるんだろうなぁ」と思いきや、開けてびっくり。変にワザに走らず、えらくリラックスした音が飛び出してきた。

 聴く人を選ばず、だれもが楽しめる明るくノーテンキな演奏が繰り広げられる。エリック・ゲイルやコーネル・デュプリーを擁した、かつてのスタッフをちょっと思い起こさせる。エンターテインメントに徹し、何よりもノリを優先したわかりやすい音である。

 メンバーはアダム・ロジャース(g)、スティーヴ・カーディナス(g)という魅惑のダブルギターに、リズムセクションを組む相方には御大ブランアン・ブレイドをフィーチャーしたオールスター・カルテットだ。

 パティトゥッチのオリジナルを中心にした計11曲。M-2のポール・ジャクソンみたいなノリノリのベースのリフが誘うナンバーや、のっけからファンキーなベースのリフが押し寄せ、思わずカラダでリズムを取ってしまうM-3あたりが印象に残った。

 全体に、基本はパティトゥッチがトリガーになるリフを提示し、それに合わせて全員が「せーの」でなだれ込むスタイルだ。ラフなセッションをそのまま一発録りしたような作りである。

「いいかい、キーはGだ。イントロでベースがこのリフを4小節弾いたら、アダム、君が入ってくれ。で、この合図を出したらエンディングだ。じゃあ行こう。ワン、トゥ、スリー、フォー」みたいな感じでどの曲も展開される。

 そのため頭でこねくり回したような演奏でなく、単純明快でストレートな音がリスナーの脳天を直撃する。パティトゥッチ自身も妙にテクを見せびらかしたりせず、のびのびしたノリのいいプレイを展開している。

 ただし凝った作りではないので、ぶっちゃけ3日聴いたら飽きるかもしれない。このへんは、ほぼ同時にリリースされたマシュー・スティーヴンスの噛めば噛むほど味が出るスルメ盤 「Woodwork」 (2015年、レヴュー記事はこちら) と対照的でおもしろい。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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