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Jochen Rueckert / Somewhere Meeting Nobody

Jochen_Rueckert_Somewhere_Meeting_Nobody

Mark Turner (ts)
Brad Shepik (g)
Matt Penman (b)
Jochen Rueckert (ds)

Rec. November 29-30, 2010, at Bennett Studios, NJ
Engineer: Jason Seizer (Pirouet Records PIT3055)

難解な哲学書を読む楽しみ

 このアルバムの存在意義は、難解な哲学書を読む楽しみに近い。濃いブラックコーヒーのように苦く口当たりの悪いこの音を聴き、「誰かわかりやすく解説してくれよ」と悲鳴を上げる人もいそうだが、答えは自分の頭で考えるものだ。その思考の過程を楽しむのもまたオツである。

 スタイル的には、テナーとギターがユニゾンでテーマを奏でる典型的な今どきのジャズだ。ただしかなり不思議系の音であり、暗く沈鬱で思索的である。「テーマなんてどこにあるの?」的な楽曲も多い。なので数回聴いたくらいじゃよさがわかりにくいが、何度も聴くうち洗脳されて手放せなくなる。最初は取っ付きにくいと思っても、ぜひ繰り返し聴き込んでほしい逸品だ。

 主人公であるドラマーのヨッケン・リュッカートは、手数は多いがアタック感がさらっと軽い。そのため音数は多くても周りの妨げにならず、楽曲のよさが映えるし他の演奏者も引き立つ。その意味では全面的にフィーチャーされたサックス奏者、マーク・ターナーのクールで無機的な魅力を存分に楽しめる作品ともいえる。

 リュッカートはドイツ・ケルン出身の1975年生まれ。現在ニューヨークで活動中だ。本作は自身のデビュー・アルバム「Introduction」(1998)に続くセカンド・リーダー作に当たる。

 彼はカート・ローゼンウィンケルのレギュラーグループにいたこともあり、またドリュー・グレス(b)とともにマーク・コープランド(p)のレギュラートリオで数作録音している。本盤のベーシストであるマット・ペンマンとは、ドイツ人トロンボーン奏者、ニルス・ヴォグラム率いるグループ「ROOT 70」でもコンビを組んでいる。

甘さのない 「不機嫌さ」 がありきたりじゃない

 リュッカートのオリジナル9曲に、その他2曲の全11曲。聴き手を拒むかのように甘さのない、不機嫌さに満ちたラインナップだ。特にM-1、M-2、M-6、M-10が印象に残った。

 アップテンポな4ビートのM-1は、元祖・浮遊派テナー、マーク・ターナーの面目躍如たる楽曲だ。ブラッド・シェピックの草食系なギターソロと、マット・ペンマンのごつごつしたベース・ソロも堪能できる。

 M-2は、ふんわり膨らむミステリアスナなテナーが心地いい。シェピックのギターソロも不思議な面白さにあふれている。ペンマンはM-1と打って変わって余韻を生かした叙情的なベースソロを聴かせる。

 涼しげなテーマが味なM-4では、またも前半でペンマンがソロを取る。引き継いだマーク・ターナーのサックスは、静的なスタイルの彼にしては意外にダイナミックだ。テナーとギターが繰り出すテーマのよさが際立つ佳作である。

 続くM-6も、ダークな本作にしてはテーマがメロディアスだ。中盤でシェピックが屈折したわびさび系のギターソロを弾く。好みがハッキリ分かれるギタリストだと思うが、彼のリーダー作がとても聴いてみたくなった。後半もテナーとギターが連動し、テーマを繰り返し強調してエンディングに行く。

 M-9は何かを訴えるようなテナーのリフレインで始まる。不安を煽り、急き立てるようなリズムの曲だ。ブラッド・シェピックのギターソロは、わかりやすくカタルシスをもたらすようなありきたりの演奏ではない。どこまでストイックに自分を抑え切れるか? で聴かせる珍しいタイプだ。バッキングもよく、マーク・ターナーと協力してモノトーンの色彩感をあたりに散りばめている。

 M-10はそのターナーを起用した理由がよくわかる曲だ。奇妙に明るいメロディーに乗り、ひょうひょうと踊るサックスが楽しめる。ベースラインは休符の使い方がいかにもマット・ペンマンらしい。彼の弾くベースがこの曲の浮遊感を決定付けている。

 さて締めのM-11にハービー・ハンコックの名作「The Sorcerer」を持ってきたあたり、このアルバムは60年代マイルスの硬質で禁欲的な世界を意識した作品だぞ、てなことなのかもしれない。はてさて。

わかる人にしかわからない世界もあっていい

 最後に断っておくが、本作には「伸びやかな明るさ」だの、「はじけるような楽しさ」なんていうわかりやすい要素はまったくない。ドライに乾いた無機的な音だ。掴もうとしても指の間からサラサラと流れ落ちてしまう、掴みどころのない砂のようなアルバムである。指でぎゅっと感触を確かめたいが、するりと逃げてそうさせてくれない。

 すなわち聴く人を選ぶ音楽であり、「キャッチー」などという言葉とはまるで対極にある音だ。ものすごく辛口の酒を客に出し、「どうだ、あんた。飲めないだろう?」というような作品である。

 きっとヨッケン・リュッカートは、「売れよう」とか「メジャーになろう」なんてカケラも考えてないのだろう。そういう生き方に強く共感を覚える。
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Comment

こんばんは

Grass_hopperさま
このところ買う新譜のドラマーがヨッケンだった、ということが良くあります
マイク・モレーノの新譜にもヨッケンが一部ドラムで参加してます
こちらからもTBさせてください

HamaVenturiniさん、こんにち。

こんにちは。トラバありがとうございます。
モレノの新譜にもヨッケンが一部参加してるんですね。いよいよ買わなきゃ。
ところで日本語の発音は「モレノ」ではなく「モレーノ」が正しいんでしょうか?
(てっきりモレノだと思ってたもので)

こちらからもTBさせていただきます

確かにメジャー志向は感じられない演奏ですね。
本当にやりたいことをやっている姿勢には、私としても大いに共感を覚えます。
ヨッケンのドラミングはけっこう手数が多いわりには小音量で叩いていて、その分他のメンバーのプレイを浮き立たせるのが特徴的なのですが、それできっと多くのミュージシャンからお呼びが掛かるんでしょうね。
モレノの新譜も楽しみです。

変わった人みたいですね

naryさん、こんにちは。なんかリュッカートは変わった人みたいで、別名で打ち込みバリバリのクラブミュージック系のCDなんかも出してるらしいですね。ジャズ系の参加作はかなりマイナーなのが多いですが、内容が面白そうなので目下、買い漁りつつあります。トラバありがとうございました。
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