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Alex Sipiagin / From Reality & Back

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Alex Sipiagin (tp)
Seamus Blake (ts)
Gonzalo Rubalcaba (p, el-p)
Dave Holland (b)
Antonio Sanchez (ds, Per)

Rec. February, 2013, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Mike Marciano (5Passion 040232013645)

プロの職人が作った秀作でも凡作でもない 「ふつうの作品」

 ひとことで言って単調なアルバムだ。同じようなテンポ、同じようなノリ、同じようなメロディーの楽曲が続き、全体がなんとなく終わってしまう。1曲だけ聴けば 「すごくいい」 と感じるが、アルバムを通して聴くと1曲1曲に思わず目を見開かされるようなサムシングがない。といってデキが悪いわけでもなく、さりとて特段優れているわけでもない。いわばプロの職人がノウハウを駆使し、表面的に拍子を変えながら平均点を目ざして作った 「ふつうの作品」 といった印象である。

 主役のアレックス・シピアギン (tp) が、この最新作でそろえたメンバーは豪華そのものだ。ベースにはあのデイヴ・ホランドを招き、シーマス・プレイク (ts)、ゴンサロ・ルバルカバ (p, el-p)、アントニオ・サンチェス (ds, Per) らスターが勢揃いした。加えてエンジニアは名手、マイケル・マルシアーノという必勝パターンである。

 だが満を持して起用したはずの巨匠ホランドが (もちろん狙ってやっているのだろうが) 同じフレーズの繰り返しばかりで曲を組み立てており、楽曲をすっかり単調なものにしてしまっている。

 ベースのリフは耳につくためインパクトが強い。うまく使えば曲にトンガった味付けができる。だが本作のようにアルバム全編似たようなリフだらけでは、かえって逆効果だ。作品の個性が死に、アルバム全体がのっぺり無表情になってしまう。

 そのため冒頭のテーマが終わり、ソロ・パートに入るともうどれも同じ曲に聴こえる。バラードと、そうでないものくらいの区別しかつかない。いや別にメロディがキャッチーかどうか? みたいな次元の話じゃなく、本当に曲の識別がむずかしい。

 反対にリフを使わず、漂うような気だるいムードのM-3やM-7は、トランペッターのジェレミー・ペルトが最近やっていたような60年代マイルス風で非常にいい。ところがM-1やM-4、M-5、M-6のようにベースの繰り返しでしつこく展開するとたちまち同じような感じになり、楽曲が色あせてしまう。

 もちろんホランドのせいばかりじゃない。コンポジション的にも同じことがいえる。曲に統一感があるといえば聴こえはいいが、裏を返せば変化に乏しい。拍子は違っていてもテイストが同じだ。コンポーザーとしてはシピアギンは、飛び抜けているわけではないがコンスタントに水準点のものを作れる職人ゲイリー・バートンに近いものを感じる。

 さて楽曲のほうはこんなふうだ。では大物プレイヤーたちの個人技はどうだろうか?

 出番たっぷりの主役シピアギンはさて置くとしても、相方のシーマス・プレイクには驚くほど存在感がない。またホランドは前述の通りだ。M-2の唸るようなベースラインは魅力的だが、M-5とM-8のベース・ソロはどうもパッとしない。かたやアントニオ・サンチェスはずっしり重いリズムキープに加え、M-1とM-4終盤ではソロ的な白熱の技巧派プレイを見せている。だがコンポジション的にはドラマーがあの 「アントニオ・サンチェス」 である必然性は特別感じられない。

 そんななか、気を吐いているのはルバルカバだ。M-2とM-3、M-4、M-5、M-8で聴ける彼のピアノ・ソロには本当にぞくぞくさせられる。取ってつけたようなラテン風味などカケラもないモーダルな演奏だ。それだけでなくバッキング時のコードワークもすばらしい。本作で初めて彼のプレイを聴き、今後ルバルカバのフォロワーになるジャズ・ファンも多いのではないだろうか?

 とはいえ繰り返しになるが、本作は決して悪いデキではない。飛び切り多作なシピアギン作品の中では 「ワン・オブ・ゼム」 であるだけだ。

 たとえば前々回リリースした傑作 「Overlooking Moments」 (2013年、レヴュー記事はこちら) のようにピンと張り詰めた緊張感があるわけではない。また秀作 「Generations - Dedicated to Woody Shaw」 (2010) ほど耳に残る際立った個性もない。粗製濫造とまではいかないが、鳥肌が立つような突き抜けた感じが伝わってこない。いってみれば高性能でよく走るエンジンだけど、「走ることの味わい」 がない、みたいな感じだ。

 シピアギンはアルバムをリリースするサイクルがちょっと短すぎるのではないか。 「どうだい? アレックス。少し時間を置き、アイデアを寝かせてから作品を発表しては?」 などと彼に言うのは失礼に当たるだろうか。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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