Alex Sipiagin / Overlooking Moments

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Alex Sipiagin (tp,flh)
Chris Potter (ts, ss)
Scott Colley (b)
Eric Harland (ds)

Rec. October 15, 2012, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Michael Marciano (Criss Cross 1354)

クリポタ、ハーランドら豪華メンツが放つ緊張感が凄い

「圧倒的」 としか言いようのない作品だ。ヒリヒリするような極度に緊張感の高い演奏が続く。それがアルバム1枚通してだから思わず息が詰まりそうになる(もちろんいい意味で)。トランペット奏者、アレックス・シピアギンがリリースしたばかりの最新作、クリスクロス10作目になるリーダー作だ。

 メンバーは売れっ子クリス・ポッター(ts, ss) に、リズム隊がこれまた人気者のスコット・コリー (b) とエリック・ハーランド (ds) の最強布陣。オリジナル4曲にメンバーが持ち寄った3曲、奥さんであるMonday満ちるの作品1曲の合計8曲だ。

 興味深い点は、これだけのメンバーがハイテンションな演奏を繰り広げているにもかかわらず、演奏がわかりやすく躍動してないところだ。「止まっている」 かのような不思議なノリ、とでもいえばいいだろうか。楽曲そのものは静かなわけでもないのだが、演奏が明るくノーテンキに跳ねたり弾んだりしていない。ひたひたと深く静かに哲学的な思考をするかのようだ。

 ハーランドなどは常にブチ切れて行きまくるイメージがあるが、本作ではエネルギーを内に秘めながらも微妙に抑えて叩いているかのような、「寸止めの美学」 とでもいうような凄まじい悟りの境地に達している。

 プルージーで明るいM-4でホッとひと息つくが、M-5からはまたすごい緊張感に支配される。特に終盤のM-7が放つ、静的でありながら壮絶なテンションには本当に息が止まりそうになった。

 ピアノ・ギターレスでコード楽器がないのも理由だろうが、「緩み」 とか 「なごみ」 みたいなものとはまったく縁がない。このテの演奏が好みでない人には聴き疲れするかもしれないが、私はすごく楽しめた。

 前作の 「Destinations Unknown」 (2011) も本作同様、神経質でやや聴き疲れする内容だったが、アレンジがよりシンプルになり、前作の路線を継承しながらいい形で昇華した。シピアギンの作品としては、2作前の 「Generations - Dedicated to Woody Shaw」 (2010) 以来の傑作としておきたい。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Comment

なかなかいいアルバムでした

サイドにクリス・ポッターが出ているということでも話題になりましたけど、リーダーと拮抗しているような、素晴らしい2管のバランスも良かったです。聴く人を選ぶかも、とも思いますけど、こういう方面が好きな人には、深く印象付けたアルバムではないかなあ、と思います。


当方のブログアドレスは下記の通りです。
http://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2013/03/overlooking-mom.html

910さん、こんにちは。

コメントありがとうございます。
同時に新譜を数枚買ったのですが、本作がいちばんツボにきました。
個人的には、本作のような緊張感を楽しめるタイプなので、
とてもエキサイティングでした。
おっしゃる通り、2管もよかったですね。

こちらからもTBさせていただきます

これだけのメンバーなので悪いはずはないのですが、せっかくのコード楽器レスなのにポッターがシピアギンに合わせてか、思ったほどはブチ切れていないのが少々不満だったです。
それとベースとドラムスの音にも違和感を感じたのですが、これはCriss Crossのサウンド・カラーもあるので仕方ないでしょうね。
いずれにしても私としても本作には概ね満足しています。

naryさん、こんばんは。

音質については本文で触れませんでしたが、本作はエンジニアのMarcianoが思い切りハズした時の音(例えばクラレンス・ペンの最新作など)よりはだいぶんマシなので、まあいいかなと感じていました。確かにベースは音圧レベルが低く、遠くで鳴っておりスッ軽いです。またハーランドのシンバルもシャリついており、細くて軽いですね。

これらの音質的なマイナス点は、もうこのところのMarcianoの仕事の特徴なので、もはや仕方ないかなと思っています(笑)

一方、クリポタの熱感のなさに関しては、本作のコンセプトが(恐らく)クールっぽい哲学的な音を狙ったものなので、クリポタもクライアントのオーダーに合わせたのでしょう。この点に関しては、わたし的にはそういうクールな演奏もアリだと思っていますので、特に違和感はありませんでした。満足です。

お久しぶりです

えらく、遅いトラバですみません。
でも、わたしはこれは気に入ってます。
だって、2人の演奏に聴きやすさを求めたら、、このアルバム買わないと思うもの。そりゃ、一案の目的は、、恥ずかしながらサーシャさまとクリポタの演奏が聴きたかっ たからです。
しかも、闘志溢れるヤツ。ここでは、目に見える赤い炎ではありませんが、わたしは充分闘志むき出しだと思いました。緊張感溢れる演奏が続いたアルバムだったと思いますです。

Suzuckさん、こんばんは。

いえ、遅いトラバとか気にされなくていいですよ。

私も本作はすごく気に入っていて、今でも相変わらず聴いてます。
シピアギン作品の中ではいちばん好きですね。
(2位はアダム・ロジャースがかっこいい 「Generations - Dedicated to Woody Shaw」 (2010)です)

個人的には、闘志というのは必ずしも剥き出しにするばかりが能でなく、
本作のように内に秘めて静かに燃えるジャズ、というのもアリだと思っています。
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Alex Sipiagin / Overlooking Moments

Alex Sipiagin(Tp, Flh) Chris Potter(Ts, Ss) Scott Colley(B) Eric Harland(Ds) Rec. October 15, 2012, NY (Criss Cross 1354) 前作「Alex Sipiagin / Destinations Unknown(11年、別頁あり)...

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このアルバムが来て、、今に至るまでに、、いろいろなことがありました。。 喜びも悲
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