【’90~2000年代・名盤100選】Chris Potter Quartet / Sundiata

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Chris Potter (ts, as, ss)
Kevin Hays (p)
Doug Weiss (b)
Al Foster (ds)

Recorded: December 13, 1993 at RPM Studio, NY
Engineer: Max Bolleman (Criss Cross 1107)

コンテンポラリー・ジャズはここから始まった

 いまをときめくコンテンポラリー・ジャズの雄、サックス奏者クリス・ポッターが1995年にリリースしたCriss Crossレーベル第2弾。92年に同レーベルで録音した『Presenting Chris Potter』でアルバム・デビューした彼が、まだ初々しかった初期の名盤だ。

 当時スティーリー・ダンのバック・バンドにも参加していた新鋭ポッターが「まだこれから」の時期である。本盤ではケヴィン・ヘイズ・トリオをバックに、ワンホーン・カルテットの編成で聴かせる。ドラマーはマイルス・デイヴィスとの共演で知られるアル・フォスターだ。

 この2nd盤は、エネルギッシュなプレイで知られる猛獣ポッターの「静の顔」が見られる、という意味で非常に貴重だ。

 といっても別につまらないバラードばかりで構成されているわけじゃない。ここでのポッターは決していまのように激しくブロウしないが、それはあくまで現在の彼とくらべてであり、またプレイスタイル上だけでの話だ。収録されている楽曲自体はどれもコクのある佳曲ばかりが揃っている。

 自身のオリジナル6曲に「Body and Soul」、ソニー・ロリンズ「Airegin」を加えた合計8曲。リリースから20年以上経たいま聴き直しても、色褪せるどころか作品としての完成度が傑出していることに驚かされる。まさにコンテンポラリー・ジャズはここから始まったのだ。

 個人的には、2000年代に彼が結成する奇をてらった「クリス・ポッター・アンダーグラウンド」などより本盤のほうがはるかに好みだ。本作が録音された93年といえば、まだあのブラッド・メルドーでさえ初期のころ。コンテンポラリー・ジャズを探求するなら、まずはこの作品からという感じである。

 クリス・ポッターは1971年イリノイ州シカゴ生まれ。11才でアルト・サックスを始め、高校卒業と同時にニューヨークへ移住した。ニュースクールに入学後、マンハッタン音楽院に編入。22歳の時に加入したミンガス・ビッグバンドでの演奏をたまたま観たウォルター・ベッカーがひと目惚れし、1993〜94年のスティーリー・ダンのツアーに参加した逸話は有名である。

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【’90〜2000年代・名盤100選】Chris Cheek / Vine

​Chris_Cheek_Vine

Chris Cheek (ts, ss)
Brad Mehldau (p, fender rhodes)
Kurt Rosenwinkel (g)
Matt Penman (b)
Jorge Rossy (ds)

Recorded: December 20-21, 1999 at Avatar Studios, NY
Engineer: James Farber (FSNT 086)

2000年代の新感覚クール・ビューティー誕生

 それまでの「ジャズ」の概念を打ち砕き、まったく新しいジャズを生み出した記念碑的な傑作だ。この音を好むか好まざるかにかかわらず、聴く者をたちどころに瞬殺するインパクトがある。サックス奏者、クリス・チークが2000年にリリースした3枚目の金字塔である。

 4ビートなどカケラもない。バップフレーズよ、さようなら。まったく聴いたことのない斬新なアレンジが空間を切り裂く。プレイヤーは絶対に熱くなることなどなく、あくまでクールに淡々と音を紡ぐ。

 ベースとドラムがのたうつようなリズムを打ち出し、サックスとギターがユニゾンで奇妙なテーマ風フレーズをリピートする。バッキング時のギターは遠慮なくアルペジオを繰り出し、それらの上に乗るサックスは、その後2000年代を席巻することになる浮遊感のあるウネウネした不思議なノリでソロを取るーー。

 '90〜2000年代に大手を振ってジャズ界を闊歩したパット・メセニーとジョン・スコフィールドが旧世代の巨頭だとすれば、ブラッド・メルドーとカート・ローゼンウインケル、ジョシュア・レッドマンはそれに続く新御三家だった。だが彼らとはまったく異なる奇抜なアプローチで新大陸を発見したのが本アルバムである。

