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Hayden Chisholm / Breve

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Hayden Chisholm (as)
John Taylor (p)
Matt Penman (b)

Recorded: December 18-19, 2013, at Kyberg Studio, Oberhaching
Engineer: Jason Seizer (Pirouet Records PIT3081)

彼はささやくようにアルトを奏でる

 まるでクラシックの室内楽みたいに静粛な雰囲気の小粋なアルバムだ。詩を朗読するかのようなモノローグ風のアルトの呟き。彼を初めて聴いたとき魅力的だと強く感じた光景が見事に再現されている。ニュージーランド出身のアルト奏者、ヘイデン・チスホルムがリリースしたばかりの初リーダー作である。

 ヘイデンは1975生まれ。ドイツの個性派トロンボーン奏者、ニルス・ヴォグラムが率いるカルテット 「ROOT 70」 (レヴュー記事はこちら) のメンバーとしても知られる。このカルテットはマット・ペンマン(b)、ヨッケン・リュッカート(ds)を擁し、アヴァンギャンドなユーモアを売りにしていた。

 今回のメンバーはベーシストにそのペンマンをフィーチャーし、加えてイギリス・マンチェスターが生んだピアノ・レジェンド、ジョン・テイラーを迎えている。ドラムレスで浮遊するリズム・フリーなトリオである。

 主役のチスホルムはデビュー盤を制作するにあたり、おそらく自分の持ち味が最大限生きるシステムを考えたのだろう。そしてコード楽器をひとつ入れ、ドラマーのいないトリオ編成を選択した。大正解である。

 彼の吐息を漏らすような静かなプレイスタイルは、ドラムの打音とコンフリクトしてしまう。本盤はそのドラムが存在しないおかげで、彼からにじみ出る細かなニュアンスが手に取るように伝わってくる。結果、頭が痛い時にでも飲んだらテキメンに効きそうな、非常に鎮静的で味わいのあるバラード集が出来上がった。

 チスホルムのオリジナル6曲に、メンバーのペンマンが2曲、テイラーが1曲を持ち寄った。メランコリックで気だるいムードがあたりを覆う。その雰囲気を壊さないよう、なるべく小音量で聴くとすごくいい。

 例えばM-3はベースとピアノが要所で同じフレーズをそろってリピートするが、そのキメが登場するタイミングがあたかもアトランダムであるかのように聴かせているのがおもしろい。M-5は小気味いい三拍子で、ペースが泳ぐ頭上をアルトがひらひら舞う。ここではペンマンの余裕たっぷりのベースソロが聴ける。

 続くM-6はのったり這うようなアルトの独奏で始まる。微妙な早足で歩くようなピアノソロが刺激的だ。途中から一転してグルーヴィーなブルースが徐々に姿を現す仕掛けになっている。なおジョン・テイラーのファンの方には、M-7の痺れるようなピアノソロをおすすめしておこう。

 あれはもうずいぶん前のことだ。たまたまYouTubeで観たマット・ペンマン入りのサックス・トリオに後頭部をかっ飛ばされた。その名も知らぬアルト奏者のプレイは、ひそひそ声で何か深刻な身の上話を物語っているかのようだった。当時、ジャズといえばとにかく熱くエネルギッシュにぶっ叩くイメージしかなかったので、そんな彼のすっかり脱力したクールなスタイルが強く印象に残った。

 もっと彼のプレイを聴きたい――。強くそう思い、ネット検索しまくった。だが当時はそもそも彼に関する情報自体が(英語サイトでも)ほとんどない。リーダー作も出しておらず、かろうじてその後 「ROOT 70」 のアルバムを手にしただけでなんとなくそれっきりになっていた。そんな彼の記念すべき初リーダー作を目の当たりにし、快哉を叫んだのはいうまでもない。まるで懐かしい旧友に出会えたような気分だ。



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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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