​Paul Grabowsky / Big Adventure

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Paul Grabowsky (p)
Philip Rex (b)
Niko Schauble (ds)

Recorded: February 21-22, 2003 at the Australian Broadcasting Corporation's Studio 345, Melbourne
Engineer: Mal Stanley (ABC 476 283-5)

圧倒的なリアリティで物語を紡ぐピアノトリオ

 しずしずと物語を紡ぐ音だ。1音1音の背後に何らかのストーリーが秘められ、ピアノの調べがその物語を音符に翻訳しながらアルバムは進行する。7曲のオリジナル楽曲が放つ音魂は圧倒的なリアリティがあり、眼前に情景がありありと浮かんでくる。

 リスナーはイマジネーションの羽を広げ、流れくるメロディにインスパイアされて自分だけの物語を見る。そんなアルバムだ。オーストラリアの個性派ピアニスト、ポール・グラボウスキーが2004年にリリースした問題作である。

 グラボウスキーは1958年生まれ。ピアニストであると同時に映画や劇場・オペラの著名な作曲家でもある。メルボルン大学音楽院でピアノ上級講師マック・ジョストに師事。その後、NYCのジュリアード音楽院で学んだ。1980年にロンドンへ飛び、1985年までドイツ・ミュンヘン在住。2016年9月には来日し、東京のコットンクラブ等に出演している。

 オリジナル楽曲7曲に「Fool on a Hill」を加えた合計8曲。リリカルで繊細な美しさをもち、耳に残るメロディが印象的だ。だが時にはアブストラクトで聴き手を突き放すようなところもある。楽曲によっては挑戦的で、ある種の攻撃性を秘めてもいる。

 リリカルで美しいという意味では北欧あたりのピアノトリオと共通点があるが、はっきり違うのは一種の演劇性だ。例えば冒頭にあげたジャケ写を見てほしい。モノクロームのブレた映像がリスナーに何かを訴えかけてくる。手を上げてタクシーを呼び止める女性の後ろ姿からストーリーが匂う。いったいどんな物語がそこにあるのか? そんな楽しみ方ができるアルバムである。

 グラボウスキーは1986年にオーストラリアに戻り、The Paul Grabowsky Trioを結成。ファーストアルバム『Six by Three』(1989)、2nd『When Words Fail』(1996)がARIA Music Awardsを受賞した。彼のピアノトリオ盤は一時ほとんど廃盤になりレア盤として中古市場で高値がついていたが、そんななか2014年に前出『Six by Three』が復刻された。

 現在、新品入手可能な彼のピアノトリオ作を選ぶなら本盤のほか、なにより美しさ優先なら比較的わかりやすい『Three』(2000)がいい。名盤『Six by Three』はM-1のみフリー的要素を盛り込んでいるが、M-2以降は本作と並びリリカルでおすすめできる。他の盤も中古が出回っているのでディスクユニオンかアマゾンあたりで検索してみてほしい。

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