 メンバーはごらんの通り。ブラッド・メルドー(p)とカート・ローゼンウインケル(g)、マット・ペンマン(b)、ジョージ・ロッシ(ds)という、2度と実現不可能な当代きっての大物たちが勢揃いしている。なかでも特にローゼンウインケルの時代を切り裂くような革新的なギタープレイが印象に残る。

 当たり前のように計8曲すべてチーク自身のオリジナル。現代ジャズの特徴であるコンポーザー志向の走りだ。うち半分の4曲でメルドーがフェンダー・ローズのエレキ・ピアノを弾いているのも新しい。

 まちがいなく2000年代の新感覚ジャズはここから始まった。本盤を聴かずしてコンテンポラリー・ジャズは語れない。

 クリス・チークは1968年セントルイス生まれ。1988年にバークリー音大に入学し、1992年にニューヨークへ移住した。1997年にFSNTから『I Wish I Knew』でアルバム・デビュー。FSNTから本作も含め『A Girl Named Joe』(1997)、『Blues Cruise』(2005) の4枚のリーダー作を発表している。





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Roman Otto / If You Lived Here You'd be Home by Now

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Roman Ott (as)
Kurt Rosenwinkel (g)
Manuel Schmiedel (p)
Lars Gühlcke (b)
Peter Gall (ds)

Recorded: November 27-28, 2012 at Recpublica Studio, Poland
Engineer: Marco Birkner (FSNT 446)

ローゼンウインケル参加、うねる傑作現代ジャズ

 カート・ローゼンウィンケル(g)が参加し、まったりした非4ビート系ジャズが続いて行く。時折混ざるゆったりバラードが実にいいあんばい。カートがうるさい弾きまくりでなく、ツボを心得たうっとりするような名演を繰り広げているのが聴きものだ。ドイツを拠点に活動するアルト・サックス奏者、ロマン・オットのFSNT第二弾である。

 主役のオットはベルリンの音楽院を卒業し、2003年に自己のバンド「イナー・シェイプ」を結成して高評価を得た。特にカート・ローゼンウィンケルをフィーチャーした2009年のアルバム「Seeing People」(FSNT 346)がベストセラーを記録している。

 自身のオリジナル7曲に「Love Thy Neighbor」(revel / gordon) を加えた合計8曲。本作はとにかくオリジナル曲の出来がよく、曲が変わるたびに新しい発見がある。そのためアルバムをまったく飽きさせない。ボッサ調の穏やかな1曲目で早くもノックアウトされてしまう。そのほかにも哀愁あり、美メロあり、ノリのいい4ビートありで一気に最終曲まで聴かせてしまう。

 主役のオットーはマーク・ターナー風のうねうねサックスだ。彼のこのプレイがゆったりリラックスできる曲調に実にマッチしている。そこにカートが毎曲かっこいいギターソロをバシバシ決めて行くのだからたまらない。

 ここでのカートのギタープレイは、ある種ナーバスな自身のアルバムとはまったく異なり落ち着いた大人の演奏を聴かせている。本盤での名演は、数ある彼の客演のなかでもベストプレイに挙げられるのでなないか。カート・ファンにはうれしいプレゼントである。







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Rick Germanson Trio / Off The Cuff

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Rick Germanson (p)
Gerald Cannon (b)
Louis Hayes (ds)

Recorded: January 6-7, 2009 at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Mike Marciano & Joe Marciano (Owl Studios OWL00127)

ストレート・アヘッドな王道路線を行け

 昨年の後半くらいからメインストリーム系のジャズがすっかりおもしろくなり、そっち方面が多いスモールズ・ライブを漁っていて出会ったピアニスト、リック・ジャーマンソンである。

 彼は中堅トランペッター、ブライアン・リンチ(1956年生まれ)のピアニストとして頭角を現し、本盤でもフィーチャーされているベテラン・ドラマー、ルイス・ヘイスのグループでも活動している。

 本作はそんなジャーマンソンがFSNTからリリースしたデビュー盤『Heights』(2001年録音)、およびセカンド盤『You Tell Me』(2004年録音)に続く3作目である。ストレート・アヘッドな王道路線だ。

 自身のオリジナル6曲にフレディ・ハーバート「Up Jumped Spring」のほか、「Autumn in New York」など全10曲。オリジナル志向で、独特のメロディー感覚をもっている。ふとした瞬間にぽっかり空いた異次元へもって行かれるような不思議な感覚が味わえる。

