Harris Eisenstadt / Canada Day IV

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Nate Wooley (tp)
Matt Bauder (ts)
Chris Dingman (vib)
Pascal Niggenkemper (b)
Harris Eisenstadt (ds)

Recorded: January 25, 2015, at Water Music, NJ
Engineer: Sean Kelly (Songlines Recordings SGL1614-2)

ちょっとフリーをまぶしたラルフ・アレッシ風、音の玉手箱

 カナダ・トロント出身の若手ドラマー、Harris Eisenstadtがリリースしたばかりの最新アルバムだ。作品のテイストはどこかミステリアスであのラルフ・アレッシを思わせる。トランペット奏者ネイト・ウーリーやサックス奏者マット・バウダーなどフリー人脈を迎え、ちょっとフリーのエッセンスをまぶしたうつむき系のコンテンポラリー・ジャズである。

 全7曲すべてハリスのオリジナル。このテのちょっと妖しい作品には欠かせない曲者ヴィブラフォン奏者、クリス・ディングマンが効いている。ワァ〜ンと余韻をたなびかせるヴィブラフォンの響きがなんとも面妖だ。

 とはいえラルフ・アレッシ作品と同様、ただ妖しいだけじゃない。おどけたようなアレンジやきっちりノリのいい部分も作りながら、アルバム全体を通して飽きがこないよう工夫している。昨今の若手ミュージシャンの例にもれず、演奏だけでなくコンポジションまですべて含めたトータルで作品として押し出してくる熱量がある。

 そういえば日本の歌謡曲もざっくり70〜80年代までは「歌手」と「作曲家の先生」がハッキリ別だったが、その後「シンガー・ソング・ライター」なる言葉がもはや死語になるほど一般化し、両者の区分けがどんどんなくなっていったなぁ、などと本題とまったく関係ない感慨に耽ってしまった。

 てなわけで秋の夜長に物思いに耽るにはオススメの思索系ジャズ。お好みの人はぜひどうぞ。

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Joachim Govin / Elements

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Joachim Govin (b)
Ben Van Gelder (as)
Tony Tixier (p)
Gautier Garrigue (d)

Recorded: October 20-21, 2014, at Studio des Egreffins, France
Engineer: Nicolas Charlier (FSNT 4769)

ベン・ヴァン・ゲルダー参加、フランス発だが今どきのニューヨークが香る一作

 リズムセクションを有能な若手フランス人で固めたヨーロッパ発の作品だが、音はいかにも今どきのニューヨーク風だ。脱力し、波間を漂うようにメロディを奏でるゲルダーのアルトがアルバムカラーを決定づけている。若手フランス人ベーシスト、ヨアヒム・ゴヴァンがリリースしたばかりの初リーダー作である。

 ヨアヒムは1984年生まれ。名サックス奏者、ピエール・オリヴィエ・ゴカンを父に持ち、幼いころからジャズに囲まれて育った。American School of Modern Music of Parisとパリ国立高等音楽院(CNSM)でクリスチャン・ジェンテやベン・ストリートらに師事し、エンリコ・ピエラヌンツィやアルド・ロマーノ、トーマス・エンコなどのサポートで才能を認められた。

 メンバーは、知る人ぞ知るツワモノ揃いだ。アルトのベン・ヴァン・ゲルダーは説明不要だが、まずドラマーのGautier Garrigueは本ブログいち押しの若手フランス人である。

 彼は、2007年ギブソン・コンペ優勝のギタリスト、フェデリコ・カサグランデのアルバム「The Ancient Battle of The Invisible」(2012年、レヴュー記事はこちら)や、若手フランス人ベーシスト、フローレント・ニッセの初リーダー作「Aux Mages」(2014年、レヴュー記事はこちら)などの秀作に参加しているフランス・ジャズ界のホープである。

 実は彼の参加作がほしくて以前から検索しまくっているのだが、残念ながら日本では手に入らない。アマゾンのマーケット・プレイスにもないし、ディスク・ユニオンも扱ってない。八方、手をつくしたがお手上げだ。(ユニオンさん、これ読んでますかぁ?)。私がこれほど執着しているのだから、どれほどいいドラマーかわかるだろう。

 一方、ピアノのトニー・ティキシェも1986年生まれのフランス人で、最新リーダー作は4作目の「Dream Pursuit」(2012年)。かたや本盤ではキラキラと輝く華麗なピアニズムを聴かせている。

 ヨアヒムのオリジナル3曲に加え参加メンバーのゲルダーが1曲、ティキシェが2曲を持ち寄ったほか、ローガン・リチャードソン曲、コルトレーン曲など計11曲。全体にゆったりくつろげる秀曲揃いだが、「くつろげる」といってもスタンダード的な古いテイストではなく、いかにもいまどきの若手がやりそうなどこかに「尖り」のある味わいだ。

 ちょっとゲルダーの作風に似ているが、あそこまで無機的な感じではない。全曲、どこかにもっとメロディックな要素がある。わかりやすい派手さのようなものはなく、どちらかといえば噛めば噛むほど味が出るタイプである。いろんなミュージシャンの作品が集められているが、まるで全曲本人のオリジナルのように聴こえる統一感があるのは、独特の個性が光るゲルダーがずっとアルトを吹いているからだろう。

