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Antonio Sanchez / Three Times Three

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50年代となんら変わりない文法で演奏する人たち

 人気ドラマーのアントニオ・サンチェスが、ブラッド・メルドー(p)、ジョン・スコフィールド(g)、ジョー・ロヴァーノ(ts)という現代ジャズの3人の巨匠に声をかけ、3人それぞれのトリオ・ユニットを編成。3つのユニットごとに3曲づつ聴かせる趣向の2枚組アルバムだ。

 わかりやすくてド派手で単純。よくいえば理屈抜きに楽しめる演奏であり、「これはこれ」 である。だが私はこの盤を2014年の年間新譜ベストテンに入れなかったし、今後も入れるつもりはない。なぜなら時代性が反映されてないからだ。というかサンチェスの作品はすべて完全なエンターテインメントであり、単なる 「個」 の集積だ。ことさら 「意味」 を求めるのはナンセンスだろう。

 とはいえ 「2014年のべスト」 というからには、そこには 「2014年なり」 の新規性や作品性があってしかるべきだ。むしろ作品性という意味では、サンチェス盤ならまだ 「Live in New York」 (2010年) のほうが上だろう。本盤は各ユニットごとに3曲すべてを聴き通すだけの求心力が続かない。では3人の主役ごとに内容を見て行こう。

メルドーは相変わらず 「手クセ」 のオンパレードだ

 まずメルドーはさすが1曲目の頭の音が出た瞬間、「おっ」 と思わされる。だがその後は結局、アルバム 「Ode」 (2012年、レヴュー記事はこちら) で評したように、本作も過去の彼のアルバムで出てきたのと同じようなフレーズのオンパレードだ。手クセの集合体みたいな演奏である。元メルダーとしては残念だが 「メルドーは終わった」 感がますます強くなった。2曲目の途中で完全に聴き飽き、静かなだけで退屈きわまりない3曲目はただの苦痛だった。

 ここで聴けるメルドーは職人としての彼だ。リーダー作におけるメルドーとはちがう。あくまで仕事として黙々とクライアント様の注文をこなし、きっちり一定水準の 「製品」 を作り上げる大量生産マシンである (それがメルドーの 「作品」 か? といえば別の話だ)。

 一方、ジョン・スコの容色の衰えはなんとも痛々しい。あのワイルドにアウトする禿をリアルタイム体験した身としては、「これがあの90年代にわが身を焦がした神ジョン・スコか?」 という思いがする。まるで80代の老人のような演奏であり、よくいえばすでに侘びサビの境地に達している。

 いや実際、本盤の中では彼のセットがいちばん飽きずに聴けた (リズム隊に助けられている側面がかなり強いが)。いわば若いころは剛球ピッチャーとしてならした選手が、盛りを過ぎ年を取ったらそれまでの経験を生かし、今度は変化球ピッチャーとして再生し第一線で活躍する。そんな感じだ。ある意味すごいことだと思う。

 最後のロヴァーノのセットは美しいメロディの2曲目が目を引いたが、総体としてリズム隊のド派手な演奏ばかりが耳に残り、3曲目の途中ですっかり興味を失った。ロヴァーノの大ファンとしては寂しい限りだ。もちろんサンチェスのドラミングは個体としてはすごいし3人のベーシストもいい仕事をしているのだが、あいにく私は 「個人」 のプレイだけで 「アルバム全体」 を評価しないのでいかんともしがたい。

 もちろん構成の妙という意味では見るべきものもある。メルドーのセットでは本盤最大の売りであるメルドーを最大限目立たせるため、3人のベーシストの中ではいちばんバックに回るタイプのブリューワーを組み合わせた。逆にジョンスコのセットでは、ジョンスコの衰えをカバーさせるため前面に出るタイプのマクブライドを当て、3曲すべてでベースソロをバンバン弾かせている。そういう意味ではプロデュースがうまい。

2000年以降のジャズはアンサンブル志向である

 この作品は大物がパッと集まり、さっとラフなセッションをしたただのお祭りだ。そこにはインプロヴィゼーションはあっても、練り上げられたクリエイティヴィティやコンポジションがない。ざっくりいって1950年代となんら変わりない文法で繰り広げられる演奏であり、2010年代ならではの新しいジャズの試みはまったく見られない。

 加えて大物さえ集めれば売れるだろうてなミエミエの商業主義が露骨に臭う。この作品をレヴューでほめ、彼らの 「商売」 に手を貸す気にはとてもなれない。むろんこれら参加ミュージシャンの盲目的なファンは喜んで買うだろうが、それは単にサインを欲しがっているのと同じだ。あいにく私は部屋にサインを飾る趣味がない。

 さて、いうまでもなく2000年以降のジャズのキモは、インプロヴィゼーションからアンサンブルへと移っている。ソロ演奏志向より、作曲志向がますます強くなっている。もう 「このソロ (あるいは個人のプレイ) のここがかっこいいんだよ」 という時代ではない。「この楽曲のここがよくできている」 という時代だ。リスナー個人の好みはどうあれ、時代は確実にそっちの方へ向かっている。

 もちろん音楽は好みの問題だから、「いや、オレはあくまでインプロにこだわって聴きたいんだ」 というのもむろんアリだ。音楽を私的にどう楽しもうと個人の自由だし、他人がそれに口を差し挟むいわれはない。だが少なくとも 「それ」 は50年代となんら変わりないジャズの聴き方であり、時代はもうそこにはないことだけはハッキリしている。


【CD 1】

Brad Mehldau (p)
Matt Brewer (ac-b)
Antonio Sanchez (ds)

Recorded: October 27, 2013, at Sear Sound Studio, NY

【CD 2 / M-1~3】

John Scofield (g)
Christian McBride (el-b, ac-b)
Antonio Sanchez (ds)

Recorded: December 4, 2013, at MSR Studio, NY

【CD 2 / M-4~6】

Joe Lovano (ts)
John Patitucci (ac-b)
Antonio Sanchez (ds)

Recorded: December 16, 2013, at MSR Studio, NY
Engineer: Pete Karam (Cam Jazz CAMJ7879-2)

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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