 ノリのいい曲もあるのだが、どちらかといえばしっとり系だ。バップ系のピアニストだが、本盤では割と大人しく控えめな渋いプレイを披露している。雰囲気作りが実にうまいプレーヤーである。

 ちなみに彼の演奏を初めて聴いたのは4作目『Rick Germanson Quartet / Live at Smalls』(2011年録音)だった。本盤とは対照的にノリノリの雰囲気のなか、トランペッターのエディ・ヘンダーソンが熱のこもった演奏でえらくかっこよかった。ギンギンな感じで楽しみたいならこちらもおすすめだ。

 ジャーマンソンは1972年ミルウォーキー生まれ。1998年にニューヨークへ進出し、1996年にはアメリカン・ピアニスト協会のジャズピアノコンクールで大賞受賞。2004年には米NYCのジャズ・ニュースサイト『All About Jazz』 から「Best of New Talent」を贈られている。



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Noah Haidu / Infinite Distances

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Noah Haidu (p)
Sharel Cassity (as)
Jon Irabagon (ss, ts)
Jeremy Pelt (tp,flh)
Peter Brendler (b on M-1, 2, 3, 7)
Ariel Alejandro de la Portilla (b on M-4, 5, 6, 8, 9, 10, 11)
John Davis (ds on M-4, 5, 6, 8, 9, 10, 11)
Mark Ferber (ds on M-1, 2, 3, 7)

Recorded: June 24, 2015 & Feb 15, 2016 at Skyline Productions, NJ
Engineer: Paul Wickliffe (Cellar Live Records CL080216)

緻密なアレンジで現代ジャズに踏み込む野心作

 十重二十重(とえはたえ)に張り巡らされた緻密なアレンジが圧倒的で、聴く者はただひれ伏すのみ。作品性の高いアルバムだ。過去作とくらべ、みなぎる緊張感でピリピリしている。エンターテインメントとしてのジャズに「芸術」をふりかけたようなアルバムだ。ブルックリン在住の若手ピアニスト、ノア・ハイドゥがリリースしたばかりの3枚目のリーダー作である。

 デビュー盤の『Slipstream』(2011年、レヴュー記事はこちら)では2管を配した大らかな現代版ハードバップを提示し、セカンド盤『Momentum』(2013年、レヴュー記事はこちら)ではコンセプトはそのままにピアノトリオで同じ表現をした。で、迎えた本作では、デビュー盤でもフィーチャーしたジョン・イラバゴン(ss,ts)とジェレミー・ペルト(tp)を配し、よりコンテンポラリーな方向に舵を切っている。

 本盤を入手する前、断片的にネット試聴したときには「ああ、この人はまたきっちり水準をクリアする作品を作ってきたな」と感じた。フタをあけてみれば案の定、すごい凝りようだ。

 ただ肩に力が入っているぶん、過去作のように理屈抜きでは楽しめないようなところがある。少なくともハードバップ的な大らかさや能天気さとは無縁だ。おそらく50年代の古き良きジャズしか聴かない層にとっては「頭でっかちなジャズ」と映るかもしれない。まあ好みの問題である。

 全11曲のうち、ジョー・ヘンダーソン「Serenity」以外の10曲すべてが自身のオリジナルと気合いを入れてきた。過去作で提示した2000年代版メインストリームな世界に新味を加え、化学反応を起こすことでより現代的なジャズに軸足を移した。アレンジの緻密さまで含め、作り込みの深さでいえば傑作と呼べるだろう。

 それほど細部まで念入りに作られた世界を構築している。力作だ。ただそのぶん「笑い」がない。わざとあいまいにしておいたパートが結果的に生み出す「余裕」や「ゆらぎ」みたいなものはない。作者が計算した通りに解釈してください、という音だ。その意味では1度や2度聴いたくらいじゃよさがわからず、聴き込むことを要求する作品といえるかもしれない。

 肩の凝らないジャズを聴きたい人にはやや重く、ちょっと聴き疲れするかも? だがそのぶん芸術としての完成度は高いし聴き応えがある。いつの時代も、芸術にエンターテインメントを差し込むときのサジ加減はむずかしいものだ。

ここで全曲試聴できます。



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David Hazeltine Trio / Perambulation

