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Logan Richardson / Cerebral Flow

Logan_Richardson_Cerebral_ Flow

Logan Richardson (as,ss)
Mike Pinto (vib)
Mike Moreno (g)
Matthew Brewer (b)
Nasheet Waits (ds on 1,4,5,6,10)
Thomas Crane (ds on 2,3,7,8,9)

Rec. May 23, 2006, at Mike Sim Studio, NY
Engineer: Mike Sim (FSNT 278)

グレッグ・オズビーが激賞する若手アルト奏者

 現代ニューヨークのカッティングエッジな若手はこうだ、みたいなアルバムだ。フリーを消化したコンテンポラリージャズを目指すアルト奏者、ローガン・リチャードソンのデビュー・アルバムである。

 リチャードソンは1980年生まれで、参加メンバーのヴィブラフォン奏者マイク・ピントと同じバークリー音大卒だ。80年代にM-BASEを牽引したグレッグ・オズビーに「最も野心的で印象に残る」と賞賛され、2008年にはオズビーのINNER CIRCLE MUSICレーベルからセカンドアルバム「Ethos」をリリースしている。

 全10曲がすべてリチャードソンのオリジナルだ。フリー寄りのM-6、M-7、M-9は聴く人を選ぶが、この人はなかなかのメロディメイカーで最終曲まで聴き手を引っ張る。先の展開が読めない曲作りがエキサイティングである。アルバム全体を通してヴィブラフォンがよく効いており、その湿った音色が独特の雰囲気を演出している。

 まずM-1はノンリズムのサックス独奏に続き、ダークでかっこいいテーマで始まる。リズム隊はずっとテーマの繰り返し。シングルカット向けのつかみ曲だが威力は充分だ。

 一転してサックスが浮遊するM-2は前半こそ叙情的なバラードだが、次第に曲を崩し、怪しいリフレインが続いたかと思うと突然終わる。エンディングがショッキングだ。2分17秒の短い曲だが、なるほどこの曲は短くなければエンディングが生きない。

 M-3は弾きまくるギターのマイク・モレノがいい。彼は岩に染み入る静寂感をギターで表現できる稀有なプレイヤーだ。中盤はサックスとヴィブラフォンの激しい掛け合いから2人がユニゾンでテーマを奏で、最後は妖しいベースのリフで大団円に。このイレギュラーな楽曲の構成そのものが「不安」を暗示している。

 美しいバラードのM-5では、導入部から完全に空気をものにしたヴィブラフォンのソロがすばらしい。マイク・ピントは要チェックだ。リチャードソンのサックスも冒頭から美メロを聴かせている。終盤はサックスソロにドラムが反応し激しい盛り上がりへ。ドラマーのナシート・ウェイツを「デリカシーがない」と書いている人もいたが、まあ言いたいことはわかるけど彼はそれを狙ってやっていると思う。

展開の読めない構成がスリリングだ

 さていよいよ後半である。M-8はモノローグっぽいサックスで幕が開き、中盤でマット・ブリューワーのベースソロが聴ける。ベースの音質は適度にエッジが立ち、音の硬さも手頃でいい。

 マットは個人的にお気に入りの若手ベーシストだ。昨年秋、同じく大好きなドラマーのマーカス・ギルモアと共にゴンサロ・ルバルカバのトリオで来日していた。彼のベース・プレイは、マイク・モレノのアルバム「First in Mind」 (2011)、ウォルター・スミスⅢ 「Live in Paris」 (2009)などで聴ける。

 続くリチャードソンのサックスも何かを語りかけてくるようだ。不意に始まるヴィブラフォンのソロでは、後半のリズム隊によるリフレインがとても効果的である。おまけに最後はドラムソロまである。変わった構成の曲だ。

 切ないテーマが美しい叙情的な最終曲M-10は、「出そうだな」と思ったらやっぱりモレノのソロが出た。最後まで手探りするようにセンシティブなフレーズが展開する。モレノは本当に繊細なギターを弾く。で、そろそろ終わりかなと思ったら今度はヴィブラフォンのソロが始まった。展開がまったく読めない。あれっ、なるほど最後はテーマに戻るのね。大変失礼致しました。効果的です。

 もうエンディングか? と思いきや、誰かのソロでゾンビのように生き返る。さてこれからだと身構えれば、いきなり唐突に曲が終わる。予定調和を徹底的に拒絶するかのような奔放ぶりに、こっちはもうジェットコースターに乗った気分で身を委ねるしかない。

 前回レヴューしたラルフ・アレッシの「Cognitive Dissonance」もそうだったが、フリーのエッセンスをつまみながらもマニアックなひとりよがりに終わってないところがいい。売れることをやるのか? それとも自分のやりたいことをやるのか? これは芸術における永遠のテーマだが、プロは売りながらやりたいことを差し挟むのだ。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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松岡美樹

Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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