Noah Haidu / Infinite Distances

Noah_Haidu_Infinite_Distances.jpeg

Noah Haidu (p)
Sharel Cassity (as)
Jon Irabagon (ss, ts)
Jeremy Pelt (tp,flh)
Peter Brendler (b on M-1, 2, 3, 7)
Ariel Alejandro de la Portilla (b on M-4, 5, 6, 8, 9, 10, 11)
John Davis (ds on M-4, 5, 6, 8, 9, 10, 11)
Mark Ferber (ds on M-1, 2, 3, 7)

Recorded: June 24, 2015 & Feb 15, 2016 at Skyline Productions, NJ
Engineer: Paul Wickliffe (Cellar Live Records CL080216)

緻密なアレンジで現代ジャズに踏み込む野心作

 十重二十重(とえはたえ)に張り巡らされた緻密なアレンジが圧倒的で、聴く者はただひれ伏すのみ。作品性の高いアルバムだ。過去作とくらべ、みなぎる緊張感でピリピリしている。エンターテインメントとしてのジャズに「芸術」をふりかけたようなアルバムだ。ブルックリン在住の若手ピアニスト、ノア・ハイドゥがリリースしたばかりの3枚目のリーダー作である。

 デビュー盤の『Slipstream』(2011年、レヴュー記事はこちら)では2管を配した大らかな現代版ハードバップを提示し、セカンド盤『Momentum』(2013年、レヴュー記事はこちら)ではコンセプトはそのままにピアノトリオで同じ表現をした。で、迎えた本作では、デビュー盤でもフィーチャーしたジョン・イラバゴン(ss,ts)とジェレミー・ペルト(tp)を配し、よりコンテンポラリーな方向に舵を切っている。

 本盤を入手する前、断片的にネット試聴したときには「ああ、この人はまたきっちり水準をクリアする作品を作ってきたな」と感じた。フタをあけてみれば案の定、すごい凝りようだ。

 ただ肩に力が入っているぶん、過去作のように理屈抜きでは楽しめないようなところがある。少なくともハードバップ的な大らかさや能天気さとは無縁だ。おそらく50年代の古き良きジャズしか聴かない層にとっては「頭でっかちなジャズ」と映るかもしれない。まあ好みの問題である。

 全11曲のうち、ジョー・ヘンダーソン「Serenity」以外の10曲すべてが自身のオリジナルと気合いを入れてきた。過去作で提示した2000年代版メインストリームな世界に新味を加え、化学反応を起こすことでより現代的なジャズに軸足を移した。アレンジの緻密さまで含め、作り込みの深さでいえば傑作と呼べるだろう。

 それほど細部まで念入りに作られた世界を構築している。力作だ。ただそのぶん「笑い」がない。わざとあいまいにしておいたパートが結果的に生み出す「余裕」や「ゆらぎ」みたいなものはない。作者が計算した通りに解釈してください、という音だ。その意味では1度や2度聴いたくらいじゃよさがわからず、聴き込むことを要求する作品といえるかもしれない。

 肩の凝らないジャズを聴きたい人にはやや重く、ちょっと聴き疲れするかも? だがそのぶん芸術としての完成度は高いし聴き応えがある。いつの時代も、芸術にエンターテインメントを差し込むときのサジ加減はむずかしいものだ。

ここで全曲試聴できます。



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