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Gary Peacock Trio / Now This

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Marc Copland (p)
Gary Peacock (b)
Joey Baron (ds)

Recorded: July 12-14, 2014, at Rainbow Studio, Oslo
Engineer: Jan Erik Kongshaug (ECM 2428)

空間の魔術師、コープランドの異界の作り方

 ベースの巨人、ゲーリー・ピーコックの80才の誕生日(5月12日)にリリースされたばかりの新作だ。彼のECM40作目でもある。ピアノの魔術師、マーク・コープランドが過去作とはひと味違った異界の作り方を披露している。ピーコックとの、テンポを失ったコンビネーションが人間の不安を掻き立てる。美しくも儚い走馬燈のような夢幻の世界が、リスナーの眼前に姿を現す。

 ピーコックとコープランドの組み合わせといえば、あのコープランドの名作、ニューヨーク・トリオ・レコーディング・シリーズを思い出す。実際、本作のM-9 「Vignette」 は、同シリーズvol.2のアルバム 「Voices」 (2007年) に収録されていた曲だ。だが今回のコープランドは、あのときとはまたちがった空間のひねり方をしている。ひとことでいえばリズムのない時間の作り方である。

 ルパートで静謐感のある静かな導入部から、徐々にコープランドとピーコックのインタープレイが立ち上がる。そして創造的なインプロヴィゼーションが導き出されて行く。そんな展開の曲が多い。ドラムのジョーイ・バロンはシンバルワーク中心のかなり抑えた演奏をしており、ほぼ完全に2人の会話の記録といえる。ピーコックもコープランドも老いて衰えるどころかジャズの最前線に屹立し、ただならぬ妖気を発している。

 コープランドが印象的な美しいフレーズを提示するM-1では、2人が絡まりながらインプロを展開する。またM-4ではルバートの静的な幕開けからコープランドのモノローグのような独奏にシンバルが加わり、ベースが入ってくる。そしてコープランドとピーコックの丁々発止がだんだん熱を帯び豊穣になって行く。即興芸術の極致である。

 そして最終曲のM-11では、ちょっとクラシックを思わせるようなイントロからベースソロが導き出され、それを合図にリズミックな3人のインプロが展開される。曲のラストもクラシック的なフレーズで締めくくり安息を得る。知的刺激をかき立てるような仕上がりだ。ピーコックが7曲、コープランド2曲、バロンが1曲をそれぞれ持ち寄り、スコット・ラファロの 「Gloria's Step」 を加えた合計11曲が収録されているが、どの曲も秀逸なアドリブが楽しめる構成である。

 文法としては往年の実験的なスタイルのジャズでありながら、インプロがこれだけ饒舌だと古さなどまったく感じさせない。2015年の今でも最高にトンガっている作品といえる。特にコープランドが何気なくつま弾く1音1音から、たちまちこの世のものとは思えない異界が立ち上るさまは驚異ですらある。

 ほんの1週間前のレヴューで 「2000年以降のジャズはインプロヴィゼーションからアンサンブル志向へと移っている」 と書いたばかりだが、本盤ではその旧勢力であるはずのインプロ組が 「これならどうだ?」 とばかりに圧倒的なイマジネーションを突きつけてくる。リスナーは痺れて言葉を失い、ただひたすら沈黙するのみ。ここまでやるなら認めざるをえない、と言うしかない。圧巻だ。

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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