Mike Moreno / Another Way

mm_a

Mike Moreno (el-g, ac-g)
Aaron Parks (p)
Warren Wolf (vib)
Mat Brewer (b)
Ted Poor (ds)

Chris Dingman (vib on 4)
Jochen Rueckert (ds on 1)

Rec. Aug 17-18, 2009 & Aug 16, 2011, at Avatar Studios, NY
Engineer: Anthony Ruotolo (World Culture Music)

モレノが仕掛ける夢幻の世界

 夢見るように時が過ぎて行く4枚目のニューアルバムだ。カート・ローゼンウィンケルを継ぐ若手No.1ギタリスト、マイク・モレノが仕掛ける夢幻の世界にたっぷり浸れる。翳りと愁いのある眩暈のしそうな佳曲が続き、コンテンポラリー・ジャズファンにはたまらない。

 テイスト的にはダークでミステリアス、ふんわり浮遊するノリが特徴だ。まだ彼が現代ブルックリン派丸出しでソフィスティケートされてなかった頃の初リーダー作 「Between The Lines」 (2007) に近いが、よりエレクトリックで線の太い演奏を楽しめる。

 本作は、ネットユーザにアルバム制作費のカンパを呼びかける資金調達サイト 「KICKSTARTER」 から生まれた。先日リリースされたジョナサン・ブレイクの新作といい (別頁あり)、この種のシステムでこのレベルの作品が誕生するのは歴史的だろう。インターネットのおかげで世の中はすごいことになってきた。

 参加メンバーはヒット作請負人のアーロン・パークス(p)のほか、ウォーレン・ウルフ(vib)の顔も見える。リズム隊は若手ベーシストのホープ、マット・ブリューワー(b)と、リーダー作 「All Around」 (2004) もあるNYの若手ドラマー、テッド・プワ(1981年生まれ)だ。ヨッケン・リュッカート(ds)も1曲だけ参加している。

楽曲の求心力が強くコンポジションに惹きつけられる

 全9曲すべてがオリジナル。自分の色を出し、ヘンにセールスを考えてないコンポジションだ。ピアノが光るM-1や、メランコリックなM-3~6が味わい深い。要所でパークスが絶妙のソロとバッキングを決めている。特にM-1、M-6、M-9のソロを聴いてほしい。

 おそらくパークスは、アレンジ面など裏であれこれ動いているのだろう。その証拠にキラー・チューンのM-6は、同じくパークスの参加作であるウィル・ヴィンソンの 「Stockholm Syndrome」 (2010) を思わせるアレンジが随所に見えた。モレノとパークスは雰囲気作りも近く、持ち味的に相性バッチリだ。

 もちろん主役のモレノは陰影感のあるいつものソロを連発している。特にM-4やM-6、M-9のパークスにインスパイアされたかのようなプレイは神々しく、神様が出そうだ。柔らかく広がりのあるバッキングもいい。ヴィブラフォンのウォーレン・ウルフもモレノ色に合わせて仕上げているし、ベースのマット・ブリューワーが非常にうまく曲の骨格を作っている。

 ドラマー2人は曲別のクレジットがないが、どの曲のドラマーがどっちかなんてどうでもよくなる。それほど楽曲の求心力が強く、コンポジションに惹きつけられる。

 ミディアム~スローの似た曲調が続き、やや変化に乏しいが、そんなこともどうだっていい。ただひたすら味わうのみ。ぶっちゃけ、過去作でいちばんキャッチーだったカバー中心のセカンド盤 「Third Wish」 (2008) みたいな親しみやすさはない。リスナーを突き放し、聴き手を選ぶ作品である。だがそのぶん飽きにくく、いつまでも味が出るスルメ化の香りも漂う。というか、まちがいなく最高傑作といっていいデキだ。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Comment

新潟も春になりました

これは、美しく、しかもスリリングな局面もたくさんあって、とても気に入りました。
パークスとモレノの2人はほんとにいいです。
相乗効果ばっちりですよね。

Grass_hopperさまは、どこから購入されました?
まだ、あまり話題になってないけど、素敵なアルバムですよね。
たくさん売れるといいな。

ディスクユニオンのブツです

Suzuckさん、こんにちは。

ディスクユニオンが納入を始めたので、速攻で仕入れました。
きのう着いたばかりだったりします。
こんなツボに来るなら、とっととモレーノ本人から買っときゃよかった、
と後悔しきりです。(次はそうするぞぉー)