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David Hazeltine (p)
Peter Washington (b)
Joe Farnsworth (ds)

Recorded: May 28, 2005, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Max Bolleman (Criss Cross 1276)

喉越しスッキリ、王道系ピアノトリオが行く

 4ビートのリズムをバックに、コロコロとよく転がるノリのいいピアノが遊ぶ。小粋なメロディについうっとり。渋さを極めた大人の味だ。メインストリームを行く現代ジャズの代表的ピアニスト、デヴィッド・ヘイゼルタインがCriss Crossレーベルから2006年にリリースした優良盤である。

 デヴィッド・ヘイゼルタインは1958年ミルウォーキー生まれ。21才でニューヨークに進出し、マリーナ・ショウのピアニスト兼アレンジャーとして活躍したのち自身のトリオで活動している。

 主役を支えるリズム隊は、ヘイゼルタインとともに人気ジャズ・ユニット「One for All」のオリジナル・メンバーとしても知られるピーター・ワシントン(b)とジョー・ファンズワース(ds)。現代メインストリーム系リズムセクションのなかでは人気、安定感ともに最も図抜けた才能たちである。

 さて本作はスッキリ喉越しがいいヘイゼルタイン盤の中でも特にスイスイ聴きやすく、かつ味わい深い。クセのない入りやすさが魅力的だ。ただし何気ないようでいてアレンジや選曲がよく、スタンダードを網羅した盤にありがちな「おやじジャズ」的な耳タコ感がない。そのため何度聴いても聴き飽きない。適度なノリのよさもあり、ソファーにゆったりめり込んでくつろげる落ち着きがある。

 それになんといっても疲れたとき、小音量で軽くあっさり流しておくのにいい。ひとクセある最近のコンテンポラリー・ジャズではとてもこうは行かない。たちまち消化不良を起こしてしまう。「疲れたとき聴くのにいい」というのは、このテのストレート・アヘッドなジャズの大きな特徴だろう。

 オリジナル3曲にスタンダード等を加えた合計9曲。ジャズの中心部を射抜く王道的ラインナップの中でも、例えばM-8はファンキーでかっこいいぶっ飛びオリジナル。なるほど彼はコンポーザーとしての才もある。ただスタンダードなだけではない、役者である。


*M-3「Wonder Why」 (Sammy Cahn / Nicholas Brodsky)


*M-6「Blues For David」 (Buddy Montgomery)

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Bruce Barth / Don't Blame Me

Bruce_Barth_ Dont_Blame_Me

Bruce Barth (p)
Ed Howard (b)
Billy Drummond (ds)

Recorded: June 9, 1997 at Tedesco Studios, NJ
Engineer: David Baker (Double-Time Records DTRCD-129)

春の小川のせせらぎのようなピアノトリオ

 こんなピアノの弾き方があったのか? という感じだ。モンクやビル・エバンスの影響も感じさせるが、とにかく独特の世界観をもっている。オリジナル曲は全編これインプロみたいな起承転結でつかみどころがない。ふと気づくと彼独特の心地いい音世界に引き込まれている。

 ベテランの域に入ったピアニスト、ブルース・バースが1997年に発表したピアノトリオ作品だ。

 オリジナル5曲に加え、モンク「Evidence」、コルトレーン「Lazy Bird」など合計10曲。まったく力むことがなく、肩の力をすっかり抜いた演奏がえんえん続く。聴いてるこちらも自然とリラックスでき、ほんわか気分で1日の疲れが取れて行く。まるで温泉につかるみたいなまったりジャズだ。

 雪解けの頃の小川のせせらぎのように、ちょろちょろと細く流れるように転がるピアノの調べ。まるで羽根布団のようにふんわりしたハーモニーとコードワークを駆使し、ゆったり音を紡いで行く。あくまでも優しいタッチで、子供が大事にしている大切な宝物にでも触るかのように軽やかに。

 実はヴィセンテ・アーチャー(b)、ルディ・ロイストン(ds)と彼が演ったスモールズ・ライブ『Bruce Barth Trio』(2010年、レヴュー記事はこちら)で一目惚れし、あの盤とまったく同じスタイルでやってるアルバムを探して見つけた逸品。彼はたくさん作品をリリースしているから、宝探しはまだまだ続きそうだ。



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Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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