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Christian Vuust / Urban Hymn

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Christian Vuust (ts)
Aaron Parks (p)
Ben Street (b)
Jeff Ballard (ds)

Recorded: June 3, 2013, at Sear Sound, NY
Engineer: James Farber (Cloud DDCJ-4014)

NYの大物がずらり、アーロン・パークスのピアノに癒される

 癒される音楽だ。心に染みる。アーロン・パークス(p)が陰の主役としてアンサンブルを完全に仕切る。ベン・ストリート(b)、ジェフ・バラード(ds)らNYジャズ界の気鋭が脇を締める。デンマークのベテラン・テナー奏者、クリスチャン・ヴーストが本邦デビューを飾った日本仕様盤、もちろん最新作である。

 10曲すべてクリスチャンのオリジナル。全編でヒット請負人のパークスが獅子奮迅の活躍をしている。ほとんどの曲で主役より多めにソロを取り、テーマを弾き、コードワークで盛り上げる。かなり重要な仕事をこなしている。もしパークスがいなければ、本作はこうはならなかっただろう。単なるイージー・リスニングで終わっていたかもしれない。それほど彼は痺れるような美しいピアノを弾いている。

 一方、ヤン・ガルバレクみたいな主役の軽いサックスは腹八分目な感じ。絶対に力まず、ふわふわと漂うように流れて行く。よく言えばクリス・チークだがそこまで奥深さはなく、強いインパクトはない。だがそこがいい。くつろげるのだ。誤解を恐れずに言えば、本作は和らぐ優しい楽曲を味わい、パークスのピアノを聴くための作品である。

 実は最初、 「なんだこれ? ただのイージー・リスニングじゃないか」 と思っていた。盤がリリースされてすぐ (メンバー表を見て) 速攻で買ったが、正直レヴュー化するのをためらっていた。書くだけの価値を確信できなかったのだ。だがあるときふと、えらく疲れていた夜に聴くと、なぜか「すごくいいなぁ」と感じた。そうか、癒しのための音楽だったのか――。

 それからというもの、朝起きてまだ頭がぼんやりしているときや、夜寝る前によく聴くようになった。じんわりリラックスでき、心があたたまる。温浴効果がある。まさかこんなに効くCDだとは思わなかった。ある人はこれを「ポップス」と呼ぶかもしれない。「ジャズじゃない。ヒーリング・ミュージックだ」と言う人もいるだろう。だがいずれにしろ、とても薬効の高いアルバムであることはまちがいない。

 テイスト的には、先日レヴューしたスウェーデン人ベーシスト、ラーシュ・ダニエルソンの 「Liberetto II」(2014年、レヴュー記事はこちら) とほぼ同じ。ぶっちゃけ、日本人好みの甘ったるい音だ。その証拠にどちらのアルバムも半ば日本企画である。 「日本は北欧ブームだし、売れるだろう」。 国内業者がそう考えたであろうことは想像に難くない。いわば企画者がリスナーを見下し、甘く見た作品だ。エロ・ジャケのピアノトリオと同じである。

 だがアーロン・パークスの信じられないほど素晴らしいピアノと仕切りが、そんな売り手側の生臭い思惑を吹っ飛ばした。この作品を凡庸から救い上げ大化けさせている。

 ヨーロッパの甘いピアノトリオがバカ売れする日本市場に合わせ、北欧にうまく引っかけた。その上でNYの大物たちをずらりと並べたマーケティングは成功だ。わかりやすい音しか使わずテクニカルなところがまるでないクリスチャンのテナーはNYでは売れなかったが、この甘い曲作りとテイストなら日本では売れる可能性が高い。ひょっとしたら聴きやすい本盤を入り口にして、新しいジャズファンがふえるかもしれない。そう考えれば意義深い。

 かつてクリスチャンはアメリカで暮らし、リリースしたリーダー作は15枚。いまは故郷でスローライフを送る1964年生まれの苦労人に、やっとチャンスがめぐってきたようだ。

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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