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Tom Harrell / Trip

1

Tom Harrell (tp, flh)
Mark Turner (ts)
Ugonna Okegwo (b)
Adam Cruz (ds)

Recorded: October 24, 2013, at Water Music, NJ
Engineer: Sean Kelly (HighNote HCD7261)

音で物語を表現したハレルの意欲作

 冒頭を飾る粘っこくファンキーなM-1のテイストとは裏腹に、本作は知的な演劇性に満ちている。まるで自身のリーダー作であるかのようにマーク・ターナー(ts)が前面に押し出されており、クールでひょうひょうとした彼の質感がアルバム全体を覆っている。ニュー・カルテットで新境地を開拓したトム・ハレル(tp)の新作だ。

 メンバーはハレル、ターナーの2管に、ウゴンナ・オケグォ(b)とアダム・クルーズ(ds)がリズム隊を務める。コード楽器が存在しない自由度の高い編成である。

 本作はセルバンテスの小説「ドン・キホーテ」をテーマにした組曲を中心にすえている。M-3からM-8の6編がそれだが、これに6曲を加えたオリジナル全12曲で構成されている。

 組曲には当然ながらストーリー性があり、まるで演劇を観ているかのよう。「このひょうきんなペースのフレーズは、ドン・キホーテの動作を表しているのではないか?」、「このおどろおどろしいテーマは『戦い』の象徴では?」というぐあいに、小説の情景を思い浮かべながら聴くと楽しい。「組曲」というとなんだか高尚で小難しいものを連想しがちだが、本作はまったくそんなことはない。シンプルに演奏を聴くだけでももちろん楽しめる。

小細工に頼らない音作りがすばらしい

「音で物語を表現する」というテーゼに対し、ハレルは安易に効果音やヴォイスを入れるのでなく、あくまで純粋にナチュラルな音だけで物語世界を構築している。この点も高く評価したい。

 ハレルが緻密に設計図を書き、各メンバーが彼の意図を忠実に再現しているのだろう。汗を飛ばしながらガンガン行く、というよりは、全体に(いい意味で)力の抜けたクールな演奏が続く。おそらくそれこそが抑制的なターナーを起用した狙いなのだろう。主役のハレルもターナーの低い温度感に合わせたようなプレイに徹する。ベースのオケグォも情景が目に浮かぶような演奏ぶりで、存分に才能を発揮している。

 M-1はそのオケグォのおもしろいベースのフレーズで始まる。思わずカラダでリズムを取ってしまいそうな楽しい曲だ。トボけたような味のあるテーマと、明るく弾むベースラインがいい。一方、M-8は 「Windmills」 (風車) と題された曲。リズミカルなペースに乗り、ドン・キホーテが風車に挑むかのような演奏が続く。ここで聴けるターナーとハレルの掛け合いは、ドン・キホーテと風車がくんずほぐれつ戦う様子か? 組曲の中でいちばんドラマチックな曲である。

 このほかアップテンポで急き立てるような2管の煽りが強烈なM-2、中世のラッパ隊のファンファーレのようなM-4、ユーモラスなペースで始まるM-6、跳ねるようなリズムが躍動的なM-10、おどろおどろしいフレージングが頻出するM-11が印象に残った。

 苦み走った渋いテイストで、このコンセプトとメンバーで何作か経れば一体どんな境地に到達するのだろう? と強く興味をかき立てられる作品である。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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