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The Swallow Quintet / Into the Woodwork

1

Chris Cheek (ts)
Steve Cardenas (g)
Carla Bley (org)
Steve Swallow (b)
Jorge Rossy (ds)

Rec. November 15-16, 2011, at Studios La Buissonne, Pernes-les-Fontaines
Engineer: Gerard de Haro and Nicolas Baillard (Xtra Watt/13 2798380)

フェリーニの映画のようなイメージが広がる静かなる絶品

 これほどイマジネーションを刺激された作品はひさしぶりだ。M-1冒頭のギターの音が出た瞬間、ノーテンをぶっ叩かれたような衝撃を受けた。スティーヴ・カーディナスの意味深なフレージングとクリス・チークのテナーのからみがまるでフェリーニの映画のよう。そこには何か得体の知れないストーリーが隠されているのではないか? そんな物語性を感じさせる深みのある世界が広がる。御年72才のベーシスト、スティーヴ・スワロウが発表したばかりの最新作だ。

 メンバーはチークとカーディナスのほか、公私共にスワロウの伴侶である才女カーラ・ブレイ(org)と、ホルヘ・ロッシ(ds)。90年代に一時代を築いた個性あふれる面々である。

 それにしてもカーディナスにいったい何があったのか? いや私は彼のリーダー作なら全部もっているし客演作もけっこうな数を保有しているカーディナス・マニアである。だが彼のいいところ(特にメロディー作りのセンス)は惜しいかな微妙にパット・メセニーとかぶっており、時代的に「二番煎じ感」がぬぐえなかった。

 ところがこのアルバムのカーディナスのギターは、そんなチンケな世界をもう完全に突き抜けてしまっている。飾り気のない自然な音色と味のあるフレージングが本当にすばらしい。なんだか吹っ切れて悟りを開いて達観し、ものすごく渋い大人のギタリストとしてそこに佇んでいる。そんな感じだ。年季が入る、ってこういうことなのか、と妙に感心してしまう。

 ああ、私情が入って手順が前後しちまった。その前に主役の話だ。ダリの絵みたいにシュールなデザインのエレベをピックで弾き、あんまりミュートを使わない「ブー・ビー・ベース」のスティーヴ・スワロウ御大――。すごく個性的ではあるけれど特別好きでもなく、いやむしろずっとどうでもいい部類のプレイヤーだった。ノリがスッ軽く音が細いところがどうにも好きになれず、正直、本作を買うときも「ベーシストがスティーヴ・スワロウであること」が最後の最後まで手に取ることをためらわせた。

 だがそんな彼の誰にも似ていない際立った個性が、本作にはハマりまくっている。独特の硬めで抜けのいい人工的な音色と軽っちいグルーヴが、楽曲のミステリアスな雰囲気をいやが上にも盛り立てている。演劇的なストーリーを感じさせる音使いを操り、作品のもつ物語性を巧みに浮かび上がらせている。

枯山水のように幽玄で枯淡な味わい

 全12曲、すべてスワロウによるオリジナル。ギターソロの入り方が絶妙なM-3にまずざわっと鳥肌が立つ。続くM-4は短いドラムソロを断続的にはさみながらギターとテナー、ベースがユニゾンでリフを刻む。後半、突然ウォーキング・ベースになるところがかっこいい。

 M-5ではプルースっぽい茶目っ気のあるベースラインにギターとテナーが合いの手を入れ、オルガンが独り言のようなフレーズを弾く。子供がいたずらしているみたいな、効果音的に入るドラムもおもしろい。M-6は冒頭からノリノリの正統派4ビートだ。本作では珍しく軽く歪ませたギターが躍動的に空間をえぐる。続くテナーのソロもチークにしては捻らないまっすぐな演奏をしている。

 M-11は聴きながら眠りたくなるような美しい佳曲だ。ここでのカーディナスのふんわり包み込むような優しい指使いにはうっとりさせられる。続くチークのソロもこれまた極上のワインを思わせる芳醇ぶりだ。

 各メンバーの持ち味に目を移せば、まずチークのテナーはフェリーニの映画に出てくるヨーロッパの片田舎をドサ回りして歩くサーカスの楽隊みたいな侘びさび感がある。決して熱くならない醒めたテイストで、摩訶不思議な魅力にあふれている。