パークスにはもう、うっとりですね。押入れにしまっておきたいくらい(謎)
たぶんパークスといちばんウマの合うミュージシャンのひとりが、
モレーノじゃないかと思います。

あとはラーゲ・ルンドとかウィル・ヴィンソン、
マット・ブリューワー、オルランド・レフレミングあたり。
要するに寒色系の人で、ちょっち神経質なところがス・テ・キ、みたいな人たち。
(なんか今日はテンションが妙だなぁ)

こんばんは

Grass_hopper様
ようやく一般店で流通が始まったようですね
Mikeのウェブサイトを見ますと最近のレコーディングでは
クリスクロス盤でリリースされるJohn Ellis、とかKendrick Scott Oracleのレコーディング等が
書かれてあり、昨年末から精力的に活動している様子で、これからもMikeから目が離せないです

こちらからもTBさせてください

John Ellis盤、ぶちかましてほしいですねぇ

HamaVenturiniさん、こんばんは。

>クリスクロス盤でリリースされるJohn Ellis、とかKendrick Scott Oracleのレコーディング等

うぉ、Kendrick Scott Oracleのが出るんですか。
シンバル抱えてるジャケ写のやつは、見逃したきり廃盤で入手不可になり、
八方手を尽くしたんですが降参した経緯があります。
次は絶対ゲットしなきゃ。モレーノ参加なら、なおさらですね。
(私がモレーノにハマったきっかけは「Reverence」を聴いてしまったからなので)

John Ellis盤は、密かに期待してました。
Ellisはいまいちメジャー化の波に乗れてないので応援したいんです。
実力的には充分ですし、あとは料理の仕方だと思うんですよね。
一発、ぶちかましてほしいです。

追伸

Jochen Rueckert "Introduction"、ずっとアマゾンに発注かけてあるんですが、
今日、二度目の「もし手に入んなかったらゴメンね」メールが来ちゃいました。
もう手に入れられそうにないなぁ……。ううむ。

コメントありがとうございます。

弊ブログにコメントを頂きありがとうざいます。こちらのブログを普段から拝見しておりましたので光栄です。このアルバム、私もとても気に入っています。やはりAaron Parksの存在感が凄いですね。それにしても、聴く側の助力を得てこのようなアルバムが生まれるなんて素晴らしいことですね。当方からもTBさせて下さい。

No title

こんばんは。
スルメ化、、しました。

売れる、売れないというのはミュージシャンにとって重要ですね。
やりたいことを曲げてわかりやすい演奏を発表するのも不本意でしょうし、難しいところです。

レイトセットで活躍するモノホン感が漂うアルバムでしょうか。

Aaron Parksがキモですねー

1irvingplace、こんばんは。

光栄だなんてとんでもないです(^^;
やはりパークスの力はデカイですね。

またネットユーザがアルバム制作に資金提供の形で参加し、
アーチストの側は作りたいものを作れる、
というプラットフォームはすごいですね。

モレーノの作品は初リーダー作では
ちょっとネクラでダークな音作りでしたが、
クリスクロスから出したセカンド、サードアルバムの2枚は
けっこうキャッチーでした。

たぶんレーベル側の意向が働いたんだと思いますが、
おそらくモレーノとしてはそれが不満で、
「自分の本当にやりたいものを作りたい」との想いから
今回、本プラットフォームを活用したのだと思います。

あれだけスタジオワークで引っ張りだこのモレーノにしても
やりたいことができないのですから、大変な世界ですよね。

私事ですが、例えば私は今までいくつかブログをやってきましたが、
本ブログのような控えめな(笑)アクセス数は初体験です(^^;

それだけジャズはマイナーな世界であり、
売るのがむずかしいのでしょうね。
自分のブログ作りでそれを実感する毎日です。
だからなおさら古いジャズではなく、
今の若手が食えるようにと新しいジャズを応援したくなります。

うちもスルメ化しました

kuramae2010さん、こんばんは。

おっ、スルメ化しましたか。早いですね(笑)
うちもそうです。きのうあたりはエンドレスでフル再生させてました。

本作は、初リーダー作のあの荒削りなマイナー感はそのままに、
しっかりした演奏で聴かせる歯ごたえのある内容です。

これでトラムスがヨッケン・リュッカートがフルで叩いていたら
すごいことになったのになぁ、との思いはありますが(笑)、
まあ楽曲のよさでそういう個々のお話は帳消しです。
音楽って、なんといってもディテールより曲全体のよさですからねー。
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