 ちょっと早いが秋の夜長に一家に1枚。前面に出ているゲルダーのファンにもおすすめできる。品質は絶対保証の優秀作である。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Pawel Wszolek / Choice

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Pawel Wszolek (b)
Lukasz Kokoszko (g)
Sebastian Zawadzki (p)
Szymon Madej (ds)

Recorded: 2015, at Preisner Studio, Poland (FSNT 478)

ステキなさり気なさにあふれた傑作・欧州ジャズ

 哀感を帯びたメロディと叙情的な調べ。派手さはないが、ステキなさり気なさにあふれている。ヨーロッパっぽい端正な味わいがツボにくる。1991年生まれのポーランド人ベーシスト、パウェル・ヴゾレクの傑作最新リーダー作である。

 だれかが飛び抜けた超絶技巧を見せつけるわけじゃない。全員の技量が程よいレベルでまとまっている。そのためまったりと落ち着いてくつろげる。「熱くソロを回す」とか「白熱のインタープレイが」とかじゃなく、しっかり「バンド」としてまとまっている。

 主役のパウェルはけっこうベースソロも弾いているが、アメリカ人みたいな脂っこさはない。いい意味で淡白な淡麗辛口だ。彼のソロは技巧を見せつけるのでなく、耳に残るフレーズによって楽曲の完成度を高めるためにひと役買っている。単なる個人プレイでなく、あくまで楽曲を生かすためのソロだ。

 その楽曲はこれまたどれも非常にレベルが高く、リラックスというキーワードで見事に統一されている。この叙情的な音がピアノトリオならばヨーロッパ系の現代ジャズにありそうなパターンだが、そこにギターが加わっているところが新鮮だ。

 このギターがピアノと同じく過度にテクニカルなところがまったくなく、実にさりげない好プレイを繰り広げている。何気なさがすばらしい。血気にはやり音数多くドカドカやるんじゃなく、酸いも甘いも噛み分けてグッと抑えた「大人の音」を醸し出している。

 年のせいだろうか。脂っこくうるさい音がすっかり苦痛になってきた。そんな私にはちょうどいいあんばいの好アルバム。かなり完成度が高く、今年の新譜ベストテンをうかがうデキといっていい。おすすめである。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Avishai Cohen / The Trumpet Player

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Avishai Cohen (tp)
John Sullivan (b)
Jeff Ballard (d)

Special Guest: Joel Frahm (ts) on M-4, 5, 7
Recorded: November 25, 2001, at PureMix, NY (FSNT161)

無人島へ持っていきたい鮮烈デビュー盤

 もし無人島へ行くとしたら関連で必ず上がりそうな1枚だ。イスラエル人トランペッターのアヴィシャイ・コーエンが、初リーダー作にしていきなりモノにした自身最高傑作である。

 痺れるような緊張感と高いテンション。ワイルドに暴れまくる3人の野獣たち。野に放たれたコードレスの自由な地平を1本のラッパが切り裂く。ド迫力のカッ飛びジャズだ。

 メンバーはジョン・サリヴァン(b)、ジェフ・バラード(d)とのトリオに、サックス奏者のジョエル・フラームが3曲でゲスト参加している。

 アヴィシャイのオリジナルが5曲にコルトレーンの「Dear Lord」、オーネット・コールマンの「Giggin」を加えた計7曲。オープニングでさっそくぶっ放してくれるM-1や胸が熱くなるバラードのM-3、粘っこいノリのM-6など、どの曲も生き馬の目を抜く自由奔放ぶりだ。

 またジョエル・フラームがゲスト参加したM-5では、本作の粗野な魅力を象徴したようなアヴィシャイとのモーレツな掛け合いが聴ける。2人は非常にバランスがよく、たがいに激しく罵り合いながら楽曲が二転三転していく。本盤きっての聴き物である。

 トリオの命運を握っているのはベーシストのサリヴァンだ。彼は自由奔放なトランペットと手数が多く遊びまくるドラムスとを仲立ちし、ユニットのバランスを取っている。彼のおかげでトリオは爆発はするが暴発はしない。さながら2匹のドーベルマンと1人の猛獣使いだ。よく弾むが、ノリまかせではないクレバーなベーシストである。

 本作を聴いていると、あるパラドックスに気づく。ある種のルールや作法に則って演じられる後年のアヴィシャイ作品「Introducing Triveni」(2010)、「Triveni II」(2012)、「Dark Nights」(2014)のTriveni三部作より、このデビュー作のほうがはるかに革新的なのだ。

 本来なら順番は逆のはずだ。まず何編かの習作でいったんジャズのイディオムを極め、次にそうした既存の規制を取っ払った末に生まれてくるのが本作の世界であるように思える。

 そう、おもしろいことにアヴィシャイの作品群は、鮭が遡上するかのように逆行している。まるで胎内回帰願望を音にしたかのように。その意味ではこのデビュー作とTriveni三部作をすべて聴いた上でなければ、アヴィシャイの懐の深さは正確にはジャッジできない。

 なお同三部作はすべて物足りず、どれもデビュー作には及ばない、という評をよく目にするが、個人的には必ずしもそうは思わない。

「理屈抜きで暴れるジャズがいい」なら前述の評価になるのはよくわかる。だが奥行きという意味では三部作も賞賛されてしかるべきだろう。というか4枚ともぜひ聴いてもらいたい現代ジャズの金字塔である。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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