 それから特筆すべきはブレイのオルガンだろう。とにかく、とってもかわいらしい。いかにも女性があやつる楽器の音だ。女性にしか出せない特有のコケティッシュな色艶がある。アルバム全編を覆う彼女の味つけは大きく、本作のテイストを強く決定付けている。

 一方のロッシは、近ごろ流行りのエリック・ハーランドのような重いドラムとはまるで対照的な(いい意味で)軽いドラミングである。楽曲を決して壊すことなく妨げにならず、スワロウとのコンビも暑苦しさのない涼やかな軽快さでマッチングもぴったりだ。

 さてこのアルバムは、とにかくあっというまに曲が終わってしまう。別に曲が短いわけじゃなく、深く聴き入ってしまうせいで「えっ、もう終わりなの?」感があるからだ。で、思わずアルバムの頭から何度も繰り返し聴いてしまうが、このまま聴き飽きちゃうのがとても惜しくて「やっぱりちょっとつづ小出しに聴こうか?」などとヘンなことを考えてしまったりする。

 本作にはパッと1小節聴いただけで「すごくいい!」と飛びつきたくなるような大仰な美しさなどないし、アッと驚く大胆なアレンジが施されているわけでもない。ただひたすら素朴で慎ましい。枯山水のように幽玄で枯淡な味わいがある。肩の力が抜け切った80代の剣の達人のような、相応の人生経験を経ないと出せない音が聴ける。とてもリラックスでき、気がつけばあっというまにアルバムの最終曲になっている――そんな素敵な作品だ。

 まだ5月の梅雨の季節だというのに、早くも2013年の(本ブログ選出)ベスト・アルバム入りは確実だ。このメンツ、このコンセプトでスワロウが物作りをする限り、私は永遠に彼の作品を買い続けるだろう。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Comment

No title

お久しぶりです

このアルバム、私も次期購入候補のトップランクにリストアップ
してました。
私的には、Cardenasの参加とCarlaのオルガンでの参加という
あたりに何かを期待してましたが、一皮むけたCardenasが良さそうですね。
聴きたい度がUPしました。
しかし、内容のわからないものに手を出すドキドキ感を無上の楽しみとしている
私としては、イメージが出来上がってしまい、ちょっと楽しみが減ってしまいました。
読まなきゃよかった(笑)。

J worksさん、おひさしぶりです。

本作のカーディナスは達観してますよぉー。メセニー臭さがめっきり減り、肩の荷を降ろしたぶん自然にオリジナリティが滲み出た、みたいな感じです。実はこの盤といっしょにギラッド・ヘクセルマンの新譜も買ったんですが、本当にうまいもんを口に入れたときにベロの下から湧き出るツバの量がだんぜん違います(どないやねん)。

あとカーラ・ブレイのオルガンもいい味出してます。彼女がいなけりゃ到底こうはならなかっただろう、って位な。コテコテの黒人式オルガンとも違うし、現代NY式のクールなオルガンとも違い……あえて言うなら民俗調というか、フォークロアというか。とにかくルーツっぽい感じです(謎)。

>読まなきゃよかった(笑)。

いやいや、人によって感じ方は違いますからね。本作はハデさはないし(むしろ地味)、現代的なトンがった方向でもないし、ノリノリでもないし、例えばこれ聴いて「こんなの、どこがいいの?」って人もたくさんいると思いますよ。いやむしろ誰にもよさを悟られることなく「自分のものだけ」でいてほしい、みたいな(笑)。なんかワケわかんなくなってきたのでこのへんで終わります(^^; もしお買いになったら、レヴュー楽しみにしております。それではまた。

No title

こんばんは

購入意欲が落ちたことで、次回購入にまわしたこともあり、
少し遅れてのゲットとなりました(笑)。
アルバムとして魅力ある1枚になっていることは
もちろんですが、その中でもやはりCardenasのプレイに
際立ったものを感じます。
多分に、Swallow & Bleyの采配も関わってのこととも思えますが、
その辺は、彼の次作でチェックしたいところです。

J worksさん、こんばんは。

カーディナス、いいですよねー。
彼のソロ次回作も楽しみですし、かたやスワロウの次回作も
一体どうなるんだろう? という期待があります。
このバンドはとてもいいチームワークで、作曲もいい。
次回作の内容を想像しただけでわくわくしますね。
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プロフィール

松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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