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Mike Baggetta Quartet / Small Spaces

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Mike Baggetta (g)
Jason Rigby (ts)
Eivind Opsvik (b)
RJ Miller (ds)

Rec. April 14, 2008, at Accoustic Recording, NY
Engineer: Michael Brorby (FSNT 339)

セルフプロデュースの功と罪

 現代NYジャズの 「ある一面」 を切り取って見せたような音である。ニューヨークを拠点に活動するギタリスト、マイク・バジェッタのサード・アルバムだ。1曲を除きすべてオリジナル、かつセルフプロデュース。彼としてはFSNTレーベルからのデビュー作に当たる。

 本作は 「ガメラ対ギャオス」 の劇中曲みたいなオドロオドロしいM-1さえなかったら、アルバムの印象がガラリと変わっていただろう。なぜならM-2以降は、ふつうにデキのいいコンテンポラリー・ジャズだからだ。

 とすれば取っ付きにくい悪趣味なM-1をボツにし、キャッチーで美しいメロディのM-7あたりを1曲目にもってくれば、それなりに売れる作品になっていただろう。だが本人がやりたい音楽はまさにそのM-1なんだろうから、仕方がないといえば仕方ない。

 さて、ここでふたつの論点が浮かび上がる。どちらも音楽 (というか芸術) の世界ではおなじみの永遠のテーマである。

 ひとつはレーベル・サイドの問題だ。M-1をボツにすれば売れる可能性は高くなる。ならばなぜ彼らは楽曲構成に介入し、そうさせないのか? というポイントが一点目。ここでは本作がセルフプロデュースであることの功罪が浮かび上がる。

 そしてもうひとつはプレイヤー本人のスタンスの問題だ。M-1をボツにし、M-7的な方向性で行けばそれなりのセールスを上げて音楽家としてのし上がれるかもしれない。なのに、なぜ彼はそうしないのか? というお題である。

 まず前者のレーベルの問題については、新人を発掘するレーベルであるFSNTの性質上、ミュージシャン自身が目指す方向性をねじ曲げるような介入をする、というのは会社の方針としてありえないのかもしれない。もしそれをやると、新しい音楽を掘り起こすというこのレーベル自身の存在意義がなくなってしまう。とすればやりたいことができる同レーベルは、ミュージシャンにとっては本望この上ない。

 だが同時にその種の介入をしなかったために、当然、レーベル側としてはビジネス的な成功を得られない (CDが売れず収益を上げられない) というリスクを抱える。

 また介入しなかったせいで、そのミュージシャンは食えない無名の存在として皿洗いかなんかしながら業界に居続けるか、はたまた音楽をやめて田舎に帰るかせざるをえなくなる可能性が高まる、という点においては、レーベルが作品を 「校閲する編集者的」 な介入をしないのは幸か不幸かわからなくなる。

 では一方、後者についてはどうか? こっちは本人の自己決定の問題である。

「俺はこういう音楽がやりたいんだ」 と、このM-1をまさに最も目立つM-1の位置に配置し、そのことによって自分は売れることなくアルバイトしながら四畳半ひと間風呂なしのアパートに住み続けるのが俺の生き方なんだ、ということであればもちろんそれはそれでありえる話だ。

 なぜならそうすることでほかならぬM-1が仮にヒットすれば、本人にとっては自分がいちばんやりたいことをやりながら何不自由なく食える状態になる、という芸術家にとっての理想を実現できる可能性が生まれるから。だがこの場合、自己責任として、一生、皿洗いを続けることになるリスクも当然発生する。

 一方、逆に自分のやりたいM-1を自分の手でボツにし、売れそうなM-7を自分の手でアルバム冒頭にもってくる、という自主規制も無論ありえる。この選択をした場合、「俺は本当はM-1をやりたかったのに」 という内なる自己矛盾に煩悶しながら、だがしかしウマウマと売れセンに乗っかり金と名声を手に入れて贅沢三昧の人生を送ることができるかもしれない。すなわち彼は志より、金銭的な成功を取ったわけだ。

 はてさて、ではレーベル側は果たしてミュージシャンに介入するのが正解なのか? またミュージシャン本人は、自分の手でM-1をボツにするのが生き方として正しいのか?

 あなたならどう思いますか?

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Comment

No title

松岡さんはインディーズを主催していたことがあるんですか?
今回のテーマはまさにCD制作の永遠の課題というべきものですね。
事務所対アーティストの。

私は、JAZZに限って言えば、やりたいことを売れ線と決別してでもやるべきだと思っています。
それは、JAZZという音楽の存在価値だからです。

売れ線を考えるならポップスか、JAZZの香りのするイージーリスニングで良いのでは?

エロ・ジャケとか

>インディーズを主催していたことがあるんですか?

いえいえ、私は単なる一個人です(^^;

明快なコメント、どうもです。
ところでいわゆる「エロ・ジャケ」のピアノトリオの人たちは
納得してるのかなぁ、と思っちゃいます。(私ならあれで売れても嫌だな(^^)

No title

松岡さん

おくらばせながら、、あけましておめでとうございます。

フェレンク・ネメスでぐぐってて着地しました。

このマイク・バジェッタの盤、、、超マイナーですね。
「Hospital Song 」は売れる匂いがしてました。それでもタイトルは「病院の歌」?

FSNT 2nd盤は改心したのかちょっとポップです。どちらも日本では100枚売れてんでしょーか。
これからはCD盤とかじゃなくなりそうです・・・

売れ線を無視して突っ走って、食ってるミュージシャンとかと話すと、
スガスガしすぎて、心配するくらいですが逆にパワーある感じです。


ネタ披露ください。。

No title

あけましておめでとうございます。充電中の松岡です(笑

この盤は聴き飽きませんね。M-1以外は(笑)

いえネタはたまる一方なんですが、公私共に多忙を極め充電続きです(^^;

では、そのうちにまた!
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プロフィール

松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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